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May 08, 2010

日経MJ、5/7でキャッシュを特集!

   日経MJの1面、2面全面を使い、5/7、日本の小売業調査速報版が公開された。これは、上場している百貨店、スーパー、コンビニで2009年5月から2010年2月に決算期を迎えた60社及びセブン&アイ・ホールディングス参加のセブン-イレブン・ジャパンの業績をもとに、分析したもので、今期決算、2010年度版の速報値といえる。見出しは、「マイナス成長下、現金力勝負に」、「売上高前年度割れ7割、投資急ブレーキ、海外開拓が不可欠」であり、特に、現金に注目したところが、今回の特集のポイントである。1面の各社の決算一覧表にも、営業利益ランキングに加え、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフローを掲載しており、キャッシュがメインの特集といえる。

   キャッシュを特集した背景には、集計小売業の約70%の売上高が前の年度を下回り、マイナス成長に入った小売業が経営を維持してゆくには、いかにキャッシュを確保するかにあるという認識があるためである。また、そのキャッシュをどこに振り向けるか、すなわち、投資するかについては、成長著しい海外がポイントであると日経MJでは指摘しており、今後、日本の小売業が成長してゆくには海外戦略が課題とのことである。

   今回の日経MJの特集は、これまでの単純なP/L、B/Sの決算数値の比較ではなく、キャッシュという視点に着目しており、しかも、CF、キャッシュフローに注目しているのが特徴である。本ブログでも、キャッシュという視点が小売業ではより重要な指標となるとの観点から、新たに、キャッシュ効率という指標を導入し、今後の食品スーパーマーケットの財務分析に加えてゆく予定ではあるが、まさに、今回の日経MJの特集はそのキャッシュに着目した特集であり、興味深い結果となっている。

   ランキングを見ると、営業利益の上位の小売業は、セブン&アイ・ホールディングス2,266.66億円、イオン1,301.93億円であり、この2社が小売業では1,000億円を超える営業利益である。では、営業キャッシュフローはどうかを見ると、逆転する。イオンが3,610.96億円、セブン&アイ・ホールディングスが3,222.02億円となり、何と3,000億円を超える営業キャッシュフローとなる。特に、今期、イオンの営業キャッシュフローが昨対54.3%となったことが大きい。日経MJの記事の中ではイオンのジャスコ津田沼店の青果売場の写真が大きく掲載され、その写真の中でジャガイモ、タマネギ、ピーマン、ニンジン等の野菜のバラ売りがクローズアップされている。記事の中で、「無造作に見えて、それぞれの数量は店が緻密に計算している。・・」とのことで、結果、「青果の在庫回転日数は以前の約半分に改善した。・・」とのことである。

   営業利益にはこの在庫がダウレクトに反映されることはないが、営業キャッシュフローではたな卸資産の増減でキャッシュが大きく動く。イオンの昨年のたな卸資産は-52.07億円と在庫が増加し、キャッシュがマイナスとなったが、今期は123.78億円と在庫が減少し、キャッシュが大きく増加した。昨年との差は約200億円弱である。ただ、これ以外にもイオンの営業キャッシュフローを見ると、税金等調整前当期純利益が約300億円、仕入れ債務の増加が約200億円、有価証券及び投資有価証券売却損益が約200億円増加しており、これらがあいまって営業キャッシュフローが大きく改善し、今回の集計小売業の中ではトップとなった。

   こう見ると、小売業のキャッシュを増やす方法は利益を上げることも重要であるが、在庫管理を徹底することも今期のイオンでは顕著であったといえ、低成長、マイナス成長の中では、この在庫管理の差がキャッシュの差となり、今後、在庫管理がより注目されることになろう。

   では、食品スーパーマーケットの状況はどうかを見てみたい。食品スーパーマーケットでは6位にイズミが営業利益204.10億円(営業キャッシュフロー344.27億円)で入った。ついで、10位に平和堂96.60億円(253.67億円)、11位にアークス88.40億円(79.21億円)、12位にサンエー88.09億円(98.28億円)、13位にライフコーポレーション86.76億円(129.86億円)、14位にマルエツ78.56億円(79.47億円)、15位にオークワ58.41億円(123.02億円)、16位にカスミ55.53億円(95.18億円)が入り、ここまでが営業利益50億円を超える小売業である。こう見ると、10位前後、営業利益50億円から100億円のところに食品スーパーマーケットが集中しているといえる。

   このように今期は約70%が売上高昨対割れ、さらに、営業減益、赤字も約70%という小売業の速報値が日経MJから公表された。このような厳しい決算結果は、今後、小売業界にとっては、低成長、マイナス成長がより深刻な経営問題になり、その中で経営改善をはかるには現金、キャッシュを生み出す力をつけることが、日経MJが指摘したように極めて重要であるといえよう。その意味で、今回の日本の小売業調査速報の特集でキャッシュを全面に掲げて各小売業を評価したことは時宜を得たテーマであるといえよう。今後、この現金、キャッシュをいかに生み出す力をつけることができるか、小売業各社の経営戦略に注目といえよう。

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