マックスバリュ中部、2010年1月本決算、増収減益!
マックスバリュ中部が3/17、2010年1月期の本決算を公表した。結果は営業収益1,169.57億円(1.5%)、営業利益19.83億円(-3.8%)、経常利益20.18億円(-6.8%)、当期純利益4.14億円(-33.2%)となり、わずかに増収とはなったが、利益はいずれの段階においても減益となる厳しい決算となった。特に当期純利益は固定資産の減損損失7.67億円等の計上が響き、大きくマイナスとなった。食品スーパーマーケット業界はここへ来て、デフレの深刻化が経営に影響を与えはじめており、厳しい経営環境が続いている。
そこで、減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、75.36%(昨年74.72%)と0.64ポイント上昇しており、原価の上昇が見られる。本来、マックスバリュはイオングループから原価の低いPB、トップバリュを調達し、原価改善に取り組んでおり、原価が下がるはずである。特に、今期のマックスバリュ中部のトップバリュの売上構成比は昨年の10.8%から11.9%とへと1.1ポイント上昇しており、確実に原価を下げる方向にいっているが、結果は、逆に原価が上昇しており、トップバリュの改善効果が十分に表れていない状況といえよう。
一般に、PBは原価が5%から10%は低いと想定されるが、それで計算すると、売上構成比が10%強であるので、その相乗積は0.5%から1.0%となり、そのまま通常の仕入れ原価が変わらなければ、原価の改善につながるはずであるが、残念ながら、今期のマックスバリュ中部は、逆に原価が上昇しており、トップバリュの原価が十分に取れていないか、NBの原価が予想以上に下がっている可能性が高いといえよう。
恐らく、後者の方が今期は大きかったのではないかと想定される。実際、今期の既存店の状況を見ると、売上高97.1%、客数100.9%、客単価96.3%という状況である。特に、客単価が厳しい状況にあり、その中身はPI値100.8%、平均単価95.5%である。したがって、売上ダウンの要因は平均単価のダウンにあり、約5%弱平均単価が下がったことが大きかったといえる。一般に、平均単価が下がると、原価上昇要因となるが、今回のマックスバリュ中部の原価が0.64ポイントと上昇しているので、平均単価のダウン以上の上昇率であり、しかも、トップバリュの売上構成比11.9%の中での原価上昇であり、NBが想定以上に大きく原価が上昇したのではないと思われる。
結果、売上総利益、いわゆる粗利は24.64%(昨年25.28%)と下がった。一方、経費の方であるが、25.45%(昨年25.96%)と、経費の方は-0.51ポイント改善しており、平均単価が下がり、固定費が上昇したものと思われるが、結果は経費が削減され、かなり、思い切った経費削減に取り組んだのではないかと推測される。そして、ここから差し引き、マーチャンダイジング力を計算すると、-0.81%(-0.68%)となり、原価の上昇が重く、マイナスが拡大した。これに、不動産収入等のその他営業収入が2.55%(昨年2.52%)のり、結果、営業利益は1.74%(昨年1.84%)となり、減益決算となった。
こう見ると、原価の上昇が今期のマックスバリュ中部の減益要因といえ、さらに、掘り下げると、平均単価のダウン、特に、NBの原価上昇が減益となったことが最大の要因といえよう。したがって、今後、いかに、NBの原価改善を進めるか、さらにPB比率を引き上げるか、それとも、既存店の売上げをさらに引き上げ、経費、特に、固定費を引き下げるかの方向を明確に打ち出す必要があろう。
これに対し、財務面であるが、自己資本比率は33.6%(昨年31.8%)と若干改善したが、まだまだ70%弱を負債に依存する財務構造であり、今後の継続的な安定成長を果たしてゆくには一層の財務改善が必要といえよう。マックスバリュ中部は経営目標にROAとROE、双方の上昇を掲げている。一般に、ROA=自己資本比率×ROEであり、ROEを増やし、ROAを引き上げると、極論すれば自己資本比率を下げ、ROEを引き上げる、いわゆるレバレッジ経営、負債で出店をしてゆくような方向になりやすい。本来、食品スーパーマーケットは負債で出店してゆくよりも、自己資本での出店が可能な財務状況、すなわち、自己資本比率を引き上げる方が安定した成長を目指すことができる。特に、デフレ傾向の時は、負債は重く経営にのしかかるといえる。今後、安定成長を継続してゆくためにも、出店余力をもたせる自己資本の一層の改善が課題といえよう。
ただ、そのためには、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、キャッシュフローを充実させる必要がある。今期のマックスバリュ中部のフリーキャッシュフローは-4.75億円(昨年10.23億円)と、減損損失もあり、マイナスとなった。また、マーチャンダイジング力もマイナス幅が広がっており、キャッシュ不足となっており、今後へ向けての営業活動からの投資が十分にできない状況にある。したがって、自己資本比率33.6%をいかに改善するかが、財務的には喫緊の課題といえよう。
このように2010年1月期のマックスバリュ中部の決算は増収減益という厳しい結果となった。原価改善の決め手となるはずのPB、トップバリュの売上構成比が上がったにも関わらず、原価の上昇、特にNBが大きく響いたといえよう。ただ、それだけ、デフレ環境が厳しく、原価を下げての価格競争に応じざるを得ない経営環境にあるといえ、今後、このデフレからどのように脱却してゆくのかが最大の経営課題といえよう。今期、2011年度、マックスバリュ中部がどのようなマーチャンダイジング戦略を打ち出すか注目である。
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