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May 04, 2010

イオンリテールの2010年2月期の決算を見る!

   イオンの2010年2月期の決算が4/14に公表されたが、減収とはなったが、昨年の減益から一転、増益となり、堅調な結果となった。営業収益5兆543.94億円(-3.4%)、営業利益1,301.93億円(4.7%)、経常利益1,301.98億円(3.3%)、当期純利益311.23億円(昨年は赤字)という結果である。ただ、営業利益を対営業収益比で見ると、2.57%であり、もう一段、増益を目指したいところであろう。

   この結果を受けて、GMSを統括するイオンの中核企業、イオンリテールの決算結果はどのような状況であったかを見てみたい。まず、営業収益からその他の営業収入を引いた売上高であるが、イオンは4兆5,425.99億円であり、イオンリテールは1兆7,025.72億円であるので、構成比は37.48%であり、約40%弱であり、文字通り、イオングループの中核といえよう。イオンリテールの昨年は6ケ月間の集計であるので、昨対は比較できないので、ここでは、イオン本体との様々な比率を比較してみたい。

   次に、増益となった営業利益であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、イオンは71.96%であり、イオンリテールは73.83%であり、イオン本体の方が若干原価は低いといえる。結果、売上総利益、いわゆる粗利はイオン28.04%(イオンリテール26.17%)となり、粗利面ではイオン本体の方が高めである。これは、イオン本体が原価の低いディベロッパー、金融事業等が加わっているためといえよう。ただ、極端な差があるわけではなく、イオンリテールの数字に良く似た構造であるといえよう。ちなみに、イオンにおけるイオンリテールを含め、他のGMS、食品スーパーマーケット等を含めた総合小売業の営業収益は4兆864.74億円であるので、全体の80.84%であるので、他の業態よりも小売業の数字が強く反映されることでもあり、イオンリテールの数字にイオン本体も近い数字になるものと思われる。

   一方、経費の方であるが、イオン36.43%(イオンリテール33.65%)となる。これは食品スーパーマーケットでは考えられない経費比率であり、いかに、GMS業態が高い経費比率であるかがわかる。特に、どこで差がでるかであるが、イオンリテールの経費項目を見ると、突出したものが2つある。ひとつは人件費関連13.97%であり、もうひとつは設備費であり、13.47%である。この2つの項目で27.44%となり、いかに、GMSは人と巨大な設備投資をかけて小売業を営んでいるかがわかる。

   経費面から見る限り、GMS改革はマーチャンダイジングの問題ではなく、巨大な設備投資をどう回収するかの問題といえ、必然的に不動産収入が前提のビジネスモデルとならざるをえない宿命を負っているといえよう。その意味で、百貨店、SCに近いビジネスモデルであるといえ、マーチャンダイジング主体の食品スーパーマーケット、フランチャイズ主体のコンビニのビジネスモデルとは一線を画す業態であるといえよう。GMSは、小売業というよりも、不動産業に近い業態といえる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力はイオン-8.39%(イオンリテール-7.48%)と大きくマイナスとなる。イオン本体の方がややマイナス幅が大きいが良く似たマーチャンダイジング構造といえよう。これに、GMS特有の不動産収入、物流収入等のその他営業収入がイオン11.26%(イオンリテール8.67%)のるが、これを見る限り、イオン本体の方が大きいが、ディベロッパー事業、金融事業等の貢献が高いためといえよう。イオンリテールとしては、マーチャンダイジング力も、その他営業収入も低く、もう一段数字を引き上げたいところであろう。

   結果、営業利益はイオン2.87%(イオンリテール1.19%)という結果であり、イオン本体に比べ、イオンリテールの方が、営業利益がかなり低く、課題が残ったといえよう。特に、その他営業収入よりも、マーチャンダイジング力の差の方が課題といえ、今後、原価の引き下げが一層課題となろう。ちなみに、昨年の6ケ月間の決算となったイオンリテールの原価を計算すると73.74%であり、今期の73.83%よりも低い。今期はトップバリュが昨年の10.8%から13.3%へとイオンリテール内での構成比が上がっているにも関わらず、原価が下がっておらず、それだけ、残り生鮮食品を含む85%以上のNBの原価の下落が大きかったものといえよう。


   ちなみに、純資産比率であるが、イオン30.23%(イオンリテール24.73%)であり、財務面でもイオン本体の方が健全であり、イオンリテールは負債に約75%負う財務構造であるといえ、出店戦略も負債に依存する構造となっており、今後、安定成長をはかる上でも一層の財務改善も課題といえよう。

   このように、GMSを含む総合小売業はイオン本体の80.84%を占める中核事業であり、その中でもイオンリテールは約50%、全体では約40%を占めるイオンの大黒柱といえる。そのイオンリテールの今期2010年2月期の決算結果を見ると、本体よりも、マーチャンダイジング力、その他営業収入、営業利益いずれも下回っており、課題が残る結果であったといえよう。本来、イオンリテールがイオン全体を売上高、営業利益ともに牽引してゆきたいところであろうが、残念ながら全体に押し上げられている状況といえ、GMS改革はイオンにとって待ったなしの最優先経営課題であることがより鮮明となった決算結果であったといえよう。

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