タイヨーの2010年2月期の決算を見る!
鹿児島を中心に88店舗の食品スーパーマーケットを展開しているタイヨーの2010年2月期の決算であるが、今期は厳しい結果となった。営業収益1,268.30億円(-0.3%)、営業利益21.90億円(-35.1%)、経常利益22.53億円(-34.0%)、当期純利益8.22億円(21.4%)となり、当期純利益は増収とはなったが、営業、経常段階では減収減益となった。そこで、今期、タイヨーが減収減益となった要因を中心に、今期の決算状況を見てみたい。
まずは、原価であるが、78.83%(昨年78.63%)となり、0.20ポイント上昇している。実際、タイヨーを取り巻く経営環境は厳しい状況で推移しており、タイヨー自身も、「当社グループの営業基盤である南九州地区経済は、生産活動におきましては食品関連が伸び悩み、投資関連では公共工事や民間建築工事が低調に推移するなど、景気は低迷が続き、流通を取り巻く環境も消費者の節約志向や生活防衛意識が一段と高まり、低価格競争が激化するなど、大変厳しい経営環境が続きました。」と、コメントしている。結果、売上総利益は21.17%(昨年21.37%)と減少した。
一方、経費の方であるが、20.52%(昨年19.83%)と、0.69ポイント上昇しており、原価以上の上昇が見られる。タイヨーも、コスト削減については、「精肉のアウトパック事業を拡大するとともに、電力監視システムや混焼ボイラーによりエネルギーコストの削減に取り組み、製造効率の向上に努めてまいりました。」とのことであるが、厳しい結果となった。これは、売上高が1,254.56億円(99.8%)と伸び悩んだことも大きく、特に、今期は新店を佐土原店(4月)、岩川店(6月)、松元店(10月)、日南店(11月)と、4店舗出店しているが、全体を押し上げるまでには至らず、既存店が下がったことが原因といえよう。したがって、相対的に固定費が上昇し、経費の上昇につながったといえよう。
結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は、0.65%(昨年1.54%)とプラスを確保したが、昨年と比べ、大きく下がった。原価、経費がダブルで上昇したことが大きいといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.10%
(昨年1.14%)のり、営業利益は1.75%(昨年2.68%)と、減益となった。
食品スーパーマーケットの営業構造は、原価、経費、そして、その他営業収入とで成り立っており、この3つの数字がどう動くかが営業利益を左右する。好調な食品スーパーマーケットの状況を見ると、原価、経費、双方が減少し、結果、その差、マーチャンダイジング力が上昇し、さらに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が上昇し、トリプルで利益が上昇する。逆に、利益構造の厳しい食品スーパーマーケットは原価、経費、双方が上昇し、マーチャンダイジング力が下降し、さらに、その他営業収入も減少、トリプルで利益が下降するが、今期、タイヨーはまさに、この状況になっており、今後、まずは、キャッシュの源泉であるマーチャンダイジング力をいかに改善するかが課題といえよう。
ただ、今期、タイヨーは、「農業生産法人「株式会社アグリ太陽」の農場で、ハウス養液栽培システムにより栽培されたパプリカ、トマト、ナスを収穫し、当社の一部の店舗にて販売、・・」、「商品、販売の改革に着手し、当社の販売データ提供に基づき、お取引先様より商品提案及び販売方法の提案をいただく、MD協議会の運用を開始、・・」などの、マーチャンダイジング改革に着手しており、これらの成果が、今後、どのように数字に寄与するか、その成果が期待されるところである。
さて、このような厳しい営業状況の中で、キャッシュフローはどのように推移したかを見てみたい。まずは、営業キャッシュフローであるが、30.80億円(昨年89.66億円)と大きく減少している。今期は当期純利益が上昇したにも関わらず、営業キャッシュフローが減少した要因は、仕入れ債務が-14.13億円(45.32億円)となったことが大きい。これは、決算日と金融機関の休日等が重なった時に起きることが多いが、昨年はまさに、重なっており、むしろ、今期の数字の方が正常といえよう。
一方、投資キャッシュフローであるが、-40.95億円(昨年-22.97億円)と大きく増加している。これは新規出店関連の資産を取得したためであり、今期は前期よりも積極的な新店への投資をしている。結果、合計のフリーキャッシュフローは-10.15億円(昨年66.69億円)とマイナスになった。そして、財務キャッシュフローであるが、6.05億円(-19.06億円)となったが、今期は有利子負債、特に、短期借入金の増加で補っており、気になるところである。結果、トータル-4.09億円(昨年47.62億円)となり、現金の減少となった。結果、自己資本比率が55.4%(昨年56.5%)と若干下がったが、財務面は依然として、安定した数字を確保している。
このように、タイヨーの今期の決算は、残念ながら、営業、経常段階では減収減益となり、厳しい結果となった。特に、原価、経費が上昇し、その他営業収入が減少するというトリプルで利益を圧迫しており、今後、マーチャンダイジングの改善が最重要課題となったといえよう。ただ、財務は若干、有利子負債の増加が見られるが、安定しており、新規出店も堅調である。今後、タイヨーが、先に上げた取組み課題を含め、どのようにマーチャンダイジングの改善に踏み込むか注目である。
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