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May 05, 2010

イズミ、2010年2月期決算を見る!

   イズミが4/9、2010年2月期の決算を公表した。結果は営業収益4,921.40億円(-1.6%)、営業利益204.10億円(-0.0%)、経常利益197.30億円(0.5%)、当期純利益87.52億円(-31.3%)と、わずかに減収、営業段階は微妙な減益となる決算となった。ただ、その幅はわずかであり、ほぼ昨年同様の結果といえる。イズミ自身も、「特に、単価と数量がともに下落を続けるデフレ状況の下で販売低迷が長期化する中、生産性の改善やコスト削減を推し進め収益の下支えを図りました。・・」と、コメントしており、デフレの影響を強く受けた決算結果となったといえよう。

   そこで、まず、営業利益が-0.0%と微妙な結果となった要因を原価、経費面から見てみたい。今期のイズミの原価は78.47%(昨年78.01%)と0.46ポイント上昇している。コメントにもあったように、デフレによる単価の下落が大きかったといえよう。結果、売上総利益は21.53%(昨年21.99%)と減少した。一方、経費の方であるが、22.15%(昨年22.55%)と0.40ポイント減少しており、経費の削減が進んだ。これもコメントにあったように、生産性の改善やコスト削減を推し進めた結果であるといえよう。

   ところで、イズミは衣料品、住関連品等も幅広く扱うGMS、SC業態が主力であるので、売上総利益、いわゆる粗利率が低いように思うが、イズミ本体の決算結果を見ると、その理由がわかる。売上構成比は衣食住合計で57%であり、残りの大部分の35.6%がテナントである。その売上構成比と粗利率を見ると、衣料品15.7%(粗利率36.7%)、食料品32.4%(粗利率25.6%)、住居関連品9.0%(粗利率31.2%)となり、衣食住合計で57.0%(粗利率29.5%)となる。したがって、この段階では粗利率は30%弱と極めて高い数字である。

   そして、これにテナント35.6%(粗利率8.2%)が加わり、この時点で売上構成比は92.6%となるが、相乗積をとると、57.0%×29.5%+35%×8.2%=16.81%+2.87%=19.68%となる。相乗積は粗利構成比であるので、衣食住のみでは16.81%分しか粗利貢献度がなく、テナントの粗利率が8.2%と低いために、粗利貢献度はわずか2.87%となり、結果、この時点で19.68%という粗利になる。これにその他が加わり、最終的には21.53%の粗利率となるが、テナント収入がイズミのビジネスモデルでは極めて必要不可欠な要素となっていることがわかる。

   したがって、このテナント収入も含めた売買差益による利益、マーチャンダイジング力を見ると、-0.62%(昨年-0.56%)と、原価の上昇を経費の削減でカバーできず、マイナス幅をやや広げる厳しい結果となった。それだけ、デフレ圧力が大きかったといえよう。そして、これに、その他営業収入が加わるが、イズミの場合は個別の決算状況を見ると、大きく3つに分かれていることがわかる。不動産賃貸収入(個別売上対比1.4%)、流通センター収入(個別売上対比1.4%)、 店舗賃貸共同管理費収入(個別売上対比1.7%)である。いずれもかなりの数字であり、連結では、合計4.99%(昨年4.84%)となる。GMSの10%前後の数字と比べると、小さいが、食品スーパーマーケットの数字と比べると破格の数字であり、これがイズミの利益の源泉といえよう。

   結果、営業利益は4.37%(昨年4.28%)と増収とはなったが、今期の売上げが-1.76%となったため、金額では204.10億円(昨年204.12億円)とごくわずかな減収、-0.0%という結果となった。こう見ると、今期は、原価の上昇が収益を圧迫したといえ、デフレの影響を強く受けた決算結果となったといえよう。

   そこで、デフレの影響について、さらに、その中身を見てみると、今期は新店が2店舗増加し、昨年の83店舗から85店舗へと店舗数が増加した。ところが、売上高が-1.76%のマイナスとなったが、その要因は既存店が95.3%と厳しい結果となったためである。特に、客数97.4%、客単価97.0%と、双方がダウンしており、客単価に関しては、PI値101.3%、平均単価95.7%と、平均単価のダウンが大きかったといえる。一方、これを商品別にみると、衣料品89.9%、食料品95.7%、住居関連品95.7%、テナント96.9%であり、衣料品の落ち込みが特に大きかったといえる。GMS各社も衣料品の落ち込みが大きい結果が、今期決算では顕著であるが、イズミも同様に衣料品の落ち込みが大きく、まさに、デフレの影響といえよう。

   ただ、このような厳しい決算状況の中で、財務の改善は進んでおり、自己資本比率が30.1%(昨年28.6%)と、30%台となった。昨年の決算公開企業約50社の平均が40.7%であるので、まだまだ改善したいところではあるが、上昇している。その要因は負債の主要項目である有利子負債を65.96億円返済し、1,660.58 億円(総資産対比42.8%)となったことである。今後、さらに、有利子負債の削減は必須といえるが、財務の改善が進んだといえる。

   このように、今期、2010年2月期のイズミの決算はデフレの影響を強く受け、既存店、特に衣料品が厳しい状況であり、原価の上昇が見られるが、経費の方の削減が進み、ほぼ昨年なみの営業利益を確保したといよう。また、この厳しい経営環境の中、有利子負債を削減し、財務改善も図っており、攻めの経営から守りを固める経営の1年であったといえよう。当面、このデフレ環境は続くと予想されるが、次期、2011年度、イズミがどのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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