大黒天物産、2010年5月期、第3四半期、増収増益!
大黒天物産が4/6、2010年5月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高587.92億円(9.6%)、営業利益34.19億円(27.2%)、経常利益34.15億円(28.7%)、当期純利益18.15億円(29.1%)と、増収大幅増益となる好決算となった。食品スーパーマーケット各社の2010年度決算が厳しい中、大黒天物産の好調ぶりが、際だっている。
今期、大黒天物産自身は、「販売戦略としましては、一昨年より実施しております購買頻度の高い商品約100品目以上を2割から5割値下げした「生活応援宣言セール」、さらに景気低迷の中「お客様の生活を豊かにしていきたい」というこの強い想いから、「総額2億円利益還元セール」を実施いたしました。・・」と、これまでにない強力な価格訴求をかけており、これが好業績につながった要因のひとつともいえよう。
そこで、営業利益が27.2%と大きく伸びた要因を見てみると、原価は77.14%(昨年76.88%)と、原価が0.26ポイント上昇している。先に見たように、今期、大黒天物産は強力な価格訴求の販促をかけており、平均単価が昨年よりも下がり、その分、原価を圧迫したのではないかと思われる。結果、売上総利益は22.86%(昨年23.12%)となった。
一方、経費の方であるが、17.03%(昨年18.10%)と、何と、1.07ポイントと、大幅に減少している。それにしても、1ポイント以上経費を落とすのは通常では考えられない削減率であり、びっくりである。大黒天物産は「管理面におきましては、管理コストの一層の見直しと作業効率の改善による経費の圧縮、「ウィークリーマネジメント」により数値管理の徹底を図ってまいりました。・・」とコメントしており、作業効率の改善が大きかったとのことである。
結果、差し引き、大黒天物産の場合は、不動産収入等のその他営業収入がないので、マーチャンダイジング力=営業利益は5.83%(昨年5.02%)となり、大幅な増益となった。こう見ると、大黒天物産の利益が大きく改善した要因は徹底した経費の削減にあったといえる。原価は厳しい消費環境の中、上昇を余儀なくされたが、それを大きく上回る経費の削減をはかれたことが高収益の要因といえよう。ちなみに、経費比率17%台は、昨年の決算公開企業約50社の中ではオーケー14.9%、トライアルカンパニー16.3%、アオキスーパー16.8%に迫る低さであるが、今期、2010年度のアオキスーパーの決算結果は17.20%(昨年16.8%)であるので、おそらく、ベスト3に入ったものと思われ、食品スーパーマーケットとしては、限界に近い経費比率といえよう。
これに対して、財務面であるが、自己資本比率が56.6%(昨年49.7%)と大きく改善している。総資産220.75億円(昨年218.79億円)、純資産125.02億円(昨年108.78億円)と純資産が大きく増加し、財務の健全化が進んでいることがわかる。純資産が増加した要因は、利益剰余金95.45億円(昨年79.26億円)と、16.19億円増加したことが大きい。また、負債面では、有利子負債は20.00億円(昨年26.00億円)と、6.00億円減少しており、総資産に占める割合は9.06%(昨年11.88%)と減少した。
一方、大黒天物産の資産を見てみたい。特に出店関連の資産、土地、建物、建設協力金、差入れ保証金の合計は96.60億円(昨年99.32億円)であり、今期の店舗数が54店舗であるので、1店舗当たり1.78億円である。これは、食品スーパーマーケット業界でも極めて低い数字であり、ベスト3に入る。それだけ、出店コストが低く、これが経費比率の低さにもつながっているといえよう。そして、総資産に占める割合は、43.75%(昨年45.39%)である。したがって、自己資本比率との関係、すなわち、出店余力、自己資本比率-出店関連の資産の比率=12.85%(昨年4.31%)と、大きく上昇しており、出店余力がさらに高まっているといえよう。
大黒天物産がこれだけ、低い、出店関連の資産となる要因は土地をほとんど所有しないという出店戦略を採用している点にある。通常の食品スーパーマーケットは土地に対し建物は1:1ぐらいであるが、大黒天物産の場合は約1:3であり、極端に土地の資産が低いのが特徴である。また、もう一点、現金及び預金が69.25億円(昨年69.96億円)と、総資産の31.37%(昨年31.97%)と極めて高い。これも、食品スーパーマーケット業界ではベスト3に入る高さである。したがって、現金を豊富に持ち、土地をほとんど持たない出店での商売をしているといえ、これが、大黒天物産のディスカウント戦略を支えている要因の一端を示しているといえよう。
このように、2010年5月期の大黒天物産の第3四半期決算は増収増益の好決算となったが、さすがに、原価は価格競争の激しさが影響し、下がっているが、それを大きく上回る経費の削減を行い、営業利益を大幅に改善した。デフレの時は、経費をいかに削減できるかが利益に直結することを示しているといえよう。また、この高収益が財務改善にも結びついており、純資産を押し上げ、有利子負債を削減し、自己資本比率を上昇させている。結果、出店余力も大幅に上昇しており、今後、さらに、新規出店が可能となろう。それにしても、各食品スーパーマーケットが特に、利益の確保が厳しい中、大黒天物産は利益を大きく伸ばしており、改めて、ディスカウント戦略のデフレにおける強さがクローズアップされた決算結果であるといえよう。
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