アークスの2011年2月期、第1四半期決算を見る!
北海道のアークスが7/5、2011年2月期、第1四半期決算を公表した。結果は、売上高744.25億円(17.8%)、営業利益 21.28億円(9.1%)、経常利益 22.95億円(7.9%)、当期純利益12.79億円(12.7%)と、増収増益の好決算となった。特に、売上高に関しては、昨年が632.05億円であるので、約100億円強の増収であり、率でも17.8%増と大幅な増加である。これは特に、昨年9月の札幌東急ストアへのM&Aが大きく、年間では約500億円近い増収効果となろう。
札幌東急ストアの営業実績であるが、2009年2月期決算では営業収益522.72億円(昨対98.14%)、営業利益11.43億円(昨対95.56%:対営業収入に対する営業利益率2.18%)という状況であり、この数字がほぼそのままオンすることになると思われ、この面でのアークスの増収効果が大きかったといえよう。また、このM&Aにより、アークスの店舗数も、この第1四半期段階では201と、200店舗を超える規模となった。
ただ、営業利益は売上高の伸び、17.8%ほどは伸びておらず、9.1%、約半分の伸び率に留まっており、気になるところである。そこで、アークスの営業利益がどのような構造であるのかを、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、77.25%(昨年77.70%)と0.65ポイント減少しており、原価の改善が進んでいる。アークス自身も、「小売業界におきましても、消費者の生活防衛意識や節約志向の高まりから競合各社の低価格競争は一層激しさを増しており、依然として厳しい経営環境で推移いたしました。・・」との厳しい認識を示している。そして、このような認識のもと、「当社グループは強まる低価格志向に対応するため、ビッグハウスを中心に低価格業態に更なる磨きをかけ、「革命的な価格」の実現に向けた取り組みを進めてまいりました。」とのことで、価格にこだわった取組みに力を入れて来たという。
その結果、原価が下がったことは、これらの施策が原価の改善に寄与したといえ、結果、売上総利益は22.75%(昨年22.30%)と改善した。ただ、それでも、22%台の売上総利益はかなり低い数字であり、当然、札幌東急ストアの方がかなり高い数字であると思われ、そちらにややシフトしたことも原価改善には寄与したものと推測されるが、このデフレ環境の中での原価改善であり、それが利益を押し上げる方向になったといえよう。
一方、経費の方であるが、19.89%(昨年19.22%)と0.67ポイント上昇しており、気になるところである。ただ、それでも、20%を切っており、食品スーパーマーケット業界の中ではかなり低い数字であといえ、アークス得意のディスカウント戦略を充分に採用できる低い経費比率であるといえよう。ただ、経費の上昇は、当然、利益圧迫要因となり、これも札幌東急ストアの影響があると思われるが、今後、いかに、経費を削減するかが課題といえよう。
結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、2.86%(昨年3.09%)と、微妙に3%を割っており、これもやや気になる結果である。原価は改善できたが、それを上回る経費の上昇であり、今後はいかに、この経費比率を抑えられるかが経営の最優先課題といえよう。アークスの場合は、その他営業収入が0であるため、このマーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益は高では昨対を超えたが、率では、経費が上昇した分、微妙に下がっており、今期は経費の利益への圧迫が大きかったといえよう。
これに対し、財務面であるが、自己資本比率は52.9%(昨年52.5%)とあまり大きな変化はなく安定しているが、その中身は札幌東急ストアをM&Aしたため、資産、純資産に関してはかなりの変化が見られる。まず総資産であるが、1,202.24億円(昨年1,010.00億円)であり、約200億円の増加が見られる。これは、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計が当然増加しているためである。一方、負債面であるが、有利子負債が186.59億円(昨年101.28億円)と大きく増加しており、M&A以前と以後では、財務構造が様変わりしたといえよう。
したがって、ここから出店余力、出店にかかわる資産がどれだけ自己資本比率によってカバーできているかを見ると、-17.72%(昨年-18.16%)であり、まだまだ、負債に依存する新規出店構造であり、今後の経営課題のひとつといえよう。ちなみに、在庫も82.20億円(昨年69.82億円)と増加しており、率では大きな差が見えないようであるが、額では明らかに、ひと回り大きくなったといえよう。
このように、アークスのこの2011年2月期の第1四半期決算は大幅な増収増益とはなったが、その最大の要因は札幌東急ストアをM&Aした結果であり、中身を良く見ると、原価は改善したが、経費が上昇、資産は増加、負債、特に、有利子負債も増加した。経営面では規模の拡大にはつながり、店舗数も、売上げも資産もひと回り大きくなったといえるが、経営効率から見ると課題を残す決算結果であったといえ、今後、どれだけ、経営のスリム化をはかり、利益及び、経営効率を引き上げられるかが課題といえよう。次の中間決算で、どこまで経営改善がはかれるか注目である。
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