2010年本決算はじまる、食品スーパーマーケット、丸和!
いよいよ、食品スーパーマーケット2010年度の本決算の公表がはじまった。食品スーパーマーケット業界の上場企業は約60社である。その内、1月度決算が3社、2月度決算が約40社、3月度が約10社、4月、5月度が数社、さらに、9月度も数社となり、計約60社となる。
今回は、その中の2010年1月度、今期はじめの食品スーパーマーケット業界上場企業の本決算、丸和について取り上げてみたい。3/12に公表された結果であるが、売上高377.80億円(-6.2%)、営業利益-1.10億円、経常利益-4.57億円、当期純利益-27.43億円となり、減収減益、赤字決算となる極めて厳しい結果となった。丸和自身も、「個人消費低迷への対応策としてプライベート商品を中心とした値下げ競争等による企業間競争により、客単価の減少が明らかとなり、デフレ基調での非常に厳しい経営環境となりました。」とコメントしているようにデフレによる価格競争の激化が厳しかったとのことである。
丸和は、現在、広島のユアーズの支援を得て、経営再建中である。株式も2009年7月現在66.4%ユアーズが保有しており、ユアーズが筆頭株主となり、ユアーズの子会社となっている。昨年11月に公表した構造改革の進捗状況を見ると、「所有不動産・賃貸不動産の精査・評価を行い、①物件売却、テナントリーシングを行うこと、②不動産賃貸借契約の金額見直しのお願いを行うこと、加えて、当社展開エリアの再検討を行い、③不採算店舗の撤退を行うこと、の3点を主軸として関係者と調整し、・・」と、3つの改革に取り組み、「一部旧店舗の売却実施、不動産賃貸借契約の支払減額、4店舗の閉鎖が確定、・・」という状況であるが、まだ今期決算結果には十分に反映されているとはいえず、依然として厳しい経営状況が続いている。
特に、自己資本比率が4.7%(昨年9.3%)という状況であり、95%以上が負債という極めて厳しい経営状況にあり、資本不足が深刻であり、今後、さらに、資本の増強が急務といえよう。その負債の状況を見てみると、総資産は238.40億円であるが、有利子負債が128.51億円と53.90%に上る。さらに、固定負債には、更生債権等15.76億円、繰延税金負債12.51億円、再評価に係る繰延税金負債15.00億円と計43.27億円あり、総資産の18.1%になる。
今期のキャッシュフローを見ても、営業キャッシュフローは当期純利益が赤字となったため、-9.59億円とマイナスとなった。一方、投資キャッシュフローは、敷金及び保証金の回収があり、0.85億円のプラスとなった。ただ、結果、フリーキャッシュフローは-8.74億円のマイナスとなり、今後の成長戦略を担う新規出店への投資が全くできない状況である。そして、財務キャッシュフローであるが、10.07億円のプラスとなり、マイナスのフリーキャッシュフローを財務キャッシュフローで相殺した。そのキャッシュの調達であるが、新たに株式を発行し、13.24億円資金調達したことが大きく、これが、親会社、ユアーズへの第三者割当による新規株式の発行である。
今期は、このように、親会社への新株発行により、キャッシュフローを回すことができたが、自己資本比率はさらに厳しい状況になっており、今後、多額の負債の圧縮には、一段とキャッシュが必要な状況である。今後、丸和としては、どのように資金調達を実施してゆくのか、親会社のユアーズとしても、さらに、資本を入れるか、経営判断が難しい状況にあるといえよう。
では、そのキャッシュの源泉となる丸和の今期の営業構造を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、74.05%(昨年75.12%)と、原価は1.07ポイントと大きく下がっており、原価の改善はこの厳しいデフレの中、進んだといえよう。結果、売上総利益は、25.95%(昨年24.88%)と改善した。一方、経費の方であるが、27.27%(昨年25.91%)と、経費の方は1.36ポイントと大幅に上昇している。結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は-1.32%(昨年-1.03%)と0.29ポイント減少しており、厳しい状況である。これに、不動産収入、物流収入等が1.03%(昨年0.93%)のり、結果、営業利益は-0.29%(昨年-0.10%)と赤字となった。さらに、売上高も-6.2%となったことにより、営業利益段階でのキャッシュが大きく減少した。
したがって、資金調達による資本不足を補うことも必要であるが、それ以上に、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、営業活動によるキャッシュを稼ぐ力をつけることが最優先課題といえよう。マーチャンダイジング力の要諦は原価と経費のバランスであるが、丸和の経費比率は27.27%と極めて高い水準にあり、経費削減も重要な課題であるが、それ以上に、坪当たりの経費を落とす、すなわち、販売力、特に、坪効率のアップにより経費を引き下げることが喫緊の課題といえよう。
今期決算を見る限り、丸和の経営状況は厳しい状況にあるといえ、次期2011年度はまずは自己資本比率が4.7%にまでなった資本の増強が急務であり、同時に、営業構造を改革し、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆける販売力をいかに打ち出せるかが当面の課題といえよう。次の第1四半期、丸和の営業構造、特に、マーチャンダイジング力がどこまで改善されるか、注目したい。
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