カスミ、2010年2月期決算、増収増益!
カスミが4/12、2010年2月期の決算を公表した。結果は営業収益2,169.02億円(4.1%)、営業利益55.53億円(20.1%)、経常利益60.95億円(16.7%)、当期純利益27.60億円(62.4%)となり、増収増益の好決算となった。ただ、昨年が増収減益であったことから、一昨年の数字を見ると、営業利益61.31億円、経常利益67.32億円、当期純利益24.87億円であるので、当期純利益は増益であるが、営業、経常利益に関しては、一昨年の数字を下回っており、もう一段、増益を確保したかったところであろう。
今期、カスミは、「経営体質のローコスト化によるロープライス営業の体制づくりを推進、・・」とのことで、価格にこだわった営業戦略を強く打ち出したという。新規出店に関しても、フードスクエアクロスガーデン前橋店(群馬県前橋市)、フードスクエア我孫子寿店(千葉県我孫子市)、FOOD OFF ストッカー牛久ししこ店(茨城県つくば市)、フードスクエア宮代店(埼玉県南埼玉郡宮代町)、FOOD OFF ストッカー茂原東部台店(千葉県茂原市)の5店舗を新規出店している。この内、2店舗はディスカウント業態、FOOD OFF ストッカーであり、ディスカウント路線を強化しているといえよう。
そこで、今期の原価、経費がどのような状況であったかを見てみたい。まず、原価であるが、73.76%(昨年72.41%)と、1.35ポイント上昇している。カスミ自身は、「厳しい消費環境の中でお客様と1円の大切さを共感し、1円でもお安く商品を提供したいとの思いから「1円共感宣言」を3月より開始し、食料品を中心にお客様の購入頻度の高い主要品目の値下げを行いました。・・」とのことで、価格訴求が原価に影響を与えたものといえよう。結果、売上総利益は26.24%(昨年27.59%)と、下がっており、粗利はやや厳しい数字であったといえよう。
これに対して、経費であるが、26.96%(昨年28.67%)と、1.71ポイント下がっており、経費の削減が進んだといえる。カスミの今期の既存店は101.1%と昨年を上回っており、これが経費面を底上げしているともいえよう。ただ、客数が105.4%、客単価が95.8%であるので、恐らく、原価にも影響を与えた平均単価のダウンが大きかったものと思われ、客数は伸びたが、気になるところである。
結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-0.72%(昨年-1.08%)と、昨年よりは経費削減が進んだ分、改善してはいるが、依然としてマイナスであり、もう一段、経費比率を引き下げたいところであろう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.38%(昨年3.37%)のり、結果、営業利益は、2.66%(昨年2.29%)と、増益となった。こう見ると、原価の上昇を経費の削減でカバーしたが、マーチャンダイジング力はマイナスが続いており、その他営業収入の利益貢献度が依然として高く、今後、マーチャンダイジング力、特に、経費比率の改善が課題といえよう。
これを受けて、カスミのキャッシュフローの動向であるが、営業キャッシュフローは95.18億円(昨年74.93億円)と大幅に増加しており、約100億円弱となった。当期純利益が48.33億円(昨年25.84億円)と増加したことが大きいといえよう。そして、投資キャッシュフローであるが、-48.26億円(-60.69億円)と、昨年よりは減少している。これは、有形固定資産の取得が-44.31億円(昨年-54.98億円)と、約10億円下がったためである。 ちなみに、カスミの有形固定資産は358.37億円であり、店舗数が現在138店舗であるので、1店舗当たり2.59億円であるので、-44.31億円は17.1店舗分の有形固定資産となる。したがって、金額は下がっているが、今後とも積極的な出店を行ってゆくものといえよう。
結果、フリーキャッシュフローは46.92億円(昨年14.24億円)と、昨年と比べ、潤沢なフリーキャッシュフローとなり、財務改善への原資が増加した。そこで、財務キャッシュフローを見てみると、-29.17億円(昨年)(-22.95億円)であり、その中身は、有利子負債への返済に-17.26億円(昨年-13.75億円)を当てており、負債の削減を推し進めたといえよう。結果、カスミの有利子負債は88.06億円(昨年96.61億円)と、減少しており、総資産814.29億円に占める割合は10.81%と、財務への影響が減少している。ただ、今期は未払い法人税が約20億円増加しているため、負債全体は若干増加しており、自己資本比率は47.9%(昨年47.3%)となり、財務の改善にまでは踏みこめなかったといえよう。
ちなみに、カスミの出店関連の資産、土地、建物、敷金及び保証金等の合計は434.53億円であり、1店舗当たり3.14億円、総資産に占める割合は53.36%である。したがって、自己資本比率から差し引いた出店余力は-5.46億円であり、ほぼ自己資本の範囲内で出店が可能な財務状況であるといえる。この数字を見る限り、もう少し、高めたいところであるが、バランスは取れているといえ、今後とも大きく負債に頼ることなく、新規出店が可能な財務状況といえよう。
このように、カスミの2010年2月期の決算は増収増益とはなったが、まだ、一昨年の数字を超えてはおらず、もう一層の増益が欲しかったところであろう。経費削減は進んでいるが、原価の上昇が見られ、マーチャンダイジング力は依然として、マイナスであり、一層の経費削減が今後とも課題といえよう。一方、財務の方は、有利子負債の削減は進んでいるが、自己資本比率は、ほぼ昨年同様の結果となり、今後、もう一歩、財務の改善を進めたいところであろう。これを受けて、カスミが、今後どのような経営戦略を打ち出すか、注目である。
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