食品スーパーマーケット出店12%増、出店余力は?
日経MJ、4/2の記事で、食品スーパーマーケットの今期出店動向が掲載された。見出しは、「食品スーパー出店12%増、今年度、大都市圏で地盤固め、主要20社」であり、その20社の2009年度と今期2010年度の出店結果と出店計画の一覧表が掲載されている。20社合計では2009年度が103店舗(平均約5店舗)であり、2010年度が116店舗(平均6店舗強であるので、112.6%増である。店舗数自体は、各社1店舗増となる計画である。ただ、個々の状況を見ると、主要20社の内、増加9社、横ばい4社、減少7社であり、明確な出店増の食品スーパーマーケットは約半分であり、好調な食品スーパーマーケットが全体を牽引するという状況といえよう。
特に、積極的な出店を計画しているのは、バロー12店舗(今期18店舗、150%)、エコス2店舗(7店舗、350%)、オークワ4店舗(10店舗、250%)、東急ストア3店舗(5店舗166%)であり、この4社で19店舗増であり、先の数字、116店舗-103店舗=13店舗を超えてしまう。それだけ、この4社が全体を牽引しているといえる。一方、減少7社の内、特に、出店を控えるのは、タイヨー4店舗(1店舗、25%)、マルナカ10店舗(6店舗60%)、いなげや5店舗(2店舗40%)、ピーコックストア2店舗(1店舗、50%)であり、合計11店舗の減少となる。まさに、明暗、対照的な出店戦略といえよう。
一般に食品スーパーマーケットが出店をしてゆくには、財務状況が課題となる。食品スーパーマーケットの出店にかかわる資産には、様々なものがあるが、最も大きいのが土地、建物、そして、敷金・保証金である。この3つで総資産の約60%を占めることになる。この3つの内訳であるが、25%、25%、10%ぐらいとなる。ちなみに、この出店にかかわる資産を1店舗当たりに換算すると、約5億円となる。これがごく平均的な食品スーパーマーケットの出店構造であり、出店には1店舗当たり約5億円がかかるので、その資金調達が可能な財務余力がない限り、出店は不可能である。
通常、食品スーパーマーケットはこの約5億円を自己資金で賄うか、負債に依存するかになるが、当然、優良食品スーパーマーケットは負債0で出店をしてゆくことなる。本ブログでは、この関係を出店余力として、食品スーパーマーケットの財務状況を見ているが、この出店余力とは、出店にかかわる資産を自己資本(純資産)でどこまで賄えているかどうか、すなわち、余裕のある出店をしているのかどうかを見る指標のひとつである。当然、出店余力が高ければ高いほど、自己資本のみで出店をしていることになり、低ければ低いほど、負債に依存した出店をしていることになる。
まだ、最新の決算が公表されていないので、2009年度の決算結果で、先の今期積極的な出店を計画している食品スーパーマーケットを見てみると、バロー(-32.7%)、エコス(-44.6%)、オークワ(-14.9%)、東急ストア(非上場で不明)という状況であり、いずれも、負債に依存する出店構造であり、まさに、積極的な出店計画であるといえよう。一方、出店を控える食品スーパーマーケットであるが、タイヨー(-17.2%)、マルナカ(非上場で不明)、いなげや(6.8%)、ピーコックストア(非上場で不明)という状況である。いなげやはプラスであるが、出店を控える計画である。
もちろん、出店は財務状況だけでなく、キャッシュフローも大きく、特に、投資キャッシュフローにどれだけキャッシュを配分できるか、そのためは、営業キャッシュフローを増やし、財務キャッシュフローで、特に有利子負債の返済を少なくできるかが課題となる。仮に、出店余力が大きくマイナスでも、営業が好調で、キャッシュフローに余裕があれば、出店は可能である。以前、大手GMSは回転差資金、すなわち、入金と支払いとの差をずらし、その浮いたキャッシュで新規出店を続けたことがあったが、要は約5億円のキャッシュがあれば、食品スーパーマーケットは1店舗出店できるので、出店余力と新規出店は必ずしも連動しないが、中長期的には、収束するといえ、将来の成長戦略を考える上では、出店余力はプラス、ないしは、プラスに近付けておきたいところだ。
2009年度決算公開企業約50社で出店余力がプラスになった食品スーパーマーケットはヨークベニマル29.4%、オオゼキ28.7%、マックスバリュ東海16.6%、東武ストア11.2%、大黒天物産9.8%、サンエー7.9%、アオキスーパー7.8%、いなげや6.8%、九九プラス5.4%であり、さらに、営業キャッシュフローが売上高の3.0%以上の食品スーパーマーケットはサンエー9.4%、オオゼキ5.9%、大黒天物産5.6%、マックスバリュ東海4.9%、東武ストア4.0%、アオキスーパー3.3%、ヨークベニマル(非上場で不明)である。この6社が食品スーパーマーケット業界では財務的な余裕に加え、キャッシュを稼ぎ出す力が強く、積極的な出店が可能であるといえよう。
このように、日経MJでは全体の数字を見ると、食品スーパーマーケットが積極的に出店をはじめるような印象を受けるが、掲載20社を見ると、両極端な戦略が混在しているといえ、全体的な動向ではないといえよう。そろそろ、2010年度の決算が公表されるが、2009年度を見る限りでは、まだまだ、出店余力が高く、キャッシュを稼ぐ力のある食品スーパーマーケットは少ないといえ、今期、特にデフレが継続する中、2極化が一層拡大するのではないかといえよう。
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