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March 03, 2010

ダイエー、2010年2月期、第3四半期決算、B/S、CFを見る!

   35.6%、ダイエーの自己資本比率である。前回に続き、今回もダイエーを取り上げる。前回はダイエーの社長交代、そしてP/Lについて取り上げたので、今回は、B/S、そして、CF(キャッシュフロー)について取り上げる。小売業にとって、自己資本比率がもっとも絡んでくる経営課題は出店である。原則、小売業の成長は出店であり、出店が止まった時、小売業は成長が止まる。したがって、継続的、安定的に出店を行えるかどうかが、小売業の成長そのものを決めてしまうといえる。

   そして、その出店を支えるのが純資産であり、負債である。ただ、負債に頼る出店を行っていけば、当然、負債が膨らみ、やがては、自らの力で出店ができなくなり、成長が止まる。したがって、継続的、安定的に出店をしてゆくためには、純資産の範囲内で出店が可能な財務基盤をつくりあげることが要諦といえる。一般に、小売業の出店にかかわる資産は土地、建物・設備、資金・保証金等があるが、これらを合計すると、40%から50%近くになる。特に、食品スーパーマーケットは設備投資が大きく、決算公開企業約50社の平均は60%を超える。ちなみに、2009年2月決算時のイオン42.9%、セブン&アイH39.7%で、GMS業態の方が比較的低いのが実態である。

   そこで、ダイエーであるが、2010年2月期の第3四半期決算を見ると、2,740.95億円であり、これは総資産4,471.94億円の61.29%に当たる。食品スーパーマーケット並みの出店にかかわる資産であり、GMSとしてはかなり高い数字といえよう。したがって、自己資本比率から、この出店に関わる資産を引くと、いわゆる出店余力は-25.69%となり、負債に大きく依存する出店構造となっているのが現状である。ちなみに、イオン-13.4%、セブン&アイH10.3%であり、ダイエーの数字は、出店を継続的、安定的に行い、成長をしてゆくにはかなり厳しい数字であるといえよう。さらに、食品スーパーマーケット業界の平均は-22.8%であるので、食品スーパーマーケット以上に、出店にかかわる資産が重い構造になっているといえる。ちなみに、食品スーパーマーケットのトップクラスは、ヨークベニマル29.4%、オオゼキ28.7%であり、上位企業は5%から10%ぐらいの数字である。

   では、ダイエーは出店をどのように進めてきたかであるが、負債の中の有利子負債を見ると、1,228.60億円であり、総資産の27.47%であり、ちょうど自己資本比率35.6%にプラスすると、63.03%となり、出店にかかわる資産とほぼイコールになる。したがって、有利子負債分がそっくり出店にかかわる資産を支えている構図であり、ここをいかに削減し、自己資本で新規出店が可能な財務状況をつくれるかが、今後、ダイエーが安定成長できるかどうかの課題といえよう。

   ちなみに、GMSは食品スーパーマーケットと比べ、衣食住すべての商品群を扱っているため、商品及び製品、いわゆる在庫も多く、ダイエーの数字を見ると、総資産対比10.92%となる。イオン9.2%、セブン&アイH4.5%と比べても在庫が多いといえ、これも、出店にかかわる資産と考えれば、この分も負債で相殺することなり、出店にかかわる資産はもうワンラク上がることになり、今後、ダイエーが新規出店を継続的に果たしてゆくには、自己資本比率35.6%はかなり厳しい財務状況であるといえよう。

   では、その今後であるが、キャッシュフローの中の投資キャッシュフローを見てみたい。今期は-76.15億円の投資であり、内、出店にかかわる資産への投資は-100.86億円である。ダイエーは現在、直営店226店舗強であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は先の数字2,740.95億円から、12.12億円となる。したがって、-100.86億円は8.3店舗であり、店舗数では、閉鎖店舗がなければ3.6%の成長となる。

   問題は、この資金をどのように調達しているかであるが、営業キャッシュフローは、当期純利益が赤字になったことにもより、わずか22.70億円であり、結果、フリーキャッシュフローは-53.45億円と多額のマイナスである。したがって、財務キャッシュフローで補うことになるが、その財務キャッシュフローは-137.60億円と、むしろ、長期借入金を-136.410億円返済し、さらに、マイナスが大きくなり、極めて厳しいキャッシュフローである。結果、現金191.05億円取り崩し、投資を埋めている状況であり、今期はキャッシュが完全に逆回転し、経営的には厳しい局面にあるといえよう。

   このように、ダイエーを2回に渡って取りあげたが、現在、ダイエーが置かれた経営状況は極めて厳しい局面にあるといえる。まさに、まったなしの経営改革、しかも、思い切った改革が必須の状況といえよう。特に、キャッシュの源泉であるマーチャンダイジング力が厳しい状況にある中、営業キャッシュフローが十分でない状況で、約100億円の投資をし、さらに、約130億円の長期借り入れを返済しているので、資産を大きく取り崩すというキャッシュフローの逆流の流れとなり、経営を大きく圧迫している状況である。来期は人心一新、新社長を迎え、さらに踏み込んだ経営改革に入ることになるが、キャッシュの逆流を順流に変えられるか、まずは、マーチャンダイジング力の改善がどこまで進むかに注目である。

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