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April 25, 2010

小売業の経営効率(ROIC)、日経で特集!

   4/24の日経新聞で、小売業の経営効率についての特集記事が掲載された。見出しは、「小売業の経営効率悪化、投資に見合う利益を生まず」というもので、小見出しでは、「透過資本利益率8年ぶり低水準、前期8%、百貨店2.8%、10年で最低、投資選別がより重要に」、さらに、「専門店・コンビニは好調、ポイント首位、PB展開力がカギ」というものである。記事には約20社の投下資本利益率のランキング表も掲げられており、興味深い内容である。

   食品スーパーマーケット最新情報のブログでは、食品スーパーマーケットの決算解説をここ最近ではメインで取り上げているが、その主要分析指標はP/Lからマーチャンダイジング力、B/Sから出店余力、そして、CFを参考に、マーチャンダイジング力、出店余力との連環を図っているが、今回の日経新聞が取り上げた投下資本利益率、いわゆる、ROIC(Return On Invested Capital)のようなP/LとB/Sをダイレクトに結びつける分析指標は加えていない。今後、小売業、特に、食品スーパーマーケットにとっての投下資本利益率のような、P/L、B/Sを融合する指標を工夫してみたいと思う。

   ROICはもともと、株主が企業を評価する時に良く使われる指標であり、今回の日経新聞にも解説があるように、分子に営業利益、分母に運転資本(売上債権と在庫から仕入れ債務引いた値)を用い算出する指標である。営業利益がP/L、運転資本がB/Sであるので、まさに、P/LとB/Sを融合する指標となる。また、当然であるが、B/Sは貸借対照となり、左右のバランスがとれているので、運転資本は左側、すなわち、資産に近い指標であるので、当然、右側、負債と純資産を用いても分析ができる。したがって、運転資本の原資となる有利子負債と純資産の合計を分母に置いても、ほぼ同値となるので、実際のROICは、こちらを用いて計算する場合が多いという。

   ということは、これは、出店余力に近い概念であり、出店余力が分母に出店にかかわる資産(土地、建物、敷金・保証金等)をおいて、出店戦略をうらなっているのに対し、ROICは営業利益を置いている点の違いともとれる。したがって、ROICは営業利益の効率をうらなっているといえる。とすれば、小売業の本質を考えた場合、営業利益よりも、商売の本質は資金繰りであり、今日の日銭をどう明日の仕入れに活用するかという点であることを考えると、キャッシュフロー、特に、営業キャッシュフローが小売業にはあっているように思える。すなわち、分母を純資産+有利子負債にし、分子を営業キャッシュフローにして、キャッシュ効率を算出するという指標である。

   営業利益はキャッシュをダイレクトに反映しているとはいえず、減価償却費、仕入れ債権、売掛債権、税金等様々なキャッシュの動きがつかみにくいが、営業キャッシュフローはこれらをほぼすべて考慮した上での、小売業が営業活動によって生みだした現金、キャッシュであるので、分子は、この方が投下資本の営業効率を表しているといえよう。しかも、P/L、B/Sの関係にCFが加わることになり、より、財務をトータルに評価することにもなり、まさに、財務連環がイメージしやすいといえよう。試しに、今期の財務3表連環分析では、これの指標を加えて、食品スーパーマーケットの財務分析を試みてみようと思う。

   さて、日経新聞の記事に戻ると、小売業No.1のROICはポイント50.4%(-9.4%)であり、やや昨対が下がったところは気になるが、断トツである。No.2があさひ35.9%(6.1%)であるので、圧倒的な差といえよう。その要因を記事では、「在庫をほとんど持たず、流行や季節に合わせてタイミング良く売れ筋商品を集中的に投入。在庫回転率を高め、少ない運転資本で多くの利益を上げた。」と、解説している。ROICは分母小、分子大が当然高い数字になるので、ポイントは特に分子大が大きく、分母も資産をほとんど持たない、高回転で勝負する衣料品業態をつくり上げたことにあるといえよう。

   ところで、食品スーパーマーケットの状況であるが、ランキングには5社入っている。No.10にマックスバリュ西日本17.5%(-9.3%)、No.12に丸久15.4%(0.4%)、No.13にサンエー14.8%(0.2%)、No.16にカスミ11.9%(2.0%)、そして、No.18にベルク10.8%(0.2%)である。日経新聞の一覧表は70社を分析したというが、ここで表は終わっている。これは、ROICの目安が10%ぐらいといわれているので、ベルクの10.8%までを掲げたものと思われる。逆にいうと、小売業で10%以上のROICは25%(18社/70社)ぐらいともいえ、ROIC10%を超えるのは至難の業であるともいえよう。それだけ、投資に見合うキャッシュを稼ぐのが難しいということであろう。

   このように、日経新聞でROICについて取り上げたが、10%がひとつの目安といえる。日経新聞の結論としては、この数字が今期は悪化しているとのことで、8年ぶりの低水準であるという。食品スーパーマーケット業界としても、今後、デフレによる消費環境が悪化する中、売上げの大きな伸びは当面期待できない状況であり、そのような厳しい経営環境の中で、いかにキャッシュを生み出すかが問われる時代に入ったといえよう。今期、決算発表が終了次第、今回は、このキャッシュ効率も加え、食品スーパーマーケットの経営分析を試みてみたい。

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