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June 07, 2010

食品スーパーマーケットの利益剰余金を見る!

   先程まで、今週の有料版!食品スーパーマーケット最新情報を書いていて気になったことがある。利益剰余金である。今週のテーマはコンビニの最新決算解説であり、その中でセブン-イレブン・ジャパンを取り上げた。びっくりしたのは、自己資本比率(純資産比率)が78.5%と極めて高く、その要因が利益剰余金にあったことである。資本金自体は各社あまり大きな差がなく、利益剰余金による差が自己資本比率を決定づけていたことである。この利益剰余金は当然、P/Lの当期純利益から配当等に利益還元がなされた残りが、毎年毎年、蓄積されてゆくことになるが、その比率が、セブン-イレブン・ジャパンでは、純資産の95.9%にもなっている。

   一般的に自己資本比率(純資産比率)を引き上げるには、まずは、負債の削減が最優先であり、特に、有利子負債の削減が決め手になるが、セブン-イレブン・ジャパン、ローソン、ファミリーマート等を見ると有利負債はほぼ0であり、ここでの差はでない。したがって、純資産の絶対額を引き上げることが、ほぼ、イコールで自己資本比率を引き上げることになる。では、純資産を引き上げるにはどうしたら良いかであるが、それは資本金を増資するか、利益剰余金を増加させるしかなく、そのバランスが重要な経営課題となる。ところが、セブン-イレブン・ジャパンは資本金を増やすことなく、もっぱら、利益剰余金を積み上げ、純資産の95.9%、金額では約1兆円となる巨額の利益剰余金となっており、これが、財務の安定に大きく寄与しているのが特徴である。ここまで、利益剰余金にこだわった財務戦略を貫けることが、すごいといえよう。

   そこで、食品スーパーマーケットでは、利益剰余金がどのように位置づけられているのか、その実態を今期の最新決算をもとにいくつかの事例を見てみたい。まずは、純資産比率が高い食品スーパーマーケットであるが、恐らく、食品スーパーマーケット業界No.1であろうヨークベニマルであるが、純資産比率は80.3%である。利益剰余金は905.68億円、純資産は1,166.12億円であるので、77.7%であり、セブン-イレブン・ジャパン程ではないが、極めて高い数字である。ちなみに、イトーヨーカ堂であるが、純資産比率は75.3%、内、利益剰余金の比率は64.1%であり、やや低い数字である。

   次に、今期は上場をMBO(経営陣による買収)により、取り下げたオオゼキ、恐らく、食品スーパーマーケット業界No.2の純資産比率であると思われるが、昨年、2009年2月期の決算数字をもとに見てみたい。純資産比率は77.3%であり、内、利益剰余金の比率は94.8%であり、セブン-イレブン・ジャパンとほぼ同じ比率であり、極めて高い数字である。オオゼキがMBOにいたった要因はこの利益剰余金の高さにあることも、その1つの要因といえよう。これだけ、高い利益剰余金であれば、事業を継続発展させてゆく上において、広く、投資家から資本を集める必要性がなく、自らのマーチャンダイジング力で生み出すキャッシュで十分に可能であるといえるからである。

   もう数社見てみたい。マックスバリュ東海であるが、純資産比率は、今期はやや純資産比率を下げ、63.9%となったが、それでも、食品スーパーマーケット業界ではトップクラスである。その利益剰余金の比率であるが、86.2%と高い数字である。サンエーであるが、純資産比率は65.9%であり、利益剰余金の比率は84.5%である。そして、東武ストアであるが、純資産比率は68.8%であり、利益剰余金の割合は40.0%である。純資産比率の高い食品スーパーマーケットとしては、珍しく、利益剰余金の比率が低い数字であり、資本金の割合が39.8%と極めて高い数字である。これは資本金を急激に増強し、経営改革を断行した時に起こるといえ、東武ストアは今後、いかに利益を生み出せるかが課題といえよう。

   逆に、参考に純資産比率が低い食品スーパーマーケットも見てみたい。マックスバリュ東北であるが、純資産比率は8.2%である。内、利益剰余金は-7.81億円であり、厳しい状況である。トライアルカンパニーであるが、2009年3月期の決算であるが、純資産比率は11.7%であり、利益剰余金の割合は42.4%であるが、資本金も31.8%と高く、利益剰余金が純資産を押し上げるまでにはいたっていない。スーパーバリューであるが、純資産比率は15.6%であり、利益剰余金の比率は80.0%と極めて高いが、総資産に占める割合は12.5%であり、全体を押し上げるまでにはいたっていない。

   このように、自己資本比率(純資産比率)を高め、経営を安定させるためには資本金よりも、利益剰余金が大きな鍵を握っているといえ、改めて、経営の根幹は利益の確保、マーチャンダイジング力にあり、その結果、生み出されるキャッシュをしっかり蓄積し、そのキャッシュで経営全体を賄える堅固な財務基盤を作り上げることが極めて重要な経営課題であることがわかる。セブン&アイHのグループ企業が伝統的に財務基盤が強固な要因はこの利益剰余金の捉え方にあるといえ、特に、セブン-イレブン・ジャパンにその経営哲学とでもいうべき、強い意志が感じられる。今期のセブン-イレブン・ジャパンの決算では、特に、利益の大切さが改めて鮮明になったといえよう。

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