食品スーパーマーケットにおけるCashの流れ、その2!
前回のブログ、「食品スーパーマーケットにおけるCashの流れ、その1!」で見たように、食品スーパーマーケットのキャッシュはマーチャンダイジングにより生まれ、これに、その他営業収入がプラスされ、入ってくるキャッシュが確定する。実はこの段階でも、キャッシュの流れは、様々な問題がある。
たとえば、顧客と商品との間で適正な売価でキャッシュに交換されない場合が多々ある。値下げ、廃棄はもちろん、チャンスロス、レジでの打ち間違い、万引きなどである。また、価格変更、特に、売価が特売から元に戻った時の売変ミスは枚挙にいとまがないくらい起こる。これに、その他不動産収入、物流収入に関しては、交渉次第でキャッシュがかわり、大きく数字が変動する。したがって、食品スーパーマーケットのキャッシュは、入りのところでもかなり問題があり、ここをしっかり押さえられるかにより、キャッシュの入りで相当の差が生じるのが実態である。セブンイレブンの単品管理が重要な理由は、この入りの精度を100%に近付ける試みであるといえ、食品スーパーマーケットにとっては、その意味で単品管理の重要性は極めて大きいといえよう。
さて、ここからが出になるが、食品スーパーマーケットにとって、キャッシュアウト、すなわち、外部へキャッシュが出てゆく最も大きな項目は原価である。「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」によれば、約75%のキャッシュがキャッシュアウトする。したがって、100%入ってきたキャッシュの内、まずは原価で75%がなくなり、使えるキャッシュは約25%となる。ここで、取締役の役割が決定的に重要になる。75%を74%、73%にできるかどうか、それが難しくとも、75%以上にキャッシュアウトをさせないかどうかがポイントとなる。そして、そこには、仕入原価、仕入れ後は、先に上げたようなマーチャンダイジング上の課題、どこまで、商品の付加価値をつけられるか、特に、生鮮食品の加工技術の向上は即、キャッシュインであるので重要である。
そして、この25%の原価を差し引いたキャッシュから、食品スーパーマーケットの運営にかかわる経費、その他もろもろの費用を引くと、結果、営業キャッシュフローが決まるが、この段階になると、この25%のキャッシュがわずか3%強ぐらいとなる。したがって、20%強がさらにキャッシュアウトすることになり、食品スーパーマーケットが自由に活用できるキャッシュは実は入ったキャッシュの内、わずか3%強に過ぎないというのが実態である。ここでも、また取締役の役割が重要となる。先ほどは商品関連のキャッシュであったが、ここでは、約20%強の経費関連のキャッシュを圧縮する役割となる。すなわち、19%、18%と、キャッシュアウトを減らせるかどうかである。当然、あらゆる経費を削減する必要があるが、食品スーパーマーケットの場合は莫大な設備投資がからみ、それにより、減価償却費、固定費等が大きく違うため、この面からの経費削減も重要な課題となる。特に、坪売上と経費は密接な関係があり、単に経費を削減するだけではなく、営業面の視点もこの段階の取締役には必須の知識といえよう。
これで、やっと食品スーパーマーケットのキャッシュ、営業キャッシュフローが確定することになる。この段階になると、100%入ってきたキャッシュがわずか、3%強となっており、食品スーパーマーケットは莫大なキャッシュが入る割には、自由に使えるキャッシュはけっして潤沢ではないのが実態である。この3%強のキャッシュをどう使うかが、その後の成長を決定づけることになり、これが投資キャッシュフローである。ここからは、取締役の中でも、さらに将来の成長を決定づける投資を決断しなければならず、まさに、取締役の中の取締役、すなわち、代表取締役の役割となる。
そこで、代表取締役の最も重要な役割、投資キャッシュフローであるが、「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」によれば、営業キャッシュフローの内、約70%を投資キャッシュフローに回しており、その内、ほぼ、100%が出店関連への投資である。こう見ると、食品スーパーマーケットは自由になるキャッシュ(全体の約3%強)の70%を投資キャッシュフローに回し、その大半を将来の成長戦略、出店に投資しているのが実態であるといえる。
そして、残り30%のキャッシュ、まさに、フリーキャッシュフローであるが、その内、約60%を有利子負債の返済に充て、30%を配当に回し、残り、10%を内部留保しており、これが「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」から見える、キャッシュの最終配分である。残念ながら、食品スーパーマーケットの有利子負債は「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」を見ると合計1兆円を超え、総キャッシュ、営業収入が約8兆円弱であるので、15%弱となり、有利子負債が経営を圧迫しており、フリーキャッシュフローの約60%を有利子負債の返済に充てざるをえない状況にあるといえる。経営者にとっては、苦渋の決断だと思われるが、キャッシュアウトが大きな比重を占める食品スーパーマーケット特有の経営の現状からすれば、やむを得ない面もあるといえよう。
このように、食品スーパーマーケットはキャッシュにはじまり、キャッシュに終わるといってもよく、各取締役は、そのキャッシュの動き、インとアウトの重要な局面で目を光らせ、しっかりキャッシュを管理しないと、最終的に代表取締役が将来の投資へ、そして、株主への配当へ回すべき配分、キャッシュが十分に確保できず、企業の継続、成長発展に十分なキャッシュを充てることができず、企業経営そのものに重大な影響を与えかねない。その意味で、各取締役の役割は、ことキャッシュに関しては、当然のことであるが、極めて重要な役割を担っているといえよう。
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