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June 2010

June 30, 2010

トライアルカンパニー、2010年3月期決算、増収増益!

   トライアルカンパニーが2010年3月期の決算公告を公表した。売上高2,096.54億円(122.5%)、営業利益36.04億円(381.0%)、経常利益36.90億円(367.5%)、当期純利益28.25億円(675.8%)と、大幅な増収増益となった。売上高も2,000億円を超え、利益もすべての段階で大幅な増益となり、絶好調の決算結果である。ちなみに、昨年、2009年度3月期は、売上高1,711.00億円(113.76%)、営業利益は9.46億円(36.4%)、経常利益10.04億円(39.12%)、当期純利益4.18億円(32.7%)と増収ではあったが、大幅な減益であったので、まさに、V回復、劇的な増益といえよう。

   そこで、トライアルカンパニーが大幅な増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、83.93%(昨年84.35%)と0.42ポイント減少しており、原価の改善が進んでいる。このデフレ環境の中、ディスカウント路線を走るトライアルカンパニーであるが、競争激化により売価が厳しかったものと思われる。このような中、原価が改善できたことは、利益改善に大きく貢献したといえよう。結果、売上総利益は16.07%(昨年15.65%)と上昇した。それにしても、16.07%は極めて低い粗利であり、いかに、トライルカンパニーの粗利が低いかがわかる。

   ここで、トライアルカンパニーの16.07%の粗利を象徴する商品をいくつか見てみたい。コーラ(開発商品)350ml、29円、サイダー(開発商品)350ml、29円、八女茶2L、109円、500ml、69円、100g、399円、トライアルカップラーメン65g、59円、30個入りケース1,770円(1個59円)等である。さらに、組み合わせ価格としても、「お昼にこんな組み合わせ」とのキャッチコピーを掲げ、お茶1本27円+おにぎり1個67円+カップラーメン1個59円、合計153円という低価格を出しており、粗利16.07%の低さをいかんなく発揮した価格訴求を試みている。

   一方、今期の経費比率であるが、15.54%(昨年16.35%)となり、何と0.81ポイント改善しており、15%台となった。これは食品スーパーマーケット業界では、トップクラスの経費比率であり、粗利だけでなく、経費面からも価格訴求を支えているといえる。結果、原価、経費双方から利益を改善し、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、0.54%(昨年-0.70%)と昨年のマイナスからプラスに転じ、収益が大きく改善した。さらに、これに、不動産収入、物流収入等が1.18%(昨年1.26%)のり、結果、営業利益は1.72%(昨年0.55%)と大きく改善した。

   こう見ると、今期は、昨年が厳しい決算となった反動もあるが、原価、経費双方の改善から収益を押し上げており、デフレ環境の中、極めて好調な決算であったといえ、トライアルカンパニーのディスカウント政策がまさに、消費者から強く支持された結果といえよう。

   では、この好決算がトライアルカンパニーの財務面の改善にどう影響を与えたかを見てみてみたい。今期の純資産比率であるが、15.01%(昨年11.74%)と、昨年と比べ、大きく上昇した。ただ、依然として、15%強と約85%を負債に依存する状況であり、財務面では課題があるといえる。その約85%の負債の中身であるが、有利子負債は158.91億円(昨年174.28億円)と約15億円削減し、総資産591.93億円に占める割合は26.85%(昨年33.44%)となり、有利子負債への依存度は減少しつつある。では、これ以外に何がトライアルカンパニーの負債を構成しているかであるが、買掛金が42.38%と極端に高い依存度であり、負債の中の最大項目である。この2つの負債の項目をたすと、69.23%であるので、約70%となる。したがって、残りは約15%であるので、負債比率85%の主要項目は、買掛金と有利子負債であるといえ、この2項目がトライアルカンパニーの負債の実態といえよう。今後、純資産を引き上げ、財務の健全化を図るためには、この負債の圧縮、買掛金と有利子負債の削減が重要な役割を担っているといえよう。

   これに対し、資産面はどうかを見てみたい。トライアルカンパニーの出店形態は通常の食品スーパーマーケットと違い、土地、建物、敷金保証金等に依存した出店ではなく、これまでは、居抜き中心の出店形態が多かった。したがって、先に上げた出店にかかわる資産は総資産の39.20%(昨年40.72%)という状況であり、しかも、現在、総店舗数は、115店舗であるので、1店舗当たりの出店にかかわる資産は2.01億円と通常の食品スーパーマーケットの約半分以下と極めて少ない資産での出店をしてきたといえる。では、資産面での主要項目は何かであるが、商品、すなわち、在庫が158.46億円と総資産の26.8%を占めており、資産項目では、トップである。したがって、先の買掛金はこの在庫を支えているといえ、通常の食品スーパーマーケットとはかなり違った財務構造といえる。

   このように、トライアルカンパニーの2010年3月期決算は昨年と比べV字回復を果たし、増収増益の好決算となった。特に、原価、経費双方を改善できたことが大きいといえよう。また、この好決算を背景に、財務の改善も進みつつあり、純資産比率もまだ低いが、昨年と比べ、改善しつつある。特に、トライアルカンパニーは居抜き出店が多かったため、財務構造も通常の食品スーパーマーケットとは違い、負債面では買掛金、資産面では在庫に依存することが多く、財務改善にはこれらをいかに改善するが課題といえる。今後、トライアルカンパニーが、この好調な決算結果を受け、いかに財務改善、買掛金と在庫の圧縮に踏み込むか、その動向に注目である。

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June 29, 2010

消費者物価指数(CPI)、2010年5月度、-0.9%!

   総務省統計局が6/25、2010年5月度の消費者物価指数(CPI)を公表した。消費者物価指数は総合指数が3つあるが、それぞれの結果は、「(1) 総合指数は平成17年を100として99.7となり、前月比は0.1%の上昇。前年同月比は0.9%の下落となった。(2) 生鮮食品を除く総合指数は99.3となり、前月比は0.1%の上昇。前年同月比は1.2%の下落となった。(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.3となり、前月と同水準。前年同月比は1.6%の下落となった。」とのことで、いずれの段階でも、前年同月比は下落しており、依然として、デフレ環境が続いているといえよう。

   実際、前年同月比の過去3年間の月別グラフを見ると、この5月度は、前月度とほぼ同じ横ばいであり、一向に上昇気配が見られない。これまでの数年間の消費者物価指数を見ると、約1年ごとに上昇、下落を繰り返しており、特に、この2年間は上に凸、下に凸、まさにsinカーブを描いていた。これに従えば、この1月頃から、消費者物価が0%に近づいても良いような流れであったが、2月、3月と横ばいになり、4月からは、戻るどころか、逆に、マイナス幅が拡大し、そして、この5月はそのまま横ばいとなるなど、明らかに変則的な動きとなった。

   ただ、ひとつ考慮しなければならないこともある。それは、この4月度からはじまった高校授業料無償化の影響である。消費者物価指数では、「公立高校授業料」及び「私立高校授業料」の2項目が含まれるが、それぞれの前年同月比は-98.5%、-25.1%となり、その寄与度は-0.39、-0.10、合計-0.49となった。したがって、総合指標-0.9の内、その半分はこの高校授業料無料化の影響ともいえる。厳密には、ガソリン、生鮮食品等が0.56ポイント伸びており、単純に差を見ることはできないが、下げ圧力が強いことは確かである。こう見ると、高校授業料無償化は物価の下落に大きく寄与しているといえ、これもひとつの物価安定策ともいえよう。

   ちなみに、この高校授業料無償化以外の寄与度を見ると、マイナスとなったのは都市ガス代-0.07、電気代-0.12、生鮮食品を除く食料-0.39、その他-0.54であり、プラスになったのは、先にも言及したが、ガソリン0.40、生鮮食品0.16、灯油0.14である。これに、高校授業料無償化が加わり、総合指数が-0.9%となっており、以上がこの5月度の消費者物価指数の実態である。

   さて、では、食品関係の詳細な消費者物価はどのような状況であったかを見てみたい。先に見たように総合指数は-0.9であるが、食料も同じ-0.9である。ただ、この中には外食も含まれており、外食は-0.2であり、外食を除く食料、すなわち食品の方が深刻であるといえよう。そこで、大分類の結果を見ると、穀類-2.9、魚介類-2.1、肉類-2.9、乳卵類-1.5、野菜・海藻5.7、果物-0.3、油脂・調味料-1.5、菓子類-1.8、調理食品-2.2、飲料-1.9、酒類-1.3である。野菜・海藻は相場高の関係もあり、大幅に消費者物価が上昇したが、それ以外はすべて下落、特に、穀類、肉類の下げが大きいといえよう。

   さらに、その詳細を見ると、まずは、物価上昇がみられた野菜・海藻であるが、れんこん31.7、ピーマン29.2、たまねぎ26.2、ばれいしょ24.5、レタス 22.0が20%以上、上昇した項目であり、さといも18.4、なす17.0、ねぎ16.5、ほうれんそう12.6、だいこん12.6、きゅうり12.4、ながいも11.8、かぼちゃ11.8、かんしょ10.4が10%以上上昇した項目である。

   次に、物価の下落が見られた項目であるが、ビスケット-12.6、食用油-12.3が10%以上下落した項目であり、スパゲッティ-9.3、グレープフルーツ-8.8 、ミネラルウォーター-8.4、たらこ-8.3、チーズ-7.4、ししゃも-7.3、液体調味料-7.1、小麦粉-6.9、たこ-6.3、中華合わせ調味料-6.3、バナナ-6.0、うなぎかば焼き-5.9、ごぼう-5.8、丸干しいわし-5.6、ソーセージ-5.6、納豆-5.4、煮干し-5.0、魚介缶詰-5.0、混ぜごはんのもと-5.0が5%以上下落した項目である。

   また、食品以外で物価下落が大きかった項目であるが、公立高校授業料-98.5、パソコン(ノート型) -35.2、DVDレコーダー-34.5、カメラ-32.3、パソコン(デスクトップ型) (48)-28.8、テレビ(薄型) TV sets (LCD)-27.5、ステレオセット-27.3、私立高校授業料-25.1、電気洗濯機(洗濯乾燥機)-23.3、ビデオカメラ-23.1、電子レンジ-20.3、家庭用ゲーム機(据置型)-20.0、ビデオソフトレンタル料 -20.0が20%以上下落した項目である。

   このように2010年5月度の消費者物価指数は高校授業料無償化の影響もあり、依然として厳しい数字であり、総合指数が前年同月比-0.9となり、ここ数ケ月横ばいが続いている。デフレ環境は依然として厳しい状況にあるといえ、当面、続きそうである。したがって、食品スーパーマーケットとしてはデフレが続くことを前提にしばらくは経営戦略を検討する必要があろう。この5月は-0.9と、奇しくも総合と同じ数字となったが、先に見たように野菜の大幅な上昇を加味しての数字であるので、実質、もっと低い状況にあると見た方が良いといえよう。食品スーパーマーケットとしてはデフレ環境が長びく可能性が高まったといえ、再度、品揃えと売価の確認が必要といえよう。来月、6月度の数字がどのような結果となるか気になるところである。

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June 28, 2010

オーケー、2010年3月期決算、2,000億円達成!

   オーケーが2010年3月期決算を6/18公表した。結果は、増収増益の好決算となり、各食品スーパーマーケットが苦戦する中、好調な決算となった。その結果であるが、売上高2,158.41億円(12.11%)、営業利益111.16億円(15.14%)、経常利益113.40億円(14.63%)、当期純利益66.07億円(24.02%)となり、いずれも2桁の増収増益である。また、既存店も2.5%増となり、新店5店、板橋大原店・川口末広店・幕張店・南大沢店・浦和原山店の増収効果だけでなく、既存店も増収となっており、理想的な決算となったといえよう。

   オーケー自身も、「昨年末から売上の伸びが急に悪くなり第4四半期の単体の売上前年比は既存店99.7%、新店を含めても106.7%と誠に厳しい状況で、言い訳は不景気・単価安・相場安・競争激化・自社競合等です。・・」とコメントしており、さすがに、第4四半期はやや厳しい結果であったようであるが、先に見たように通期、増収増益、既存店2.5%は極めて安定した決算である。そして、これを受けて、「不景気という社会的逆風には真っ向から取り組み、如何にして、これを克服するか、そして順風は自らが創り出して、会社の将来を如何に優位に導くか、正に正念場と覚悟しております。「お客様に損をさせない」という基本方針に基づいて、競合他社に負けないよう頑張って参ります。」とのことである。

   そこで、オーケーの営業利益が15.14%と2桁の増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、79.87%(昨年80.05%)と、この厳しい経営環境の中、原価を0.18%下げており、原価の改善が進んだ。結果、売上総利益は20.13%(昨年19.95%)と上昇しており、粗利が改善した。オーケーは、「基本方針の『高品質・Everyday Low Price』を更に徹底して推進、・・」とのスローガンを掲げ、いかに、顧客に損をさせないか、すなわち、いかに安く売るかを徹底している。したがって、売価を上げた訳ではないと思われ、今期は原価が下がったものといえよう。それだけ、仕入れを徹底したのではないかと思われる。

   実際、オーケーの売場を見ると、しょうゆはキッコーマン、牛乳は明治乳業がなかったりと、有力メーカーのナショナルブランドがない品揃えが見受けられる。その分、他のメーカーを大量に仕入れ、原価を下げる努力をしているといえよう。特に、今期ははじめて年商が2,000億円を超え、販売力も、より増したことに加え、新店も5店舗、来期は6店舗の新規出店の予定である。したがって、規模が大きくなっただけでなく、伸び率も極めて高い状況であり、メーカーとしても可能な限り、原価交渉に応じているものと思われる。

   ただ、オーケーは、この売上高の伸び率12.11%には全く満足していないようで、「既成の概念にとらわれず、権力に屈せず、新たな道を切り開いてゆけば、今まで見たこともない世界が見えてきます。借入無しで年率30%成長の世界です。絶大な顧客満足度が存在する世界です。この世界に到達するために、オーケーは様々な仕組みを創り続けて参りました。まだ手を付けていない仕組み、更に手直しが必要な仕組み等、やるべき課題は山積しています。鮮度が良い、品質が良い、値段も安い、品揃えも良い、接客姿勢も良い、買いやすい、施設も清潔で気持ちが良い、等々、熱烈なオーケーファンを爆発的に増やすためには、絶大な顧客満足度の創造が不可欠です。こんな思いで、目標の『借入無しで年率30%成長達成』の実現を目指しています。」とのことである。

   仮に、現在の約2,000億円を130%成長させた場合は、2,600億円、3,380億円、4,394億円、5,712億円、7,425億円、9,653億円となり、7年目1兆2,509億円と年商1兆円突破が見えてくることになる。そして、10年で約3兆円、15年目で約10兆円、20年目で約40兆円と、この時点で、現在のウォルマートの規模においつくことになる。これが130%にこだわるオーケーの真意であろう。

   では、経費はどうであろうか。14.98%(昨年14.93%)と、わずか、0.05%であるが、上昇たが、依然として、15%を下回っており、恐らく、食品スーパーマーケット決算公開企業約50社の中ではNo.1の低い経費比率であろう。これがオーケーの最大の武器であるといえ、Everyday Low Priceを推進できる原動力であるといえる。オーケーはその他営業収入が0であるので、結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力、オーケーの場合は=営業利益は5.15%(昨年5.02%)となり、原価改善が功を奏し、極めて高い営業利益率を確保した。

   このように、オーケーの2010年3月期の決算は大幅な増収増益、特に、利益はどの段階でも高い収益率を確保し、好決算となった。ただ、さすがに、第4四半期はやや厳しいものがあったとのことであるが、原価、経費比率ともに、抜群の低さであり、収益性は極めて高い経営状況を維持している。また、いずれ、別途、財務面、キャッシュフロー等については取り上げたいと思うが、財務面の改善も見られ、特に、有利子負債の削減が急激に進んでおり、自己資本比率も改善している。オーケーがこの数年、急激に変化というよりも、進化しており、今後、どこまでこの経営改革が進むのか注目である。

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June 27, 2010

アオキスーパー、2011年2月、第1四半期、減収減益!

   アオキスーパーが2011年2月期、第1四半期決算を6/25に公開した。結果は営業収益211.80億円(-5.5%)、営業利益 2.06億円(-63.8%)、経常利益 2.36億円(-59.4%)、当期純利益0.84億円(-73.4%)となり、減収減益、特に、利益はいずれの段階でも大きくマイナスとなる厳しい決算となった。アオキスーパー自身も、「低価格販売の実施や、店舗の改装を行い販売促進に努めましたが、物価下落や個人消費の低迷等により厳しい経営環境となり、・・」と、コメントしており、物価下落、個人消費の低迷が予想以上であったとのことである。

   そこで、ここでは営業利益が-63.8%となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、84.54%(昨年84.07%)となり、0.47ポイントと大きく上昇している。結果、売上総利益は15.46%(昨年15.93%)と下がった。それにしても、売上総利益が15%台とはすごい数字であり、食品スーパーマーケットとしては、限界に近い数字であるといえよう。これだけ、売上総利益、いわゆる、粗利が低いと、利益を出すには、それ以上の経費比率を目指すか、別途、利益を確保する必要がある。アオキスーパーは後者を選択しており、経費を引き下げ、利益を出すのではなく、経費は利益とほぼトントンにし、別途利益を確保し、営業利益を引き上げてゆく戦略を採用している。

   では、アオキスーパーの経費はどのくらいかを見てみたい。17.74%(昨年16.54%)であり、残念ながら、今期は1.20ポイントと原価以上に上昇した。したがって、原価、経費双方から利益を圧迫したことになり、今期はかなり厳しい収益構造になったといえよう。それにしても、原価と経費が完全に逆ザヤとなり、しかも、その差が今期は大きく開いており、極めて厳しい収益構造であるがことがわかる。経費比率17.74%も十分に低い数字であるが、粗利が15.46%と極限まで下げているため、経費比率の低さを利益に直結できていない状況であり、今後、この経費比率の低さをどう収益改善につなげるかが最大の経営課題となろう。

   結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-2.29%(昨年-0.60%)となり、昨年もマイナスではあったが、今期は、先に見たように、原価、経費双方が上昇したため、そのマイナス幅が大きく広がったといえよう。したがって、このマイナスをプラスにもってゆくには、その他の営業収入が鍵を握っているといえ、これがアオキスーパーにとっては、利益の源泉といえる。その数字であるが、3.29%(昨年3.23%)と、かなり高い数字であり、しかも、昨年の数字を上回っており、まさに、アオキスーパーの利益を大きく底上げしているといえよう。

   では、このその他の営業収入とは何かであるが、この第1四半期決算では、その中身は公表されていない。そこで、前期の本決算短信を見てみると、その他の営業収入は大きく2つに分かれている。ひとつは不動産賃貸収入であり、いわゆるテナント料である。そして、もうひとつは、物流収入等のその他営業収入である。その金額と売上対比であるが、不動産賃貸収入8.73億円(1.00%)、その他の収入19.71億円(2.27%)であり、その他の収入がアオキスーパーの利益の屋台骨を支えているといえる。さらに、その中身を見てみると、残念ながら、公開していないが、一般的には物流収入が大半を占めるといえる。アオキスーパーも例外ではなく、物流収入の占める割合は高いと推測できよう。

   したがって、営業利益は1.00%(昨年2.63%)となり、大幅な利益のダウンになったといえる。こう見ると、アオキスーパーの今期の営業利益が大幅に減少した要因は、原価の上昇に加え、経費の上昇がそれ以上に大きく、ダブルで収益を大きく圧迫した形であり、特に、経費比率の上昇が大きかったといえよう。ただ、それでも経費比率は17.74%であり、通常の食品スーパーマーケットとしては十分に低い数字である。

   アオキスーパーとしては、今後利益を確保してゆくには、もちろん、この経費比率を昨年並みにもどすことも重要な戦略であるが、その他の要素、特に、原価の引き下げ、できれば、経費比率、17.74%以下まで下られれば収益が大きく改善してゆくことになろう。ただ、それはアオキスーパーにとっては企業戦略の転換ともいえ、価格訴求型食品スーパーマーケットから、付加価値追求型食品スーパーマーケットへの転換となり、容易にかえることは難しいといえよう。

    このように、アーキスーパーの第1四半期決算は減収減益、特に、利益がすべての段階で極めて厳しい結果となった。しかも、その要因は、原価上昇、経費大幅上昇という、ダブルで収益を圧迫する構図であり、厳しい結果であるといえよう。今後、アオキスーパーが高収益を目指すためには、これまでのアオキスーパーがとってきた経営戦略、原価大、経費小の路線を再度追求するか、それとも原価小、経費小へ切り替えるか、あるいは、原価小、経費大を目指すか、決断が必要といえよう。アオキスーパーが、今後どのような経営戦略を採用するか、その動向に注目である。

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June 26, 2010

オークワ、2011年2月期、第1四半期決算を見る!

   オークワが6/25、2011年2月期、第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益682.82億円(-3.4%)、営業利益8.30億円(-31.5%)、経常利益9.25億円(-26.5%)、当期純利益3.25億円(223.5%)となり、当期純利益は増益となったが、営業、経常段階では減収減益となる厳しい決算となった。オークワ自身も、「小売業界におきましても、業態を超えた企業間競争の激化による客数減、及び消費者の生活防衛意識の高まりによる客単価の下落が続き、非常に厳しい経営環境が続きました。・・」と、コメントしており、厳しい経営環境であったことが伺える。

   また、特に、既存店については、「・・、主力の「レギュラー」業態とディスカウントタイプの「プライスカット」業態は、外部環境の悪化により、販売は低迷いたしました。この結果、全業態ベースの既存店売上高は前年同期比94.1%となりました。・・」とのことで、既存店が伸び悩んだということである。オークワは、この2業態に加え、「スーパーセンター」業態と高質スーパーの「メッサ」業態があるが、この2業態は比較的順調であったとのことである。

   一方、減益になった要因であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、75.27%(昨年75.27%)と、昨年と同じ数字となった。これは、小数点以下第3位まで見ると違いがあるが、四捨五入すると、小数点以下第2位まで同じ数字となったためである。したがって、原価は厳しい価格競争の中、上昇を抑えており、健闘しているといえよう。結果、売上総利益は、24.73%(昨年24.73%)と昨年と同じ数字となった。

   これに対して、経費の方であるが、27.18%(昨年26.69%)と、0.49ポイント上昇しており、経費の上昇がみられる。結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-2.45%(昨年-1.96%)とマイナス幅がさらに広がった形である。これは、オークワの売上総利益が比較的低いことに加え、今期は既存店の数字が下がり、固定費が相対的に上がり、経費比率が上昇したためであるといえよう。

   オークワは様々な業態を開発することによって、顧客の全需要に対応すべく、客数アップを図ってきたといえる。ただ、その結果、粗利の低い業態、「プライスカット」、「スーパーセンター」、粗利の高い業態、「メッサ」、中間の「レギュラー」と、原価政策が分かれることになる。また、経費面でも、経費の低い業態、「プライスカット」、「スーパーセンター」、経費の比較的高い業態、「メッサ」、「レギュラー」に分かれることになる。したがって、これらのバランスを取りながら、原価と経費を両極端で調整するという、難しい舵とりが求められる。今期は、その結果、経費バランスを崩してしまい、減益に追い込まれてしまったといえよう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.71%(昨年3.74%)加わり、結果、営業利益は1.26%(昨年1.78%)という厳しい結果となった。それにしても、その他営業収入がかなり大きな比率を占めており、オークワにとっては利益の重要な要素となっているといえよう。ちなみに、不動産収入と物流収入等のその他営業収入であるが、11.66億円、12.75億円であり、ほぼ同じ比率である。店舗数が増え、物流網が増し、センター供給が増加してくると、物流収入の重みが増してくることになるといえる。

   一方、財務の方であるが、自己資本比率は56.5%(前決算時56.4%)と、営業面の動きとは違い、安定した数字を維持している。これは、負債の主要項目である有利子負債が今期235.35億円(総資産比率17.48%)、昨年234.61億円(総資産比率17.36%)と変化が無いことに加え、資産面でも、新規出店関連の資産、土地、建物、敷金保証金等の割合が61.25%(前決算時60.64%)の増加に留まり、大きく増加しなかったためである。結果、自己資本で新規出店をどれだけ賄っているか、すなわち、出店余力は-4.80%(前決算時-4.24%)と、若干の増加で抑えられたことが大きいといえよう。

   したがって、これだけ多様な業態、特に、スーパーセンター等大型業態を積極的に展開しているにも関わらず、負債に極力頼ることのない新規出店が可能な安定した財務基盤であるといえよう。通常、このような多岐にわたる業態を擁し、特に大型店が中心になると負債が膨らみ、自己資本ではなく、負債に依存する財務体質になってしまう場合がある。オークワを見る限り、そのような状況は見られないが、減収減益となったことが気になるところである。

   このように、2011年2月期、第1四半期のオークワの決算を見ると、減収、営業、経常利益が減益となり、厳しい決算となった。そして、その要因を見ると、明らかに、経費比率の上昇がみられる。ただ、これは、経費の絶対額が上昇したことではなく、むしろ、経費の絶対額は178.96億円(昨年181.87億円)と減少しており、売上高が658.41億円(昨年681.49億円)と減少したことが大きいといえる。それだけ売上高のダウンは経費比率に直結するといえ、今後、いかに、経費を引き下げる以上に、売上を引き上げるかも課題といえよう。次の中間、そして、今期、オークワがどのように売上、その根幹のマーチャンダイジングの改善をはかるか、注目である。

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June 25, 2010

国会図書館、ICカード、びっくり!

   日頃、国会図書館(国立国会図書館東京本館)を利用する機会は少ないが、今回、農林水産省の大都市における直売調査事業の関係で国会図書館を利用する機会が増えた。利用してみて、改めて、実に便利なことがわかった。ただ、欲しい資料がないか、みつからないこともあり、意外に感じたこともあった。

   国会図書館を利用するには、まず、ICカードを取得するところからスタートする。また、資料の持ち出し、盗難等をさけるために入管する前にロッカーに手荷物を預けることになる。ICカードは自動発行機で即発行され、ちょうどJRのICカード、suicaのようなイメージである。その後、このICカードが大活躍することになり、国会図書館を出るまで肌身離さず持ち歩くことになる。

   はじめにICカードを使うのは、OPAC(Online Public Access Catalog)端末である。要は蔵書検索システムである。このOPACの横にICカードを添えると、画面が国会図書館の蔵書の検索画面に置き換わる。ここに検索キーワードを打ち込むことになるが、まさに、ネット検索、google、yahooと同じイメージである。国会図書館の現在の所蔵数は、図書約905万3 千冊、逐次刊行物約1,247 万4 千点、非図書資料約1,320万3 千点、合計約3,473 万点があるという。したがって、全部が検索対象ではないと思うが、膨大な蔵書からの検索となる。

   ここで、意外だったのは、今回、直売所の過去の実態調査の資料を検索してみたが、それなりに資料は提示されるが、中々、調査事業の目的にあった内容のものが出てこず、今回は1件のみ、業界誌の論文のみであったことである。同様に、地方卸売市場の過去の実態調査の検索をしてみたが、かなり、古い資料だったり、本来、都道府県別にあるはずのものが、欠けているなど残念だった。

   あとで、その理由がわかったが、都道府県別の調査資料は都道府県内に留まっていることが多く、中々、国会図書館でも収集することが難しいようで、何でもかんでも国会図書館にあるわけではないという。直売所に関しても同様であり、都道府県内に留まっており、国会図書館にもないことがわかった。実は、この2つの関係資料は農林水産省でも探してみたが、ここでも十分でなく、国会図書館に来てみたわけであるが、残念ながら、どうも一部のみの蔵書であることがわかった。

   さて、今回、唯一の資料、直売関連の業界誌であるが、これを画面上で閲覧申し込みをすると、到着カウンターに資料が届くことになる。ICカードの番号が大きな掲示板に流れ、自分の番号が提示されると資料が届いた合図となる。その間、20分から30分ぐらいであったと思う。資料を受け取ると、中身をチェックし、必要な個所のコピーを依頼することになるが、ここでもICカードが活躍する。今度はコピー申し込み専用の端末があり、そこにICカードを入れると、画面に、閲覧状況にある本が出てくる。そこで、その画面にコピーの必要なページ数を入力すると、この情報がICカードに書き込まれることになる。

   そして、その資料のコピー箇所にしおりを入れ、申込書に必要事項を記入し、カウンターへゆけば、ICカードを読み取り、コピー受付が終了する。あとは、コピーができるまで10分から20分ぐらいあるが、その間、別の資料の検索をOPACで検索するなど、次の資料を探すこともできる。OPACはいろいろなフローにたくさん置かれており、いつでも、自由にICカードさへあれば、閲覧可能である。

   コピーができると資料の貸出しの時と同じようにICカードの番号が掲示版にでる。約10分から20分ぐらいであるが、複写が完了し、コピーの受取となる。これで一連のICカードのループが完成することになる。入館からはじまり、図書の検索、借入、複写、そして、返却と一連の流れがすべてICカードで管理されており、しかも、かなりスピーディに作業が行われているのにはびっくりである。

   このように図書館の機能は膨大な蔵書から必要な図書を探し出し、その図書の中から必要な個所をコピーするなどし、資料化することであるといえるが、ここに、ICカードとパソコンを連動させ、この機能を一度に多数の顧客でも可能にしており、改めてICカードの実務的な活用方法の可能性を垣間見ることができた。ちなみに、ここ最近(平成19年度)の国会図書館、東京本館の年間入館者数は432,431 人(1 日当たりの平均利用者数約1,544 人)であるという。奇しくも、食品スーパーマーケット1店舗当たりの顧客数とほぼ同じ客数であり、国会の真横に食品スーパーマーケットが1店舗できた顧客のボリュームであるといえる。

   こう見ると、ICカードはまだまだ実務的な活用方法があるといえ、食品スーパーマーケットでも将来、入店から買い物をし、必要に応じて様々なサービスを受け、レジで精算し、店舗を出るまで、工夫次第では単にポイントカードとして利用するよりも、もっと顧客の様々なニーズにこたえ、新たなサービスを付加できるように思う。国会図書館もネットサービスをはじめているが、これも、食品スーパーマーケットでも同様に可能であり、資料収集を通じて、ICカードの実務的な様々な活用方法を改めて考えさせられた1日であった。

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June 24, 2010

マックスバリュ北海道、2011年1月度、厳しい決算!

   マックバリュー北海道が6/11、2011年1月期の決算を公表した。結果は、営業収益182.69億円(-1.8%)、営業利益-3.44億円、経常利益-3.45億円、当期純利益-3.51億円となり、昨年同様、すべての段階で赤字となる極めて厳しい決算となった。自己資本比率も24.2%(昨年23.2%)と、約75%を負債に依存する構造であり、財務的にも厳しい局面が続いているといえよう。マックスバリュ北海道自身も、「当社の属するスーパーマーケット業界では、お客さまの節約志向は引き続き高く、販売単価は下落しており、業種・業態を越えた競争が進行しております。・・」との認識であり、極めて厳しい経営環境であったといえよう。

   そこで、マックスバリュ北海道が赤字決算となった要因、特に、営業利益について、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、77.18%(昨年76.84%)となり、0.34ポイント上昇しており、原価の上昇がみられる。先のコメントにもあったように、販売単価の下落が大きかったといえよう。これについて、マックスバリュ北海道も、「一点単価が低下傾向にあるものの、お客さま一人当たりの買上点数の改善が進み、・・」とコメントしており、価格の下落が進んでいるとのことである。したがって、これが原価の上昇要因の大きな一因になっているといえよう。結果、売上総利益は、22.82%(昨年23.16%)となり、粗利が減少した。

   一方、経費の方であるが、26.68%(昨年27.12%)となり、経費は0.44ポイント改善している。ただ、粗利よりもはるかに高い経費であり、完全に逆ザヤとなっている。したがって、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-3.86%(昨年-3.97%)となり、昨年よりは、経費が下がった分、上昇しているが、依然として、マイナス幅が大きく、厳しい営業構造であるといえよう。そして、これに、物流収入、不動産収入等のその他営業利益がのるが、その数字は1.94%(昨年1.93%)であり、結果、営業利益は-1.92%(昨年-2.05%)と、気持ち改善してはいるが、マイナスであり、しかも、約2.00%のマイナスであり、厳しい結果となった。

   これを受けて、キャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローは-10.36億円(昨年-20.23億円)と、数字は改善しているとはいえ、依然として、マイナスであり、厳しいキャッシュである。本来、営業キャッシュフローは減価償却費も大きく、マイナスになることは少ないが、マックスバリュ北海道は、特に、昨年も今年も仕入れ債務の大きな減少が起こっている。その金額は-14.77億円(昨年-22.20億円)と巨額な数字となり、これが営業キャッシュフローを大きく下げている要因といえよう。

   そして、投資キャッシュフローであるが、1.92億円(昨年-3.26億円)と正反対の結果となった。本来、投資キャッシュフローは文字通り、投資へのキャッシュフロー、食品スーパーマーケットであれば、新店開発への投資がほとんどであり、マイナスになるのが一般的である。そこで、今期、投資キャッシュフローがなぜプラスになったかであるが、昨年もそうであったが、建設協力金を2.00億円(昨年1.86億円)回収しており、これが財務に大きく貢献したといえよう。結果、フリーキャッシュフローは-8.44億円(昨年-23.49億円)となり、昨年よりはマイナス幅が大きく削減されたが、依然として、マイナスが大きいといえる。

   したがって、財務キャッシュフローで、この赤字分をどうするかが課題となるが、今期は-7.25億円(昨年16.47億円)と明暗が分かれた。その中身を見ると、今期は長期借入金の返済-7.25億円のみであり、これ以外の項目が0であることが大きい。昨年も同様に長期借入金の返済を-7.19億円行っているが、それ以上に、長短借入金を24.02億円借り入れており、その差が大きかったといえる。また、昨年は配当を0.35億円実施しているが、今年はわずか7千円であり、配当の原資が獲得できなかったことが大きいといえよう。結果、トータルキャッシュフローは-15.69億円(昨年-7.02億円となり、昨年もマイナスではあったが、今年は、さらに、マイナス幅が広がり、結果、昨年もそうだが、今年も現金を大きく取り崩すこととなり、キャッシュが大きく減少している。

   このように、2011年1月期のマックスバリュ北海道の決算は極めて厳しい結果となり、財務状況も同様に厳しい状況になったといえる。特に、営業段階では経費比率は若干改善したが、原価の改善が見られず、結果、厳しい経営状況に置かれたといえよう。食品スーパーマーケットの利益はまずは経費比率をいかに低く抑えられるかにあるが、残念ながらマックスバリュ北海道は昨年よりは改善したとはいえ、26.68%と高めの経費比率である。したがって、この数字を前提に利益を出してゆくにはかなり、付加価値の高い商品戦略が必要となる。しかも、マックスバリュ北海道のある北海道商圏はアークスがプライスリーダーとなっており、ディスカウント路線が鮮明である。

   今後、マックスバリュ北海道がこの厳しい競争環境の中、利益を出してゆくには、この経費比率の改善が避けられない経営課題といえよう。次の中間決算に向け、そして、今期、マックスバリュ北海道がどこまで経費比率を引き下げ、利益改善を図れるか、まさに正念場といえよう。

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June 23, 2010

週間ダイヤモンド、「コンビニ農業」を特集!

   最新の週間ダイヤモンド、6/26号で「コンビニ農業」の特集が組まれた。サブタイトルは、「年商4000万円を実現した新規就農システム」、「フランチャイズ方式と貸し農園で進む革命」、さらに、サブサブタイトルでは、「企業の農業参入加速、イトーヨーカ堂、住友化学、ワタミ、・・」、「あの人気講師が伝授!失敗しないベランダ農園」、「今からでも入園できる「貸し農園」リスト!」、「戸別保証制度は天下の愚策か!?民主vs自民vsみんなの党」である。約40ページの特集記事であるが、興味深い内容であり、一気に読んでしまった。

   さて、その中身であるが、Part1では、「フランチャイズ型で安定供給を実現」と題し、野菜クラブの農業フランチャイズの動向を取り上げている。すでに、青森、静岡、群馬、島根に生産拠点ができつつあり、モスフードサービスやスーパー、生協等への安定供給が始まっているという。特に、冒頭で塚本さんの独立の事例が紹介されているが、昨年は7ヘクタールの農地を借り、売上高は4500万円であったという。このPart1では農業生産法人の推移もグラフで示されているが、2008年度には10,000件を超え、年々その数が増えており、生産者の自主的な組織化が進んでいることがわかる。また、このPart1ではワタミ、いちかわライスビジネス、和郷園、西部開発農産、茨城白菜栽培組合なども紹介されている。

   Part2は「貸し農園が自給力を高める」と題し、いまはやりの貸し農園の特集である。貸し農園の種類としても、市民農園、滞在型市民農園、農業体験農園、民間の体験農園等様々であり、値段も月2,000円ぐらいからあり、手ごろな価格である。このPart2では、カリスマ農業者も登場し、冬季湛水・不耕起栽培の提唱者岩澤信夫氏、NHK「やさいの時間」の講師、藤田智氏等が紹介されている。

   そして、Part3では、「農業を活性化する企業、競争力を奪う政争」と題し、食品スーパーマーケットと最も関係の深い小売業の農業参入の特集である。特に、小売業の2大企業、イオンとイトーヨーカ堂の事例が取り上げられており、興味深い内容である。イオンの記事の内容はグリーンアイについてであり、何と、すでに、4500農家との契約栽培が進んでおり、野菜55種類、果物20種類を扱い、店頭の農産物の15%を占めるまでになったという。ただ、さすがに、リーマンショック以降は消費者の低価格志向が強まり、販売量が伸び悩んだという。 

   一方、イトーヨーカ堂であるが、農業には2008年8月に参入し、翌、2009年12月期には黒字転換したという。今後、農業事業を拡大するとのことで、7月にはセブンファームを設立し、今後、全国10ケ所への展開を目指し、農業法人へ積極的に出資してゆくという。これだけ、早く、黒字化した理由は、千葉県のJA富里市と組んでスタートできたことが大きいという。ちなみに、イトーヨーカ堂が農業へ参入するきっかけは、食品リサイクル法の改正にあったという。したがって、当面の目標はリサイクル法に定められた食品リサイクル率45%を目指すとのことである。この2大、小売業以外でも、農業への参入はあとを絶たず、キューピー、カゴメ、キューサイ、JFEライフ、ドール、サイゼリア、ワタミ、メルシャン、阪急百貨店、モスフードサービス、マンズワイン、豊田通商等、年々増加傾向にあるという。

   このPart3では、この企業の農業参入特集以外にも、民主党の個別所得補償制度についても取り上げている。特に、興味深いのは、水田作付面積別の平均農業所得のグラフであり、これを見ると、20ヘクタールを超えると急激に所得が上昇し、何と年間1,200万円近い数字となる。このような状況の中、戸別所得補償制度が動きだすと、農地を集約化するメリットが薄れ、農業生産法人が借り受けている農地の貸し渋り、貸しはがしが起こり、農地の集約化にブレーキがかかり、農業の生産性が落ち込むのはないかという懸念が提示されている。

   そして、全体のまとめとして、民主党、自民党、みんなの党の政治家のコラムが特集され、約40ページ、3部に分けてまとめられた特集記事が終了することになる。全体のタイトル、「コンビニ農業」を超え、政治の世界まで踏み込んだ、スケールの大きな農業特集の記事であるといえ、農業生産者の最新の動向が特集されていて、実に、興味深い内容である。

   このように、最新の週間ダイヤモンドが「コンビニ農業」と題し、Part1、Part2、Part3の3つに分けて、農業生産者を真正面から取り上げた特集記事であり、内容的にも興味深いものが多い。食品スーパーマーケットとも関係の深い、小売業の農業参入の記事もあり、現時点では最先端の農業生産者の現況といえよう。これを読む限りでは、農業がいま大きく変わろうとし、生産者自らが創意工夫、組織化に踏み切り、自らの力で所得の向上をはかっているといえ、新たな農業革命が起こるのではないかと思える。今後、ますます、農業は日本の中で新たな重要な産業となるのではないかと思える特集記事であるといえよう。

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June 22, 2010

コンビニ売上速報、2010年5月、-1.1%!

   社団法人 日本フランチャイズチェーン協会が6/21、2010年5月期の売上速報を公表した。結果は全体が-1.1%、既存店が-3.2%となり、全体は11ケ月連続、既存店は12ケ月連続のマイナスとなった。このコンビニの売上速報は、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの10社の集計であり、ほぼ、日本のコンビニ全体を網羅しており、信頼度の高い数字といえよう。

   協会自身も、「上・中旬は晴れの日が多く、下旬は曇りや雨の日が多かった。北日本から西日本にかけては強い寒気が南下し気温は平年を大きく下回ったものの、天候による目立った影響は無かった。・・」とコメントしており、天気等の影響ではなく、コンビニを取りまく経済環境にあると示唆しているといえる。

   そこで、さらに、売上げダウンの要因を客数、客単価で見てみたい。まずは客数であるが、全体は117,362.9万人となり、昨年対比では1.1%増となった。これは店舗数が42,879店舗(1店舗当たりに換算すると882人/日)となり、昨年と比べ1.7%増加したことが大きい。ちなみに、既存店の客数は109,519.6万人であり、昨年対比では、-1.0%と厳しい状況となった。したがって、新店効果により全体の客数は1.1%と増加したが、既存店は-1.0%と依然として、厳しい客数であるといえよう。

   一方、客単価の方であるが、全体は564.2円となり、昨年対比は-2.2%となった。既存店も558.2円となり、昨年対比は-2.3%と、さらに厳しい数字であり、客数よりも客単価の落ち込みが大きかったといえよう。しかも、昨年対比でのダウンは全体、既存店ともに18ケ月連続のマイナスとのことで、深刻な状況であるといえよう。

   一般に小売業の売上高はこのように客数と客単価で決まり、客数は商圏により、客単価はマーチャンダイジングにより決まる要素が大きい。今回のコンビニの売上速報を見る限り、全体、既存店とにも売上高ダウンの影響は、客単価の影響が大きいといえ、したがって、マーチャンダイジングの問題が18ケ月間という中長期に渡って起こっているといえよう。

   では、商品別に見た場合、落ち込みの大きいところはどこであろうか。今回の統計では、商品を4つの分類に分けて集計しているが、それを見ると、最も売上げが落ち込んだところは、売上構成比が29.9%ある加工食品であり、-2.7%であった。ちなみに、加工食品とは、菓子類(生菓子を除く)、ソフトドリンク(乳飲料を除く)、アルコール飲料(日本酒、ウイスキー、ワイン等)、調味料(味噌、しょう油、うま味調味料、ソース等)、嗜好品(コーヒー、お茶等)、食塩、砂糖、食用油、米穀、乾物、各種の缶・瓶詰類、冷凍食品、アイスクリーム、レトルト食品、インスタント食品、焼きのり等である。なお、たばこは非食品に入っているで、いわゆるtaspoの反動ではないことがわかる。ここ最近ではデフレ環境の影響であるともいえるが、これを含め、コンビニ同士、食品スーパーマーケット、ドラックストア等の競争環境の厳しさが反映されたものといえよう。

   次に落ち込みの大きかった部門は売上構成比34.1%の日配食品であり、-0.9%であった。この日配食品は、米飯類(寿司、弁当、おにぎり等)、パン、 調理パン、惣菜、漬物、野菜、青果、水物(豆腐等)、調理麺、卵、加工肉(ハム、ウインナー、ベーコン等)、牛乳、乳飲料、乳製品(バター、チーズ等)、練物(ちくわ、かまぼこ等)、生菓子(ケーキなどの和洋菓子)、サラダ、デザート類(プリン、ゼリー、ヨーグルト等)等であり、ここがまさにコンビニの中核商品である。

   これ以外では売上構成比31.5%の非食品が-0.3%と若干売上が下がっているが、ほぼ横ばいといえよう。具体的な商品としては、雑誌、書籍、新聞、衣料品、袋物類、文房具、ブラシ、玩具、雑貨、たばこ、ペットフード、乾電池、テープ、CD、電球・蛍光灯、電卓、燃料、人形、サングラス、履物、園芸用品、ゲームソフト、花火、洗剤、化粧品、医薬品、医薬部外品栄養ドリンク、陶磁器・ガラス器、金物、紙製品、フィルム、切手、はがき、収入印紙、装身具等である。

   そして、もうひとつ、サービスであるが、売上構成品はわずか4.5%であるが、この部門は唯一伸びている部門であり、2.0%の上昇である。ちなみに、コンビニのサービスとは、コピー、ファクシミリ、宅配便、商品券、ギフト券、乗車券、各種チケット、テレフォンカード、宝くじ、D.P.E、レンタル、航空券、宿泊券、クリーニング等である。

   このように、2010年5月期のコンビニの売上速報は依然として厳しい状況であり、まるまる1年マイナスが続いており、現在、コンビニは極めて深刻な状況にあるといえよう。特に、客数よりも客単価の落ち込み、商品では加工食品、日配の落ち込みが大きいといえ、いずれもコンビニの中核商品であるだけに、厳しい結果であるといえよう。デフレ環境は当面続くものといえ、コンビニの数字がいつ上向くか予想がたたない状況であり、しばらくは厳しい局面が続くものといえよう。

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June 21, 2010

オーケーストア新店、川越店を見る!

   オーケーストア、店舗No.59、最新店舗、川越店を見る機会があった。オープンが4/9であるので、まだ約2ケ月目のまさに、新店である。ホームセンター島忠ホームズの中の一角にオープンしたNSC(近隣型SC)であり、店舗面積は700坪強、オーケーとしては大型タイプの店舗である。平日のお昼すぎであったが、駐車場はほぼ埋まり、店内もお客様が数多く見られた。

   埼玉県の川越はヤオコーの本社があり、オーケー川越店のすぐ近く、直線距離で数kmのところに、ヤオコーの基幹店舗、ヤオコー川越南古谷店があり、さらに逆側、数kmのところには、ヤオコー川越山田店があり、いずれも直競合といえよう。川越にはヤオコーのもう一店舗、川越新宿店があるが、これは、川越駅を超え、反対側であり、直競合にはなっていない。ただ、ヤオコー本社を取り巻くトライアングルに配置された各店舗をにらむ位置にオーケーがクサビを打った出店であり、明らかにヤオコーを強く意識した新規出店である。これにより、川越はいきなり、日本でも有数の激戦地区となったといえよう。川越にはヤオコーの本社に加え、地方百貨店の雄、丸広百貨店の本店もあり、丸広百貨店の食品売場との競合も発生しているといえる。

   恐らく、今後、数ケ月後には川越商圏の食品の物価が確実に下がることになるのではないかと思う。実際、オーケーの店内に置いてある商品情報(ちらし)を見ると、「ナショナルブランド商品については、地域一番の安値を保証しています。当店の通常売価が、競合店の価格(特売品、目玉商品も含む)より高い場合、私たちは値下げし、「競合店に対して値下げしました」の表示をつけて販売しています。」とうたっており、さらに、「ナショナルブランド商品について、地域一番の安値を保証しているのはオーケーだけです。だから、オーケーで買って損をすることはないのです。」と付け加えている。オーケー川越店の競合店は明らかにヤオコーであり、ヤオコーを強く意識しての宣戦布告ともとれる言葉である。

   さらに、この商品情報では、「オーケーのお茶」というコーナーがあり、そこでは、「百貨店の商品と飲み比べて商品を選定し、お得になるように売価を設定しています。万一値打ちが無かったら、代金は返却します。」、さらに、「百貨店で、100g1,500円(税込1,575円)で売っている商品と飲み比べて、商品を選定しました。」というコメントを入れており、オーケー静岡産やぶ北煎茶100g900円をお試し価格825円で訴求している。これ以外にも百貨店を強く意識したお茶の訴求があるが、明らかに、この百貨店は丸広百貨店であろう。

   オーケーがこれだけ、自信、確信をもって価格にこだわれる理由はどこにあるかであるが、それは、オーケーの経費比率にある。オーケーの経費比率は現在15%を切っており、これは、食品スーパーマーケット業界の決算公開企業約50社の中では断トツのトップであり、ウォルマートよりも遥かに低い経費比率である。これに対して、ヤオコーの経費比率は28%強であり、約2倍の差がある。この数字を見る限り、オーケーがヤオコーに対して価格競争に挑むことはあっても、ヤオコーがオーケーに対して価格対抗することは理論的には成立しない数字であり、価格競争ではオーケーの圧勝とならざるをえない。

   したがって、オーケーは価格競争では圧倒的に優位にたてる状況にあり、競合店、川越の場合はヤオコー、そして、丸広百貨店に対して極限の価格競争に挑むことが可能である。特に、このオーケー川越店はオーケーの中でも700坪強という大型店であり、実際のレイアウトを見ても、雑貨、グロサリーを圧倒的に強化した店舗であり、川越商圏においては、あらゆる商品が最安値となっているといえよう。いわば、食品に関しては、川越のブラックホールのような状況となっているといえ、価格面で見る限り、圧倒的なプライスリーダーといえよう。

   もちろんオーケーにも死角はある。価格訴求だけでは顧客の支持を得られにくい生鮮、惣菜、日配等については、ヤオコーの方が一日の長があるといえよう。また、グロサリー、日配等の品揃えにおいて、価格訴求にこだわるあまり、No.1、あるいはNo.2メーカーがカットされるなど、顧客のニーズを充分に組みとれないカテゴリーもある。ここを川越の消費者がどう評価するか、その答えは、もう数ケ月見る必要があろう。

   このように、川越というヤオコー、丸広百貨店の本拠地に突如、オーケーという強力な大型ディスカウント食品スーパーマーケットが出現したことは、単なる食品スーパーマーケットどうしの競争に終わらず、川越商圏全体へ大きな波紋を投げかけることになろう。今後、数ケ月かけ、この波紋がどのように広がってゆくのか先を読むのは難しい面があるが、現時点では明らかに、川越商圏であらゆる食品の価格が最も安い大型食品スーパーマーケットが出現したことは事実である。恐らく、川越全体の物価水準を引き下げることになる可能性が高いといえ、オーケー川越店の動向から当面、目が離せない状況になったといえよう。

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June 20, 2010

マックスバリュ中部、2011年1月、第1四半期、減収増益!

   いよいよ、食品スーパーマーケット業界の注目の第1四半期決算の公表が始まった。先陣を切るのは、1月期決算企業であり、6/9、マックスバリュ中部が2011年1月期の第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益277.17億円(-1.1%)、営業利益3.41億円(388.3%)、経常利益4.31億円(381.0%)、当期純利益0.66億円(昨年は赤字)となり、減収とはなったが、昨年の厳しかった反動もあり、大幅な増益となった。特に、マックスバリュ中部自身も、「既存店売上高は、前年同期比98.7%(同客数102.7%、同客単価96.2%)となり、売上高荒利益率は24.8%(前年同期間24.5%)と、概ね計画通りとなりました。」とコメントしており、厳しい経営環境の中、ほぼ計画通りの数字に落ち着いたようである。

   そこで、営業利益が大幅に上昇した要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.23%(昨年75.54%)と0.21ポイント下がっており、原価の改善が進んだ。これに関して、マックスバリュ中部は、「イオンのグループ力を活かした商品調達やトップバリュ商品等の更なる販売拡大を図り、競争に打ち勝つ価格の実現に取り組んでおります。・・」とコメントしており、トップバリュの原価改善の寄与が大きかったのではないかと思われる。結果、売上総利益は24.77%(昨年24.46%)となった。

   一方、経費の方であるが、26.23%(昨年26.88%)と、こちらも、0.65ポイント減少しており、経費の削減も進んだ。これに関しても、「低コスト構造の実現に向け、既存店舗の活性化により品揃えや販売方法、店舗オペーレーションの単純化・標準化及び設備の改善、イオングループITの導入等を進め、連結子会社デリカ食品株式会社と連携しながら業務の効率化と生産性の向上を図っております。・・」とのことで、経費も大きく改善することができた。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-1.46%(昨年-2.42%)と改善したが、依然として、マイナスであり、今後、もう一段と原価、経費の削減が必要といえよう。それでも、原価、経費、ダブルでの利益改善が進んだことにより、昨年と比べ、約1.0%と大きく改善したことは大きいといえよう。これに、その他営業収入として、不動産収入、物流収入等が乗り、営業利益となるが、その、その他営業収入は2.72%(昨年2.68%)と、こちらも改善し、結果、営業利益は、1.26%(昨年0.26%)と、大きく改善した。ただ、まだ、1%台であるといえ、今後、今回のトリプルでの利益改善をどこまで推し進められるかが、次の中間決算までの当面の課題といえよう。

   この好調な決算を受けて、キャッシュフローの流れであるが、営業キャッシュフローは2.69億円(昨年3.04億円)と、減少した。これは、当期純利益は昨年の0.66億円から2.64億円と大幅に上昇したが、たな卸資産等の増加があり、相殺されたためである。ついで、投資キャッシュフローであるが、-0.28億円(昨年-15.33億円)と、今期は大幅に削減し、投資を思い切り控えていることがわかる。その要因は新店関連への投資を昨年の-13.43億円から今期は-0.66億円と、控えたことによる。したがって、第1四半期時点ではキャッシュを投資に回すことなく、財務改善に振り向ける決断をしたといえよう。結果、フリーキャッシュフローは2.41億円(昨年-12.29億円)と、昨年の逆流から順流のキャッシュフローとなった。

   そして、財務キャッシュフローであるが、0.96億円(昨年2.91億円)と、プラスとなった。これは、残念ながら、フリーキャッシュフローの範囲内で財務キャッシュフローを賄ったわけではなく、短期借入金を新たに5.00億円調達したためである。では、何が財務キャッシュフローを増大させたかであるが、配当金が-2.38億円(昨年-2.18億円)と最も大きく、株主への配当に投資を控え、借入をしてまで、最優先に実施したためである。ついで、長期借入金の返済-1.64億円(昨年-0.89億円)であり、この2項目が財務キャッシュフローの支出の大半を占めている。

   結果、トータル3.37億円(昨年-9.37億円)となり、キャッシュは増加したが、有利子負債の増加が見られ、自己資本比率は33.5%(昨年33.6%)と依然として、厳しい状況にあり、財務の改善にまで、今期の好調な決算が及ばなかったといえる。それにしても、この第1四半期の利益改善がキャッシュフロー上では財務改善に反映されず、投資を控え、配当に最優先でキャッシュを回さざるをえず、マックスバリュ中部としては苦渋の経営決断であったといえよう。

   このように、この第1四半期のマックスバリュ中部の決算は減収増益、しかも、昨年が厳しい決算結果であったこともあり、大幅な増益となった。特に、原価、経費、そして、その他営業収入とトリプルでの利益改善が図れており、理想的な利益改善になったといえよう。ただ、その利益改善が財務改善につながっているとはいえず、依然、自己資本比率は33.5%と、約70%を負債に依存する厳しい構造であり、今後、いかに財務の改善につなげていけるかが課題といえよう。次の中間決算、マックスバリュ中部がどこまで財務改善に踏み込むか、注目である。

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June 19, 2010

ザクリッチ復活、金額PI値201円、冷凍食品トップ!

   ザクリッチが復活した。恒例の日経MJ、新製品週間ランキングにおいて、冷凍食品No.1にロッテアイス、ザクリッチ105mlが金額PI値201円でトップにたった。先週は63位であったので、一気にトップに躍り出たといえる。ただ、金額PI値は201円、カバー率も33.6%であり、まだまだ十分な状況とはいえず、生産体制が完全復活とはいたっていないようである。実際、ロッテのホームページを見ると、「発売当初の計画を大きく上回って供給が間に合わない状況となり、一時販売休止させていただいておりました弊社商品「ザクリッチ」は、下記地区での販売再開をさせていただきます、・・」とのことであり、まだ、地域限定での復活といえよう。

   このザクリッチ以外に冷凍食品は、今週はベスト20、すべてアイスクリームとなり、冷凍食品は0、いよいよ、今年もアイスクリームの季節となったといえよう。No.2は江崎グリコ、パナップ<グレープ><カフェラテ><ストロベリー>153mlであり、金額PI値196円、No.3はハーゲンダッツジャパン、ミニカップクリームチーズラズベリー120mlであり、金額PI値191円であった。この3品が金額PI値200円前後の新製品であり、4位以下は金額PI値150円を下回り、今週の冷凍食品はこの3品が注目といえよう。今後、ザクリッチがどの辺で落ち着くかがポイントといえよう。

   今週はその他食品でも新たな動きが見られる。No.1に今週初登場の日清食品、カップヌードルミートキング80g、金額PI値349円が入った。カバー率も62.0%と高く、今後、注目の新製品といえよう。これはカップヌードルシリーズの肉、ミートを全面に打ち出した新製品であり、来週以降の金額PI値が気になるところだ。No.2は先週5位から順位を上げて来た日本ミルクコミュニティ、ナチュレ恵megumi脂肪0 400gであり、金額PI値277円である。カバー率も56.0%であり、3/22発売であるので、そろそろ新製品から外れる期間となるが、ここへ来て、また、数字が上昇しつつあるといえよう。

   逆に、今週、金額PI値が大きく下がった新製品であるが、家庭用品No.1のマックスファクター、SK-Ⅱフェイシャルトリートメントエッセンス250ml、金額PI値585円である。先週比、何と金額PI値1,060円のダウンであり、大幅な下げである。平均単価が14,973円と、高額商品であるので、PI値は限りなく低く、平均単価アップで金額PI値を引き上げてゆく新製品であるが、これだけ極端に落ちることもあり、これが高額商品のリスクといえよう。ただ、それでも、金額PI値は585円とAランクの500円を超えており、今週の全新製品の中ではNo.1の数字である。金額PI値への貢献はPI値もさることながら、平均単価の存在がいかに大きいかを示しているといえよう。

   また、今週初登場の新製品としては菓子も注目である。No.1は森永製菓、午後の紅茶クッキー<ミルクティー>1枚パック×10袋、金額PI値240円であるが、No.2からが、今週初登場の新製品が続く。No.2、No.3は、カルビー、夏ポテト紀州の南高梅65g、金額PI値240円、同じく、カルビー、夏ポテトわさび塩65g、金額PI値205円が入った。カバー率も72.8%、74.4%と今週初登場としては極めて高く、注目の夏特有の新製品といえよう。そして、No.3はロッテ商事、コアラのマーチ<高原のバニラアイス>48g、金額PI値185円である。コアラのマーチは、同様に初登場で、No.7にも上がっており、コアラのマーチ<七夕限定>50g、金額PI値170円であった。これ以外にも、菓子では、今週初登場の新製品が3品あり、合計、全20品中、7品と大半を占めており、菓子は今後しばらくは目が離せない状況が続こう。

   そして飲料であるが、今週初登場は1品のみであり、No.9、伊藤園、TEAS’TEA MANHATTANミルクティー500mlペットボトル、金額PI値164円であった。一方、No.1であるが、日本ミルクコミュニティ、毎日骨太1000ml、金額PI値425円であり、さすが牛乳だけあって高い数値である。No.2は日本コカ・コーラ、アクエリアス500mlペットボトル、金額PI値394円であり、ここまでが金額PI値Bランク300円以上の新製品である。そして、No.3には、麒麟麦酒、休む日のAlc.0.00%350mlであり、金額PI値は249円であった。こう見ると、ノンアルコールビールもほぼ定着したといえよう。これ以外では、No.4にヤクルト本社、ヤクルトカロリーハーフ65ml×5本マルチパックが入り、金額PI値は228円となった。ここまでが、金額PI値Cランク、200円を超える飲料の新製品ランキングである。こう見ると、飲料も夏本番を迎え、アクティブに動きはじめたといえよう。

   このように、今週の新製品週間ランキングはザクリッチの復活が注目の動きであるが、その他食品、菓子も同様に、夏を迎え、動きが顕著であるといえ、今後、注目の商品群といえよう。特に菓子は夏限定商品も数多く登場しており、来週意向の動きが気になるところだ。ただ、残念ながら、金額PI値はSK-Ⅱの585円以外は500円のAランクを超える新製品はなく、残念である。Bランクの300円、Cランクの200円以上の新製品は比較的多い週であったといえるが、いよいよ本格的な夏が近づいているといえ、来週以降の新製品の数字に注目したい。

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June 18, 2010

キャッシュと客単価(金額PI値)を考えてみる!

   ここ最近ID-POS分析に携わる機会が多くなったが、ID-POS分析をすればするほど、客単価、すなわち、金額PI値の位置付けを改めて再認識するにようになった。特に、都市型食品スーパーマーケットにおいては、金額PI値を引き上げることはもちろん重要であるが、それ以上に来店頻度を引きあげることはもっと重要であり、ここに着目したマーチャンダイジングが大きなポイントになることが明らかになりつつある。

   商品は突き詰めれば、商品と引き換えに、どれだけたくさんのキャッシュを顧客からいただけるかが問われる存在であるといえる。食品スーパーマーケットとしては、可能な限り、より多くのキャッシュを顧客からいただくことが望ましいが、そのために、従来のPOS分析では売上金額=客数×金額PI値(客単価)までの分析が限界であり、ここから、客数よりも金額PI値(客単価)に着目し、金額PI値を引き上げるべくマーチャンダイジングの強化を図ってきたといえる。そして、さらに、一歩踏み込み、金額PI値をPI値×平均単価に分解し、PI値を引き上げるか、平均単価を引き上げるか、ないしは、双方を引き上げるかがマーチャンダイジングの課題であったといえる。

   もちろん、これは理論的に正しい方向であり、この方向でマーチャンダイジングを考えれば、自然、金額PI値は上昇することになり、キャッシュが増大することになる。ところが、よく、見かけるケースであるが、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットでは、当然のことであるが、金額PI値が大きく違うことがある。郊外型の食品スーパーマーケットは金額PI値が高いが、都市型食品スーパーマーケットは金額PI値が低いというケースだ。

   そこで、都市型食品スーパーマーケットの金額PI値をいかに引き上げるかが課題になり、マーチャンダイジングの改善に踏み込むことになるが、確かに改善をはかれば金額PI値の上昇は見られる。ただ、かなり頑張っても、郊外型の食品スーパーマーケットほどは引き上がらない場合が多い。金額PI値だけにこだわると、どうしても、その差が縮まらず、都市型食品スーパーマーケットの金額PI値は低いと結論づけて、それ以上のマーチャンダイジングの改善に踏み込めない場合がある。

   はたしてそうか。確かに、単純な金額PI値では、差があるかもしれないが、もう一歩踏み込んで来店頻度まで考慮したらどうなるか。来店頻度を考慮するとは、まさに、ID-POS分析の世界となり、金額PI値にIDを付けることになる。通常のPOS分析、すなわち、金額PI値はレシート1枚当たりの売上金額であり、客数はレシート枚数のことである。したがって、金額PI値は顧客のレジ通過1回当たりの売上金額が算出されることになるが、このレジ通過1回当たり、すなわち、レシート1枚1枚にIDがついた場合、金額PI値がどう変わるかである。

   この場合、これまの単純なレシート1枚当たりにくわえ、もう一歩踏み込み、レシートの中から同一IDのレシートを集め、そのレシートの総額を計算することが可能になる。これは何を意味しているかであるが、単純なレシート1枚当たりの売上げから、同一IDを加味したIDの総売上げを表していることになる。これがID-POS分析の基本指標、ID金額PI値である。これで見ると、これまでの金額PI値はどう見えるか。

   数式にすると、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、従来の金額PI値にID客数PI値が掛け合わさることになる。ID客数PI値とはレシート枚数÷IDのことであり、これがまさに来店頻度である。たとえば、あるIDに着目した場合、1週間に2回買い物をした場合、ID客数PI値はレシート枚数2枚に対し、IDが1人であるので、2回÷1ID、2.0回/IDとなる。これを食品スーパーマーケットの全客数に広げると、1週間に14,000枚のレシートがあり、その時のIDが7,000人であった場合は、14,000枚÷7,000ID=2.0枚/IDとなり、1人1週間に平均2.0回レジを通過、すなわち、買い物をしたことになる。

   したがって、ID金額PI値で見た場合、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットでは果たして、金額PI値ほど差がでるかどうかはわからなくなる。良く言われることであるが、郊外型の食品スーパーマーケットはまとめ買いをするので、客単価が高いというが、これは、ID金額PI値で見れば、ID客数PI値は低いが、金額PI値が高いということであるといえよう。一方、都市型食品スーパーマーケットは客単価が低いというが、これは冷蔵庫代わりに店を使っているからであり、来店頻度は高いといわれる。これもID金額PI値で見れば、金額PI値は低いが、ID客数PI値が高いということであるといえよう。

   こう見ると、ID金額PI値で比較すると、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットも金額PI値ほど大きな差がでず、場合によっては逆転することすら起こりうるといえよう。これがID-POS分析ではじめて明らかになる数字ともいえ、どうも、都市型食品スーパーマーケットは金額PI値にこだわることはもちろん重要であるが、それと同等、あるいはそれ以上に来店頻度にこだわり、来店頻度を引き上げるマーチャンダイジングに取り組むことがより重要な課題、結果、キャッシュの増大につながるのではないかと思う。

   都市型食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングは、第1ステップの金額PI値で終わることなく、ID-POS分析ができるできないに関わらず、第2ステップの来店頻度にまで踏み込み、キャッシュの増大につなげて欲しいところだ。また、そのことが結果、顧客満足度にもつながるといえよう。

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June 17, 2010

調味料、食品スーパーマーケットの実態は?

   食品スーパーマーケットにとって調味料は重要な商品群であり、特に、グロサリーの中では中核商品といえる。そこで、ここでは、食品スーパーマーケットにとっての調味料の実態を最新のPOS分析結果をもとに見てみたい。まず、調味料をどう分類するかであるが、そもそも食品スーパーマーケットの商品分類は各社まちまちであり、共通の商品分類があるようで、ないのが実態である。そこで、ここでは、総務省統計局が公表している家計調査データと、経済産業省所管の財団法人、財団法人流通システム開発センターが公表しているJICFSコード(JAN Item Code File Service)をもとに調味料のPOSデータを見てみたい。

   まず、家計調査データであるが、家計調査データでは、大分類に油脂・調味料があり、ここで調味料全般を集計している。調味料に油脂まで含めるかどうかは議論が分かれると思うが、ここでは油脂も広く調味料として捉えてみる。では、その実態はどうかであるが、食用油7.57円、マーガリン2.53円、食塩1.27円、しょう油5.40円、みそ7.23円、砂糖3.37円、酢3.23円、ソース2.27円、ケチャップ1.67円、マヨネーズ・マヨネーズ風調味料3.67円、ドレッシング5.07円、ジャム3.63円、カレールウ4.53円、乾燥スープ6.43円、風味調味料5.17円、ふりかけ4.53円、つゆ・たれ9.23円、他の調味料26.67円という結果となる。

   家計調査データは1世帯1ケ月当たりのデータを公表しているので、そのままでは食品スーパーマーケットのPOSデータとの比較が難しいので、ここでは、1世帯1日当たりに、独自に加工し、POSデータとの比較を可能にした。上記数字はほぼ、食品スーパーマーケットの客単価(金額PI値)に近い数字となっており、このまま、実務に直結できる数字であり、すぐに活用可能である。合計、他の調味料が26.67円と大きいので、合計が103.50円となるが、よく見ると、ジャム、マーガリン、ふりかけ、乾燥スープ等も入っている。そこで、これらの項目と、その他調味料を除くと、合計は55.13円となる。

   一方、JICFS分類であるが、調味料関係をピックアップすると、醤油4.50円、砂糖2.50円、低カロリー甘味料0.65円、味噌6.00円、食塩1.10円、食酢1.70円、合わせ酢(和風)2.00円、みりん風調味料0.90円、料理用日本酒1.20円、風味調味料2.00円液体だし0.05円、単一・複合調味料0.50円、ソース1.90円、ケチャップ1.50円、焼き肉のたれ 3.30円、その他のたれ1.20円、マヨネーズ3.50円、ドレッシング5.00円、香辛料(からし・わさび以外)4.20円、からし・わさび 1.50円、つゆ5.35円、中華調味料1.20円、その他調味料0.30円、ゴマ油1.60円、サラダ油・天ぷら油3.70円、オリーブ1.10円、香味油0.02円となる。合計58.47円となる。これも独自に加工し、食品スーパーマーケットのPOSデータとの連動をはかれるようにしているので、そのまま活用可能である。

   JICFSデータは原則1,000人当たりの売上金額であり、通常はカバー率を加味し、導入店舗のみの金額PI値が公表される。かつ、取扱店舗数百店舗のPOSデータの集計となるので、調味料の数だけでもしょうゆ約200品、砂糖約200品、味噌約400品、食塩約170品、ソース約180品、焼き肉のたれ約200品、つゆ約450品など膨大な数になり、調味料全体では約4,500品ぐらいになる。したがって、この数字を単純合計すると莫大な数字となり、意味をなさない。そのため、実務に活用するには総客数で割った金額PI総店を使うか、想定品揃えを設定し、合計するかになるが、いずれにせよ、工夫が必要である。ここでは、想定店舗を推計して、独自に数字を算出している。なお、財団法人流通システム開発センターのPOSデータはniftyで市販もされているので、誰でも、入手可能である。

   双方を比べてみると、良く似た数字となっていることがわかる。たとえば、マヨネーズ・マヨネーズ風調味料3.67円(JICFS3.50円)、ドレッシング5.07円(5.00円)などであり、多少の差はあるが、極めて近い数字となる。これは、消費者側から見たデータも食品スーパーマーケット側から見たデータももとは同じであるので、近い数字になるといえ、したがって、双方、どちらからでもマーチャンダイジング戦略の構築が可能であるといえ、今後、大いに活用して欲しいところである。

   こう見ると、食品スーパーマーケットにおける調味料は約60円ぐらいの客単価(金額PI値)であることがわかる。一般に食品スーパーマーケット全体の客単価は1,500円から2,000円ぐらいであるので、調味料の売上構成比は3から4%となる。また、この内、生鮮食品が惣菜を含め約50%あるので、グロサリー(日配を含む)の中では、7%前後となるのが調味料の実態といえよう。

   このように、調味料は食品スーパーマーケットにとっては、一定の存在感がある商品群であり、全体売上の3%から4%、グロサリーの中では7%前後の割合となるのが実態といえよう。また、品揃えは豊富であり、ナショナルブランドだけでなく、地域ブランドが数多くあり、食品スーパーマーケット各社が独自の品揃えを競っているといえる。食品スーパーマーケットとしては、今後、調味料の品揃えをどう再構築するか、マーチャンダイジングの力量が問われるところである。

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June 16, 2010

神戸物産、2010年10月期、中間決算、絶好調!

   神戸物産が5/28、2010年10月期の中間決算を公表した。結果は、売上高679.33億円(9.8%)、営業利益 13.06億円(414.0%)、経常利益 13.72億円(518.0%)、当期純利益 5.36億円(342.3%)と、増収増益の好決算となった。売上高、利益ともに大幅な上昇となり、絶好調といえよう。ここ最近、この好調さを活かし、神戸物産は、経営戦略も積極策に打って出ており、6/14にはミネラル麦茶の石垣食品との資本業務提携、5/28には食品スーパーマーケットのオークワとの合弁会社の設立をも公表している。

   そこで、この好調な要因を見てみてみたい。まずは、売上高が9.8%増となった要因であるが、神戸物産自身も、「当第2四半期連結累計期間における業務スーパー事業の出店状況は、23店舗の新規出店(退店7店舗)があり、直轄エリア(関東1都3県、関西2府4県)300店舗の展開を達成し、総店舗数は523店舗と着実に販売網を拡大し、・・」とコメントしており、果敢な新規出店が功を奏したといえよう。特に、大市場である関東、関西の直轄エリアへの出店が大きいといえよう。

   これに対して、利益の方であるが、神戸物産も「国内企業の多くが前年実績を割り込む中、当社グループは3月及び4月において過去同月での最高利益を達成するなど好調に推移しました。・・」とコメントしているように、利益面はさらに絶好調であったといえよう。そこで、その要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、94.31%(昨年95.93%)と、1.62ポイント下がっており、大幅に改善されていることがわかる。この厳しいデフレの経営環境の中、原価の上昇を招くことなく、下げられたことが利益貢献には大きかったといえよう。

   特に、今期は、「「安価でクオリティーの高い商品」という消費者ニーズへの迅速な対応をすべく、強みである自社グループ内において商品の製造から販売まで手掛ける「製販一体」の仕組により、安全安心かつ利益率の高い商品を扱った「食卓応援&爆弾価格」や「挑戦します!日本最安値」といった施策を展開しており、・・」とのことで、積極的な価格政策を仕掛けている。さらに、「2000年3月に三木店をオープンしてから「業務スーパー」が生誕10周年を迎えた事を記念して2月より「生誕10周年セール」を新たに開催し、・・」と、積極的な拡販に打って出たことも大きいといえよう。結果、売上総利益は、5.69%(昨年4.07%)と上昇した。

   一方、経費の方であるが、3.77%(昨年3.66%)と、0.11ポイント上昇しており、経費面では、先に上げた積極策、新規出店と強力な販促等が影響してか、上昇が見られる。結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力、神戸物産の場合は、その他営業収入が0であるので、営業利益は1.92%(昨年0.41%)と、大幅な改善となった。経費面はやや上昇が見られたが、それを大きくカバーする原価の改善が功を奏し、大幅な利益改善につながったといえよう。

   ただ、気になるのはキャッシュフローである。今期の営業キャッシュフローは、-6.56億円(昨年10.50億円)とマイナスとなった。本来、利益が好調な状況であるので、営業キャッシュフローはプラスになってもよさそうであるが、結果はマイナスとなった。その要因は、仕入債務が-19.46億円(昨年7.51億円)と反転、昨年の増加から今期は減少に転じたことが大きいといえる。ついで、投資キャッシュフローであるが、-6.06億円(昨年-19.78億円)と、昨年よりは投資、特に、新規出店関連を控えてはいるが、マイナスであり、結果、フリーキャッシュフローは、-12.62億円(昨年-9.28億円)と昨年同様、マイナスとなった。

   したがって、借入を起こすか、現金を取り崩すことになるが、今期の財務キャッシュフローは、-15.88億円(昨年17.08億円)と、さらにマイナス、昨年の短期借入-20.00を返済している。結果、現金を取り崩すことになった。本来であれば、すべてのキャッシュフローがマイナスであり、厳しい財務状況となるはずであるが、今期の現金は91.06億円(昨年95.41億円)と、さほど、減少しておらず、財務の健全性は維持できたといえよう。
こう見ると、神戸物産は、フリーキャッシュフローのマイナス、すなわち、営業キャッシュフローのマイナス、投資キャッシュフローのマイナスを、借り入れをせずに、現金でカバーするという財務改善を目指したキャッシュフロー戦略を採用したといえる。結果、有利子負債は36.87億円(昨年49.92億円:総資産の12.52%)と減少しており、自己資本比率も42.2%(昨年38.6%)と改善した。

   このように、2010年10月期の神戸物産の中間決算は、食品スーパーマーケット各社が売上げ、利益ともに厳しい経営状況にある中、大幅な増収増益となる好決算となり、改めてデフレの中、業務スーパーのマーチャンダイジングの強さが実証された結果となったといえよう。しかも、この好調さを追い風に、ここへ来て、積極的な経営戦略を発動しており、ミネラル麦茶の石垣食品との資本業務提携、食品スーパーマーケットのオークワとの合弁会社設立などを新たに打ち出しており、攻めの姿勢が鮮明である。当面、このデフレ環境は継続することが予想される中、後半、神戸物産が、さらにどのような積極的な経営戦略を打ち出すのか注目である。

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June 15, 2010

タイヨーの2010年2月期の決算を見る!

   鹿児島を中心に88店舗の食品スーパーマーケットを展開しているタイヨーの2010年2月期の決算であるが、今期は厳しい結果となった。営業収益1,268.30億円(-0.3%)、営業利益21.90億円(-35.1%)、経常利益22.53億円(-34.0%)、当期純利益8.22億円(21.4%)となり、当期純利益は増収とはなったが、営業、経常段階では減収減益となった。そこで、今期、タイヨーが減収減益となった要因を中心に、今期の決算状況を見てみたい。

   まずは、原価であるが、78.83%(昨年78.63%)となり、0.20ポイント上昇している。実際、タイヨーを取り巻く経営環境は厳しい状況で推移しており、タイヨー自身も、「当社グループの営業基盤である南九州地区経済は、生産活動におきましては食品関連が伸び悩み、投資関連では公共工事や民間建築工事が低調に推移するなど、景気は低迷が続き、流通を取り巻く環境も消費者の節約志向や生活防衛意識が一段と高まり、低価格競争が激化するなど、大変厳しい経営環境が続きました。」と、コメントしている。結果、売上総利益は21.17%(昨年21.37%)と減少した。

   一方、経費の方であるが、20.52%(昨年19.83%)と、0.69ポイント上昇しており、原価以上の上昇が見られる。タイヨーも、コスト削減については、「精肉のアウトパック事業を拡大するとともに、電力監視システムや混焼ボイラーによりエネルギーコストの削減に取り組み、製造効率の向上に努めてまいりました。」とのことであるが、厳しい結果となった。これは、売上高が1,254.56億円(99.8%)と伸び悩んだことも大きく、特に、今期は新店を佐土原店(4月)、岩川店(6月)、松元店(10月)、日南店(11月)と、4店舗出店しているが、全体を押し上げるまでには至らず、既存店が下がったことが原因といえよう。したがって、相対的に固定費が上昇し、経費の上昇につながったといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は、0.65%(昨年1.54%)とプラスを確保したが、昨年と比べ、大きく下がった。原価、経費がダブルで上昇したことが大きいといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.10%
(昨年1.14%)のり、営業利益は1.75%(昨年2.68%)と、減益となった。

   食品スーパーマーケットの営業構造は、原価、経費、そして、その他営業収入とで成り立っており、この3つの数字がどう動くかが営業利益を左右する。好調な食品スーパーマーケットの状況を見ると、原価、経費、双方が減少し、結果、その差、マーチャンダイジング力が上昇し、さらに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が上昇し、トリプルで利益が上昇する。逆に、利益構造の厳しい食品スーパーマーケットは原価、経費、双方が上昇し、マーチャンダイジング力が下降し、さらに、その他営業収入も減少、トリプルで利益が下降するが、今期、タイヨーはまさに、この状況になっており、今後、まずは、キャッシュの源泉であるマーチャンダイジング力をいかに改善するかが課題といえよう。

   ただ、今期、タイヨーは、「農業生産法人「株式会社アグリ太陽」の農場で、ハウス養液栽培システムにより栽培されたパプリカ、トマト、ナスを収穫し、当社の一部の店舗にて販売、・・」、「商品、販売の改革に着手し、当社の販売データ提供に基づき、お取引先様より商品提案及び販売方法の提案をいただく、MD協議会の運用を開始、・・」などの、マーチャンダイジング改革に着手しており、これらの成果が、今後、どのように数字に寄与するか、その成果が期待されるところである。

   さて、このような厳しい営業状況の中で、キャッシュフローはどのように推移したかを見てみたい。まずは、営業キャッシュフローであるが、30.80億円(昨年89.66億円)と大きく減少している。今期は当期純利益が上昇したにも関わらず、営業キャッシュフローが減少した要因は、仕入れ債務が-14.13億円(45.32億円)となったことが大きい。これは、決算日と金融機関の休日等が重なった時に起きることが多いが、昨年はまさに、重なっており、むしろ、今期の数字の方が正常といえよう。

   一方、投資キャッシュフローであるが、-40.95億円(昨年-22.97億円)と大きく増加している。これは新規出店関連の資産を取得したためであり、今期は前期よりも積極的な新店への投資をしている。結果、合計のフリーキャッシュフローは-10.15億円(昨年66.69億円)とマイナスになった。そして、財務キャッシュフローであるが、6.05億円(-19.06億円)となったが、今期は有利子負債、特に、短期借入金の増加で補っており、気になるところである。結果、トータル-4.09億円(昨年47.62億円)となり、現金の減少となった。結果、自己資本比率が55.4%(昨年56.5%)と若干下がったが、財務面は依然として、安定した数字を確保している。

   このように、タイヨーの今期の決算は、残念ながら、営業、経常段階では減収減益となり、厳しい結果となった。特に、原価、経費が上昇し、その他営業収入が減少するというトリプルで利益を圧迫しており、今後、マーチャンダイジングの改善が最重要課題となったといえよう。ただ、財務は若干、有利子負債の増加が見られるが、安定しており、新規出店も堅調である。今後、タイヨーが、先に上げた取組み課題を含め、どのようにマーチャンダイジングの改善に踏み込むか注目である。

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June 14, 2010

Power Category 2010、Chain Store Age06/15号!

   Chain Store Age、2010年06/15号のパワーカテゴリー特集の冒頭で、今回のPower Category 2010の解説を投稿した。見出しは、「Power Category で売場を活性化させる方法」である。Chain Store Age のPower Category の特集は年2回組まれるが、今回は、Power Category 2010、すなわち、2009年10月から2010年3月までの6ケ月間の注目カテゴリーのランキング特集である。

  今回の注目カテゴリーは、グロサリー、酒、雑貨と3つに分かれており、それぞれのパワーカテゴリーを上げると、以下の通りである。グロサリーでは中華調味料、スパゲティ、お茶漬けの素、インスタントカップめん、ごま油、食用油、キムチ、炒め物調味料、白だし、ヨーグルト、食パン、ガム、ビスケット、クッキー、カップコーヒードリンク、ドリンク剤、インスタントコーヒー、マヨネーズ、低カロリー甘味料、ドレッシング、ルウカレー、ファミリーアイスである。

  酒では、ビール、発泡酒、ワイン(果実酒)、ウイスキー、RTD(缶チューハイ・缶カクテル)、日本酒、新ジャンルアルコール飲料である。そして、雑貨では、シャンプー、ローソク、トイレ用芳香剤、室内用芳香剤、除湿剤、防虫剤、ティシュペーパー、家庭用手袋、たわし・スポンジ、身体洗い用品、生理用品、線香、接着剤、キャットフード、犬用品・用具である。

  今回は、これらのPower Categoryをすべて事前に分析した上で解説を試みた。ポイントは4つ上げたが、中でも、はじめのポイント、「ベスト10の売上構成比に注目!」は、今回分析してみて、改めてカテゴリーの不思議さに驚かされる内容となった。従来から様々なカテゴリーのPOS分析を行ってきたが、実際にPOS分析を行うと、カテゴリーは大きく2つに分かれることがわかる。重点商品の売上構成比が極めて高いカテゴリーと、重点商品の売上構成比が極めて低いカテゴリー、すなわち、品揃えが極めて重要なカテゴリーである。

   この2つのタイプのカテゴリーは当然のことであるが、マーチャンダイジング戦略が全く違ってくる。重点商品の売上構成比が高いカテゴリーは文字通り、重点商品を強化することが最大の活性化となるので、重点商品を絶対に欠品させず、鮮度も最高に保つことがポイントとなる。今回の分析の結果、重点商品の売上構成比が70%を超えるカテゴリーとして、ごま油77.3%、マヨネーズ74.8%、カップコーヒードリンク72.4%、ティシュペーパー71.9%、除湿剤70.8%、お茶漬けの素70.5%が上がってきたが、このような商品は食品スーパーマーケットの売場では数限りなくある。

   そして、これらのカテゴリーとは正反対のカテゴリー、すなわち、重点商品の売上構成比が極めて低いカテゴリーであるが、このマーチャンダイジング戦略は、重点商品の強化を前提として、それ以上に、品揃えを充実させることが最大のポイントになる。この典型的な商品として、ワイン10.2%、キャットフード11.2%、身体洗い用品16.6%、ビスケット・クッキー18.0%、日本酒19.4%がこれに当たる。先の重点商品の売上構成比が高いカテゴリーとは全く正反対の傾向を示しているといえよう。このカテゴリーで仮に、品揃えを絞り込み、重点商品のみの強化をした場合は、まず売上げはとれない。むしろ、落としてしまうことがほとんどであり、これらの商品は可能な限り、品揃えを増やすマーチャンダイジング戦略をとることがポイントとなる。したがって、それなりのノウハウの確立が必要であり、一筋縄ではいかないカテゴリーであるといえよう。

   これ以外にも、今回は、ポイント2で、「伸びているPower Categoryに注目!」、ポイント3で、「首都圏で注目のPower Category!」、そして、ポイント4で、「Power CategoryをよりPower化するために」と題し、Power Categoryの解説を試みている。特に、この中で、意外だったのは、「首都圏で注目のPower Category!」である。分析して見て、首都圏では意外に雑貨が地方と比べ点数PIが極めて高い商品が多かったことである。たとえば、除湿剤268.5%、犬用品・用具255.9%、キャットフード194.9%など、言われてみればと思うカテゴリーであるが、これほど、全国平均との差が大きかったのは意外であった。

   首都圏で強いカテゴリーの大半が雑貨となったが、食品、酒でも少ないがいくつか上がってきている。たとえば、ワイン171.1%、ビール127.2%、低カロリー甘味料129.9%などである。都心部の食品スーパーマーケットはどうしても家賃が高くなり、店舗面積がとれず、雑貨、酒のスペースが十分にとれない面があるにも関わらず、このような高い数字がでることを考えると、マーチャンダイジング戦略を再検討することも必要であろう。

   このように、Power Category2010で取り上げた各カテゴリーをつぶさに見ると、様々な発見があり、また、それぞれの特徴が明確に出ており、マーチャンダイジングの奥深さを改めて感じることができる。特に、この時期はデフレの真っただ中での数字でもあり、今後、しばらくはデフレ傾向は続くものと予想されるので、再度、今回の主要カテゴリーについては、重点商品、品揃え、販促を含め、マーチャンダイジング戦略を見直して欲しいところだ。次回は、6ケ月後になると思うが、今回のPower Categoryがどのように変化するか、注目したい。 

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June 13, 2010

ワインの重点商品、Chain Store Age 6/15、PI値検証!

   Chain Store Age 、2010年、6/15号へワインのMD特別リポートを寄稿した。ワインについては、以前、3年前になるが、2007年、11/15号で同様にワインのMD特別リポートを寄稿したことがあるが、それ以来の本格的なワインのPOS分析である。特に、前回が3ケ月間、2月から4月までの累計、延べ約6,000万人の客数(レシート枚数)の数字であったが、今回は2009年4月から2010年3月までの丸1年間のPOS分析である。客数も約2億5,000万人という膨大な数をもとにしたPI値分析となった。商品数も5,972品とすごい品数である。

   ワインがこんなに品揃えがあるのかと思われるが、これが日本の代表的な食品スーパーマーケット約100社、約400店舗の丸1年間に販売実績のあったワインの全商品であるので、事実といえよう。したがって、食品スーパーマーケットのワインのバイヤーは、この約6,000品目の中から、売場に約100品から200品を選定する訳であるので、至難の業といえよう。特に、小型食品スーパーマーケットのワイン売場は30品から50品ぐらいが限界といえ、まさに、バイヤーの腕の見せ所といえる。

   今回のChain Store Age、6/15号では、この膨大なワインを2つの軸をもとにPOS分析を行い、この中から、食品スーパーマーケットが品揃えすべき重点商品を選定してみた。2つの軸とは、本文でも解説したが、バイヤーの目(客数PI値)と顧客の目(金額PI扱店)である。また、POSデータの提供はTOPNAVI-NETである。特に、TOPNAVI-NETは金額PI値の総店と扱店が算出され、そこから客数PI値も逆算できるので、実務的なPOS分析に踏み込むことができ、便利である。

   本文でも解説したが、バイヤーの目(客数PI値)とは、ワインの導入店舗の客数/全店舗の客数であり、この数値を見ることにより、全体顧客のどのくらいの割合を対象とした結果のワインであるかがわかる。実際の数字を見るとびっくりするが、5%以上の客数PI値の商品が約6,000品の中でわずか111品しかなく、いかに、ワインの品揃えが各店大きくばらついているかがわかる。

   一方、顧客の目(金額PI扱店)であるが、これは、ワインの売上金額/そのワインの導入店舗のみの客数であり、まさに、顧客のワインの金額支持率がみれる。これに対応する指標が金額PI総店であるが、これはワインの売上金額/全店舗の客数であり、そのワインを導入していない店舗も、導入している店舗もすべて含まれるため、顧客の支持率が少しボケてしまう数字である。したがって、金額PI扱店の方が顧客の支持を強く表している指標であるといえ、重点商品の選定にはより重要な指標となる。

   ちなみに、これらの指標の関係であるが、金額PI総店=客数PI値×金額PI扱店であり、金額PI総店がまさに総合評価指標、すなわち、結果を表し、客数PI値、金額PI扱店がその原因を表しているといえ、今回のワインの重点商品は、バイヤーの目(客数PI値)と顧客の目(金額PI扱店)で選定し、結果、総合評価に至っているといえる。

   このような考え方でワイン約6,000品目の中から重点商品を選定すると、客数PI値5%以上、金額PI扱店200円以上の珠玉のAランク商品が25品、客数PI値5%以上、金額PI扱店が100円から200円までのBランク商品が62品、そして、客数PI値1%以上5%以下、金額PI扱店200円以上のCランクの商品が99品、合計、重点商品は186品となり、その金額PI総店は全体の49.5%になった。これがまさに、この1年間のワイン6,000品目から選びぬいた食品スーパーマーケットの重点商品といえる。

   この186品の中から、誌面の都合上Aランク全25品、Bランク上位20品のみを掲載しているので、今後のワインの重点商品の選定の参考にしていただければと思う。さて、本文でも解説したが、特に、Aランクには1.8Lの大容量の商品が多く登場しており、Bランクには750mlの中容量の商品が多く、これを見る限り、ワインの容量分割は極めて重要であることがわかる。

   また、今回は、1年間のワインのPOS分析でもあるので、参考に、年間のPI値分析も解説した。これを見ると、まさに、11月、12月がワインのピークであり、しかも、今回選定した重点商品186品はいずれも、11月、12月ともに貢献度が高く、改めて重点商品の大切さが浮かび上がっている。また、やや意外だったのは、この時期は平均単価が跳ね上がるのではないかと想定していたが、実際は圧倒的に数量PI値が跳ね上がっており、数量PI値アップの戦略がより重要であるといえる。今年、2010年度のワインの年間計画を立てる際に参考にしていただければと思う。

   このように食品スーパーマーケットでは恐らく圧倒的な品揃えの多いワインについても、POSデータをPI値分析して見ると、重点商品はかなり限定することができ、まずは、これらの重点商品をしっかり販売、しかも年間を通じて販売することが重要であり、その基礎ベースの上に品揃えをどう考え、変化させていくことがポイントであることが、改めて明確になったといえよう。ワインのマーチャンダイジングは、まずは、ワインの重点商品をしっかり決めるところからスタートしたいところだ。

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June 12, 2010

ネットスーパー、飛躍か?

   ここ最近、ネットスーパーが業界誌等で取り上げられる機会が多い。5/15号のチェーンストアエイジでは、「ネットスーパー、第2幕」と題し、主要国内15のネットスーパーが特集された。また、6/10には、インターネット調査の専門会社、(株)クロス・マーケティングが、消費者側からの視点として、「ネットスーパー利用実態調査2010」を公表した。そこで、ここでは、これら2つの特集、そして、調査結果をもとに、ネットスーパーについて、企業側と消費者側からの視点で、現況を見てみたい。

   まず、チェーンストアエイジ5/15号のネットスーパーの特集であるが、主要15社とは、イオンネットスーパー、楽楽マーケット、イトーヨーカドーネットスーパー、ネットスーパーオークワ、ネットスーパー紀ノ国屋青山即配便、コープネットスーパー、サミットネットスーパー、西友ネットスーパー、ダイエーネットスーパー、東急ストアネットスーパー、阪急キッチンエール、おまかせくん、マルエツネットスーパー、ユアーズネットスーパー、アピタネットスーパーの15社である。この15社の実情に加え、約30社の食品スーパーマーケットにアンケート調査を実施しており、興味深い内容である。

   アンケートの結果で興味深いものとしては、チェーンストアエイジ誌でも、見出しとして、「ニーズは確実に高まっている!」とし、回答のあった32社中、31社が今後ネットスーパーへの需要は高まると回答しており、食品スーパーマーケット側はネットスーパーへの期待が大きいといえよう。ただ、別の質問では、回答のあった35社中、25社がネットスーパー事業を展開していないと答えており、まだまだ、ネットスーパーへの参入企業は少ないといえよう。今回の主要国内15社のネットスーパーを見ても、首都圏での展開が多いのが特徴であり、地方での展開はわずかであり、まだまだ、都市部でのビジネスモデルであるといえる。

   この15社のネットスーパーのサービス形態であるが、サミットネットスーパーと阪急キッチンエール意外、すべて店舗出荷型である。しかも、楽楽マーケットの運営主体ネッツ・パートナーズが支援しているのがマルエツネットスーパー、ネットスーパー紀ノ国屋青山即配便、東急ストアネットスーパー、今回の15社には入っていないが、ネット関西スーパー、シミズヤネットスーパなどであり、運営をゆだねているケースも多い。また、ヤマト運輸がサポートしている食品スーパーマーケットも数多く、ユアーズネットスーパーをはじめ、この15社には入っていないが、いちいネットスーパー、伊勢丹ネットデパ地下、福井さんちの楽楽マーケット、しずてつストアネットスーパー、ボンマルシェネットスーパー、ネットスーパーマルイ宅配便等がある。

   こう見ると、食品スーパーマーケットは今後、確実にネットスーパーに独自、提携を含め、続々と参入する可能性が極めて高いといえよう。ただ、課題も明確であり、この特集では、配送料の無料化、生鮮食品の鮮度の保持、地デジの普及の影響等が上がっている。また事業性であるが、回答のあった8社中、黒字は3社であり、数年かかったとのことである。その他は3社が赤字、2社が収益トントンとのことで、ビジネスとしては、現段階ではまだまだ厳しいといえよう。

   さて、もう一方の(株)クロス・マーケティングの消費者アンケートであるが、全国の20~69歳の男女945名を対象にした、実際のスーパー店舗で取り扱っている食品や日用品などを、インターネット上で注文し自宅まで配達するサービスを行うネットスーパーの利用に関する調査である。対象企業は、イトーヨーカドー、イオン、西友、イズミヤ、ダイエー、スーパーサンシ、紀ノ国屋、東急ストア、マルエツ、関西スーパー、サミット、オークワ、アピタ、阪急キッチンエール、あーすワン、オレンジライフ、フレスタであり、チェーンストアエイジの15社と重なる食品スーパーマーケットが多いのが特徴である。したがって、これらは補いあう関係にあるといえよう。

   いくつか特徴的な集計結果を見ると、利用経験のあるネットスーパーでは、1位:イトーヨーカドー43.1%、2位:イオン42.2%、3位:西友10.6%であり、イトーヨーカ堂、イオンが圧倒的であるといえる。購入アイテムでは1位:調味料・油50.0%、2位:ドリンク47.2%、3位:日用品・生活雑貨46.9%、4位:野菜45.0%、5位:お米42.8%であり、意外に野菜、米が高いといえよう。また、ネットスーパーの特徴としては、「ネットスーパー利用者のうち、約6割は2009年より利用開始」、「ネットスーパーは、一度利用すると継続利用する傾向が強い」、「ネットスーパー利用者は、スーパー実店舗と同様のサービスを求めている」などの特徴があるという。

   こう見ると、今後、ネットスーパーの需要は明らかに高いといえ、それに応える形で食品スーパーマーケットの参入も増加しているが、ビジネスとしてはまだまだ確立しているとはいえず、課題が多いのが実態といえよう。また、出荷形態の大半が店舗出荷型であるが、今後、センター出荷型のサミット、阪急がどこまでシェアを上げてくるか、興味深いところである。今回の2つの結果を見ると、しばらくは、ネットスーパー分野は各社模索が続くものといえよう。

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June 11, 2010

サンドラック、2010年3月期決算、増収増益、好調!

   ドラックストアのサンドラックが5/14、2010年3月期の決算を公表した。サンドラックはドラックストアの中でも食品スーパーマーケットと競合する食品、菓子、日配等を積極的に導入した業態開発が得意であり、今期決算の動向が注目されていた。ちょうど、6/6の日経ヴェリタスでも取り上げられているが、結果は、売上高2,841.12億円(22.2%)、営業利益160.20億円(7.9%)、経常利益164.85億円(9.0%)、当期純利益94.40億円(5.9)となり、増収増益の好決算となった。

   ヴェリタスでは、「業界一の効率経営、さらに磨き」というテーマで取り上げられている。そして、それを示すために、ROEと売上高営業利益率のマトリックスを作り、各ドラックストアをプロットしているが、サンドラックはまさに右上、ドラックストアの中でもROE、売上高営業利益率ともに、極めて高い位置にあり、しかも図抜けているのが鮮明である。ここで取り上げられているドラックスストアは、ツルハHD、マツキヨHD、カワチ薬品、スギHD、ここからHDと、錚々たるドラックストアであるが、それらの企業をはるかに上回るROE、売上高営業利益率である。

   そこで、今期のサンドラックの売上高営業利益率の中身を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.84%(昨年76.44%)と、0.40ポイント上昇しており、原価の上昇が見られる。結果、売上総利益は23.16%(昨年23.56%)と減少した。一方、経費であるが、17.52%(昨年17.18%)と、0.34ポイント上昇しており、厳しい状況であったことがわかる。サンドラック自身も、特に、経費に関しては、「連結販売費及び一般管理費は、競合激化によるポイント販促の増加による販売費の増加や新規出店に伴う費用の増加などで、前期比24.6%増、・・」とのことで、競合の厳しさが影響したようである。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、5.64%(昨年6.38%)と、昨年より、0.74ポイント減少し、厳しい結果となった。サンドラックはその他営業収入が0のため、マーチャンダイジング力=営業利益となり、これを見る限りでは率では、減益であるが、高では、売上高が22.2%と大幅に伸びたために、増益となった。 

   サンドラックは今期、特に、積極的なM&Aをかけており、平成21年9月に全株式を取得し子会社化した株式会社星光堂薬局(51店舗)、平成21年12月に、九州・沖縄地区、中国・四国地区でディスカウントストアを135店舗展開するダイレックス株式会社の全株式を取得し子会社化しており、結果、総店舗数が合計767店舗となったことが大きいといえる。すなわち、原価、経費の率では厳しい状況を、M&Aによる大幅な店舗数増=売上高増によりカバーしており、増益を達成したといえる。ただ、それでも、営業利益率5.64%は極めて高い数字であり、先に見たようにドラックストア業界でも頭一つ抜けた数字の高さである。

   そして、効率経営のもうひとつの指標ROE、自己資本利益率であるが、これは、当期純利益を自己資本、すなわち、純資産で割った数字であり、投資家にとって極めて重要な指標のひとつである。この数字が高ければ高いほど、投資家にとっては、配当への原資が増え、配当が高まる可能性が高くなる。ただ、ROEを高めるには、分子の当期純利益を高めることも重要な政策であるが、一方、分母の純資産を低くすれば、高くなるということも事実であり、自然、レバレッジ、すなわち、負債比率を引き上げ、純資産の価値を減らす動きにつながることもあり、注意が必要である。

   ちなみに、サンドラックの今期のROEは14.4%(昨年15.3%)と若干下がっているのが気になるところである。その要因は、当期純利益は増収増益であり、増加しているが、純資産が1,302.53億円(989.97億円)と、M&Aにより、連結対象企業が増加したため重くなったためである。したがって、分子は上昇したが、それ以上に分母がさらに上昇し、経営効率を昨年と比べ、下げたことがやや気になるところである。この14.4%が高いか低いかであるが、ヴェリタスを見ると、サンドラックがダントツの高さであり、きわめて高い数字であるといえる。

   こう見ると、今期のサンドラックは、積極的なM&Aにより、売上高は大幅に増加したが、経営バランスを若干崩しているともいえる。原価、経費の上昇により、マーチャンダイジング力が減少し、高でカバーしており、同様に、当期純利益は上昇したが、総資産が増加したため、純資産が相対的に下がり、自己資本率を下げている。ただ、それでも、ドラックストア業界の中では断トツの高さであり、ヴェリタスの見出しにもあるように、経営効率が極めて高い数字であるといえる。今後の課題は今期連結した子会社をどう軌道に乗せ、全体のバランスをとるかにあるといえる。高では増益とはなったが、率では減益であり、この数字をどう改善するかが当面取り組むべきテーマといえよう。今後、今期決算を踏まえ、サンドラックがどのような経営戦略を打ち出すか、注目である。

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June 10, 2010

ヤマナカ、2010年3月期決算、減収減益、厳しい決算!

   ヤマナカが2010年3月期の決算を4/30に公表したが、結果は減収減益と厳しい決算となった。特に、今期は店舗等の減損損失を10.16億円計上したため、当期純利益が赤字になるなど、大幅な減益となった。その結果であるが、営業収益1,076.50億円(-6.3%)、営業利益 3.74億円(-61.4%)、当期純利益 4.90億円(-57.6%)、当期純利益-7.75億円という結果となった。ヤマナカ自身も、「利益面においては、人件費や光熱費など経費全般の削減に取り組んだものの、売上高の減少を補うことが出来ず、・・」とコメントしており、利益面の確保が特に厳しかったとのことである。

   そこで、ヤマナカの営業利益が-61.4%と大きく減益になった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、75.01%(昨年74.81%)と、0.20ポイントの上昇が見られる。ヤマナカも、「個人消費は低迷を余儀なくされ、お客様の節約志向、低価格志向が一層強まるとともに、競合他社との価格競争が激化するなど、収益環境は急速に悪化しました。」とのことで、価格競争の激化が厳しかったようである。結果、売上総利益は24.99%(昨年25.19%)と減少した。

   一方、経費の方であるが、29.40%(昨年28.97%)と、昨年と比べ0.43ポイント上昇した。これは、先のコメントにもあるように、営業収益は-6.3%であったが、その中身、売上高も-6.4%となったことにより、経費削減が追い付かず、結果、経費の上昇を招いたためである。ただ、29.40%の経費比率は食品スーパーマーケット業界では、かなり高めの数字であるといえ、今後、いかに、経費比率を下げられるかが課題といえよう。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、原価、経費ダブルで圧迫を受け、-4.42%(昨年-3.78%)と、大きくマイナスとなった。

   これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が4.78%(昨年4.66%)のり、結果、営業利益がマーチャンダイジング力のマイナスをカバーし、0.36%(昨年0.88%)とプラスとなったが、昨年と比べ、原価、経費双方が上昇したため、0.52ポイント下がるという、厳しい結果となった。

   こう見ると、やはり、経費比率29.40%が営業利益、その中でもマーチャンダイジング力がマイナスとならざるを得ない状況を作り出しているといえ、食品スーパーマーケットにとって経費比率がいかに収益の根幹を握っているかがわかる。ヤマナカもこの状況を打破すべく、今期は、「お客様の低価格志向への対応を強化するため、エブリデー・ロー・プライス(EDLP、毎日低価格販売)の新業態を立ち上げ、平成21年7月にアルテ太平通を改装し、ザ・チャレンジハウス太平通(名古屋市中川区)をオープンしたのを皮切りに、当期において6店舗の業態変更を行いました。」とのことで、ディスカウントストアへの挑戦を行っている。

   ディスカウントストアはEDLP等により、粗利がさらに下がるため、経費比率をそれ以下に下げたEDLC(毎日低コスト)の仕組みが前提となるが、現状の経費比率が29.40%であり、粗利が24.99%であるため、少なくとも24.99%よりも、3%から4%は低い粗利となり、結果、経費は既存店舗よりも7%から8%は下げざるをえなくなる。これはもはや、別事業といえ、既存のマーチャンダイジングの仕組み、マネジメントの仕組みでは対応できず、根本的な企業変革が求められるといえる。したがって、数店舗の内は矛盾が表面化しないが、10店舗ぐらいになると、マーチャンダイジング、マネジメントが2重構造となり、経営戦略の打ち出し方が難しくなる。今後、ヤマナカとしては、どのような経営方針を打ち出してゆくか、難しい選択となろう。

   では、財務面はどうかを見てみたい。まずは、自己資本比率であるが、32.0%(昨年32.8%)と若干下がった。ただ、それ以上に、約70%が負債に依存する経営構造となっており、財務改善も待ったなしの状況といえよう。特に、有利子負債が195.06億円あり、総資産の42.57%(昨年41.87%)と大半を占めており、経営を大きく圧迫している。したがって、出店にかかわる資産、土地、建物、保証金等の合計が62.86%(昨年64.85%)となるが、これを自己資本で補うことは難しく、負債、特に、有利子負債に依存した出店構造となっており、差し引き、出店余力は-30.87%(昨年-32.09%)と大きくマイナスである。今後、安定、継続的な新規出店をしてゆくには、自己資本比率を引き上げ、財務の改善を図る必要があり、そのためも、マーチャンダイジング力をプラスにもってゆき、キャッシュをいかに生み出すかが課題といえよう。

   このようにヤマナカの2010年3月期の決算は減収減益、特に、当期純利益は赤字となる厳しい決算となったが、その要因は原価、経費が上昇したことによるマーチャンダイジング力のマイナス幅が広がったことが大きいが、根本的な問題として経費比率29.40%という高さが、食品スーパーマーケットとしては最大の経営課題といえよう。今期はディスカウントストア等へ挑戦し、新業態を加え、経費比率を下げる経営改革に踏み込んでいるが、既存業態の経費比率削減の取組みも同時に必要といえ、今後、ヤマナカがさらに踏み込んだ経営戦略をいかに打ち出すか注目である。

   
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June 09, 2010

野菜、果物、直売所と食品スーパーマーケット!

   農林水産省所管の直売の調査事業が本格的にスタートした。当面、文献収集と首都圏近郊の直売所のヒアリング調査、そして、直売関係者へのヒアリングに負われる日々になると思う。これが一段落するのに数ケ月かかると思うが、その後は、全国主要都市での同様な調査に入る予定である。すでに、直売関係文献、そして、関連論文も大分集まり、それらを精力的に読み込みを行っている。本ブログでも、公開できる資料は公開しているので、左端の「農林水産省、直売調査事業!」にリンクを張っているので、参考にしていただければと思う。つい最近も、年商10億円の直売を運営されている経営者の方へヒアリングさせていただいたが、食品スーパーマーケットとの発想の違いに、驚くことが多い。

   ちなみに、今回の調査事業は万全な体制を整えて臨んでいる。専属調査員はもちろん、アンケート分析ソフト、専属の事務所、会計責任者、連携調査専門会社、首都圏での直売事業者、そして、直売、フードシステム専門の大学教授陣のバックアップ体制の中でこの調査事業が進んでいる。

   さて、食品スーパーマーケットと直売の農産部門の違いであるが、食品スーパーマーケットの農産部門はバイヤーが中心に仕組みができあがっており、全店の青果物を調達することが最も重要な仕事といえる。仮に10店舗のトマトを揃えるには、トマトのPI値が10%だとすると、客数は10店舗で2,000人/日×10店舗=20,000人となる。したがって、トマトの必要数量は1日、20,000人×10%=2,000個となる。10日間で20,000個、100日間で200,000個、1年間で730,000個となる。これが、100店舗となると、その10倍となるので、年間では7,300,000個となる。この莫大な数のトマトをいかに滞りなく、各店に届けられるか、これがバイヤーの役割といえる。

   トマト1品でこれだけの物量となるので、野菜全品では、PI値が150%から200%であるので、10店舗の食品スーパーマーケットでは、1日必要な野菜が30,000個から40,000個であり、年間では約1,000万個から1,500万個、100店舗では、その10倍、1億個から1億5,000万個となる。途方もない商品調達量であり、この物量を実際、どの食品スーパーマーケットのバイヤーも調達しているわけであり、改めて、食品スーパーマーケットの農産バイヤーの仕事はすさまじい仕事であるといえよう。

   では、この大量のトマトをはじめ、野菜、そして、果物をどのように調達するか、それが食品スーパーマーケットと直売とを分けた最大の違いといえよう。食品スーパーマーケットは原則、市場を通して農産物を調達している。最近では、市場外流通も増え、産直も盛んにトライしているが、その割合は全体に比べればまだまだ少なく、大部分は中央卸売市場や地方卸売市場を通して、商品を調達しているのが実情といえる。これ以外の調達方法では少なくとも、先に上げた物量を安定確保することは難しいのが現状といえる。

   これに対して、直売はどうか。そもそも直売にはバイヤーが存在しない。存在するのは膨大な数の生産者である。極論すれば、農産物の数だけ生産者がいる。どんな小さな直売でも100人は下らず、10億円、20億円を売る直売では1,000人以上の生産者がいることも稀ではない。まさに、顔の見える野菜であり、顔の見える果物の世界がそこには存在している。しかも、それらの農産物のほとんどは近隣で取れる野菜であり、果物である。

   食品スーパーマーケットの農産部門とは全く違う、異次元の世界がそこにはあり、しかも、消費者からの絶大な支持を得ている直売が全国いたるところで誕生している。バイヤーなしで、極論すれば、農産部門が存在しない農産の売場が食品スーパーマーケットの農産の売場以上にアクティブでパワーのある売場が直売には存在している。直売を実際にヒアリングし、直売の文献を読み、直売の専門家に話を聞けば聞くほど、食品スーパーマーケットの農産部門との根本的な違いにびっくりする日々である。

   こう見ると、食品スーパーマーケットの農産のマーチャンダイジングとは何が本質か考えてしまう。以前は盛んにヴァーチカルマーチャンダイジングが注目された時があったが、直売はある意味、近隣という限定付きではあるが、まさに、ヴァーチカルマーチャンダイジングそのものといえる。消費者と農産物の生産者がダイレクトにつながった姿であり、そこにはバイヤーが存在しない。あるのは、農産物と消費者と、それを交換する店舗のみである。しかも、価格も消費者と生産者との相対で決まってゆき、仕入れ、複雑な粗利計算も存在しない。市場機能の物量調達、値決め機能が直売では、すべて現場で決まってゆくことになり、市場も存在しない。ある意味、究極のヴァーチカルマーチャンダイジングの姿といえよう。

   さて、今回の調査の目的は、この直売が首都圏、大都市ではどのような現状であり、メリット、デメリットは何か、課題としては何があるか、そして、農業生産者が、今後、首都圏、大都市で直売に取り組むことで、所得の向上にどこまでつながるのかを調査し、その実態を明らかにすることである。来年3月までの長丁場となる調査事業でもあり、じっくり取り組んでゆきたい。
   
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June 08, 2010

マックスバリュ東北の利益構造を見る!

   マックスバリュ東北は、食品スーパーマーケットの中でも、自己資本比率が8.2%(昨年7.1%)と、厳しい数字であり、経営基盤の確立が急務といえる状況にある。そこで、マックスバリュ東北の自己資本比率、ここでは、純資産比率の低い要因を様々な角度から分析し、何が問題なのかを明らかにしてみたい。

   まず、純資産比率(自己資本比率)とは何かであるが、これは、B/S上の純資産を総資産(=負債+純資産)で割って得られる財務指標の1つである。これを見ることによって、経営基盤が純資産で支えられているのか、それとも、負債に依存しているのかがわかり、今後の経営戦略を決定づける重要な指標といえる。当然、純資産比率が低ければ、負債に依存した経営となり、負債の中でも有利子負債に依存している場合には、キャッシュを優先的に有利子負債の返済に回さざるをえなくなり、本来、食品スーパーマーケットが取組むべき、成長戦略の根幹である新規出店、既存店の改装、物流体制の確立、マーチャンダイジングの強化、情報システムへの投資等へキャッシュの配分ができず、自然、経営が均衡縮小となり、厳しい状況となる。

   また、それ以前に、本来、経営活動から生まれる利益は、株式会社である以上、株主への配分、すなわち、配当が最優先であるが、純資産比率が低いと、配当の原資が負債の圧縮、特に、有利子負債の返済に回さざるをえなくなり、株式会社の存立そのものが問われることともなりかねず、純資産比率は原則、可能な限り、高い水準で維持することが望ましいといえる。

   では、食品スーパーマーケットではどのくらいの水準が望ましいかであるが、現在、2010年度決算を集計中であるが、昨年度、2009年度の決算公開企業約50社の単純平均を見ると、約40%である。標準偏差が約20%弱であるので、プラスマイナス20%、純資産比率60%から20%の間に、約70%が入ることになるので、60%以上が高い、20%以下が低いといえる。これが食品スーパーマーケットの純資産比率の実態といえよう。

   そこで、マックスバリュ東北の純資産比率8.2%であるが、極めて低い状況にあり、厳しい経営状況にあることがわかる。では、その中身はどのような状況にあるかであるが、まずは、純資産の項目を見てみたい。純資産は、大きく2つに分かれる。ひとつは資本関連、そして、もうひとつは利益関連である。マックスバリュ東北の資本関連は資本金13.35億円、資本剰余金18.12億円であり、合計31.47億円である。したがって、純資産合計が23.39億円であるので、逆ザヤになり、比率をとると、134.5%となる。これは、純資産を構成するもうひとつの項目、利益関連がマイナスになっているからである。

   その数字を見ると、利益剰余金が-7.81億円であり、その中でも繰越利益剰余金が-15.54億円と大きく、利益が生み出せていないことが大きい。食品スーパーマーケットで純資産が高い要因はこの利益剰余金にあり、ここで大きな差が生じ、資本関連ではほとんど差がないのが実態である。ただ、資本の増強により、経営改革を断行した場合は、資本関連が大きく増加し、逆転することもあるが、通常の企業経営において、純資産比率をあげるには、この利益剰余金が大きな鍵を握っている。

   では、マックスバリュ東北の2010年2月期決算時の利益構造がどうなっているのかを見てみたい。まずは、原価であるが、76.52%(昨年76.84%)と、昨年よりも0.32ポイント改善している。結果、売上総利益は23.48%(昨年23.16%)と、粗利は改善した。これに対し、経費の方であるが、25.72%(昨年25.54%)と、0.18ポイント上昇している。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-2.24%(昨年-2.38%)となり、マイナスとなる。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が2.57%(昨年2.41%)のり、結果、営業利益が0.33%(昨年0.03%)と、わずかにプラスになったが、厳しい利益構造であるといえよう。

   したがって、利益剰余金を生み出すべき、根本のマーチャンダイジング力がマイナスであり、不動産収入等で補ってキャッシュをプラスにしており、厳しい利益構造であるといえよう。特に、経費比率が高めであり、さらに、昨年よりも上昇していることが影響を与えており、経費の圧縮、すなわち、経費を削減することだけでなく、坪当たりの売上げを既存店活性化により、引き上げ、相対的に経費を下げることも重要な経営課題といえよう。

   このように、マックスバリュ東北の純資産比率(自己資本比率)の低い要因は、本来、利益剰余金で大きくプラスにもってゆくべきところがマイナスとなっており、しかも、今期の決算を見ると、経費率が高く、売上総利益で相殺できず、結果、マーチャンダイジング力がマイナスとなり、キャッシュを生み出すパワーが弱いといえる。利益剰余金の源泉はこのマーチャンダイジング力にあるといえ、マックスバリュ東北としては、最優先でキャッシュを生み出すパワー、すなわち、マーチャンダイジング力をいかにプラスにもってゆくかが絶対的な課題といえよう。

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June 07, 2010

食品スーパーマーケットの利益剰余金を見る!

   先程まで、今週の有料版!食品スーパーマーケット最新情報を書いていて気になったことがある。利益剰余金である。今週のテーマはコンビニの最新決算解説であり、その中でセブン-イレブン・ジャパンを取り上げた。びっくりしたのは、自己資本比率(純資産比率)が78.5%と極めて高く、その要因が利益剰余金にあったことである。資本金自体は各社あまり大きな差がなく、利益剰余金による差が自己資本比率を決定づけていたことである。この利益剰余金は当然、P/Lの当期純利益から配当等に利益還元がなされた残りが、毎年毎年、蓄積されてゆくことになるが、その比率が、セブン-イレブン・ジャパンでは、純資産の95.9%にもなっている。

   一般的に自己資本比率(純資産比率)を引き上げるには、まずは、負債の削減が最優先であり、特に、有利子負債の削減が決め手になるが、セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート等を見ると有利負債はほぼ0であり、ここでの差はでない。したがって、純資産の絶対額を引き上げることが、ほぼ、イコールで自己資本比率を引き上げることになる。では、純資産を引き上げるにはどうしたら良いかであるが、それは資本金を増資するか、利益剰余金を増加させるしかなく、そのバランスが重要な経営課題となる。ところが、セブン-イレブン・ジャパンは資本金を増やすことなく、もっぱら、利益剰余金を積み上げ、純資産の95.9%、金額では約1兆円となる巨額の利益剰余金となっており、これが、財務の安定に大きく寄与しているのが特徴である。ここまで、利益剰余金にこだわった財務戦略を貫けることが、すごいといえよう。

   そこで、食品スーパーマーケットでは、利益剰余金がどのように位置づけられているのか、その実態を今期の最新決算をもとにいくつかの事例を見てみたい。まずは、純資産比率が高い食品スーパーマーケットであるが、恐らく、食品スーパーマーケット業界No.1であろうヨークベニマルであるが、純資産比率は80.3%である。利益剰余金は905.68億円、純資産は1,166.12億円であるので、77.7%であり、セブン-イレブン・ジャパン程ではないが、極めて高い数字である。ちなみに、イトーヨーカ堂であるが、純資産比率は75.3%、内、利益剰余金の比率は64.1%であり、やや低い数字である。

   次に、今期は上場をMBO(経営陣による買収)により、取り下げたオオゼキ、恐らく、食品スーパーマーケット業界No.2の純資産比率であると思われるが、昨年、2009年2月期の決算数字をもとに見てみたい。純資産比率は77.3%であり、内、利益剰余金の比率は94.8%であり、セブン-イレブン・ジャパンとほぼ同じ比率であり、極めて高い数字である。オオゼキがMBOにいたった要因はこの利益剰余金の高さにあることも、その1つの要因といえよう。これだけ、高い利益剰余金であれば、事業を継続発展させてゆく上において、広く、投資家から資本を集める必要性がなく、自らのマーチャンダイジング力で生み出すキャッシュで十分に可能であるといえるからである。

   もう数社見てみたい。マックスバリュ東海であるが、純資産比率は、今期はやや純資産比率を下げ、63.9%となったが、それでも、食品スーパーマーケット業界ではトップクラスである。その利益剰余金の比率であるが、86.2%と高い数字である。サンエーであるが、純資産比率は65.9%であり、利益剰余金の比率は84.5%である。そして、東武ストアであるが、純資産比率は68.8%であり、利益剰余金の割合は40.0%である。純資産比率の高い食品スーパーマーケットとしては、珍しく、利益剰余金の比率が低い数字であり、資本金の割合が39.8%と極めて高い数字である。これは資本金を急激に増強し、経営改革を断行した時に起こるといえ、東武ストアは今後、いかに利益を生み出せるかが課題といえよう。

   逆に、参考に純資産比率が低い食品スーパーマーケットも見てみたい。マックスバリュ東北であるが、純資産比率は8.2%である。内、利益剰余金は-7.81億円であり、厳しい状況である。トライアルカンパニーであるが、2009年3月期の決算であるが、純資産比率は11.7%であり、利益剰余金の割合は42.4%であるが、資本金も31.8%と高く、利益剰余金が純資産を押し上げるまでにはいたっていない。スーパーバリューであるが、純資産比率は15.6%であり、利益剰余金の比率は80.0%と極めて高いが、総資産に占める割合は12.5%であり、全体を押し上げるまでにはいたっていない。

   このように、自己資本比率(純資産比率)を高め、経営を安定させるためには資本金よりも、利益剰余金が大きな鍵を握っているといえ、改めて、経営の根幹は利益の確保、マーチャンダイジング力にあり、その結果、生み出されるキャッシュをしっかり蓄積し、そのキャッシュで経営全体を賄える堅固な財務基盤を作り上げることが極めて重要な経営課題であることがわかる。セブン&アイHのグループ企業が伝統的に財務基盤が強固な要因はこの利益剰余金の捉え方にあるといえ、特に、セブン-イレブン・ジャパンにその経営哲学とでもいうべき、強い意志が感じられる。今期のセブン-イレブン・ジャパンの決算では、特に、利益の大切さが改めて鮮明になったといえよう。

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June 06, 2010

マミーマート、2010年9月期中間決算、減収営業増益!

   マミーマートが2010年9月期の中間決算を5/14、公表した。食品スーパーマーケットで9月期の決算は珍しく、上場企業ではPLANTとマルキョウの2社であり、マミーマートを入れ3社のみである。その結果であるが、売上高411.97億円(-0.9%)、営業利益8.59億円(3.1%)、経常利益 10.25億円(-1.2%)、当期純利益4.97億円(-29.0%)となり、減収、営業利益は増益となったが、経常、当期純利益は減益となる厳しい決算となった。特に、今期は、「減損会計について、経営の健全性の確保を図るために実施いたしました。・・」とのことで、当期純利益に影響が出たといえる。

   マミーマート自身は、この中間決算について、「スーパーマーケット業界におきましては、このような厳しい経済情勢を受けた消費者の生活防衛を意識した節約志向が一層強まり、デフレ色が鮮明になる市場環境下で、低価格化の販売競争が激しさを増しており、さらに天候不順の影響を受けた青果物の高騰など収益環境は大変厳しいものとなりました。」とコメントしており、経営を取り巻く環境が厳しかったとのことである。

   では、このような厳しい経営環境の中で、営業利益が増益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、75.67%(昨年75.68%)となり、0.01ポイントとわずかではあるが、改善している。結果、売上総利益は24.33%(昨年24.32%)と、上昇した。特に、今期は、「お客様にとってご満足いただける品揃えと、よりリーズナブルな価格での商品展開、エブリデーロープライスを実現し、・・」とのことで、価格政策を強化しているが、結果、原価に影響を与えることなく、昨年とほぼ同じ原価率を維持した。

   これに対して経費であるが、23.73%(昨年23.74%)と、こちらも、0.01ポイント改善しており、わずかではあるが、経費の改善も進んだ。結果、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、差し引き、0.60%(昨年0.58%)と、改善した。ただ、0.60%と、プラスにはなったが、まだまだ、わずかであり、今後、いかに原価、経費を改善して、マーチャンダイジング力を引き上げてゆくことが課題といえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1.49%(昨年1.43%)のり、結果、営業利益は2.09%(昨年2.01%)と増益となった。こう見ると、原価、経費、その他営業収入と、トリプルで営業利益を押し上げており、この中間決算は、厳しい経営環境の中、理想的な利益改善の方向で経営が進んだといえよう。

   営業面がこのようにプラスに働いた要因のひとつとして、この中間期にマミーマートが意識して取り組んだ課題のひとつに、PI値No.1部門の青果のマーチャンダイジング強化をあげることができよう。マミーマートは、「お客様のご来店や購買頻度の促進及び競合各社の低価格強化への対応として、前期に継続して高頻度品である青果の市場当日仕入を推進いたしました。青果PI値3,000(お客様1,000人当りの買上点数)を目標数値として市場当日仕入の構成を上げ、お客様のご来店動機の柱として価格訴求を行いました。・・」とのことである。

   青果は日配と並び、食品スーパーマーケットの根幹商品であり、しかも、PI値が圧倒的に高い部門である。通常、青果のPI値は200%(2,000)から250%(2,500)であり、今回、マミーマートが目標とした3,000(300%)は青果専門店に迫る数字でもあり、極めて高い目標数字といえる。したがって、この目標値を目指し、青果を強化したことはまさに、強い青果売場の構築、ひいては、店舗全体のPI値アップにつながり、売上改善だけでなく、利益改善にもつながる効果が期待できる。この中間決算の数字を見る限りでは、営業利益に強く改善効果が表れているといえ、今後、売上高へも波及してゆくのではないかと思われる。

   一方、財務面であるが、自己資本比率が49.8%(昨年52.7%)と、若干下がったところが気になるところである。これは、純資産は171.57億円(昨年2.4%:167.51億円)と増加しているが、総資産が344.01億円(昨年8.3%:317.45億円)とそれ以上に増加したためである。その要因は、投資キャッシュフローを見ると、有形固定資産の取得による支出が-30.54億円(昨年-19.99億円)と増加した一方、財務キャッシュフローでは短期借入金が26.91億円(昨年 5.36億円)と大きく増加し、結果、有利子負債が61.05億円(昨年36.53億円)となり、総資産の17.75%(昨年11.51%)となり、資産の増加を負債により補ったことが大きいといえる。

   このように、この中間期におけるマミーマートの決算結果は減収営業増益となるやや厳しい結果となったが、原価、経費、その他営業収入と、トリプルで営業利益の改善が進んでおり、営業面に関しては改善が見られる。これは青果を最強化部門と位置づけ、PI値3,000(300%)を目標に取り組んでいる成果 ともいえよう。今後、さらに、売上面に波及してくれば、増収の確保も可能といえる。やや気になるのは、新店への投資を有利子負債で補ったため、自己資本比率が下がった点であるが、マーチャンダイジング力が改善してくれば、自己資本の範囲内でも投資は十分に可能になるといえ、後半に向けての課題といえよう。後半も経営環境は引き続き、厳しいと思われるが、現在続けている青果の強化が売上改善、特に、増収に結び付くかどうか注目である。

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June 05, 2010

新製品週間ランキング、6/4、PI値と平均単価!

   恒例の日経MJ新製品週間ランキングが6/4、公表された。今週は異常値の新製品が登場した。家庭用品、マックスファクター、SK-Ⅱフェイシャルトリートメントエッセンス250mlである。金額PI値は何と1,800円(1人当たり1.80円)となった。新製品で金額PI値が1,000円を超える商品は稀であり、特に、今週の1,800円は異常値といえる。通常、新製品では金額PI値が500円を超えればAランク、300円でBランク、200円でCランクと判断できるので、1,800円は通常ではありえない数字である。

   では、なぜ、ここでまで金額PI値が跳ね上がったかであるが、その最大の要因は平均単価にある。SK-Ⅱは15,050円という、高額商品であり、通常の食品スーパーマーケットでは200円ぐらいが平均単価であるので、中々、手が届かない価格である。だだ、これだけ、平均単価が上がると、PI値が低くとも金額PI値は大きく上昇することがあり、今週は1,800円まで跳ね上がったといえる。一般に金額PI値(客単価)=PI値×平均単価であるので、金額PI値はPI値が上がるか、平均単価があがるか、あるいは双方が上がれば、上昇することになる。

   通常、食品スーパーマーケットでは、先に言及したように、平均単価は200円ぐらいであるので、金額PI値アップを目指す場合は、平均単価を引き上げるより、PI値を引き上げる方が効果が出る商品が圧倒的に多いといえる。したがって、平均単価アップ政策は軽視されがちとなる場合が多い。ところが衣料品、化粧品、家電、宝石等は食品と違い平均単価が10倍、100倍の商品が圧倒的に多く、逆に、PI値は限りなく0に近い商品が多く、PI値は中々あげることが難しいといえる。そこで、プライスラインを明確にし、PI値よりも価格を引き上げる政策、すなわち、平均単価アップ政策を重視することになる。

   金額PI値アップの決め手がPI値から、平均単価に移ってゆくことなるのが通常である。食品では馴染みが薄い政策であり、あまり、意識されないマーチャンダイジング戦略である。ただ、実は、食品でも、衣料品、化粧品等と比べると微妙な数字であるが、PI値よりも平均単価アップ政策が有効な商品が存在するのも事実である。今回の新製品週間ランキングでも、家庭用品はもちろん、飲料、冷凍食品でも同様な商品が存在しており、意外に、平均単価アップ政策が有効な新商品が見られる。

   実は、昨今のデフレ環境の中では、食品スーパーマーケット同士に加え、業態を超えた価格競争が激しさを増し、マーチャンダイジング政策も数量重視、すなわち、PI値アップ戦略がとられることが多い。もちろん、PI値が平均単価の下落を上回る伸び率を示せば、金額PI値は上がるが、往々にして、下回ることが多く、金額PI値が伸び悩むケースが多い。これを克服するには、PI値アップ戦略に加え、同時に、平均単価アップ戦略をとる必要があり、その鍵を握るのが、今週、新製品No.1の金額PI値となったSK-Ⅱや、そこまで平均単価が高くはないが、飲料、冷凍食品、特に、アイスクリーム等の平均単価の高い商品である。

   ちなみに、SK-Ⅱであるが、先に見たように平均単価は15,050円、金額PI値は1,800円であるので、PI値を逆算すると、(1,800円÷1,000人)/15,050円=0.012%となる。この0.012%はどのくらいのボリュームかというと、1,000人当たりで0.12個であり、平均的な食品スーパーマーケットの1日の客数は約2,000人であるので、1日0.24個となる。したがって、1個売れるのは、その4倍、4日となり、4日に1個売れる商品ということになる。それでも、平均単価が15,050円ともなると、金額PI値が1,800円となり、今週の全新製品週間ランキングでは断トツのトップとなる。

   では、このSK-Ⅱ以外の商品でここまで金額PI値が高くならなくとも、金額PI値に大きく貢献できる平均単価の高い新製品はないかを見てみたい。飲料では、その典型的な新製品が上位にランクインしている。今週、No.3、No.4となったキリンビバレッジの生茶である。No.3には2Lが金額PI値322円で入り、No.4には500mlペットボトルが317円で入っている。わずかな差であるが、ほぼ同じボリュームの金額PI値といって良い。その平均単価であるが、2Lが144円、500mlが88円であるので、PI値を逆算すると、0.22%、0.36%であり、2Lの方がPI値は約4割低いが、金額PI値は高い数字となる。ここがポイントであり、この容量に加え、さらに、同じ500mlでも付加価値の高い平均単価の高い商品の強化が金額PI値アップのポイントになるということである。

    このように、現在、まさにデフレの真っただ中にあるが、このような平均単価が下がる環境にあるがゆえに、あえて、平均単価アップに挑戦することもマーチャンダイジング政策としては重要なテーマである。平均単価アップ商品は食品の中でも先に見たように、2Lのペットボトルや同じ500mlでも付加価値の高い商品などがあり、これ以外にも食品、菓子にも確実に存在する。また、生鮮食品は原則、PI値アップよりも、平均単価アップが決め手となる商品が多いのも特徴である。今週の新製品週間ランキングを参考に、是非、平均単価アップ戦略による金額PI値の改善にトライして欲しい。

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June 04, 2010

ヤマザワ、2010年3月期決算、減収増益!

   ヤマザワが2010年3月期の決算を5/14に公開した。その結果であるが、売上高896.21億円(-1.7%)、営業利益22.72億円( 1.9%)、経常利益23.07億円(1.7%)、当期純利益12.08億円(53.0%)と減収増益となる決算となった。ヤマザワ自身は、売上高については、「売上面におきましては厳しい経営環境の下、お客様一人当たりの買上点数は増加したものの、商品単価の低下により低迷いたしました。・・」とコメントしており、価格の下落が大きかったとのことである。実際、今期の客数、客単価の数字を見ると、客数は99.5%と健闘しているが、客単価が97.8%と厳しい結果となり、売上げダウンにつながったことがわかる。その客単価の要因がPI値ではなく、平均単価にあったとのことである。ただ、既存店は客数95.8%、客単価97.9%であるので、既存店についてはむしろ客数が下がっており、客数に関しても苦戦したといえよう。

   一方、営業利益の方であるが、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、71.68%(昨年71.75%)と、わずかであるが、原価が下がっており、原価の改善が進んだ。結果、売上総利益は28.32%(昨年28.25%)と、改善した。特に、今期は、「当社が加盟するニチリウグループ(日本流通産業株式会社)のプライベートブランド商品である「くらしモア」の各商品や当社オリジナル商品の拡販を積極的に行なってまいりました。」とのことで、原価の低いPBに注力したことも大きかったといえよう。これに対して、経費の方であるが、25.78%(昨年25.80%)と、こちらも、わずかではあるが、下がっている。これについては、「販売費及び一般管理費につきましては、販売費や光熱費の削減などの取り組みにより減少いたしました。・・」とのことで、経費削減に取り組んだ効果がわずかではあるが、あらわれたといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は2.54%(昨年2.45%)となり、改善した。今期は、原価、経費双方の改善がなされ、利益に貢献したたといえる。ヤマザワは、その他営業収入の計上が0であるので、マーチャンダイジング力=営業利益となるため、営業利益も改善しており、これが、売上減をカバーし、営業増益となった要因といえる。

   これを受けて、ヤマザワのキャッシュフローであるが、営業キャッシュフローは24.84億円(昨年18.53億円)と増加した。最も違いの大きな項目は法人税であり、-9.39億円(昨年-14.08億円)と約5億円弱減少したことが大きい。ついで、投資キャッシュフローであるが、-18.42億円(昨年-23.45億円)と、今期は投資を抑制している。これは、有形固定資産の取得による支出が-22.41億円(昨年-26.80億円)と減少したことが大きく、新店関連への投資を控えたものといえよう。結果、フリーキャッシュフローは、6.42億円(昨年-4.92億円)と、マイナスの逆流から、プラスの順流へと変わった。

   一般に、キャッシュフローの流れはフリーキャッシュフローのプラスが大きければ大きいほど、財務改善への原資で財務改善が可能となるが、投資を抑制しがちとなり、成長性が抑制されることになりかねない。その意味ではバランスが重要である。逆にマイナスとなると、財務改善の原資がなくなり、現金を取りくずすか、新たに借入を増やさざるをえなくなり、財務がいずれの場合も悪化する。したがって、キャッシュフローは、投資バランスをとりながら、フリーキャッシュフローをプラスにもってゆくことが理想といえよう。

   そして、財務キャッシュフローであるが、-8.09億円(昨年-5.82億円)である。その中身は、借入金の返済-3.30億円(昨年-2.28億円)、配当-2.93億円(昨年-2.93億円)、ファイナンス・リース返済-1.85億円(昨年-0.59億円)であり、バランスの良い財務キャッシュフローである。ただ、若干、フリーキャッシュフローを上回っており、結果、トータルでは、-1.67億円(昨年-10.73億円)と昨年同様、現金を取り崩している。理想的には、フリーキャッシュフローの範囲内で財務キャッシュフローをまかない、現金を増加させていきたいところであるが、今期は昨年ほどではないが、若干現金が減少しており、やや気になるところである。

   これを踏まえて自己資本比率であるが、有利子負債の大きな変化はなかったが、手形関連が減少し、負債が削減されたことに加え、純資産が増益により増加したため、ダブルで数字が改善し、65.2%(昨年62.7%)と上昇した。

   このように、2010年3月度のヤマザワの決算は、減収増益となり、売上面は減少したが、原価、経費ともに改善し、営業利益をダブルで押し上げ、営業増益となった。その結果、キャッシュフローも改善し、昨年のフリーキャッシュフローがマイナスとなる逆流から、順流となり、キャッシュの流れもよくなり、自己資本比率も上昇した。今後は売上げをいかに改善するか、特に既存店の客数、客単価の同時改善、その中でも、平均単価の下落をいかに改善するかが課題といえよう。来期、ヤマザワがどのようなマーチャンダイジング戦略を打ち出すか注目である。

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June 03, 2010

家計調査データ、2010年4月度、食品97.9%!

   総務省統計局が5/28、2010年4月度の家計調査データを公表した。デフレが進行する中、結果が気になるところであるが、外食を除く食品は97.9%と厳しい結果となった。全体も97.9%という数字であり、消費は伸び悩んでおり、依然として、デフレの影響が大きいといえよう。ちなみに、消費者物価指数(CPI)でも高校授業料の無償化が影響を与えたが、家計調査データでも、21.4%の減少となり、この分の消費が大きく減少している。特に、私立高校よりも、国公立高校の方が減少しており、4月度は私立、国公立で大きな差が出ている。

   全体の大分類を見てみると、食品97.9%、外食100.1%、住居112.0%、光熱・水道98.9%、家具・家事用品97.5%、被服及び履物86.2%、保健医療110.4%、交通・通信100.3%、教育86.3%、教養娯楽95.3%、諸雑費98.6%という状況である。住居、保健医療が突出した伸びであり、被服及び履物が厳しい数字である。また、教育は、先に見たように高校授業料無償化が影響を与えており、大きく下がっている。ただ、教育の中で、補習教育は107.0%、専修学校は150.4%と伸びており、教育費のシフトが起こっているともいえよう。

   では、外食を除く食品の状況はどうかであるが、伸びた部門は、野菜・海藻101.5%、調理食品(惣菜)100.7%のみであり、しかも微増である。それ以外の部門は、穀類95.7%、魚介類97.2%、肉類96.3%、乳卵類97.8%、果物95.8%、油脂・調味料96.3%、菓子類97.6%、飲料96.4%、酒類96.0%という状況であり、まさに、デフレの影響が鮮明であるといえよう。野菜・海藻に関しては、4月度は天候不順が続き、入荷が不安定で相場が上昇したことが大きいといえ、これは、消費者物価指数(CPI)でも、明らかな物価上昇が見られる。

   実際、野菜の消費が伸びた項目であるが、たまねぎ12.23円(129.2%)、消費世帯のみ14.81円(125.5%)、消費世帯の割合82.6%(103.0%)、ねぎ7.30(123.0%)、消費世帯のみ11.12円(120.7%)、消費世帯の割合65.6%(101.9%)、だいこん5.07円(112.6%)、消費世帯のみ8.60円(111.6%)、消費世帯の割合58.9%(100.9%)、かぼちゃ3.93円(115.7%)、消費世帯のみ8.50円(113.3%)、消費世帯の割合46.3%(102.1%)など、消費世帯の割合は増えず、消費世帯のみの消費が増加しているのが多いのが特徴である。したがって、数量よりも、価格上昇による消費世帯のみの消費が大きく増加したと推測され、相場変動による価格の上昇が消費を押し上げたといえよう。

   野菜で伸びた項目は大部分がこのような状況であるが、消費世帯を増やして消費を押し上げた項目もある。はくさい2.77円(120.3%)、消費世帯のみ7.52円(97.2%)、消費世帯の割合36.8%(123.8%)であり、消費世帯のみの消費は増加しておらず、消費世帯が大きく増加し、消費を押し上げていることがわかる。ただ、このような野菜は極めて少なく、大部分は消費世帯のみの消費が大きく増加した項目である。

   家計調査データは、このように消費を2つに分けて見ることもでき、消費世帯のみの消費が増えたのか、それとも、消費世帯の割合が増加したのかが判断でき、消費実態をより深く落とすこともできる。ちなみに、被服及び履物であるが、377.77円(86.2%)、消費世帯のみ455.14円(88.7%)、消費世帯の割合83.0%(97.2%)という状況であり、衣料品を購入する世帯が減少したのではなく、購入世帯のみの消費が減少したことが原因といえ、野菜と反対、デフレによる価格の下落が影響を与えているといえよう。

   では、野菜以外で、伸びた項目と下がった項目の典型的なものを見てみたい。まず、伸びた項目であるが、あさり5.43円(111.6%)、かき(貝)0.50円(115.4%)、魚介のつくだ煮3.07円(116.5%)、豆類1.87円(160.0%)、こんぶ2.57円(111.6%)、みかん1.87円(136.6%)、オレンジ3.93円(112.4%)、チョコレート菓子3.37円(116.1%)、ワイン6.73円(110.4%)、発泡酒・ビール風アルコール飲料23.07円(128.9%)等である。

   逆に、消費が伸び悩んだ項目は、あじ3.87円(85.3%)、いか6.53円(88.7%)、魚介の漬物7.50円(88.2%)、粉ミルク1.70円(75.0%)、れんこん1.93円(89.2%)、さやまめ5.63円(86.7%)、きゅうり9.70円(89.3%)、なす4.43円(82.6%)、干ししいたけ1.37円(87.2%)、梅干し2.97円(82.4%)、グレープフルーツ2.73円(78.1%)、ぶどう0.43円(86.7%)、すいか0.63円(48.7%)、メロン1.03円(64.6%)、バナナ14.03円(77.7%)、食用油7.57円(83.2%)、まんじゅう4.63円(84.2%)、アイスクリーム・シャーベット15.47円(81.5%)というところであり、以上が90%を割り込んだ項目である。

   このように、2010年4月度の家計調査データを見る限り、デフレが明らかに消費に影響を与えており、こと食品においては深刻な状況といえよう。ここ数日で公表された、この4月度の消費者物価指数、食品スーパーマーケットの売上速報を見ても芳しい数字は見られず、厳しい数字となっている状況である。問題は5月、そして、現在の6月に入り、今後の動向であるが、消費者物価指数の推移を見る限り、デフレは継続する可能性が高いといえよう。したがって、食品の消費は当面、少なくとも前期は厳しい数字が予想される。食品スーパーマーケット業界としては、デフレを前提にマーチャンダイジング戦略を組む必要があるといえ、たまたま野菜では価格が引き上がった形であるが、結果、消費額は伸びている。デフレの時は、このように数量よりも価格にこだわった、特に、付加価値の高い商品の選定、開発が最大のマーチャンダイジングのテーマとなろう。 

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June 02, 2010

消費者物価指数(CPI)、2010年4月度、-1.2%%!

   総務省統計局から、5/28、消費者物価指数(CPI)、2010年4月度が公表された。結果は、前年同月比-1.2%となり、依然として、デフレ傾向が鮮明である。ただ、4月度から高校授業料無償化がはじまり、その影響も少なからずあり、ややデフレ傾向は緩和されたが、それでもマイナスが継続しており、やはり、消費は厳しい局面が続いているといえよう。本ブログでも取り上げたが、この4月から食品スーパーマーケット業界の3団体(AJS 58社、JSA 60社、JSSA 162社)、計264店舗が共同で売上速報の公表をはじめたが、それを見ても、この4月度は昨対-1.3%であり、ほぼ消費者物価指数の-1.2%に近い数字であり、厳しい状況にあるといえよう。

   消費者物価指数は、大きく3つに分けて総合指数が公表される。「(1) 総合指数は平成17年を100として99.6となり,前月と同水準。前年同月比は1.2%の下落となった。(2) 生鮮食品を除く総合指数は99.2となり,前月比は0.3%の下落。前年同月比は1.5%の下落となった。(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.3となり,前月比は0.4%の下落。前年同月比は1.6%の下落となった。」であり、すべて総合指数である。(1)は文字通り総合指数、(2)が相場変動の激しい生鮮食品を除く総合指数、そして、(3)が国際相場の影響を受けやすいエネルギーをさらに除いた総合指数である。数字を見ると、いずれも、前年同月比、-1.2%、-1.5%、-1.6%であり、厳しい状況である、また、平成17度比で見ても、99.6、99.2、97.3であるので、いずれもダウン、この4月度は明らかに物価が下落しているといえ、デフレ傾向が鮮明であるといえよう。

   ここで、高校授業料無償化の影響であるが、まず、消費者物価指数に影響を与える品目であるが、「公立高校授業料」及び「私立高校授業料」の2品目である。それぞれ、前年同月比-98.5%、-25.1%と大きく減少しており、結果、生鮮を除く総合指数への寄与度はそれぞれ、0.41、0.13となり、合計-0.54の影響があったという。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数では-0.78であるというので、かなりのインパクトであるといえよう。

   さて、この4月度、気になる動きであるが、この高校授業料無償化の影響もあるといえるが、前年同月比の過去5年間の流れに異変が起きていることである。これまでのグラフの流れでは、時間とともに半円形の上下に動く、sinカーブで消費者物価指数が推移していたが、この3月度頃から、これまでの流れでは物価が上昇する局面に入るはずであるところが、横ばい、そして、この4月度は、逆に下がりはじめたことである。これまでにない動きであり、5月以降、どのように動いてゆくのかが読めない状況である。予測不能の領域に入ったといえ、消費者物価指数は混迷の時期に突入したといえよう。

   そこで、この4月度の消費者物価指数を押し下げた要因となった項目を見てみたい。まず、中分類で見て、前月比の下落幅の大きかった項目であるが、授業料等-17.4%、生鮮果物-3.5%、交通-1.3%、電気代-1.2%、室内装備品-0.9%である。やはり、高校授業料が大きくこの4月度から下落していることがわかる。次に、前年同月比で見て、下落幅の大きかった項目であるが、教養娯楽用耐久財-18.8%、授業料等-17.4%、電気代-9.4%、家庭用耐久財-9.2%、ガス代-5.4%である。そして、総合指数の前年同月比に対して、寄与度の大きかった項目であるが、授業料等(寄与度0.48)、電気代(寄与度0.30)、ガス代(寄与度0.11)、教養娯楽用耐久財(寄与度0.10)、家庭用耐久財(寄与度0.08)という状況である。やはり、高校授業料無償化の影響は大きく、この4月度の消費者物価指数を明らかに押し下げる要因となったといえよう。

   では、食品スーパーマーケット関連の商品の物価指数は前年同月比でどうかをみてみたい。まず、食料全体は-0.7%であり、下落している。大分類であるが、穀類-3.5%、魚介類-2.8%、肉類-2.7%、乳卵類-1.7%、野菜・海藻7.6%、果物 -0.4%、油脂・調味料-2.9%、菓子類-0.5%、調理食品-2.3%、飲料-2.1%、酒類-1.4%という状況である。これを見ると、野菜・海藻以外、すべてマイナスであり、食料品が物価の下落を牽引していることがわかる。なお、野菜・海草の異常値は4月度の天候不順があったため、出荷が遅れ相場が大きく上昇したためである。いくつか上昇率の大きいものを見てみると、ねぎ39.9%、レタス25.9%、たまねぎ27.5%、れんこん24.6%、かぼちゃ15.0%、きゅうり16.8%、なす17.4%、ばれいしょ12.8%、だいこん16.7%等である。

   このように、この4月度の消費者物価指数は高校授業料無償化という大きな動きがあり、これまでデフレで推移していた物価をさらに押し下げ、デフレに拍車をかける方向になったといえよう。したがって、当面、この傾向は続くと思われ、消費者物価指数はマイナスが続くものと思われる。今後、高校授業料無償化以外の項目がどう動くかにもよるが、この4月度を見ても依然として厳しい状況であり、少なくとも今期前半はデフレ傾向の中、消費が動いてゆくことになろう。次回、5月、そして、現在の6月度の消費者物価指数がどのような動きとなるのか、注意深く見てゆく必要があろう。

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June 01, 2010

ユニバース、2010年4月期決算、増収増益!

   ユニバースが5/25、2010年4月期の決算を公表した。結果は、売上高982.11億円(2.8%)、営業利益34.18億円(0.9%)、経常利益35.32億円(1.5%)、当期純利益19.29億円(2.8%)と増収増益の決算となった。ただ、ユニバース自身は、「本格的な景気回復には至らず、デフレが緩やかに進行するとともに、依然として厳しい雇用・所得環境が続くなど、先行き不透明な状況で推移いたしました。」とコメントしており、消費を取り巻く環境は厳しさを増している状況といえよう。

   そこで、今期のユニバースの売上の状況であるが、全体は102.8%と堅調な数字となったが、既存店は96.7%と昨対を割り込み、苦戦している。その要因は、客数が97.1%、客単価が99.6%と、客数が下がったことが要因である。また、客単価についても、PI値は102.4%と堅調な数字であったが、平均単価が97.3%と下がっており、価格競争が厳しかったものといえよう。ユニバースも、「個人消費の低迷を受けて既存店ベースの客数が前期比97.1%と減少したことに加え、単価が一段階下の商品への志向が強まったことから、・・」とコメントしており、客数と単価の減少が既存店の売上げに響いたとのことである。

   ちなみに、ユニバースの全47店舗の平均的な店舗の状況であるが、店舗面積641坪、売上高20.52億円/年(坪売上320万円)、客数2,600人/日、客単価2,162円、PI値1,190%(11.9点/レシート当たり)、平均単価182円である。ごく平均的な日本の食品スーパーマーケットと比べ、一回りスケールが大きく、このタイプを47店舗、北東北、青森30店舗、岩手17店へ展開しており、存在感のある数字である。

   では、利益の方はどのような結果であったかを営業利益の中身を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.57%(昨年74.47%)と0.1ポイントであるが、わずかな上昇が見られる。今期は、先に見たように平均単価が下がっており、厳しい価格競争であった中では原価を大きく下げることなく、ほぼ昨年の数字を維持した。結果、売上総利益は25.43%(昨年25.53%)となった。一方、経費の方であるが、21.95%(21.99%)と、0.04ポイント下がっており、経費もほぼ昨年の数字を維持している。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、3.48%(昨年3.54%)とわずかなマイナスに留まった。ユニバースは、その他営業週収入が0であるので、マーチャンダイジング力=営業利益となり、これに、売上げの102.8%があいまって、結果は増益となった。

   この数字を見る限り、全体では増収増益とはなったが、既存店が客数、平均単価のダウンにより、売上げが伸び悩み、利益面では、原価の若干の上昇が見られ、やや苦戦気味の数字であるといえよう。北東北No.1のユニバースでも、このデフレによる消費環境の厳しさが、経営数値に反映されたといえ、それだけ、現在、食品スーパーマーケット業界は厳しい経営環境にあるといえよう。

   では、キャッシュフローはどのような状況であったかを見てみたい。まずは、営業活動によるキャッシュフローであるが、36.01億円(昨年31.95億円)と増加しており、キャッシュが増加している。これは、増益になったことから当期純利益が増加したことに加え、新店も堅調であり、減価償却費も増加したことが大きいといえる。次に、投資活動によるキャッシュフローであるが、-28.86億円(昨年-25.70億円)と昨年と比べ増加している。これは、有形固定資産の取得による支出が-29.11億円(昨年-13.77億円)と大きく増加したためであり、今期は積極的な新店への投資を行っている。結果、合計のフリーキャッシュフローは7.15億円(昨年6.25億円)とプラスとなり、しかも、昨年よりも増加した。

   そして、財務活動によるキャッシュフローであるが、-0.56億円(昨年-22.67億円)と、昨年とは異なり、今期は大きな動きがなかった。若干気になるのは、昨年は長期借入金を-19.86億円返済しているのに対し、今期は18.00億円借入、-15.29億円返済し、差し引き2.71億円増加していることである。結果、トータルのキャッシュフローは6.58億円(昨年-16.49億円)とプラスになり、現金が54.75億円から61.33億円へと増加したが、有利子負債トータルは35.42億円(昨年32.71億円)へと若干の増加が見られる。総資産は381.17億円であるので、総資産対比では9.29%と財務を圧迫するほどではないが、フリーキャッシュフロー7.15億円の大半を内部留保に振り向けた形であり、今期は有利子負債の削減よりも、現金の確保に重点を置いたキャッシュフローであるといえる。結果、キャッシュ効率、投下資本(純資産+有利子負債)当たりの営業キャッシュフローは13.18%(昨年12.56%)と上昇しており、キャッシュの流れは昨年よりも改善しているといえよう。

   このようにユニバースの2010年4月期の決算は増収増益とはなったが、消費環境は依然としてデフレにより、厳しい状況にあり、既存店は昨対を割り込み、客数、平均単価のダウンが見られる。ただ、財務は安定しており、キャッシュフローも順流、現金も増加し、キャッシュ効率も上昇している。今後、この安定した財務基盤をもとに、北東北において、新規出店を行い、どこまでドミナントを固められるかが、課題といえよう。新年度、ユニバースがどのような出店戦略を打ち出すか注目である。

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