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May 14, 2010

いなげや、2010年3月期決算、減収減益!

   いなげやが、5/11、2010年3月期の決算を公表した。結果は、営業収益2,236.62億円(-2.0%)、営業利益34.03億円(-14.1%)、経常利益 36.72億円(-13.0%)、当期純利益13.12億円(-21.9%)と、減収減益の厳しい決算となった。特に、営業収益については、いなげや自身も、「当事業における営業収益は、消費マインドの冷え込みや業種業態を超えた価格競争の激化などから既存店売上高が前期比6.8%減少し、新店による売上増の寄与がありましたが、同3.5%減と大変厳しい結果になりました。」と、コメントしているように、既存店が伸び悩んだことが大きかったといえよう。

   また、営業利益についても、-14.1%と2桁の落ち込みであり、厳しい結果である。そこで、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、72.79%(昨年72.77%)と、ほぼ昨年並みの数字を確保しており、デフレの中、原価は維持できた。結果、売上総利益は27.21%(昨年27.23%)となった。一方、経費の方であるが、29.39%(昨年28.85%)と、0.54ポイント上昇している。原価は抑えることができたが、経費が上昇しており、利益を圧迫したといえよう。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力は-2.18%(-1.62%)とマイナス幅が広がった。

   それにしても、経費比率が29.39%と30%近い数字であり、かなり高いといえる。昨年の決算公開企業約50社の平均が約25%強であるので、いなげやの経費比率はかなり高く、今後、経費比率をいかに下げられるかが課題といえよう。

   一般に、経費比率が高くなる要因は坪効率と密接な関係がある。いなげやの今期の坪効率は1坪当たり、327.69万円であり、都心部の食品スーパーマーケットとしてはかなり低い数字といえよう。したがって、客数の割に店舗面積が大きいといえ、結果、坪当たりにかかる経費、人件費、減価償却費、家賃、水道光熱費等が高くなる。これを相殺するには、都心部では、坪効率500万円は欲しいところであろう。ちなみに、昨年度の経費比率18.2%のオオゼキは坪効率が優に1,000万円を超えており、この坪効率の高さが経費比率を下げる要因となっている。
   
   そして、営業利益であるが、このマーチャンダイジング力に、不動産収入、物流収入等のその他営業収入がのり、1.58%(昨年1.79%)となり、減益となった。こう見ると、今期は原価よりも経費の上昇が大きく、今後、いなげやとしては、いかに経費比率を下げるか、そのためにも、既存店を活性化し、坪効率を引き上げられるかが大きな課題といえよう。
   
   そこで、財務面についても見てみたい。まずは、自己資本比率であるが、57.1%(昨年56.0%)と若干であるが改善している。これは総資産が769.27億円(昨年770.29億円)と減少し、純資産が440.83億円(昨年432.14億円)と増加したことが大きい。純資産が増加したのは、負債の主要項目である有利子負債が72.51億円(昨年74.93億円)と減少したことに加え、買掛金が136.48億円(昨年143.50億円)と減少したことが大きいといえよう。
   
   ただ、気になるのはキャッシュフローである。今期の営業キャッシュフローは減益決算が響き、42.25億円(昨年47.91億円)と減少している。ところが、投資キャッシュフローは-61.55億円(-13.20億円)と大きく増加している。その要因は出店関連の有形固定資産の取得が-41.68億円(昨年-38.06億円)と増加していることに加え、今期は有価証券の取得に-19.89億円(昨年0)を投資したためである。したがって、差し引き、フリーキャッシュフローは-19.3億円(昨年34.71億円)と、昨年の順流から逆流となり、キャッシュ不足となった。したがって、このマイナス分のキャッシュを財務キャッシュフローで補うか、現預金を取り崩すことになる。
   
   そこで、今期の財務キャッシュフローを見ると、-10.46億円(-13.83億円)とマイナスであるので、さらに、マイナス幅が広がり、キャッシュ不足となっている。その要因は有利子負債を-3.43億円返済したことに加え、配当に-6.95億円配分したためである。当然、フリーキャッシュフローはマイナスであるので、現金を取り崩しており、キャッシュフローのトータルは-29.76億円(昨年20.88億円)となり、厳しいキャッシュフローの流れとなった。結果、現金及び現金同等物の期末残高は89.87億円(119.63億円)となった。ちなみに、投下資本(純資産+有利子負債)と営業キャッシュフローとの関係を示すキャッシュ効率であるが、8.14%(昨年9.48%)と減少しており、営業キャッシュフローの減少が影響したといえよう。
   
   このように、いなげやの2010年3月期決算は減収減益の厳しい結果となった。特に、既存店の減少が売上げだけでなく、経費比率の上昇にも影響を与えたといえ、マーチャンダイジング力のマイナス幅がさらに拡大しており、既存店の活性化が急務といえよう。一方、財務面であるが、自己資本比率は若干上昇しているが、キャッシュフローは昨年の順流から逆流となり、フリーキャッシュフローがマイナスとなる状況となった。そして、そのマイナス分を現金を取り崩して補っており、キャッシュ不足といえよう。今後、既存店の活性化に加え、新店開発も強化する必要があるといえ、そのためにも、営業キャッシュフローをいかに増加させるかが 最優先の経営課題といえよう。いなげやが今期の厳しい決算結果を受けて、どのような経営改革を打ち出すか注目である。

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