バロー、2010年3月期決算、増収減益!
バローが5/11、2010年3月期の決算を公表した。結果は営業収益3,449.00億円(2.5%)、営業利益94.52億円(-3.5%)、経常利益99.16億円(-2.6%)、当期純利益39.45億円(16.5%)と、当期純利益は増益となったが、営業、経常段階では増収減益となるやや厳しい決算となった。また、個別についても、営業収益2,277.59 億円(3.0%)、営業利益42.57億円(-19.6%)、経常利益53.05億円(-17.4%)、当期純利益 22.21億円(-11.1%)と増収減益の決算であり、連結同様、厳しい決算となった。
バロー自身も、今期は、「雇用環境は依然として厳しく、個人消費は低価格志向が強まり低調に推移いたしました。・・」との認識のもとで、価格にこだわった政策を強く打ち出している。特に、スーパーマーケット部門では、「圧倒的な低価格を実現する商品企画を「サプライズ50」と銘打ち、98円均一の焼きたてパンや1個18円のコロッケを皮切りに、お値打ちの商品を続々と発売いたしました。・・」とのことで、強力な価格訴求を実施したという。また、PBにも力を入れ、「子会社の(株)Vソリューションを経由したPB商品の卸売りも本格化し、国内企業に加えて韓国・米国の企業にも供給を始めております。・・」とのことで、外販も積極的に行ったという。
そこで、これら価格訴求が減益にどのように影響したかを、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、76.42%(昨年76.22%)と、0.20ポイント上昇しており、PB強化による原価改善が、NBの強力な価格訴求により相殺され、若干原価が上昇したものといえよう。結果、売上総利益は23.58%(昨年23.78%)と下がった。一方、経費の方であるが、こちらも、24.62%(昨年24.60%)と、若干上昇しており、ダブルで、利益を圧迫している。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.04%(昨年-0.82%)と、マイナス幅が拡大した。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.89%(昨年3.85%)のり、営業利益は2.85%(昨年3.02%)となり、減益となった。
今期はこのように原価、経費の上昇が響き、営業利益が減益となったが、今後、バローとしては中長期に達成すべき経営戦略として、大きく4つを掲げている。①営業基盤の強化を図るため、東海3県・北陸3県・静岡県・滋賀県の店舗網を一層拡充し、同地区でのエリアドミナント化を推し進めること。②競争優位性のある商品を提供できるよう、マーチャンダイジング力の強化に注力していくこと。③収益力の向上を図るため、徹底したローコスト経営を追求していくこと。④グループの連携を強め、相乗効果を発揮していくことである。それぞれ、①が売上高、②が原価、③が経費、そして、④が利益に強く関連する項目であるといえ、増収増益を目指すための経営戦略といえよう。
一方、財務面の結果であるが、自己資本比率は32.7%(昨年32.0%)と若干改善されているが、依然として、30%強であり、結果、負債に約70%を依存しており、今後、負債の圧縮が重要な経営課題であるといえよう。その負債の中の主要項目、有利子負債であるが、総資産1,764.40億円(昨年1,703.28億円)の39.17%(40.88%)であり、若干比率では減少しているが、金額では約700億円と、自己資本比率を超え、重くのしかかっているといえよう。
したがって、今後、新規出店を通じて成長してゆくには、負債に大きく依存せざるをえない財務状況にあるといえる。実際、出店関連の資産、土地、建物、差入保証金等の合計は1,119.82億円(昨年1,110.00億円)となり、総資産の63.47%(昨年65.17%)である。結果、自己資本比率から差し引いた出店余力は-30.27%(昨年-32.67%)と、昨年と比べ若干改善しているとはいえ、大きくマイナスであり、負債に大きく依存する出店構造であり、ちょうど、有利子負債で賄っている財務構造といえよう。先に見たように、バローは東海3県・北陸3県・静岡県・滋賀県での店舗網の拡充をはかり、エリアドミナントを推し進めているが、今後、この営業基盤をさらに強化するためにも、出店余力の改善、すなわち、負債の削減は重要な経営改善課題であるといえよう。
ただ、この有利子負債を含め、純資産を合計した投下資本当たりの営業キャッシュフローの割合、すなわち、現金を生み出す力、キャッシュ効率は12.53%(昨年9.13%)と、増加している。これは、営業利益は減益となったが、当期純利益が増益となったため、今期の営業キャッシュフローが160.04億円(昨年114.08億円)と、大きく増加したためである。
このように、2010年3月期のバローの決算は営業段階では増収減益となる厳しい決算となった。特に、原価、経費、双方に上昇がみられ、ダブルで利益を圧迫したことが大きいといえ、それだけ、デフレによる価格競争の厳しさが反映されたものといえよう。また、財務面では依然として、自己資本比率が約30%と厳しい状況にあり、負債、特に有利子負債に負う財務構造となっており、結果、出店が負債に大きく依存する状況であり、今後、安定成長を目指す上にも、財務の改善は最重要な経営課題といえよう。このような今期の決算結果を踏まえ、今後、バローがどのように収益改善に加え、財務の改善策を打ち出すか、その経営戦略に注目である。
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