ID-POS分析の目的、その帳票と手段とは?
ここ最近、にわかにID-POS分析の依頼が増えつつある。食品スーパーマーケットでもID-POS分析に取り組み始めたことに加え、メーカーでもID-POS分析による結果を営業活動に活かしはじめたことが、その背景にあると思われる。そこで、ここでは、ID-POS分析、特に、PI値を活用したID-POS分析について、その目的と手段について解説してみたい。
まずID-POS分析の目的であるが、従来のPOS分析が金額PI値(客単価)アップであったことに対し、ID-POS分析はID金額PI値(ID単価)を引き上げることである。その手段は無限にあるといえ、どのような手段を使おうが、結果として、ID金額PI値が上がれば成功であり、下がれば失敗である。
では、ID金額PI値とは何かであるが、ID金額PI値とは、ID当たりの売上金額のことであり、売上金額をIDで割って算出される指標のことである。さらに、この指標は単なる指標に留まらず、必ず、ID明細が同時に付随することになる。したがって、分析帳票としては、単純な2次元分析、縦と横の数表ではなく、奥行きが入り、3次元の立方体となる。本来、このように3次元分析となるが、実際のID-POS分析に当たっては、3次元で表せるソフトの活用が難しく、excelを使わざるをえないので、3次元を2次元の帳票に2つに分けて、分析するのが通常である。
簡単な帳票イメージを示すと、初めの2次元帳票は縦軸に商品、横軸にID-POS分析の各指標が来る。この指標もIDの取り方、レシートの取り方により、無限につくることができるが、代表的な指標は、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値のみである。当然、金額PI値は従来のPOS分析の金額PI値と同じ概念であるので、金額PI値=PI値×平均単価に分解することができる。また、食品商業の5月号でも解説したが、PI値を客数PI値×購入PI値に分解することもできる。すると、金額PI値=客数PI値×購入PI値×平均単価ともなる。ここでは、最も単純、シンプルな指標として、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値の例で解説する。
ちなみに、ID金額PI値、ID客数PI値はID-POS分析ならではの指標であり、金額PI値は従来のPOS分析でも算出可能な指標である。したがって、ID-POS分析と従来のPOS分析との違いは、このID客数PI値が加わったことが最大の違いといってもよく、数式では、ID客数PI値=レシート/IDであるので、要は、ID当たりのレシート枚数、すなわち、購入頻度(来店頻度)がわかることがID-POS分析と従来のPOS分析との決定的な違いである。
そして、もうひとつの2次元の帳票は縦軸に顧客ID、横軸に、ID-POS分析の各指標である。この指標は、先のID-POS分析の各指標と全く同じであり、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となるが、当然、IDが1となるので、ID金額PI値は売上金額/1=売上金額となり、ID客数PI値はレシート/1=レシート枚数となる。そして、このIDが縦に多い場合に数万人の明細表となる。
さらに、この2次元帳票は応用範囲が広く、はじめの2次元帳票の商品のみで見る場合もあるが、発展帳票としては、IDそのものの消費行動に踏み込む場合もあり、IDを起点にそのIDが購入している全商品を一覧にすることもある。これは、この2次元帳票の発展形ではあるが、これこそ、ID-POS分析の醍醐味といってもよく、まさに商品分析と顧客分析の融合ともいえる。
したがって、ID-POS分析の基本帳票は、この2次元帳票が2つ重なった帳票、すなわち、3次元帳票が基本分析帳票であり、縦軸に商品、横軸にID-POS分析の各指標、奥行きに、顧客IDということになり、商品が縦に数万、横にID-POS分析各指標が数十、奥行きに顧客が数万という3次元帳票になり、ここから商品をどうグループ化するか、顧客をどうグループ化するかにより、様々な分析をしてゆくことになる。ただ、横軸の指標を1つに絞れれば、3次元は2次元となり、縦軸商品、横軸顧客となり、数万×数万の巨大マトリックスとなる。そして、この巨大マトリックスがID-POS分析の指標分重なっていると見ることもできる。
これが、ID-POS分析のマクロの帳票イメージであるが、実際の実務では商品カテゴリーのみとなる場合が多く、縦軸の商品は数十から数百行、横軸のID-POS分析の指標は数指標、奥行きの顧客はランクづけし、数百という限定した帳票になることが多く、excelでも十分に分析が可能である。
そして、この帳票から、様々な仮説をつくってゆくことになるが、その目的は先に上げたようにID金額PI値を引き上げることであり、そのために、ID-POS分析の各指標、ID客数PI値、金額PI値等を引き上げるマーチャンダイジング戦略をつくることと、同時に、顧客IDに踏み込み、顧客IDのID金額PI値(この場合は売上金額)を引きあげるために、顧客をどうグループ化し、顧客IDのID客数PI値(この場合はレシート枚数)、金額PI値を引き上がるかのマーケティング戦略をつくることである。特に、顧客IDについては、既存顧客への働きかけも重要であるが、新規顧客獲得も重要であり、いわゆる、トライアル、リピートID戦略、さらには、リピートのヘビーリピートID戦略など、顧客IDの購入度合いに応じたマーケティング戦略づくりが課題となる。
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