« ID-POS分析の目的、その帳票と手段とは? | Main | GS1-データバー、新バーコード、食品スーパーマーケットへ »

May 19, 2010

バロー、2010年3月期決算、増収減益!

   バローが5/11、2010年3月期の決算を公表した。結果は営業収益3,449.00億円(2.5%)、営業利益94.52億円(-3.5%)、経常利益99.16億円(-2.6%)、当期純利益39.45億円(16.5%)と、当期純利益は増益となったが、営業、経常段階では増収減益となるやや厳しい決算となった。また、個別についても、営業収益2,277.59 億円(3.0%)、営業利益42.57億円(-19.6%)、経常利益53.05億円(-17.4%)、当期純利益 22.21億円(-11.1%)と増収減益の決算であり、連結同様、厳しい決算となった。

   バロー自身も、今期は、「雇用環境は依然として厳しく、個人消費は低価格志向が強まり低調に推移いたしました。・・」との認識のもとで、価格にこだわった政策を強く打ち出している。特に、スーパーマーケット部門では、「圧倒的な低価格を実現する商品企画を「サプライズ50」と銘打ち、98円均一の焼きたてパンや1個18円のコロッケを皮切りに、お値打ちの商品を続々と発売いたしました。・・」とのことで、強力な価格訴求を実施したという。また、PBにも力を入れ、「子会社の(株)Vソリューションを経由したPB商品の卸売りも本格化し、国内企業に加えて韓国・米国の企業にも供給を始めております。・・」とのことで、外販も積極的に行ったという。

   そこで、これら価格訴求が減益にどのように影響したかを、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、76.42%(昨年76.22%)と、0.20ポイント上昇しており、PB強化による原価改善が、NBの強力な価格訴求により相殺され、若干原価が上昇したものといえよう。結果、売上総利益は23.58%(昨年23.78%)と下がった。一方、経費の方であるが、こちらも、24.62%(昨年24.60%)と、若干上昇しており、ダブルで、利益を圧迫している。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.04%(昨年-0.82%)と、マイナス幅が拡大した。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.89%(昨年3.85%)のり、営業利益は2.85%(昨年3.02%)となり、減益となった。

   今期はこのように原価、経費の上昇が響き、営業利益が減益となったが、今後、バローとしては中長期に達成すべき経営戦略として、大きく4つを掲げている。①営業基盤の強化を図るため、東海3県・北陸3県・静岡県・滋賀県の店舗網を一層拡充し、同地区でのエリアドミナント化を推し進めること。②競争優位性のある商品を提供できるよう、マーチャンダイジング力の強化に注力していくこと。③収益力の向上を図るため、徹底したローコスト経営を追求していくこと。④グループの連携を強め、相乗効果を発揮していくことである。それぞれ、①が売上高、②が原価、③が経費、そして、④が利益に強く関連する項目であるといえ、増収増益を目指すための経営戦略といえよう。

   一方、財務面の結果であるが、自己資本比率は32.7%(昨年32.0%)と若干改善されているが、依然として、30%強であり、結果、負債に約70%を依存しており、今後、負債の圧縮が重要な経営課題であるといえよう。その負債の中の主要項目、有利子負債であるが、総資産1,764.40億円(昨年1,703.28億円)の39.17%(40.88%)であり、若干比率では減少しているが、金額では約700億円と、自己資本比率を超え、重くのしかかっているといえよう。

   したがって、今後、新規出店を通じて成長してゆくには、負債に大きく依存せざるをえない財務状況にあるといえる。実際、出店関連の資産、土地、建物、差入保証金等の合計は1,119.82億円(昨年1,110.00億円)となり、総資産の63.47%(昨年65.17%)である。結果、自己資本比率から差し引いた出店余力は-30.27%(昨年-32.67%)と、昨年と比べ若干改善しているとはいえ、大きくマイナスであり、負債に大きく依存する出店構造であり、ちょうど、有利子負債で賄っている財務構造といえよう。先に見たように、バローは東海3県・北陸3県・静岡県・滋賀県での店舗網の拡充をはかり、エリアドミナントを推し進めているが、今後、この営業基盤をさらに強化するためにも、出店余力の改善、すなわち、負債の削減は重要な経営改善課題であるといえよう。

   ただ、この有利子負債を含め、純資産を合計した投下資本当たりの営業キャッシュフローの割合、すなわち、現金を生み出す力、キャッシュ効率は12.53%(昨年9.13%)と、増加している。これは、営業利益は減益となったが、当期純利益が増益となったため、今期の営業キャッシュフローが160.04億円(昨年114.08億円)と、大きく増加したためである。

   このように、2010年3月期のバローの決算は営業段階では増収減益となる厳しい決算となった。特に、原価、経費、双方に上昇がみられ、ダブルで利益を圧迫したことが大きいといえ、それだけ、デフレによる価格競争の厳しさが反映されたものといえよう。また、財務面では依然として、自己資本比率が約30%と厳しい状況にあり、負債、特に有利子負債に負う財務構造となっており、結果、出店が負債に大きく依存する状況であり、今後、安定成長を目指す上にも、財務の改善は最重要な経営課題といえよう。このような今期の決算結果を踏まえ、今後、バローがどのように収益改善に加え、財務の改善策を打ち出すか、その経営戦略に注目である。

食品スーパーマーケットのための決算分析、財務3表連環法Vol.4、詳細はこちら!
有料版プレミアム、ID-POS分析分析実践シリーズ!今週の内容!  
週間!食品スーパーマーケット最新情報、まぐまぐ 資料集
Mixi(ミクシィ)版にMD力って何?のトピックをつくりました!

« ID-POS分析の目的、その帳票と手段とは? | Main | GS1-データバー、新バーコード、食品スーパーマーケットへ »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference バロー、2010年3月期決算、増収減益!:

« ID-POS分析の目的、その帳票と手段とは? | Main | GS1-データバー、新バーコード、食品スーパーマーケットへ »