上場企業、業績回復?
2/26の日経新聞、「ニッポン株式会社」のコーナーで10月から12月期決算が取り上げられた。これは、日経新聞が上場企業1,762社をひとつの会社に見立てた「ニッポン株式会社」としての決算内容を分析したものであり、上場企業の全体動向を示したものである。それによると、3月期決算企業の経常利益が3期続けて直前四半期決算と比べ拡大したという。その要因を日経新聞では、新興国の需要回復と固定費の削減による「利益の質」の改善にあるとしており、特に、在庫の改善が鮮明であるという。
その在庫であるが、この記事の見出しでも、「業績回復、焦点は売上高に、在庫回転率が改善」を掲げており、記事の中にはそのグラフが示されている。それを見ると、2009年度に入り、それまで約70兆円近い在庫水準であった棒グラフが、55兆円強ぐらいまで、急減しており、約20%在庫が削減されているのが鮮明である。過去3年間で最も低い在庫水準であり、今期、上場企業が急激に在庫の圧縮に入ったことがわかる。また、それに伴い、在庫回転率は急上昇、2009年度前半は7回転強まで落ち込んでいたが、その後反転、後半には9回転近く、約120%近くまで上がりはじめており、在庫が動きはじめたことが鮮明である。
在庫回転率は、売上高÷在庫であるので、この数字が上がる場合は、売上高が在庫よりも上昇したか、在庫が売上高よりも減少したか、あるいは、在庫が減少し、売上高も上昇したかである。実際、記事のグラフを見ると、今回の2009年度後半は在庫が約20%減少し、在庫回転率が120%強くまで上がっているので、在庫が大きく改善され、売上げも上がる兆しが見え始めたとも見え、上場企業の業績が確かに回復しはじめた兆候があらわれはじめたといえよう。
記事でも解説しているが、これは、リーマンショック以後、「需要蒸発」でだぶついた在庫をニッポン株式会社が急激に圧縮したといえ、現在、上場企業の経営改善の焦点はこの在庫圧縮に焦点が当たっているおり、それが、経常利益を押し上げる要因となっているといえよう。記事の中では、ソニーの事例が取り上げられているが、その数字は、2009年度末の棚卸資産が6,377億円となり、この数字は、9月末と比べ27%、2008年度末と比べると41%も在庫が削減されているという。特に、液晶テレビの大量在庫の整理が足を引っ張っていたが、これが解消され、適正在庫になったので、8四半期ぶりに、液晶テレビが黒字転換したという。
上場企業は特に在庫の評価が厳しくなっており、ここ最近、評価損を計上し、利益を圧迫するケースが多かったが、在庫が削減され、適正在庫となれば、この収益押し下げ要因が下がることになり、利益への貢献度が上がるといえよう。また、必要以上の値引きも減り、粗利を改善する一方、売上が上昇すれば、固定費も相対的に下げることができ、営業利益の上昇にもつながる。その意味で今回の在庫削減はまずは上場企業にとっては、収益の改善として、数字にも表れてきたといえよう。
ちなみに、食品スーパーマーケット業界では、これまでの第3四半期決算を見る限り、ニッポン株式会社ほど、鮮明に経常利益の拡大は見られず、むしろ、減益決算を計上する企業が多い。その要因を追ってみると、平均単価が下がり、粗利を圧迫している状況であり、これが、原価上昇要因となり、さらに、既存店の売上を下げ、相対的に固定費を上昇させ、経費圧迫の要因となり、ダブルで利益を押し下げている状況といえる。
この平均単価ダウンが、過剰在庫による問題であれば、ニッポン株式会社のように在庫改善が収益改善につながってくるのであろうが、平均単価ダウンはデフレによる価格競争の厳しさが連鎖反応的に起こっている状況といえよう。需要蒸発のような急激な需要減が起こっている状況ではなく、デフレによりじわじわと需要が確実に減少しつつある状況ともいえる。実際、食品スーパーマーケットの在庫回転率を見ると、2009年度決算公開企業約50社の単純平均は約25回転であり、トップクラスは50回転を優に超える。ニッポン株式会社が10回転前後であるので、ものすごいスピードで在庫が回っており、残念ながら、在庫の問題よりも、売上げの問題が、こと食品スーパーマーケットでは大きいといえよう。ただ、GMS、ホームセンター等は10回転強ぐらいのところもあり、これら在庫回転率の低い業種は小売業でも在庫削減の効果が鮮明に可能性はある。
このように、ニッポン株式会社全体は、この日経の記事のように在庫が急激に圧縮され、在庫回転率が急回復し、それが業績に鮮明に表れつつあるといえるが、残念ながら、食品スーパーマーケット業界は、そもそも在庫の回転率が異常に高いため、ニッポン株式会社とは反対の方向にあるといえ、現在、利益が厳しい局面にある。記事の中でも今後の焦点は売上高にあるとのことであるが、食品スーパーマーケット業界は、その意味で、ニッポン株式会社の売上高が上昇しはじめ、景気が回復局面に入ったあと、連動して、売上が上昇し、利益が回復するという流れになるのではないかと思われる。それまでは、経費比率を引き下げる経営改革と、平均単価を可能な限り維持する付加価値の高い商品の強化が課題といえよう。
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