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May 26, 2010

その2、ウォルマートの2011年度、第1四半期決算!

   前回のブログ、「ウォルマート2011年度、第1四半期決算、増収増益!」に続き、今回もウォルマートの2011年度、第1四半期決算を取り上げて見たい。前回はウォルマートのP/Lについて取り上げたので、今回はCF、キャッシュフローについて取り上げ、必要に応じて、B/Sについても言及したい。前回のブログでも、ウォルマートの決算発表の冒頭が1株当たり利益から入り、日本の決算発表とは違い、資本主義の本場、株主重視を強く感じさせる決算発表であったが、ここで取り上げるCFも日本の企業との違いを特に見てみたい。

   まず、Cash flows from investing activities、営業活動からのキャッシュフローであるが、単位がmillions、100万ドルとなる。結果は973百万ドル(昨年3,571百万ドル)であり、1ドル90円で計算すると、約900億円弱である。気になるのは、昨年と比べ、1/4ぐらいに減少していることである。当期純利益は3,467百万ドル(昨年3,139百万ドル)と増加しており、P/L上の問題ではないといえる。また、Depreciation and amortization 、減価償却費も1,864百万ドル(昨年1,700百万ドル)と、これも増加しており、この問題でもない。ではどこかであるが、昨年との最大の違いは、inventories、すなわち在庫であり、(2,230百万ドル)(昨年153百万ドル)と、在庫が大きく増加している。アメリカの決算では、-という記号はなく、-は( )で表され、在庫は増加がキャッシュのマイナスであり、今期、ウォルマートの在庫は昨年と比べ大きく膨らんでおり、これが営業キャッシュフローを大きく減少させた要因である。

   次に、Cash flows from investing activities、投資活動からのキャッシュフローであるが、(2,236百万ドル) (昨年(2,683百万ドル))であり、やや、投資金額が減少しているが、ほぼ、昨年並みの投資である。そのほとんどは、Payments for property and equipment 、土地、設備投資関連であり、(2,563百万ドル)(昨年(2,607百万ドル)である。今期も、日本円に換算すると約2,300億円の土地、設備投資であり、そのほとんどが新店への投資といえ、すごい金額である。結果、営業活動からのキャッシュフローと投資活動からのキャッシュフローを足したフリーキャッシュフローは、(1,263百万ドル)(昨年888百万ドル)と、一転、今期は昨年のプラスからマイナスへと逆流のフリーキャッシュフローとなった。

   それにしても、在庫の増加が気になるところであり、それが、今期の営業活動からのキャッシュフローを大きく減少させ、結果、フリーキャッシュフローがマイナスに転じているので、経営にも支障をきたしているといえる。次の中間決算でどこまで、在庫調整が進むか注意が必要といえよう。ただ、もしかすると、明らかに異常値であるので、今期特有の何か明確な要因があるかもしれない。

   そして、Cash flows from financing activities、財務活動からのキャッシュフローであるが、1,836 百万ドル(昨年(1,503百万ドル))と、ここでは、大きくプラスに転じた。フリーキャッシュフローがマイナスであり、財務活動からのキャッシュフローが大きくプラスになったということは、当然、何らかのキャッシュの調達をしていることになる。実際、中身を見てみると、short-term borrowings、短期借入金が4,299百万ドル(昨年(266百万ドル))と大きく増加している。さらに、long-term debt 1,971百万ドル(昨年1,453百万ドル)と、長期借入金も昨年以上に増加しており、フリーキャッシュフローのマイナスを長短期借入金で補っている状況である。したがって、B/Sの長短借入金の合計は43,492百万ドル(昨年39,668百万ドル)と増加しており、日本円に換算すると、約4兆円であり、かなり重い負債といえよう。ちなみに、ウォルマートの総資産は100,209百万ドルであるので、有利子負債比率は43.40%とやはり重いといえよう。

   さて、財務活動からのキャッシュフローの中身であるが、Dividends paid、配当に(1,136百万ドル)(昨年 (1,067百万ドル))、Purchase of company stock、自己株式の購入に (2,967百万ドル)(昨年(886百万ドル)と、この2点が大きな中身である。それにしても、自己株式が日本円で2,700億円という巨大な金額であり、それだけ、今期は株式を自らも買い支える必要があったものと思われる。結果、トータルのキャッシュフローは609 百万ドル(昨年(697百万ドル)と、昨年のマイナスからプラスとなった。ただし、これはフリーキャッシュフローのマイナスを借入によって補っており、財務的には昨年より厳しい状況にあるといえよう。その結果、現金は8,516百万ドル(昨年6,578百万ドル)となった。

   このように、ウォルマートの2011年度の財務、特に、今回はキャッシュフローを見てみたが、気になるのはやはり、在庫が急増していることであり、結果、営業活動からのキャッシュフローが大きく減少し、投資活動によるキャッシュフローを賄えず、財務活動からのキャッシュフローで長短借入金を調達し、補わざるをえなかったことである。また、株価も厳しい状況にあったことから、自社株買いを昨年以上に実施せざるをえなくなり、結果、財務キャッシュフローも増加した。ウォルマートにとっては、この第1四半期は厳しいキャッシュフローであったといえ、有利子負債も増加し、財務を圧迫しており、課題が残る決算であったといえよう。次の中間、そして、その後の決算でどこまで財務改善が進むのか、その動向に注目である。

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