トライアルカンパニー、2010年3月期決算、増収増益!
トライアルカンパニーが2010年3月期の決算公告を公表した。売上高2,096.54億円(122.5%)、営業利益36.04億円(381.0%)、経常利益36.90億円(367.5%)、当期純利益28.25億円(675.8%)と、大幅な増収増益となった。売上高も2,000億円を超え、利益もすべての段階で大幅な増益となり、絶好調の決算結果である。ちなみに、昨年、2009年度3月期は、売上高1,711.00億円(113.76%)、営業利益は9.46億円(36.4%)、経常利益10.04億円(39.12%)、当期純利益4.18億円(32.7%)と増収ではあったが、大幅な減益であったので、まさに、V回復、劇的な増益といえよう。
そこで、トライアルカンパニーが大幅な増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、83.93%(昨年84.35%)と0.42ポイント減少しており、原価の改善が進んでいる。このデフレ環境の中、ディスカウント路線を走るトライアルカンパニーであるが、競争激化により売価が厳しかったものと思われる。このような中、原価が改善できたことは、利益改善に大きく貢献したといえよう。結果、売上総利益は16.07%(昨年15.65%)と上昇した。それにしても、16.07%は極めて低い粗利であり、いかに、トライルカンパニーの粗利が低いかがわかる。
ここで、トライアルカンパニーの16.07%の粗利を象徴する商品をいくつか見てみたい。コーラ(開発商品)350ml、29円、サイダー(開発商品)350ml、29円、八女茶2L、109円、500ml、69円、100g、399円、トライアルカップラーメン65g、59円、30個入りケース1,770円(1個59円)等である。さらに、組み合わせ価格としても、「お昼にこんな組み合わせ」とのキャッチコピーを掲げ、お茶1本27円+おにぎり1個67円+カップラーメン1個59円、合計153円という低価格を出しており、粗利16.07%の低さをいかんなく発揮した価格訴求を試みている。
一方、今期の経費比率であるが、15.54%(昨年16.35%)となり、何と0.81ポイント改善しており、15%台となった。これは食品スーパーマーケット業界では、トップクラスの経費比率であり、粗利だけでなく、経費面からも価格訴求を支えているといえる。結果、原価、経費双方から利益を改善し、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、0.54%(昨年-0.70%)と昨年のマイナスからプラスに転じ、収益が大きく改善した。さらに、これに、不動産収入、物流収入等が1.18%(昨年1.26%)のり、結果、営業利益は1.72%(昨年0.55%)と大きく改善した。
こう見ると、今期は、昨年が厳しい決算となった反動もあるが、原価、経費双方の改善から収益を押し上げており、デフレ環境の中、極めて好調な決算であったといえ、トライアルカンパニーのディスカウント政策がまさに、消費者から強く支持された結果といえよう。
では、この好決算がトライアルカンパニーの財務面の改善にどう影響を与えたかを見てみてみたい。今期の純資産比率であるが、15.01%(昨年11.74%)と、昨年と比べ、大きく上昇した。ただ、依然として、15%強と約85%を負債に依存する状況であり、財務面では課題があるといえる。その約85%の負債の中身であるが、有利子負債は158.91億円(昨年174.28億円)と約15億円削減し、総資産591.93億円に占める割合は26.85%(昨年33.44%)となり、有利子負債への依存度は減少しつつある。では、これ以外に何がトライアルカンパニーの負債を構成しているかであるが、買掛金が42.38%と極端に高い依存度であり、負債の中の最大項目である。この2つの負債の項目をたすと、69.23%であるので、約70%となる。したがって、残りは約15%であるので、負債比率85%の主要項目は、買掛金と有利子負債であるといえ、この2項目がトライアルカンパニーの負債の実態といえよう。今後、純資産を引き上げ、財務の健全化を図るためには、この負債の圧縮、買掛金と有利子負債の削減が重要な役割を担っているといえよう。
これに対し、資産面はどうかを見てみたい。トライアルカンパニーの出店形態は通常の食品スーパーマーケットと違い、土地、建物、敷金保証金等に依存した出店ではなく、これまでは、居抜き中心の出店形態が多かった。したがって、先に上げた出店にかかわる資産は総資産の39.20%(昨年40.72%)という状況であり、しかも、現在、総店舗数は、115店舗であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は2.01億円と通常の食品スーパーマーケットの約半分以下と極めて少ない資産での出店をしてきたといえる。では、資産面での主要項目は何かであるが、商品、すなわち、在庫が158.46億円と総資産の26.8%を占めており、資産項目では、トップである。したがって、先の買掛金はこの在庫を支えているといえ、通常の食品スーパーマーケットとはかなり違った財務構造といえる。
このように、トライアルカンパニーの2010年3月期決算は昨年と比べV字回復を果たし、増収増益の好決算となった。特に、原価、経費双方を改善できたことが大きいといえよう。また、この好決算を背景に、財務の改善も進みつつあり、純資産比率もまだ低いが、昨年と比べ、改善しつつある。特に、トライアルカンパニーは居抜き出店が多かったため、財務構造も通常の食品スーパーマーケットとは違い、負債面では買掛金、資産面では在庫に依存することが多く、財務改善にはこれらをいかに改善するが課題といえる。今後、トライアルカンパニーが、この好調な決算結果を受け、いかに財務改善、買掛金と在庫の圧縮に踏み込むか、その動向に注目である。
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