マルヤ2010年2月期、赤字決算、厳しい経営!
マルヤが4/6、2010年2月期の決算を公表した。営業収益275.70億円(-9.7%)、営業利益-7.74億円、経常利益-7.35億円、当期純利益-9.17億円と、いずれの段階でも利益がマイナスとなり、厳しい決算となった。マルヤ自身も、「既存店ベースでの来店客数は、対前年比約3%増となりましたが、消費者の節約志向及び低価格志向への高まりから来店客単価は下落傾向にあり(対前年比約5%減)収益を押し上げるまでには至りませんでした。・・」とコメントしているように、客単価の下落が厳しかったようである。
客数については、「「驚きの低価格・信頼の高品質」商品をコンセプトとして、毎日消費する商品を中心とした新規商品群「マルヤ・ベストチョイス」の販売を10月より開始、・・」とのことで、これらが寄与し、客数を押し上げたといえよう。ただ、それを上回る客単価の落ち込みがあり、既存店がダウン、さらに、不採算店舗2店舗を閉鎖し、全体では52店舗となり、営業収益が-9.7%と、大きく下がる結果となった。
一方、営業利益の方であるが、赤字となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、79.24%(昨年78.84%)となり、0.40ポイント上昇しており、価格競争の激化が原価を押し上げたといえよう。結果、売上総利益は20.76%(昨年21.16%)と、粗利が下がった。これに対し、経費の方であるが、29.27%(昨年30.66%)となり、1.39ポイントと大きく削減したが、経費比率が約30%と依然として、極めて高い水準にあり、収益を圧迫している状況である。したがって、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は、-8.51%(昨年-9.50%)と、昨年よりは、改善されているが、マイナス幅は大きく、厳しい状況である。
昨年の決算公開企業約50社の中でも、経費比率が30%を超えたのはイオン九州33.8%、平和堂33.1%、Olympic32.6%、相鉄ローゼン32.3%、イズミヤ31.2%、マルヤ30.7%の6社であるが、マルヤ、相鉄ローゼンを除けば、いずれも、GMS主体の食品スーパーマーケットであるといえ、食品スーパーマーケットで約30%の経費比率は極めて高い数字といえよう。
そして、このマーチャンダイジング力に、不動産収入、運送雑収等の5.55%(昨年5.07%)と、昨年を上回り、結果、営業利益は-2.96%(昨年-4.43%)となった。営業利益率は昨年より大きく改善しているが、依然として、マイナスであり、厳しい決算結果であった。今後、マルヤが営業利益を黒字にしてゆくには、あと約3%の改善が必要である。原価、経費をさらに下げ、マルヤにとっては利益貢献度の高い不動産収入等の改善、この3つをどうバランスをとるかであるが、最大の課題は約30%の経費比率であろう。
では、財務の方ではどのような状況であるかを見てみたい。まずは、キャッシュフローであるが、営業キャッシュフローは5.95億円(昨年-8.67億円)と、プラスに転じた。これは、当期純利益は赤字であったが、金融機関の休日と重なり、仕入れ債務が大きく増加したためである。したがって、一時的な増加といえ、実質、昨年同様の厳しい営業キャッシュフローといえよう。そして、投資キャッシュフローであるが、1.30億円(昨年-1.41億円)とプラスになった。これは、有価証券の売却、建設協力金の回収等があったためである。新店関連では、有形固定資産の取得による支出が-2.05億円(昨年-5.04億円)と、ほぼ1店舗分の投資であるが、実施している。結果、フリーキャッシュフローは7.25億円(昨年-10.08億円)と、プラスにはなったが、仕入れ債務等考慮すると、依然として厳しい状況といえよう。
これに財務キャッシュフロー-3.90億円(昨年4.72)が加わるが、今期は有利子負債を-3.90億円(4.72億円)と返済しており、厳しいキャッシュフローの中、財務の改善を図っており、トータルキャッシュフローは3.34億円(昨年-5.36億円)とキャッシュは増加した。ただ、すぐに、仕入れ債務の返済がまっており、キャッシュフローは厳しい状況にあるといえよう。
一方、自己資本比率であるが、53.7%(昨年57.3%)と、50%を超えているが、繰越利益剰余金の比率が-13.50%あり、気になるところである。負債の中の主要項目、有利子負債は34.15億円(昨年38.06億円)と減少している。総資産157.76億円に占める割合は21.64%であり、昨年度の決算公開企業約50社の平均27.7%を下回っており、大きな負担とはなっていないといえるが、やや多めである。また、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計は113.52億円であり、総資産の71.95%(1店舗当たり2.18億円)である。したがって、自己資本比率から差し引いた出店余力は-18.25%となり、ほぼ、有利子負債でカバーしている財務構造であり、今後、安定した持続的な出店をしてゆくには、もう一層の財務改善が必要といえよう。
このように、マルヤの2010年2月期の決算は、昨年よりは赤字幅が縮まったが、依然として赤字の厳しい決算である。特に、原価が上昇し、高い経費比率が重くのしかかっている営業構造であり、キャッシュの獲得が厳しい状況にある。財務面では自己資本比率は安定しているが、出店関連の資産が重く、有利子負債で補わざるをえない状況にあり、今後、出店をしてゆくには、もう一段の財務の改善も必要といえよう。ただ、まずは、キャッシュの獲得が最優先課題といえ、特に経費比率を引き下げ、マーチャンダイジング力をどこまで改善できるかが当面の最重要な経営課題といえよう。
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