アークランドサカモト、2010年2月期決算減収増益!
アークランドサカモトが4/2、2010年2月期の決算を公表した。デフレが進行し、消費環境が厳しい中、ホームセンターの動向が注目される中での決算であったが、結果は、売上高873.99億円(-2.6%)、営業利益56.30億円(17.5%)、経常利益60.52億円(25.2%)、当期純利益28.34億円(237.7%)となり、減収とはなったが、大幅な増益となる決算となった。アークランドサカモト自身も、「売上高は消費低迷により小幅減収となりましたが、平成19年年初以降、取り組んでまいりました事業構造改善政策の発現により、増益を達成することができました。・・」と、コメントしており、特に利益改善に力を入れていることがわかる。
そこで、まず、アークランドサカモトの原価、経費の状況を見てみたい。原価は67.40%(昨年68.39%)と、0.99ポイント改善しており、デフレ環境の厳しい消費の中で、原価が改善している。結果、売上総利益は、32.60%(昨年31.61%)と、粗利が上昇した。一方、経費の方であるが、26.14%(昨年26.26%)と、経費も0.12ポイント改善している、したがって、原価、経費双方が改善しており、ダブルで利益を底上げした構図である。アークランドサカモトはその他営業収入が0であるので、差し引き、マーチャンダイジング力=営業利益となり、その結果は、6.46%(昨年5.35%)と、極めて高い数字となった。昨年も5.35%と、食品スーパーマーケット業界の数字と比較すると、トップクラスであり、今期は一段とその数字が上昇しており、コメントの通り、事業構造改善の成果といえよう。
これを受けて、キャッシュフローを見てみると、営業キャッシュフローが95.14億円(昨年44.04億円)と倍増している。その要因であるが、この好調な決算を受けて、当期純利益が51.74億円(昨年19.29億円)と、約30億円増加している。これ以外にも棚卸資産の減少が約15億円、仕入れ債務の増加が昨年と比べ約15億円あり、これらが寄与し、営業キャッシュフローが倍増した。
ついで、投資キャッシュフローであるが、-3.44億円(昨年-52.46億円)と、投資が大きく削減されている。これは、有形固定資産の取得による支出が-10.06億円(昨年-46.77億円)と、新規出店関連への投資を控えたためである。結果、フリーキャッシュフローは91.7億円(昨年-8.42億円)と、昨年のマイナスから一転、プラス、しかも、100億円近いプラスとなった。
そして、このフリーキャッシュフローを財務キャッシュフローに活用することになるが、財務キャッシュフローは-89.97億円(昨年4.42億円)と、何と、フリーキャッシュフローの大半を財務キャッシュフローに充てており、昨年とは対照的なキャッシュの流れとなった。その中身であるが、有利子負債の返済へ-83.82億円と、ほぼ全額を充てている。昨年は6.94億円の有利子負債の増加があったので、財務キャッシュフローも対照的なキャッシュの活用となった。
結果、自己資本比率が53.2%(昨年44.8%)と、大きく上昇し、財務改善が進んだ。総資産が616.71億円(昨年679.47億円)と減少し、純資産が338.53億円(昨年312.89億円)と増加したためであり、ここでもダブルで財務が改善されているのがわかる。実際、負債が278.17億円(昨年366.58億円)と88.41億円と減少しているが、これは、有利子負債が97.66億円(181.49億円)と、ほぼ有利子負債の削減分減少している。また、純資産が増加したのは、増益という好調な決算による利益剰余金の増加に負うところが大きい。
そして、それにともない、資産面では在庫、出店関連資産が減少しており、全体がスリムになり、健康体になったといえる。実際、有利子負債の総資産に占める割合も15.83%(昨年26.71%)であるので、大きく削減されたことがわかる。
結果、トータルのキャッシュフローは1.72億円(昨年-3.99億円)とわずかであるがプラスとなった。ただ、現金自体は増加が見られず、資産の現金及び預金は20.03億円(昨年18.30億円)と微増にとどまった。したがって、このキャッシュフローの一連の流れを見ると、昨年とは一転、投資を大きく控え、増益となった豊富な営業キャッシュフローを、ほぼ全額フリーキャッシュフローとして持ち、その潤沢なフリーキャッシュフローのほぼ全額を有利子負債の返済に充て、財務改善をはかった構図である。実際、負債が削減され、純資産が増加し、資産がスリム化されており、財務体質が大きく改善されたといえよう。
このように、アークランドサカモトは、今期、経営戦略の照準を財務の改善に絞ったといえ、思いきった、大胆なキャッシュフロー戦略を採用したといえよう。ここまでキャッシュフローを財務戦略に当てるのは異例ともいえ、通常であれば、投資へ営業キャッシュフローの1/2以上を充て、成長戦略重視のキャッシュフロー戦略となるところであるが、びっくりである。ただ、結果、自己資本比率が53.2%(昨年44.8%)へと約10%と、大きく改善しており、財務体質が1年でがらっと変わったといえる。ちなみに、2011年2月期の通期決算予想は増収増益であり、次期も潤沢な営業キャッシュフローが見込まれるが、今後、アークランドサカモトがどのような経営戦略を打ち出すか注目である。
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