東武ストア、2010年2月期決算、減収減益!
東武ストアが4/13、2010年2月期の決算を公表した。結果は、売上高815.24億円(-1.1%)、営業利益13.93億円(-35.6%)、経常利益 16.17億円(-32.3%)、当期純利益 22.85億円(11.9)と、当期純利益は増益となったが、営業、経常段階では減収減益となる厳しい決算となった。ただ、自己資本比率は68.8%(昨年68.2%)と、若干上昇しており、財務基盤は食品スーパーマーケット業界ではトップクラスであり、強化されている。
そこで、東武ストアの出店余力を見てみると、まず、出店にかかわる資産である土地、建物、差入保証金・敷金の合計は176.51億円(昨年175.61億円)と総資産329.96億円(昨年308.06億円)の53.49%(57.00%)である。東武ストアは現在55店舗であるので、1店舗当たり3.20億円と、食品スーパーマーケットとしては比較的小さな出店にかかわる資産である。したがって、自己資本比率から差し引いた出店余力は15.31%(11.2%)とプラスであり、負債に頼らない出店が可能な財務構造であるといえ、まさに、出店に余裕があるといえよう。これは、昨年の決算公開企業約50社に照らし合わせるとベスト3に入る数字であり、極めて高い出店余力である。ただ、気になる点もあり、現金及び預金が17.39億円と総資産の5.27%であり、同様に昨年度の決算公開企業約50社で見ると40番目前後であり、もう一段と手持ちキャッシュを確保したいところであろう。
この高い出店余力を受けて、ちょうど、4/28の日経新聞に東武ストアの出店戦略が掲載された。見出しは、「東武ストア、出店8割増、3年で改装含め117億円投資」という記事である。内容は2011年度から東武ストアが新規出店で積極姿勢に転じるというものであり、12年度までの3ケ年で14店舗の新規出店を計画とのことである。新規出店投資に73億円、既存店の改装約40店舗に残りの44億円とのことであるので、新店は1店舗当たり5.21億円、既存店の改装は1.1億円の投資となる。したがって、全55店舗の平均の出店にかかわる資産が3.20億円であるので、比較的大型店舗の出店であるといえよう。
また、その資金であるが、「手元のキャッシュが潤沢なため約10億円の新規借入でまかなえる」と見ているとのことである。ただ、先程見たように、自己資本比率は68.8%と極めて高い数字であるが、現金は17.39億円であるので、それほど潤沢とはいえない。
そこで、キャッシュフローを見てみると、今期の営業キャッシュフローは28.95億円(昨年32.98億円)である。したがって、これを全額新規出店に当てると、28.95億円÷5.21億円=5.55店舗であり、年間5店舗は出店できる営業キャッシュフローといえよう。計画は、2010年度に4店舗、2011年度から2012年度は5店舗であるので、ほぼ、営業キャッシュフローの範囲内といえ、今期の財務キャッシュフローが-11.26億円(昨年-14.51億円)であるので、約10億円の財務キャッシュフロー分を借入で補えれば財務的には十分に可能であるといえよう。また、現在、東武ストアの有利子負債は16.79億円であり、総資産の5.08%であり、負担は小さいため、借入れを増やしても大きな財務負担とはならいといえる。
さて、では、そのキャッシュを生み出すマーチャンダイジング力について見てみたい。まずは、東武ストアの今期の原価、経費の状況であるが、原価は73.63%(昨年73.69%)と、0.06ポイント減少しており、原価の改善が若干であるが進んだ。結果、売上総利益は26.37%(昨年26.31%)となった。一方、経費の方であるが、24.65%(昨年23.68%)と、0.97ポイント上昇している。東武ストアは、「電気使用量の徹底した削減による光熱水道費の削減及び経営コンサルタント指導のもとに、器具備品や設備投資等に係る経費削減に努めました。・・」と、コメントしており、確かに、水道光熱費が13.91億円から 12.00億円と1.91億円下がっているが、給料及び手当が約3億円弱増加しており、全体としては経費の上昇が見られる。
結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は1.72%(昨年2.63%)と、減益となった。これに通常では不動産収入、物流収入等のその他営業収入が加わり、営業利益となるが、東武ストアの場合は、これらのその他営業収入が0であるので、マーチャンダイジング力=営業利益となる。したがって、営業利益が大きく減益となった。東武ストア自身も、「小売業界におきましても、雇用・所得環境の悪化に伴う個人消費の低迷、節約志向の高まり等によりデフレ傾向が一層強まる中、低価格での販売競争の激化等により、過去数十年例を見ない極めて厳しい状況で推移いたしました。・・」とコメントしているように、デフレの影響が大きく響いたとの認識である。
このように、2010年2月期の東武ストアの決算は営業段階では、減収減益の厳しい決算となり、特に、経費の増加が大きく、マーチャンダイジング力を大きく下げたといえる。ただ、財務は自己資本比率が68.8%と超健全な財務であり、出店余力は食品スーパーマーケット業界では、トップクラスである。これを受けて、ここで、敢えて、この強い財務基盤をもとに来期からは積極的な新規出店、及び、既存店の改装に踏み込むという。いわば、逆張りの経営戦略ともいえるが、今後、この積極的な経営戦略がどのように東武ストアのマーチャンダイジング力の改善につながってゆくか、気になるところである。
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