大黒天物産、2010年5月度決算、大幅増収増益!
7/13、大黒天物産が2010年5月度の本決算を公表した。結果は、売上高801.90億円(9.2%)、営業利益41.70億円(16.3%)、経常利益41.66億円(17.3%)、当期純利益22.21億円(23.3%)と、いずれの数字も2桁の大幅増収増益となり、好調な決算となった。特に、大黒天物産は地元岡山を起点に、ここ最近、大阪、四国、九州と3方面への積極的な店舗拡大を行っており、売上高も順調に推移している。この決算期も、「平成22年2月に新たな商圏の獲得として鳥取県境港市にディオ境港店を、平成22年3月には徳島県小松島市にディオ小松島店を、そして平成22年5月には福岡県遠賀郡水巻町に当社グループ初となる九州地区にラ・ムー水巻店を新規出店いたしました。・・」とのことで、いよいよ、九州へも本格上陸となった。
また、来期も10店舗の新規出店を計画しており、売上高目標も870.03億円(前期比8.5%増)となる予想であり、今後とも積極的な新規出店をしてゆくとのことである。そこで、大黒天物産がなぜ、これほど、積極的な新規出店が可能なのかを今期の財務構造から、その要因を探ってみたい。
一般に食品スーパーマーケットが新規出店を行ってゆくには、まずは、出店にかかわる資産を取得することが前提となる。その資産とは、土地、建物、敷金保証金等である。そして、その出店にかかわる資産を調達するためのキャッシュが必要となり、このキャッシュが自己資本でどこまで可能かにより、その後、さらに新規出店が安定、継続的に可能かどうかが決まる。特に、新規出店を急ぐあまり、有利子負債を前提に新規出店を行った場合は、当初は急成長が可能となるが、その後、キャッシュ不足となり、成長が止まることが往々にして起こる。
そこで、まず、大黒天物産の出店にかかわる資産を見てみると、土地19.40億円、建物56.51億円、敷金保証金13.89億円、合計89.80億円である。大黒天物産の総資産が245.33億円であるので、比率は36.6%と、極めて低い数字である。これは上場食品スーパーマーケットの今期決算の中では最も低い数字であり、いかに、大黒天物産が資産をもたずに新規出店をしているかがわかる。ちなみに、No.2は非上場であるが、トライアルカンパニーであり、39.2%であり、この2社が40%を下回る食品スーパーマーケットである。したがって、1店舗当たりの出店にかかわる資産も大黒天物産はわずか1.73億円であり、通常の食品スーパーマーケットが約5億円であるので、その違いは歴然である。トライアルカンパニーも1.97億円であるので、この2社は食品スーパーマーケット業界の中では異色の企業であり、独特な新規出店を果たしてきたといえる。
したがって、大黒天物産はわずかな資産で新規出店が可能であるため、キャッシュの大半を新規出店に当てれば、短期間で急成長が可能となり、今期の大幅な増収増益、そして、来期も10店舗という大量出店が可能となる財務構造であるといえる。これが、いわゆる居抜き出店を成長戦略に採用した食品スーパーマーケットの最大の特徴であり、大黒天物産、トライアルカンパニーの出店戦略の本質といえる。
では、この出店をささえるキャッシュの方はどうかを見てみたい。大黒天物産の今期の原価であるが、77.6%であり、結果、売上総利益は22.4%となる。通常の食品スーパーマーケットが25%前後であるので、かなり、低い粗利であり、原価が低い粗利構造であることがわかる。これは、大黒天物産自身も、「・・商品戦略としましては、食品製造小売業(S.P.F)としてお客様に満足いただける商品の開発に取り組んでまいりました。・・」とコメントしているように、PBに力を入れてきた結果であるといえ、これが、原価を引き下げている要因といえよう。
一方、経費の方であるが、17.2%と、極めて低い数字であり、極力、経費を低く推さええており、これが、さらに、競争力を増し、新規参入にあたって、新規商圏内でも低価格で参入できる要因といえよう。ちなみに、人件費であるが、売上対比7.3%という低さであり、この人件費比率の低さも経費を低く抑える大きな要素といえよう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.2%となり、極めて高い比率で商品売買を通じてキャッシュを獲得していることがわかる。
したがって、この効率の良いキャッシュの獲得をそのまま新規出店に当てる財務構造ができているといえ、出店余力、自己資本から出店にかかわる資産を引いた数字は何と16.0%と極めて高い数字であり、この一連の出店にかかわる財務循環が大黒天物産の高成長を支えている財務構造といえよう。
このように、大黒天物産の2010年5月期の本決算は大幅な増収増益となり、しかも、出店余力、マーチャンダイジング力、ともに極めて高い、食品スーパーマーケットの経営にとっては理想的な財務構造であるといえる。来期も10店舗の新規出店を予定するなど、当面、大黒天物産の急成長は続くものといえ、次の中間、そして、来期決算、どのような結果となるか、その行方が気になるところである。
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