イオン、金融、ディスカウント路線鮮明!
イオンが2/10、「組織改革について」と題し、今後の経営組織改革の骨子を公表した。イオンは2008年、8/21に事業持株会社から純粋持株会社へと移行し、グループ経営と事業執行の分離を行い、新体制での経営を推し進めてきた。ただ、ここへ来て、消費環境、経営環境が激変し、経営改革を加速する必要性が増したとのことで、ここで思い切った組織改革が必要と判断したという。特に、1/7に公表された2010年2月期、第3四半期決算を見ると、営業収益3兆7,278.22億円(昨対96.13%)、営業利益560.13億円(昨対84.96%)、経常利益541.04億円(昨対79.71%)、当期純利益-99.26億円(昨年-294.45億円)と、昨年よりは赤字幅は縮小してはいるが、減収減益の厳しい決算であったことも、組織改革を断行した要因といえよう。
また、直近の数字、2010年1月期のイオンリテールの数字を見ると、売上高は92.4%と厳しい状況である。特に、衣料品88.8%、GMSも93.3%と、落ち込みが大きく、GMS、衣料品部門の立て直しは急務といえよう。また、食品も93.9%と苦戦しており、住居余暇も93.0%と厳しい状況である。今後、小売部門、特に、GMSの改革は必須といえ、今回の組織改革がどうGMSの改革につながってゆくかもポイントといえよう。
そこで、組織改革の中身を見てみたい。ポイントは次の5点である。① 代表執行役副社長を新設する。② 総合金融事業最高経営責任者を2名体制に強化し、グループシナジーを最大限に活用しながら、新しい金融サービス事業のモデルを確立する。③ ディスカウントストア事業最高経営責任者を新設し、新たなディスカウントストア・フォーマットを構築し、競争力向上を図る。④ グループ商品・商品改革最高責任者を新設し、お客さまの新しいライフスタイルに対応したグローバルな商品開発力・商品調達力を強化する。また、グループの商品組織を改革し、グループシナジーを最大限に活用することで、商品調達コストを削減する。⑤ 急速に市場が成長しているノンストア事業、電子マネー事業を統括するデジタルビジネス事業最高経営責任者を配置する。
特に①の代表権のある副社長を新設したことが大きな改革といえよう。これまで、代表権は岡田社長1人であったが、今回、敢えて、副社長を新設し、代表権を付与しており、経営を2つに分けて管理する体制が敷かれることになる。しかも、②の総合金融事業の共同最高責任者の兼務であり、特に金融事業に重点をおいた経営シフトといえよう。この第3四半期の決算を見ると、セグメント別の営業利益は金融事業を含むサービス等が約60%を稼ぎ出しており、残り約40%はディベロッパー事業であり、GMSを含む総合小売業、そして、専門店は赤字という厳しい状況である。したがって、金融事業が現在のイオンの利益の源泉といえ、今回の組織改革を断行することで、より、金融シフト体制をつくることが狙いといえよう。
そして、もうひとつの大きな改革は、③のディスカウントストア事業最高経営責任者の新設である。ただ、気になるのは、SM事業最高経営責任者と兼務となっており、GMS事業最高経営責任者とは兼務になっていないことである。したがって、ディスカウントの本命はGMSではなく、SM、食品スーパーマーケットであるといえ、今後、食品スーパーマーケットのディスカウント路線が強く打ち出されてゆくことになろう。特に、ここ最近、ザ・ビックのディスカウント業態に転換、あるいは新設する各地のマックスバリュが多く、食品スーパーマーケットのディスカウント化が一層進むものと予想される。
④は商品開発、調達であり、⑤はネットスーパー、電子マネー等への取り組みであり、従来路線の強化といえる。したがって、今回の組織改革は、①、②の経営管理体制の分割統治、金融事業へのシフト、③のSMのディスカウント路線への転換の2つが大きな組織改革といえよう。
そこで気になるのは、GMS改革である。先にも少し触れたように、この第3四半期のGMSを含む総合小売業の決算結果は営業利益が-21.53億円の赤字となり、売上構成比は約80%とイオンの大半を占めている。さらに、アジア等の売上構成比はまだ5%強と、貢献度は低く、国内のGMSを含む総合小売業が圧倒的なイオンの売上である。したがって、金融、食品スーパーマーケットのディスカウント路線を強化するだけでは、イオンの改革は十分とはいえず、総合小売業、特にGMSの改革はまったなしの状況といえる。
今回の組織改革で岡田社長の経営範囲が副社長を新設することにより、金融業をはじめ、かなりの部分が移管されるものといえよう。それにより、岡田社長がそれ以外の経営に専念しやすい環境が生まれる。恐らく、GMS改革に関しては、大ナタを振る割らざるをえず、岡田社長が陣頭指揮をとらざるをえないのではないかと思われる。したがって、この組織改革はこれで完結ではなく、次の一手、恐らく、GMS改革をどのようにすすめてゆくのかの経営方針が、いずれ示されるのではないかと思う。イオンが今後、どのようなGMS改革を打ち出すか、注目したい。
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