キャッシュと客単価(金額PI値)を考えてみる!
ここ最近ID-POS分析に携わる機会が多くなったが、ID-POS分析をすればするほど、客単価、すなわち、金額PI値の位置付けを改めて再認識するにようになった。特に、都市型食品スーパーマーケットにおいては、金額PI値を引き上げることはもちろん重要であるが、それ以上に来店頻度を引きあげることはもっと重要であり、ここに着目したマーチャンダイジングが大きなポイントになることが明らかになりつつある。
商品は突き詰めれば、商品と引き換えに、どれだけたくさんのキャッシュを顧客からいただけるかが問われる存在であるといえる。食品スーパーマーケットとしては、可能な限り、より多くのキャッシュを顧客からいただくことが望ましいが、そのために、従来のPOS分析では売上金額=客数×金額PI値(客単価)までの分析が限界であり、ここから、客数よりも金額PI値(客単価)に着目し、金額PI値を引き上げるべくマーチャンダイジングの強化を図ってきたといえる。そして、さらに、一歩踏み込み、金額PI値をPI値×平均単価に分解し、PI値を引き上げるか、平均単価を引き上げるか、ないしは、双方を引き上げるかがマーチャンダイジングの課題であったといえる。
もちろん、これは理論的に正しい方向であり、この方向でマーチャンダイジングを考えれば、自然、金額PI値は上昇することになり、キャッシュが増大することになる。ところが、よく、見かけるケースであるが、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットでは、当然のことであるが、金額PI値が大きく違うことがある。郊外型の食品スーパーマーケットは金額PI値が高いが、都市型食品スーパーマーケットは金額PI値が低いというケースだ。
そこで、都市型食品スーパーマーケットの金額PI値をいかに引き上げるかが課題になり、マーチャンダイジングの改善に踏み込むことになるが、確かに改善をはかれば金額PI値の上昇は見られる。ただ、かなり頑張っても、郊外型の食品スーパーマーケットほどは引き上がらない場合が多い。金額PI値だけにこだわると、どうしても、その差が縮まらず、都市型食品スーパーマーケットの金額PI値は低いと結論づけて、それ以上のマーチャンダイジングの改善に踏み込めない場合がある。
はたしてそうか。確かに、単純な金額PI値では、差があるかもしれないが、もう一歩踏み込んで来店頻度まで考慮したらどうなるか。来店頻度を考慮するとは、まさに、ID-POS分析の世界となり、金額PI値にIDを付けることになる。通常のPOS分析、すなわち、金額PI値はレシート1枚当たりの売上金額であり、客数はレシート枚数のことである。したがって、金額PI値は顧客のレジ通過1回当たりの売上金額が算出されることになるが、このレジ通過1回当たり、すなわち、レシート1枚1枚にIDがついた場合、金額PI値がどう変わるかである。
この場合、これまの単純なレシート1枚当たりにくわえ、もう一歩踏み込み、レシートの中から同一IDのレシートを集め、そのレシートの総額を計算することが可能になる。これは何を意味しているかであるが、単純なレシート1枚当たりの売上げから、同一IDを加味したIDの総売上げを表していることになる。これがID-POS分析の基本指標、ID金額PI値である。これで見ると、これまでの金額PI値はどう見えるか。
数式にすると、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となり、従来の金額PI値にID客数PI値が掛け合わさることになる。ID客数PI値とはレシート枚数÷IDのことであり、これがまさに来店頻度である。たとえば、あるIDに着目した場合、1週間に2回買い物をした場合、ID客数PI値はレシート枚数2枚に対し、IDが1人であるので、2回÷1ID、2.0回/IDとなる。これを食品スーパーマーケットの全客数に広げると、1週間に14,000枚のレシートがあり、その時のIDが7,000人であった場合は、14,000枚÷7,000ID=2.0枚/IDとなり、1人1週間に平均2.0回レジを通過、すなわち、買い物をしたことになる。
したがって、ID金額PI値で見た場合、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットでは果たして、金額PI値ほど差がでるかどうかはわからなくなる。良く言われることであるが、郊外型の食品スーパーマーケットはまとめ買いをするので、客単価が高いというが、これは、ID金額PI値で見れば、ID客数PI値は低いが、金額PI値が高いということであるといえよう。一方、都市型食品スーパーマーケットは客単価が低いというが、これは冷蔵庫代わりに店を使っているからであり、来店頻度は高いといわれる。これもID金額PI値で見れば、金額PI値は低いが、ID客数PI値が高いということであるといえよう。
こう見ると、ID金額PI値で比較すると、郊外型の食品スーパーマーケットと都市型食品スーパーマーケットも金額PI値ほど大きな差がでず、場合によっては逆転することすら起こりうるといえよう。これがID-POS分析ではじめて明らかになる数字ともいえ、どうも、都市型食品スーパーマーケットは金額PI値にこだわることはもちろん重要であるが、それと同等、あるいはそれ以上に来店頻度にこだわり、来店頻度を引き上げるマーチャンダイジングに取り組むことがより重要な課題、結果、キャッシュの増大につながるのではないかと思う。
都市型食品スーパーマーケットのマーチャンダイジングは、第1ステップの金額PI値で終わることなく、ID-POS分析ができるできないに関わらず、第2ステップの来店頻度にまで踏み込み、キャッシュの増大につなげて欲しいところだ。また、そのことが結果、顧客満足度にもつながるといえよう。
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