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June 09, 2010

野菜、果物、直売所と食品スーパーマーケット!

   農林水産省所管の直売の調査事業が本格的にスタートした。当面、文献収集と首都圏近郊の直売所のヒアリング調査、そして、直売関係者へのヒアリングに負われる日々になると思う。これが一段落するのに数ケ月かかると思うが、その後は、全国主要都市での同様な調査に入る予定である。すでに、直売関係文献、そして、関連論文も大分集まり、それらを精力的に読み込みを行っている。本ブログでも、公開できる資料は公開しているので、左端の「農林水産省、直売調査事業!」にリンクを張っているので、参考にしていただければと思う。つい最近も、年商10億円の直売を運営されている経営者の方へヒアリングさせていただいたが、食品スーパーマーケットとの発想の違いに、驚くことが多い。

   ちなみに、今回の調査事業は万全な体制を整えて臨んでいる。専属調査員はもちろん、アンケート分析ソフト、専属の事務所、会計責任者、連携調査専門会社、首都圏での直売事業者、そして、直売、フードシステム専門の大学教授陣のバックアップ体制の中でこの調査事業が進んでいる。

   さて、食品スーパーマーケットと直売の農産部門の違いであるが、食品スーパーマーケットの農産部門はバイヤーが中心に仕組みができあがっており、全店の青果物を調達することが最も重要な仕事といえる。仮に10店舗のトマトを揃えるには、トマトのPI値が10%だとすると、客数は10店舗で2,000人/日×10店舗=20,000人となる。したがって、トマトの必要数量は1日、20,000人×10%=2,000個となる。10日間で20,000個、100日間で200,000個、1年間で730,000個となる。これが、100店舗となると、その10倍となるので、年間では7,300,000個となる。この莫大な数のトマトをいかに滞りなく、各店に届けられるか、これがバイヤーの役割といえる。

   トマト1品でこれだけの物量となるので、野菜全品では、PI値が150%から200%であるので、10店舗の食品スーパーマーケットでは、1日必要な野菜が30,000個から40,000個であり、年間では約1,000万個から1,500万個、100店舗では、その10倍、1億個から1億5,000万個となる。途方もない商品調達量であり、この物量を実際、どの食品スーパーマーケットのバイヤーも調達しているわけであり、改めて、食品スーパーマーケットの農産バイヤーの仕事はすさまじい仕事であるといえよう。

   では、この大量のトマトをはじめ、野菜、そして、果物をどのように調達するか、それが食品スーパーマーケットと直売とを分けた最大の違いといえよう。食品スーパーマーケットは原則、市場を通して農産物を調達している。最近では、市場外流通も増え、産直も盛んにトライしているが、その割合は全体に比べればまだまだ少なく、大部分は中央卸売市場や地方卸売市場を通して、商品を調達しているのが実情といえる。これ以外の調達方法では少なくとも、先に上げた物量を安定確保することは難しいのが現状といえる。

   これに対して、直売はどうか。そもそも直売にはバイヤーが存在しない。存在するのは膨大な数の生産者である。極論すれば、農産物の数だけ生産者がいる。どんな小さな直売でも100人は下らず、10億円、20億円を売る直売では1,000人以上の生産者がいることも稀ではない。まさに、顔の見える野菜であり、顔の見える果物の世界がそこには存在している。しかも、それらの農産物のほとんどは近隣で取れる野菜であり、果物である。

   食品スーパーマーケットの農産部門とは全く違う、異次元の世界がそこにはあり、しかも、消費者からの絶大な支持を得ている直売が全国いたるところで誕生している。バイヤーなしで、極論すれば、農産部門が存在しない農産の売場が食品スーパーマーケットの農産の売場以上にアクティブでパワーのある売場が直売には存在している。直売を実際にヒアリングし、直売の文献を読み、直売の専門家に話を聞けば聞くほど、食品スーパーマーケットの農産部門との根本的な違いにびっくりする日々である。

   こう見ると、食品スーパーマーケットの農産のマーチャンダイジングとは何が本質か考えてしまう。以前は盛んにヴァーチカルマーチャンダイジングが注目された時があったが、直売はある意味、近隣という限定付きではあるが、まさに、ヴァーチカルマーチャンダイジングそのものといえる。消費者と農産物の生産者がダイレクトにつながった姿であり、そこにはバイヤーが存在しない。あるのは、農産物と消費者と、それを交換する店舗のみである。しかも、価格も消費者と生産者との相対で決まってゆき、仕入れ、複雑な粗利計算も存在しない。市場機能の物量調達、値決め機能が直売では、すべて現場で決まってゆくことになり、市場も存在しない。ある意味、究極のヴァーチカルマーチャンダイジングの姿といえよう。

   さて、今回の調査の目的は、この直売が首都圏、大都市ではどのような現状であり、メリット、デメリットは何か、課題としては何があるか、そして、農業生産者が、今後、首都圏、大都市で直売に取り組むことで、所得の向上にどこまでつながるのかを調査し、その実態を明らかにすることである。来年3月までの長丁場となる調査事業でもあり、じっくり取り組んでゆきたい。
   
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