魚力の決算を見る!
食品スーパーマーケットの上場企業はすでに50社を優に越えているが、それに比べ、生鮮の専門店、青果、鮮魚、精肉等の上場企業はまだわずかである。そのわずかな生鮮専門店の中で、健闘している企業の1社が魚力である。特に、ここ最近では、ウオリキ・フレッシュ・インクをアメリカに設立し、ホールフーズマーケット、ウェグマンズと取引を順調に拡大しつつあるなど、国内だけでなく、海外にも目を向けての商売を展開しており、魚力の動向には注目である。ただ、さすがに、国内はここ最近厳しい状況であり、売上げが伸び悩んでいるといえる。そこで、今回は、この魚力の最新決算、最新売上状況をもとに、魚力の現状を見てみたい。
まず、最新の売上動向、2010年3月期の2月度の売上速報であるが、全社は92.5%、既存店96.2%という結果であり、苦戦気味である。ここ数ケ月では最も厳しい数字であり、特に2010年度、今年に入って厳しい数字が続いている。2月末現在の店舗数は小売店が37店舗、飲食店が8店舗であり、特に、小売店は今期4店舗を開店(予定)しており、積極的な出店であるといえよう。
魚力の最新の決算、2009年10月から2009年12月までの事業別の売上高と売買差益を見ると、小売事業57.72億円(構成比82.1%、仕入れ31.89億円:粗利44.7%)、飲食事業2.905億円(構成比4.1%、仕入れ0.85億円:粗利70.5%)、卸売事業9.64億円(構成比13.7%、仕入れ10.09億円:粗利-4.7%)であり、トータル70.27億円(仕入れ42.84億円、粗利39.0%)という結果である。卸売事業が第2の柱となりつつあるが、利益が安定せず、厳しい状況が続いている。この内、期待されるアメリカの売上げは卸売事業の約30%ぐらいであり、全体の構成比では5%弱といえ、魚力の中でどのような位置を占めるか、今後、数年が正念場といえよう。ただ、円高による為替の問題等もあり、単純に売上げがオンにならない場合もあり、海外での商売は難しい面もある。
では、この第3四半期累計の決算数字はどのような結果であったかを見てみたい。2010年3月期の第3四半期決算の結果であるが、売上高189.25億円(-1.1%)、営業利益6.15億円(0.9%)、経常利益5.54億円(-10.4%)、当期純利益2.91億円(昨年は赤字)と、営業利益はややプラスになったが、全体としては、やや厳しい決算であったといえよう。この2月度も先に見たように、売上高が伸び悩んでおり、今期本決算は、売上げはほぼ同様の状況になるのではないかと予想されるが、利益がどこまで改善できるかが課題といえよう。
そこで、魚力の営業構造を、原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、58.81%(昨年59.26%)と、原価が下がっており、今期は原価の改善が進んだといえよう。売上げが厳しい中、価格競争も厳しく、平均単価が下がっていると思われるが、この状況で原価を改善できるのは、仕入れの強さといえよう。それにしても、食品スーパーマーケットの鮮魚部門と比べると、5%は優に低いといえ、これが鮮魚専門店の仕入れ力といえ、まさに、「利は元にあり」である。結果、売上総利益は41.19%(昨年40.74%)となり、食品スーパーマーケットと比べ、極めて高い数字である。
一方、経費の方であるが、37.93%(昨年37.54%)と、若干であるが上がっており、経費の上昇が見られる。それにしても、粗利が高い分、経費も高いといえ、食品スーパーマーケットと比べると、10%以上高い経費である。実際、魚力の売場を見ると、対面販売が多く見られ、食品スーパーマーケットと比べ、付加価値の高い商品、原価の低い商品も数多く見られるが、人も多いといえ、経費をかけて、付加価値の高い商品を販売している結果の数字といえよう。
結果、差し引き、営業利益は3.26%(昨年3.20%)と0.6ポイント改善しており、まさに、仕入れ力によって、経費の上昇、さらには、売上げダウンを相殺した形であり、魚力の強みがいかんなく発揮された決算結果であるといえよう。気になるのは、売上高の減少、経費の上昇傾向であり、今後、いかに、これらを改善できるかが課題といえよう。
では、鮮魚専門店がどのような財務構造にあるのかを見てみたい。まず、自己資本比率であるが、78.9%(昨年83.7%)と、昨年と比べ約5ポイント下がっているところは気になるが、約80%と極限に近い数字であり、極めて健全な財務状況にあるといえよう。もちろん、有利子負債は0であり、最大の負債は14.82億円(総資産の9.37%)の支払手形及び買掛金である。一方、資産の方であるが、最大の資産が58.00億円(総資産の36.70%)の投資有価証券であり、ついで、25.39億円(総資産の16.03%)の有形固定資産である。食品スーパーマーケットと比べ、テナント出店が多いせいか、出店関連の資産が少なく、投資有価証券が多いのが特徴といえよう。それにしても、鮮魚専門店がこれだけの投資有価証券をもっているとはびっくりである。
このように、魚力の最新の売上動向、そして、最新の決算結果を見てみたが、ここへ来て、売上げが厳しい局面に入りつつあり、経費も上昇気味となり、これを仕入れ力でカバーし、利益を出している状況といえる。また、期待のアメリカの売上げは順調に拡大しつつあるが、まだ、全体へ貢献するほどの規模ではなく、じっくり取り組む必要がありそうである。ただ、財務は極めて健全であり、有利子負債は0であることから、構造改革への投資は十分に可能であるといえ、魚力には、是非、次世代の鮮魚専門店の構築を目指し、次世代へ向けての投資をして欲しいところである。
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