ヤマナカ、2010年3月期決算、減収減益、厳しい決算!
ヤマナカが2010年3月期の決算を4/30に公表したが、結果は減収減益と厳しい決算となった。特に、今期は店舗等の減損損失を10.16億円計上したため、当期純利益が赤字になるなど、大幅な減益となった。その結果であるが、営業収益1,076.50億円(-6.3%)、営業利益 3.74億円(-61.4%)、当期純利益 4.90億円(-57.6%)、当期純利益-7.75億円という結果となった。ヤマナカ自身も、「利益面においては、人件費や光熱費など経費全般の削減に取り組んだものの、売上高の減少を補うことが出来ず、・・」とコメントしており、利益面の確保が特に厳しかったとのことである。
そこで、ヤマナカの営業利益が-61.4%と大きく減益になった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.01%(昨年74.81%)と、0.20ポイントの上昇が見られる。ヤマナカも、「個人消費は低迷を余儀なくされ、お客様の節約志向、低価格志向が一層強まるとともに、競合他社との価格競争が激化するなど、収益環境は急速に悪化しました。」とのことで、価格競争の激化が厳しかったようである。結果、売上総利益は24.99%(昨年25.19%)と減少した。
一方、経費の方であるが、29.40%(昨年28.97%)と、昨年と比べ0.43ポイント上昇した。これは、先のコメントにもあるように、営業収益は-6.3%であったが、その中身、売上高も-6.4%となったことにより、経費削減が追い付かず、結果、経費の上昇を招いたためである。ただ、29.40%の経費比率は食品スーパーマーケット業界では、かなり高めの数字であるといえ、今後、いかに、経費比率を下げられるかが課題といえよう。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、原価、経費ダブルで圧迫を受け、-4.42%(昨年-3.78%)と、大きくマイナスとなった。
これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が4.78%(昨年4.66%)のり、結果、営業利益がマーチャンダイジング力のマイナスをカバーし、0.36%(昨年0.88%)とプラスとなったが、昨年と比べ、原価、経費双方が上昇したため、0.52ポイント下がるという、厳しい結果となった。
こう見ると、やはり、経費比率29.40%が営業利益、その中でもマーチャンダイジング力がマイナスとならざるを得ない状況を作り出しているといえ、食品スーパーマーケットにとって経費比率がいかに収益の根幹を握っているかがわかる。ヤマナカもこの状況を打破すべく、今期は、「お客様の低価格志向への対応を強化するため、エブリデー・ロー・プライス(EDLP、毎日低価格販売)の新業態を立ち上げ、平成21年7月にアルテ太平通を改装し、ザ・チャレンジハウス太平通(名古屋市中川区)をオープンしたのを皮切りに、当期において6店舗の業態変更を行いました。」とのことで、ディスカウントストアへの挑戦を行っている。
ディスカウントストアはEDLP等により、粗利がさらに下がるため、経費比率をそれ以下に下げたEDLC(毎日低コスト)の仕組みが前提となるが、現状の経費比率が29.40%であり、粗利が24.99%であるため、少なくとも24.99%よりも、3%から4%は低い粗利となり、結果、経費は既存店舗よりも7%から8%は下げざるをえなくなる。これはもはや、別事業といえ、既存のマーチャンダイジングの仕組み、マネジメントの仕組みでは対応できず、根本的な企業変革が求められるといえる。したがって、数店舗の内は矛盾が表面化しないが、10店舗ぐらいになると、マーチャンダイジング、マネジメントが2重構造となり、経営戦略の打ち出し方が難しくなる。今後、ヤマナカとしては、どのような経営方針を打ち出してゆくか、難しい選択となろう。
では、財務面はどうかを見てみたい。まずは、自己資本比率であるが、32.0%(昨年32.8%)と若干下がった。ただ、それ以上に、約70%が負債に依存する経営構造となっており、財務改善も待ったなしの状況といえよう。特に、有利子負債が195.06億円あり、総資産の42.57%(昨年41.87%)と大半を占めており、経営を大きく圧迫している。したがって、出店にかかわる資産、土地、建物、保証金等の合計が62.86%(昨年64.85%)となるが、これを自己資本で補うことは難しく、負債、特に、有利子負債に依存した出店構造となっており、差し引き、出店余力は-30.87%(昨年-32.09%)と大きくマイナスである。今後、安定、継続的な新規出店をしてゆくには、自己資本比率を引き上げ、財務の改善を図る必要があり、そのためも、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、キャッシュをいかに生み出すかが課題といえよう。
このようにヤマナカの2010年3月期の決算は減収減益、特に、当期純利益は赤字となる厳しい決算となったが、その要因は原価、経費が上昇したことによるマーチャンダイジング力のマイナス幅が広がったことが大きいが、根本的な問題として経費比率29.40%という高さが、食品スーパーマーケットとしては最大の経営課題といえよう。今期はディスカウントストア等へ挑戦し、新業態を加え、経費比率を下げる経営改革に踏み込んでいるが、既存業態の経費比率削減の取組みも同時に必要といえ、今後、ヤマナカがさらに踏み込んだ経営戦略をいかに打ち出すか注目である。
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