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March 27, 2010

直売所と食品スーパーマーケット!

   今はやり?の直売所を見る機会があった。JAちちぶが運営している農産物直売所である。100坪ぐらいの農産物を中心とした店舗にレストランも併設しており、ちょっとしたNSC(ネバーフッドショッピングセンター:郊外型SC)のような形態となっている。商品構成は野菜、果物が主体で、これに加え、花、加工食品、雑貨等があり、POSレジで管理しており、食品スーパーマーケットに良く似た売場づくりである。農林水産省の調べによれば、このような農産物直売所が全国に13,538箇所(2005年農林業センサス)もあるというので驚きである。この数字が2005年であるので、現在ではさらに増加していると思われるが、いまや、農産物直売所は農産市場においては一大市場を形成しはじめたといえよう。

   では、食品スーパーマーケットと農産物直売所との違いはどこにあるだろうか。商品という点から見る限り、きゅうり、トマト、レタス、ほうれんそう、大根、人参等の野菜、いちご、みかんなどの果物などが平台に陳列されており、一見すると何ら変わらない。また、価格も食品スーパーマーケットと比べ高いものあり、安いものもあり、どちらが高い安いということもなく、まちまちである。表面的にはどちらも同じように見え、食品スーパーマーケットの青果部門が独立して、八百屋というよりも、食品スーパーマーケットのノウハウを導入して店舗を構えたようなイメージである。

   ただ、一旦のその商品を深く掘り下げてみると、食品スーパーマーケットと農産物直売所では大きな違いが存在する。まず、最大の違いは、仕入れである。食品スーパーマーケットでは農産物を原則、市場から仕入れる。最近では産直、さらには、生産者の顔が見える野菜、果物として、まさに、農産物直売所を食品スーパーマーケットに取り入れる動きもあるが、その大半は市場経由の野菜、果物である。これに対して農産物直売所は原則、近隣農家が直接売場に商品を納品し、自分で値付けし、余ったらもって帰るという仕組みが大半である。

   JAちちぶでは、値付けを支援するため野菜、果物の出荷規格及び標準価格を提示しており、農家が農産物直売所に持ってきた野菜、果物について、その数字を目安に自分で判断し、店内のパソコンに登録し、バーコードを自動発行し、自らバーコードをはり、店内に自ら並べるという仕組みになっていた。したがって、食品スーパーマーケットにおけるバイヤー機能、商品管理のための店員は存在せず、在庫管理もいらず、店内作業はほとんどない状況で野菜、果物の仕入れ、値付け、陳列、在庫管理、売上集計ができるようになっているのが特徴であり、極めてシンプル、合理的である。ある意味、食品スーパーマーケットの野菜、果物にかかわる仕入れ、販売、在庫管理をすべて農家に委ねた形であり、まさに、生産と消費が一体化した直売の仕組みであるといえよう。その意味で、直売という言葉がぴったり当てはまるといえる。

   ちなみに、野菜、果物の出荷規格、標準価格をいくつか見てみると、野菜ではトマト800g、273円から378円、きゅうり5本入り、158円から268円、ほうれん草300g、105円から126円、ダイコン1kg、84円から115円であり、果物ではぶどう1kg、500円から1,500円、クルミ500g、315円、さくらんぼ200g、368円から473円等である。これらの出荷規格と標準価格を参考にし、これをもとに農家が自ら生産した野菜、果物を小分けし、値付けをしている。

   したがって、ここからコスト構造と品揃え、在庫管理に大きな違いが出てくる。当然、コスト構造は食品スーパーマーケットではバイヤー、店舗運営の人件費や値下げ、廃棄ロスなど様々な経費、市場、農協などの中間コスト(原価)、そして、土地代、設備費、ちらし代などがのり、価格そのものを押し上げる要因が働く。これに対して、農産物直売所は原則、そのほとんどが農家に委ねられるため、運営側のコストは純粋に店舗設備費とレジの店員、そして、POS、値付けなどの若干の情報システム費用のみとなり、少なくとも、食品スーパーマーケットの野菜、果物の価格よりは、はるかに安く売れる仕組みであるといえる。

   もちろん、問題もある。原則、近隣の農家の生産物のみで品揃えされるため、限られた商品とならざるをえず、消費者のニーズを充分に満たせない点である。しかも、農家が同じ商品を生産している場合が多く、農家同士の競合が起こる点である。JAちちぶでもバナナ、りんごは海外、青森と地元以外の果物を加えていたが、消費者の品揃えを満たすためには、市場、卸からの仕入れも加えざるをえなくなるといえよう。また、在庫問題は過剰在庫も農家へ負担をかけるが、それ以上に欠品の方が問題といえ、午前中には商品がないとか、夕方から商品が入るとかいうケースもあり、安定した品揃えが24時間、365日できない点である。

   こう見ると、農産物直売所は一定の条件の中で絶大なパワーを発揮する仕組みといえよう。消費者にとっては、品揃えと欠品問題があり、物足りない面もあるが、小規模農家にとっては、自ら商売をする手段を新たに得られ、所得向上に確実に寄与する機会を得たといえる。これまで農政そのものが大規模農家、農協、卸売市場等へ優先的に税金の配分等がなされてきたきらいがあるが、その政策の恩恵を充分に受けられなかった小規模農家が自らの意思と行動力で立ちあがり、自ら稼ぎはじめたといえる。13,538箇所という数字が示すように、新たな流通チャネルが静かに、深くできあがりつつあるといえよう。今後、本ブログでもこの農産物直売所の動きに注目してゆきたい。

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