原信ナルスH、2010年3月期決算、増収増益!
原信ナルスHが、5/6、2010年3月期の決算を公表した。結果は、売上高1,180.70億円(1.6%)、営業利益32.95億円(2.3%)、経常利益31.66億円(3.7%)、当期純利益14.25億円(33.9%)と、増収増益の堅調な決算となった。原信ナルスH自身も、「お客さまの購買頻度の低下や商品の販売価格の下落といった状況が続いており、事業環境は全く楽観できる状況にありません。・・」と、厳しい経営環境であったとの認識である。また、「消費の急激な冷え込みが懸念されたため、あらゆる経費の見直し、削減、適正利用により、コストコントロールに努めるとともに、営業活動においては、週間単位での粗利益高管理の徹底を図りました。・・」とのことで、利益を重視した経営にあたったとのことである。
実際、今期、原信ナルスHは、攻めの経営よりも、守りをしっかり固める経営を重視したといえる。キャッシュフローの投資を見ると、-13.18億円(昨年-26.10億円)と、控えている。これは、昨年は2ケ所目の上越物流センターへの投資を行い、さらに、新規出店関連への投資も実施したが、今期は、新規出店3店舗への投資が主であり、有形固定資産の取得が昨年の27.98億円から9.65億円へと激減したためである。結果、フリーキャッシュフローが32.80億円(昨年20.53億円)と10億円強余裕ができた。そして、そのフリーキャッシュフローを財務キャッシュフローに全額充て、さらに、現金を取り崩して財務改善をはかり、財務キャッシュフローは-41.97億円(昨年-22.82億円)となった。特に財務キャッシュフローでは、有利子負債を-30.73億円(昨年-10.67億円)返済しており、負債が削減された。結果、自己資本比率も44.7%(昨年41.8%)と改善している。
そこで、営業面はどのような状況であったかを、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、73.24%(昨年72.88%)と0.36ポイント上昇しており、原信ナルスHのコメントにもあったように厳しい経営環境であったことが伺える。特に、平均単価が169.0円(昨年172.1円)と-1.8%となっており、価格競争の影響といえよう。ただ、PI値は1,065%(昨年1,040%)と1.8%上昇しており、掛けた客単価は1,803円(昨年1,799円)と0.2%と、ほぼ昨年と同じ数字となった。平均単価が下がっている分、原価に影響が出ているといえよう。結果、売上総利益は26.76%(昨年27.12%)となった。
一方、経費であるが、23.96%(昨年24.35%)と-0.39ポイント削減しており、冒頭のコメントにもあるように、経費の削減が進んでいる。これは既存店の売上高が-0.8%の微減にとどまったことも経費削減に貢献したといえよう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は2.79%(昨年2.76%)となり、経費削減の効果があり、若干の増益となった。原信ナルスHはその他営業収入が計上されていないので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益が増益となった。原価は若干上昇したが、経費削減で増益を達成した構図であり、財務面も含め、守りの経営が徹底されたといえる。
ちなみに、営業キャッシュフローと投下資本の関係、キャッシュを生み出す力、すなわち、キャッシュ効率であるが12.58%(昨年12.17%)と上昇しており、キャッシュ効率は改善している。ただ、営業キャッシュフローは45.98億円(昨年46.63億円)と若干減少しており、キャッシュ効率が上昇したのは有利子負債の削減効果が大きかったといえる。
では、今期投資を控えた新規出店関連の財務状況であるが、今期の出店関連の資産、土地、建物、敷金及び保証金等の合計は276.34億円(昨年271.51億円)と若干増加しており、総資産511.38億円(昨年520.51億円)に占める割合は54.04%(昨年52.16%)と、1.88ポイント増加している。したがって、純資産比率44.71%(昨年41.77%)から差し引いた出店余力は-9.32%(-10.39%)と、純資産が上昇した分改善しているが、依然として、マイナスであり、約10%弱負債に依存する出店構造であり、今後、もう一段と出店余力を高めたいところであろう。
さて、今期の原信ナルスHの格付けであるが、本決算後の格付投資情報センター(R&I)の4/28時点の評価によれば、BBB+(トリプルBプラス )であり、前回評価のBBBから1ノッチ引き上げされ、格付けが向上した。この格付けは9段階の格付け評価(最上位格AAA~最下位格C)における上位から4番目に当たり、「信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある、・・」という評価ということである。実際、先に見たように、財務は確実に改善されており、結果、格付けが向上したといえよう。
このように、2010年3月期の原信ナルスHの本決算は増収増益の堅調な決算となり、自己資本比率も向上し、財務の改善も進んだ。特に、今期は、昨年の積極的な投資を控え、財務の改善に入る一方、営業面でも、新店よりも既存店の活性化、経費の削減に取り組むなど、攻めから守りの経営を重視したといえよう。ちょうど、今年は、原信ナルスHにとっても今後の10年を見据えた長期経営計画の見直しの時期でもあり、今後、どのような経営戦略を打ち出し、実行に移してゆくか、その動向に注目である。
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