日経ビジネス3/15、脱・デフレを特集!
日経ビジネス3/15、最新号で、「脱・デフレ列島、安売りを撃破せよ」というタイトルで小売業のデフレ対策を取り上げた。特に興味深い記事が、成城石井である。また、オギノ、全日食、そして、東急ストアの記事も参考になる。現在、食品スーパーマーケット業界はもちろん、小売業界全体がデフレの真っただ中にあり、平均単価が下がり、売上げが伸び悩み、利益にも影響が出始めている。2010年度決算も厳しい結果が予想されるが、このようなデフレ環境の中でも、しっかり対策を立て、デフレを克服しようとしている小売業の特集である。
さて、注目の成城石井の記事であるが、記事の中に、2009年12月度の成城石井の決算結果が記されているが、売上高、経常利益ともに、2桁の上昇、増収増益は4期連続だという。しかも、販売単価が3年で10%上昇したという。ポイントは、この販売単価、すなわち、平均単価が10%上昇したことである。通常、デフレ時は平均単価が下がり、売上げが伸び悩むのが実態である。
実際、ここ数ケ月の食品スーパーマーケット業界の売上速報を見ると、新店、M&Aによる売上増は見られるが、既存店はのきなみ売上高が下がっており、その中身を見ると、客数ももちろんだが、客単価が下がっているのが実態である。さらに、その客単価の中身を見ると、PI値は伸びているが、平均単価がダウンし、客単価を落としているケースが多い。これはデフレ時には、価格競争が激化し、平均単価が下がり、PI値(数量)をいくら伸ばしても追いつかず、結果、客単価(金額PI値)を下げてしまうためである。
さらに、昨年はPBブームでもあったため、PBを必要以上に強化した食品スーパーマーケットほど、全体の平均単価を下げており、結果、客単価が上がらず、客数も伸び悩み、既存店の売上高が伸び悩むという結果となった。この後遺症は今も引きずっており、一旦、平均単価を下げてしまうと、中々、その負のスパイアラルから脱却できないのが実態といえよう。
このような状況の中で、日経ビジネスの記事を見ると、成城石井は全く逆の政策、すなわち、平均単価を意識して引き上げたマーチャンダイジングをこの3年間実施し、実際、平均単価を10%引き上げたという。特に、はじめに取り組んだ平均単価アップ政策の内容が記事で解説されているが、それを見ると実にユニークな政策である。「イチ・ニッ・パー」、すなわち、128品の戦略商品の強化である。これは、成城石井の8部門から、「売れ行きが好調で、粗利益が取れている10品と、特に売れてないが粗利率が高い6商品をリストにしろ」と大久保社長が指示しところから始まったという。
8部門×(10品+6品)=128品となる。そして、この戦略商品の在庫を思い切って積み増し、店頭の一番目立つ場所に陳列し、その商品の魅力を客にアピールしたという。結果、この128品の売上げ構成比が6.5%から10.5%へと上がり、現在では29%までになったという。
では、この128品とはどのような位置づけになるかであるが、客単価(金額PI値)の表を作ると明快である。横軸をPI値、縦軸を平均単価とすると、掛けた面積が客単価(金額PI値)となる。そして、ここに128品を落とし込むと、はじめの10品はPI値が高くで平均単価も高い、右上の商品が第1優先でピックアップされる。そして、次に、PI値が高く、平均単価の低い右下の商品がピックアップされよう。その割合は前者が5から6品、後者が4から5品というところだろうか。したがって、この10品の半分は平均単価の高い商品であり、これだけでも強化すれば平均単価アップをはかることができよう。これに、さらに6品、これは、まさに、平均単価が高くPI値が低い左上の商品をピックするので、結果、128品の内、約70%は平均単価の高い商品となる。この政策そのものがPI値よりも、平均単価を引き上げる政策であり、しかも、これを徹底強化、すなわち、このPI値を引き上げ、最終的には全体の30%近くまで構成比を上げるわけであるので、PI値以上に平均単価のアップが大きく図られることになる。
これを成城石井は全社を挙げて大久保社長が率先垂範で取り組んだわけであるので、他の食品スーパーマーケットがデフレ環境の中、平均単価の低い右下の商品を集中的に販売し、全体の平均単価を意識的に下げている中での、全く逆の商品、右上、左上を意識的に売り込んだことになる。マーチャンダイジング政策が通常の食品スーパーマーケットとまさに正反対に進んでいるのが成城石井ということになる。結果、成城石井の利益は3年間、急上昇しており、その正しさが実証されたといえよう。
このように、実はデフレ環境の中では放っておくと自然に平均単価が下がるのが実態であり、いわゆる売れ筋、PI値が高く、平均単価の低い商品、すなわち、右下を強化すると、さらに平均単価のダウンが加速されることになる。しかも、このゾーンのPBを強化すれば、さらに、平均単価のダウンが加速される。成城石井は、今回の政策は3年前から取り組んでいるとのことであるので、デフレ環境になったからといって急遽取り組んだ政策ではなく、成城石井そのものの企業の原点、強みをより強くしようとした結果の政策であり、それが、このデフレ環境の中で見事にはまったといえる。結果論であるが、デフレ時はこの成城石井が示した平均単価に着目した、右上、左上の商品強化政策がポイントであることを、成城石井がまさに実証したといえよう。
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