マーチャンダイジング力を考えてみる!
3/17の日経MJのコラム、「消費見所、カン所」にイオンリテールの村井社長のインタビューが掲載された。その見出しは、「経費、売上高との比較徹底」である。この中で、冒頭に、村井社長が「経費は昨年実績と比べるのではなく、売上高や粗利と対比させて考えるよう社内に指示している」と述べており、これはまさに、食品スーパーマーケット最新情報でもマーチャンダイジングの基本指標としているマーチャンダイジング力そのものであるといえる。イオンリテールも、特に、今期は、マーチャンダイジング力に着目して、経営改革に取り組んできたことがわかる。
通常、経費削減というと、昨年実績と比べ、いくら金額が減ったかが問われるケースが多い。このコラムの中でも、村井社長は、2010年2月期のイオンリテールの経費を人員配置の適正化や店舗の家賃引き下げ交渉などの効果で約350億円削減したと述べている。また、今後、3ケ年でさらに500億円の経費を削るという。実際、その結果、近々に公表されるイオンの2010年2月期の決算は最終黒字見通しであるというが、その要因がイオンリテールをはじめとしたGMSの経費削減効果が大きかったという。ただ、村井社長は、この経費削減だけではなく、売上高や粗利との経費バランスが重要であるとの認識で、店頭販売、すなわち、売上高とのバランスをも重視しているという内容である。
まさに、これが経費の本来の捉え方であり、昨年実績から経費を削減しただけでは、経営の改革にはつながらない。一般に、利益は売上高-原価-経費で決まるが、さらに、GMS、食品スーパーマーケットはここに、その他営業収入が加わり営業利益が算出される。イオン本体の場合は2009年度の本決算の数字を見ると、売上高(4兆7,060.69億円)-原価(3兆3,742.13億円)-経費(1兆7,321.99億円)=-4,003.43億円であり、これに、その他営業収入(5,247.17億円)が加わり、営業利益が1,243.73億円となった。これを売上対比で見ると、売上高(100%)-原価(71.69%)-経費(36.80%)=-8.49%、その他営業収入(11.14%)、結果、営業利益(2.65%)となる。
ここで、マーチャンダイジング力とは、食品スーパーマーケット最新情報特有の分析指標であり、売上高-原価-経費=粗利(売上総利益)-経費のことである。損益計算書ではなぜか、この指標、マーチャンダイジング力が算出されておらず、仕方ないので、独自にこの指標を算出して、勝手に名前をつけたものである。2009年度の本決算では、イオンは営業利益は黒字だが、マーチャンダイジング力が大きくマイナスであり、これをその他営業収入、具体的には不動産収入、物流収入でカバーし、営業利益を黒字にもっていっている営業構造である。これはGMS特有の営業構造であるが、最近では食品スーパーマーケットも、店舗の規模が巨大化すると、このような営業構造となるケースとなるのが実態である。
ここからわかることは、経費が昨年よりも削減できても、それ以上に原価が上昇すればマーチャンダイジング力はマイナスとなるというこことであり、原価が上昇しないまでも、売上高が経費の削減以上に減少すれば、同様にマーチャンダイジング力はマイナスとなるということである。したがって、経費を昨年よりも削減することはもちろん重要な営業改革であるが、売上高と原価、すなわち、粗利との関係を見ないと営業構造は改革できないということである。さらに、GMSの場合はその他営業収入の動向も営業構造に大きな影響を与えるので、ここも見る必要がある。
一般にマーチャンダイジング力を改善するには、まずは、原価と経費のバランスが重要であり、しかも、絶対金額ではなく、売上高との対比、村井社長がコラムで述べているように、比率でのバランスが決め手となる。そのパターンは4つしかない。原価小(粗利大)経費大、原価小(粗利大)経費小、原価大(粗利小)経費小、原価大(粗利小)経費大である。この内、マーチャンダイジング力が大きくプラスとなるのは、原価小(粗利大)経費小のケースであるが、小売業としては、原価大(粗利小)経費小を目指したいところであろう。これ以外のケース、原価小(粗利大)経費大でも原価大(粗利小)経費大でもマーチャンダイジングをプラスにもってゆけないことはないが、原価大(粗利小)経費大は至難の業であり、原価小(粗利大)経費大(GMSタイプの典型)は競争力が落ち、売上高が下がる可能性が高いといえよう。
こう見ると、村井社長がこの日経MJのコラムで述べていることは、マーチャンダイジング力を改善せよといっていることと同じであり、原価小(粗利大)経費小ないしは原価大(粗利小)経費小を目指せということになろう。ただし、GMSは原価小(粗利大)経費大であり、そもそもが原価の低い(粗利の高い)衣料品を主力にすえる事業構造が原点であることを考えると、原価大(粗利小)の方向は自己矛盾することになりかねず、原価小(粗利大)は既定、結果、経費大を経費小に変える構造改革が大前提といえ、これを昨対ではなく、売上対比で下げることが本筋といえよう。すなわち、売上高を引き上げつつ、経費を下げるということがGMS改革の本筋であり、まさに、村井社長の目指す方向であるといえよう。
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