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July 18, 2010

牛乳、加工乳に注目、第3の牛乳となれるか?

   7/16の日経新聞に牛乳の特集記事が掲載された。見出しは、「ウチは第三の牛乳」、「加工乳支持広がる、成分調整牛乳より20円安」であり、加工乳が注目されはじめたという内容の記事である。ちょうど、ビールでは第3のビールが割安感から、このデフレ環境の波にのり、売上げを伸ばしているように、加工乳という牛乳の中では第3の牛乳が注目されはじめたという内容であり、興味深い記事である。特に、記事の中で農水省調べの牛乳のグラフが掲載されているが、これを見ると、加工乳の伸び率がここ最近右上がりで伸びており、牛乳の横ばい、成分調整牛乳の右下がりと比べると、確かに注目すべき商品となりつつあるといえよう。

   日経の記事の中でも解説されているが、牛乳には大きく3つの種類がある。社団法人日本酪農乳業協会によれば、1つ目が牛乳であり、「生乳(牛からしぼったままの乳)を加熱殺菌したもので、水やほかの原料ははいっていません。乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上の成分をふくむものです。・・」とのことである。いわゆる一般の牛乳である。2つ目が成分調整牛乳であり、「生乳から乳脂肪分の一部を除去するか、水分の一部を除去し、成分を濃くするなどの調整を行った牛乳、・・」とのことである。この中には、乳脂肪分を0.5%以上1.5%以下にした低脂肪牛乳や、さらに、乳脂肪分を0.5%未満にした無脂肪牛乳などもある。そして、今回の第3の牛乳といわれる加工乳であるが、「生乳または脱脂粉乳やバターなどの乳製品を原料に、乳成分をふやしたものや、乳脂肪分をへらしたものなどがあります。濃厚ミルクまたは乳や低脂肪乳などです。・・」とのことで、まさに、牛乳を加工したものである。

   問題は、この3つが味や成分が違うだけでなく、まさに、第3のビールでも見られるように、価格帯が違い、牛乳より、成分調整牛乳が比較的安く、さらに、加工乳は成分調整牛乳よりも安い傾向がある点である。牛乳は食品スーパーマーケットの商品の中でも最も価格に敏感に顧客が反応する商品のひとつであり、価格の違いはそのまま売上げの違いとなってあらわれるので、日経の記事にあるように、このデフレ環境の中ではまさに、価格帯の安い第3の牛乳、すなわち、加工乳に注目が集まりはじめたものといえよう。

   ちなみに、なぜ、牛乳より、第2の牛乳、成分調整牛乳、そして、第3の牛乳、加工乳が安く販売できるかであるが、その原理は、成分調整牛乳は牛乳から分離した脂肪分などをバター、チーズ等の加工品に転用でき、相乗積が働き、その分、成分調整牛乳を安くできるという。また、加工乳は、牛乳に脱脂粉乳などの安い成分を混ぜることにより、ここでも相乗積が働き、牛乳よりも安くできるという。いずれも、牛乳から発生する牛乳飲料であるが、何らかの加工が入ることで、原価を下げ、結果、価格を下げることができることが最大の特徴である。

   生鮮食品等では加工をすることによって、付加価値を上げ、その分、価格を上げ、利益を確保するのが加工の意義であるが、牛乳の場合は逆で、加工をすることが値段を下げることにつながるという、実に、驚異深い商品といえよう。では、実際の価格はどのようになっているかであるが、日経新聞の記事の中では、いなげや練馬石神井南店の7/15の売場の実態が取り上げられている。それを見ると、牛乳の代表格、明治おいしい牛乳1Lが248円、成分調整牛乳のタカナシ乳業の北海道さわやか家族が188円、そして、加工乳であるが、森永乳業の森永ミルクが168円ということで、まさに、この事例は絵にかいたような価格帯となっているといえよう。

   ただ、実際の牛乳売場の特徴は、どの食品スーパーマーケットでも170円前後の牛乳が1品ないしは2品あり、特に、その1品はPBであることが多い。その2トップが牛乳全体の50%以上の売上を取り、残りの50%を様々な牛乳、成分調整牛乳、加工乳で品揃えを競うというのが実態といえる。日経の記事の中でも、加工乳が占める飲用牛乳の割合は1割弱とのことであり、加工乳が第3のビールのようになるというよりは、牛乳の中での存在感を高めつつあるというのが実態とのことである。したがって、牛乳全体の枠組みがガラッと変わるというよりは、じわじわと、加工乳が存在感を高め、顧客の確実な支持を獲得しはじめたということであり、今後、どう変化してゆくが気になることころでもある。

   牛乳は食品スーパーマーケットの中では、PI値No.1の商品でもあり、顧客から絶大な支持を受けるカテゴリーである。したがって、ここが活性化できば、売場全体の活性化にもつながる、重要な商品のひとつである。今回の日経の記事は、その意味で、牛乳の新たな活性化の方向性を示唆する内容であり、興味深い記事といえよう。今後、加工乳が現在の約1割から2割、そして、3割ぐらいまで、その存在感を高められるかが当面の課題といえよう。

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