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July 2010

July 31, 2010

日経MJ、新製品週間ランキング7/30、アイス、飲料好調!

   7/30、日経MJが新製品週間ランキングを公表した。ここ最近、真夏日の熱い日差し、そして、灼熱の熱帯夜が続く毎日であるが、予想通りというか、アイスクリーム、飲料が好調な週となった。冷凍食品部門では、ベスト20の内、19がアイスクリームとなり、飲料部門では初登場の新製品が上位に食い込むなど健闘しており、夏特有の新製品が絶好調であるといえる。食品スーパーマーケット業界は、ここ最近厳しい売上が続いているが、この夏本番の商品がどこまで売上げを押し上げるか、この7月度の数字が気になるところである。

   まずは、冷凍食品部門であるが、アイスクリームが好調である。ベスト20の内19品の新製品がアイスクリームであり、その内、No.1、No.2は初登場の新製品である。どちらもハーゲンダッツジャパンであり、しかも、先週1位、今週No.3もハーゲンダッツジャパンであり、今週はハーゲンダッツジャパンがベスト3の上位を独占した。そのNo.1であるが、ミニカップミルククラシック120ml、金額PI値221円、カバー率60.0%である。No.2は同じくミニカップであり、タヒチバニラキャラメル120ml、金額PI値217円、カバー率60.0%である。そして、No.3はミニカップ・マルチパック6個入りサマーパーティ75ml×6、金額PI値171円、カバー率52.0%である。いずれもクリーム系であり、夏は氷系が強いと言われるが、今週のベスト3はすべてクリーム系である。

   では、氷系はどうかと見ると、No.14に赤城乳業、ガリガリ君コーラ113ml、金額PI値59円、カバー率32.0%が入ったが、カバー率は小さく、金額PI値もいまひとつである。ベスト20には入ったが、意外に、順位は低いといえよう。No.16、No.17にも赤城乳業のガリガリ君が入り、梨113ml、金額PI値42円、カバー率17.2%、レモンスカッシュ113ml、金額PI値41円、カバー率21.2%であり、金額PI値、カバー率ともに、低いといえる。ただ、ガリガリ君も積極的なフレーバー開発に入ったといえ、今後、どこまで金額PI値、カバー率を上がられるかが課題といえよう。

   ちなみに、冷凍食品、唯一のアイスクリーム以外の新製品はNo.15に入ったテーブルマークのやきとり串5本入100gであり、金額PI値59円、カバー率25.2%である。夏本番であり、ビール等と相性の良いやきとりが唯一冷凍食品としてベスト20に入ったが、それ以外の冷凍食品は1品もなく、今週はアイスクリームのほぼ独占となった。

   もう一方の注目の飲料であるが、サントリーと日本コカ・コーラが激しい上位争いを繰り広げており、これに、キリンビバレッジ、アサヒ飲料が激しく追い上げる状況である。No.1はサントリー、C.C.レモン500mlペットボトルであり、金額PI値459円、カバー率は何と94.4%である。これだけのカバー率で高い金額PI値となり、しかも、先週比125円のアップと、平均単価が87円から88円へと上昇している中での数字であり、注目の新製品といえよう。そして、これについで、激しく追い上げているのが、No.2の日本コカ・コーラ、ファンタファンミックス490ml、金額PI値427円、カバー率71.2%である。初登場であるが、いきなり、400円台の金額PI値となった。この新製品はミックスであり、コーラとオレンジを混ぜたものであり、これも注目の新製品といえよう。

   そして、No.3、No.4、No.5とサントリーが続き、初登場のDAKARAゼロスパークリング500mlペットボトル、金額PI値420円、カバー率80.4%、ウーロン茶プレミアムクリア500mlペットボトル、金額PI値346円、カバー率83.2%、そして、C.C.レモンゼロ500mlペットボトル、金額PI値316円、カバー率80.8%である。いずれもカバー率が高く、金額PI値も300円を超え、高い水準でのランクインであり、注目である。特に、No.4のウーロン茶プレミアムクリアは先週No.1であり、金額PI値が40円マイナスとなったが、依然として高い水準を維持しており、来週以降、どのような数字になるか興味深いところである。

   今週は、このアイスクリーム、飲料以外でも注目の新製品がいくつかある。その他食品のNo.4となったサンヨー食品、サッポロ一番坦々麺5個パック535gであり、金額PI値181円、カバー率36.8%である。先週比173円の大幅アップであり、順位は422位からの躍進である。今はやりのラー油も入っているといい、今後、注目の新製品といえよう。また、No.11にも初登場でサッポロ一番坦々麺どんぶり90gも金額PI値92円、カバー率32.0%で入っており、来週以降の順位がどこまで上がるか気になるところである。

   このように、今週の日経MJ新製品週間ランキングは、夏本番、しかも、異常な暑さが続く中、アイスクリームと飲料に注目が集まった週となり、注目の新製品が数多く登場している。少し意外なのは、アイスクリームの定番では恐らく氷系が強いと思われるが、新製品では圧倒的にクリーム系が上位を占め、カバー率も高く意外な結果であったことである。今後、もっと氷系の新製品の開発を期待したいところである。一方、飲料では、コーラとオレンジをミックスさせたファンタファンミックス、DAKARAのゼロスパーククリング、ウーロン茶のプレミアムクリアなどユニークな新製品が登場している。来週もまだまだ灼熱の夏が続くと思われ、これら新製品がどこまで数字を伸ばすか注目である。

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July 30, 2010

丸和、事業再生ADR開始、債権者会議始まる!

   親会社ユアーズと一体になった経営再建中の九州、福岡を中心にドミナト展開している食品スーパーマーケットの丸和が事業再生ADRの手続きに入り、7/15、第1 回債権者会議が開催された。事業再生ADRは聞きなれない言葉であるが、ここ最近、注目されつつある事業再生の新手法であり、会社更生法や民事再生法等の訴訟手続きなしに、法務省から認定を受けた中立的立場にある専門家、丸和の場合は、事業再生実務家協会(JATP)を通じて、紛争の解決を行い、事業の再生を目指す仕組みである。

   ADRはAlternative Dispute Resolutionの略であり、直訳すると代替紛争解決であり、裁判外での紛争解決の手続のことである。関係官庁は法務省、経済産業省、そして、国税庁等であり、特に、食品スーパーマーケットなどでは、取引先との関係を維持しつつ、事業の再生が可能であり、税制面でも優遇措置が取られているのが特徴である。ただし、丸和の場合は、さらに信用保証を強化するため、6/30に「事業再生ADR手続の正式申請及び受理ならびに事業再生計画案の概要に関するお知らせ」と同時に、「親会社との合併の方針に関するお知らせ」を公表しており、親会社ユアーズの全面支援のもとに事業再生ADRが進んでゆくことになる。

   7/15現在、先に見たように第1回債権者会議が開かれ、「本日の第1回債権者会議は成立し、全お取引金融機関からは借入元本の返済一時停止について同意(追認)を得ると共に、一時停止の期間を事業再生計画案の決議のための債権者会議の終了時まで延長することにつきましてご承認をいただきました。・・」という段階である。今後、9/15に第2回債権者会議(事業再生計画案の協議)、10/22に 第3 回債権者会議(事業再生計画案の決議)が予定されており、順調に会議が進めば、年内に事業再生計画が実行に移され、その後、来年5月に親会社ユアーズとの合併がなされ、丸和は上場廃止になる予定である。

   法務省によれば、一般に、事業再生ADRはいくつかの段階に分かれて進んでゆくことになる。まずは、事前の審査であり、その後手続き実施者の選任となる。丸和の場合は、この段階はクリアーし、手続き実施者として、法務省(ADR)認証第21号・経済産業省(事業再生)認定第1号を受けた事業再生実務家協会(JATP)が選任された。そして、正式に申し込みの後、ここから本格的な事業再生ADRがスタートする。

   最初の手続きは、債務者と協会と連名で、債権者に対して、債権回収や担保設定等の停止を要請し、承認を得ることであり、これが第1回債権者会議の目的である。丸和の場合は、親会社ユアーズも入り、丸和、ユアーズ、事業再生実務家協会(JATP)連名で、6/30に「一時停止の通知書(借入元本返済の一時停止等)」を送付しており、これが、7/15に各債権者に承認されたという段階である。丸和の事業再生ADRの現状はここまでであるが、その後は、第2回債権者会議が開かれ、計画の内容の説明、手続実施者による調査結果報告、質疑応答、意見交換等がなされる。丸和の場合は、9/15の予定である。そして、第3回目の債権者会議が開かれ、ここで、計画の決議がなされるが、その際、全債権者が同意するかどうかが最大のポイントである。丸和の場合は10/22の予定である。

   ここで大きく2つに分かれることになる。ひとつは全債権者が経営再建計画案に同意した場合であり、この場合は計画案決議が成立し、裁判所によらない私的整理が成立することになる。まさに、ADR、Alternative Dispute Resolution、裁判外での紛争解決である。一方、問題は、不同意の債権者が存在した場合である。この場合は計画案決議の不成立となり、裁判官による単独調停(民事調停法5条1項但書)に至ることになる。

   そして、調停次第では、私的整理の成立へ至る場合もあるが、調停が不調に終わった場合は、会社更生・民事再生手続への移行となる。したがって、この一連の事業再生ADRの流れを見ると、従来の会社更生・民事再生による会社の再建に入らずに、ギリギリの私的再建を法的根拠のもとに、専門家を交えて、試みる経営再建手法であるといえ、その意味で従来にない新しい経営再建手法といえよう。

   ちなみに、事業再生実務家協会(JATP)によれば、事業再生ADRのメリットを4つ上げている。「商取引を円滑に続けられること− 通常の私的整理と同様に、本業をそのまま継続しながら、金融機関等との話し合いで解決策を探れる。」、「信頼できること− 法的整理を担う実務家と同レベルでの監督の下で進められる手続である。」、「意見がまとまらない場合にも対応できること− 意見がまとまらなければ、裁判所を利用した手続(特定調停や法的整理)に移行し、ADRの結果を尊重して頂くことも可能。」、「原則として、債権放棄による損失の無税償却が認められること。」であり、法的整理と指摘整理の両手続の「メリット」を融合(デメリットを克服)したものであるという。

   このように、丸和はまさに、この事業再生ADRの第1段階、第1回債権者会議にて、債権回収や担保設定等の停止を要請し、承認を得たが、今後、事業の再建計画、その承認と年内いっぱい続くことになる。問題は10/22に予定されている第3回債権者会議であり、ここで計画案が債権者全員の同意が得られるかどうかが重要なポイントとなる。次回9/15、第2回債権者会議において、丸和が今後どのような再建計画案を策定するか注目である。

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July 29, 2010

コンビニ、売上速報、6月度、全体12ケ月ぶりプラス!

   (社)日本フランチャイズチェーン協会が7/20、2010年6月度の売上速報を公表した。結果は全体の売上高が6,605.13億円、昨対0.9%となり、12ケ月ぶりにプラスに転じた。店舗数は42,889店舗であり、対象チェーンは、ココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの11チェーン、ほぼ日本のコンビニを網羅しており、信頼のできる数字である。ただ、既存店は-1.5%と13ケ月連続ダウンとなっており、依然として、コンビニを取り巻く消費環境は厳しい状況が続いているといえよう。

   では、全体の売上高が0.9%のプラスに転じた要因であるが、来店客数と客単価で見てみると、客数は11.89億人(1店舗当たり924人)となり、2.2%のプラスであった。一方、客単価は555.4円と-1.3%のマイナスとなった。したがって、客単価のダウンを客数でカバーした形であり、客数アップが売上アップの要因である。では、さらに、その客数が伸びた要因であるが、店舗数は先に見たように42,889店舗であり、これは、昨年と比べ1.6%の増加である。ところが客数は2.2%のプラスであるので、店舗数以上に客数がのびており、新店の客数が予想以上に伸びた結果であり、新店の客数が特に好調であったと思われる。

   そこで、コンビニの客数の状況であるが、7/28の日経MJで恒例の2009年度のコンビニ特集を組んでおり、その中にコンビニの1店舗当たりの平均来店客数ランキングが掲載されている。それを見ると、No.1はJR東日本リテールネットであり、1,844人(-3.6%)である。以下、No.5まで鉄道系が続く。No.2は小田急商事1,747人(-1.5%)、No.3阪急リテールズ1,549人(8.5%)、No.4ジェイアールサービスネット岡山1,485人(-6.7%)、そして、No.5ジェイアールサービスネット広島1,303人(-)という結果である。残念ながら、これらのコンビニは先の(社)日本フランチャイズチェーン協会の集計の対象外であるが、すごい数字である。いかに、駅中のコンビニの客数が多いかがわかる。

   ちなみに、客単価であるが、JR東日本リテールネット338円(-1.7%)、小田急商事366円(1.7%)、阪急リテールズ330円(-2.4%)、ジェイアールサービスネット岡山350円(-2.2%)、ジェイアールサービスネット広島355円(-)であり、客数とは対照的に低い数字であり、(社)日本フランチャイズチェーン協会の対象チェーンの平均555.4円と比べてもかなり低い数字といえる。駅中のコンビニは客単価よりも客数をあげることで売上げアップをはかっているのが鮮明である。

   さて、(社)日本フランチャイズチェーン協会の対象チェーンにもどると、全体の数字は堅調な結果となったが、既存店はどうかを見てみたい。まず、既存店の売上高であるが、先に見たように、-1.5%と13ケ月連続のマイナスとなったが、その要因は客数0.04%、客単価-1.6%と、客単価のダウンが原因であるといえる。全店も客単価はダウンしており、この6月度の数字を見る限り、コンビニの客単価のダウンが鮮明であり、これを必死に客数でカバーしようとしている姿が浮かび上がる。

   そこで、先と同様、日経MJのコンビニ特集の客単価のランキングを見てみたい。No.1ハセガワストア861円(3.5%)、No.2大津屋717円(-8.1%)、No.3コスモスジャパン640円(-1.5%)、No.4セブンイレブン・ジャパン604円(-2.7%)、No.5サークルKサンクス573円(-2.4%)、No.6ローソン569円(3.4%)、No.7シー・ヴイ・エス・ベイエリア558円(-2.8%)、そして、No.8ファミリーマート540円(-2.0%)という状況である。No.1のハセガワストアを除き、軒並み客単価ダウンであり、2009年度の平均数字であるが、厳しい状況であることがわかる。ただ、上位はほとんど、(社)日本フランチャイズチェーン協会の対象チェーンであり、客単価のダウンは見られるが、その数字はコンビニ業界ではトップクラスであるといえよう。

   再び、(社)日本フランチャイズチェーン協会の6月度の売上速報にもどるが、では、商品別ではどうかを見てみたい。日配食品0.6%(構成比33.5%)、加工食品0.3%(構成比30.2%)、非食品0.2%(構成比31.6%)、そして、サービス11.3%(構成比4.7%)という結果であり、いずれもプラス、特に、構成比は小さいがサービスの伸びは顕著である。ただ、%の伸びはサービスを除くとわずかであることから、全体、既存店同様、客数に支えられた伸び率であるといえ、商品で見ても、客単価の伸びはサービス以外厳しい状況であるといえよう。

   こう見ると、この6月度のコンビニの数字は全体の売上高は12ケ月ぶりにプラスに転じ、明るい兆しも見え始めたともいえ、特に、すべての商品部門がプラスになったことが大きいといえよう。ただ、依然として、既存店の売上げは13ケ月連続でマイナスが続いているのも事実であり、特に、客単価の落ち込みが、全体も同様に原因といえる。その意味で、今後、コンビニの売上げが回復基調になるかどうかは、この客単価にかかってきたといえ、7月以降、各社の客単価がどのような推移となるか注目といえよう。

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July 28, 2010

食品スーパー売上速報、2010年6月度、100.1%!

   7/27、(社)日本セルフサービス協会(JSSA)から2010年6月度の食品スーパーマーケットの売上速報が公表された。この売上速報は、JSSAによれば「2010年5月より、オール日本スーパーマーケット協会(AJS)、日本スーパーマーケット協会(JSA)と当協会(JSSA)は共同で「スーパーマーケット統計調査」を発表しています。」とのことで、AJS 58社、JSA 60社、JSSA 165社(うち重複企業15社)の計268社、合計売上金額では年間ベースで9兆2,961億円((株)帝国データバンク COSMOSデータベース)であり、まさに、日本の食品スーパーマーケットの現状を表している統計数字といえよう。なお、この268社はこの6月度の売上速報の回答企業数であり、正式加盟社数は、AJS 58社、JSA103社、JSSA 455社の計571社であり、総店舗数は14,493店舗、総売上高は14兆1,645億円となり、ほぼ日本中の主要食品スーパーマーケットをカバーしているといえよう。

   さて、その結果であるが、この6月度は、7,530.38億円(100.1%)であり、5月度確定が7,630.41億円(97.5%)であるので、5月度よりは回復したとはいえ、依然として厳しい状況が続いているといえよう。残念ながら、既存店の数字は公表されていないが、新店を含めた全体の売上高が100.1%であるので、既存店は100%を切っていると思われ、95%前後と推定される。ちなみに、首都圏の主要食品スーパーマーケットのこの6月度の売上速報を見ると、マルエツ96.3 %(既存店 95.3%)、いなげや93.8%(93.1%)、マルヤ104.8 %、ヤオコー104.5%(98.9%)、エコス 93.0%(94.8%)、 Olympic 97.7%(97.1%)、カスミ 100.3%という状況であり、既存店が苦戦しているのが実態である。

   JSSAの公表数字は、この売上高だけでなく、食品スーパーマーケットの各商品群ごとの売上高、商品構成比、そして、前年同月比も公表している。これはこれまで、この規模では中々把握できなかった食品スーパーマーケットの貴重な統計データである。特に、生鮮3品、惣菜の4部門がそれぞれ分けて集計されており、まさに食品スーパーマーケットたるゆえんの象徴的な部門であるので、この数字が公表されることは食品スーパーマーケット業界にとって極めて意義のあることであるといえよう。

   そこで、それぞれの数字であるが、青果985.86億円、売上構成比13.1%、前年同月比101.0%、水産669.37億円、売上構成比8.9%、前年同月比99.2%、畜産722.84億円、売上構成比9.6%、前年同月比98.6%、惣菜672.06億円、売上構成比8.9%、前年同月比101.6%である。特に、生鮮3品合計では、2,378.08億円、売上構成比31.6%、前年同月比99.8%である。こう見ると、食品スーパーマーケットにとって、青果は実に重要な商品群であり、生鮮3品、惣菜の中でも最も売上構成比が高いのが特徴である。ちなみに、この3団体の全加盟企業の総売上高が14兆1,645億円であるので、青果の売上金額はこの6月度の売上公表企業の構成比の数字が13.1%であるので、1兆8,555.49億円と推計できる。

   参考に、同じ青果ビジネスという観点から考えてみると、その代表格の八百屋の動向を見てみると、2007年度の商業統計の野菜・果実小売業の項目を見ると、事業所数は23,950件、商品販売額は9,975.70億円であり、約1兆円である。したがって、この時点で、こと、青果ビジネスに関しては食品スーパーマーケットが完全に主導権をもっているといえる。 また、現在、PI研では、精力的に調査を実施しているが、農産物直売所の数字を見ると、全国には、約13,000件を超える農産物直売所が存在しており、八百屋同様、1兆円近い市場規模になりつつある。こう見ると、こと青果ビジネスは3つ巴の市場シェアを握る激しい競争が繰り広げられているといえる。これまで安定的に市場を拡大してきた食品スーパーマーケット、ここ数年急激にシェアを上げて来た農産物直売所、そして、最も劣勢にたたされ、市場シェアを急激に下げた八百屋という構図であることがわかる。当然、今後は、食品スーパーマーケットと農産物直売所との間で、八百屋のシェアを奪う激しい競争が予想されよう。

   さて、話をもとに戻し、JSSAのもうひとつの統計、スーパーマーケット景況感調査(7月調査)を見てみたい。これは、三協会会員企業の中核店を対象に売上動向、収益率動向、客単価動向、地域経済情勢の4項目について、3ヶ月前と比較した現状、及び今後2~3ヶ月の見通しについて、「良い」から「悪い」までの判断を5段階で調査し、その結果を景況感指数(DI:DiffusionIndex)が50以上なら景気の現状や見通しが改善したとみる企業が多く、50以下なら厳しい見方が多いと判断し、まとめたものである。

   結果は、売上DI47.1(5月45.3)、収益率DI45.5(5月43.5)、客単価DI40.1(5月40.6)、景気判断DI43.9(5月41.3)という状況である。いずれも50を切っており、特に客単価は40台と厳しい判断であるといえよう。ちなみに、地域別に見た場合、7月度は関東、中国・四国の売上DIが51.0、51.2と50を上回っており、けっして、すべてが悲観的な判断ではないともいえる。

   このように、6月度の食品スーパーマーケットの売上高は100.1%と伸び悩んでいるといえ、5月度の97.5%よりは回復したとはいえ、依然として、厳しい状況が続いているといえよう。また、景況感も一部を除き、全体としては、各DIが50を割っており、当面見通しも厳しいと判断できよう。したがって、食品スーパーマーケット業界としては厳しい経営環境が続くと予想され、今後、その中で、いかに、利益を確保できるかが当面の課題といえよう。

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July 27, 2010

食品スーパーマーケットにおけるCashの流れ、その2!

   前回のブログ、「食品スーパーマーケットにおけるCashの流れ、その1!」で見たように、食品スーパーマーケットのキャッシュはマーチャンダイジングにより生まれ、これに、その他営業収入がプラスされ、入ってくるキャッシュが確定する。実はこの段階でも、キャッシュの流れは、様々な問題がある。

   たとえば、顧客と商品との間で適正な売価でキャッシュに交換されない場合が多々ある。値下げ、廃棄はもちろん、チャンスロス、レジでの打ち間違い、万引きなどである。また、価格変更、特に、売価が特売から元に戻った時の売変ミスは枚挙にいとまがないくらい起こる。これに、その他不動産収入、物流収入に関しては、交渉次第でキャッシュがかわり、大きく数字が変動する。したがって、食品スーパーマーケットのキャッシュは、入りのところでもかなり問題があり、ここをしっかり押さえられるかにより、キャッシュの入りで相当の差が生じるのが実態である。セブンイレブンの単品管理が重要な理由は、この入りの精度を100%に近付ける試みであるといえ、食品スーパーマーケットにとっては、その意味で単品管理の重要性は極めて大きいといえよう。

   さて、ここからが出になるが、食品スーパーマーケットにとって、キャッシュアウト、すなわち、外部へキャッシュが出てゆく最も大きな項目は原価である。「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」によれば、約75%のキャッシュがキャッシュアウトする。したがって、100%入ってきたキャッシュの内、まずは原価で75%がなくなり、使えるキャッシュは約25%となる。ここで、取締役の役割が決定的に重要になる。75%を74%、73%にできるかどうか、それが難しくとも、75%以上にキャッシュアウトをさせないかどうかがポイントとなる。そして、そこには、仕入原価、仕入れ後は、先に上げたようなマーチャンダイジング上の課題、どこまで、商品の付加価値をつけられるか、特に、生鮮食品の加工技術の向上は即、キャッシュインであるので重要である。

   そして、この25%の原価を差し引いたキャッシュから、食品スーパーマーケットの運営にかかわる経費、その他もろもろの費用を引くと、結果、営業キャッシュフローが決まるが、この段階になると、この25%のキャッシュがわずか3%強ぐらいとなる。したがって、20%強がさらにキャッシュアウトすることになり、食品スーパーマーケットが自由に活用できるキャッシュは実は入ったキャッシュの内、わずか3%強に過ぎないというのが実態である。ここでも、また取締役の役割が重要となる。先ほどは商品関連のキャッシュであったが、ここでは、約20%強の経費関連のキャッシュを圧縮する役割となる。すなわち、19%、18%と、キャッシュアウトを減らせるかどうかである。当然、あらゆる経費を削減する必要があるが、食品スーパーマーケットの場合は莫大な設備投資がからみ、それにより、減価償却費、固定費等が大きく違うため、この面からの経費削減も重要な課題となる。特に、坪売上と経費は密接な関係があり、単に経費を削減するだけではなく、営業面の視点もこの段階の取締役には必須の知識といえよう。

   これで、やっと食品スーパーマーケットのキャッシュ、営業キャッシュフローが確定することになる。この段階になると、100%入ってきたキャッシュがわずか、3%強となっており、食品スーパーマーケットは莫大なキャッシュが入る割には、自由に使えるキャッシュはけっして潤沢ではないのが実態である。この3%強のキャッシュをどう使うかが、その後の成長を決定づけることになり、これが投資キャッシュフローである。ここからは、取締役の中でも、さらに将来の成長を決定づける投資を決断しなければならず、まさに、取締役の中の取締役、すなわち、代表取締役の役割となる。

   そこで、代表取締役の最も重要な役割、投資キャッシュフローであるが、「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」によれば、営業キャッシュフローの内、約70%を投資キャッシュフローに回しており、その内、ほぼ、100%が出店関連への投資である。こう見ると、食品スーパーマーケットは自由になるキャッシュ(全体の約3%強)の70%を投資キャッシュフローに回し、その大半を将来の成長戦略、出店に投資しているのが実態であるといえる。

   そして、残り30%のキャッシュ、まさに、フリーキャッシュフローであるが、その内、約60%を有利子負債の返済に充て、30%を配当に回し、残り、10%を内部留保しており、これが「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」から見える、キャッシュの最終配分である。残念ながら、食品スーパーマーケットの有利子負債は「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」を見ると合計1兆円を超え、総キャッシュ、営業収入が約8兆円弱であるので、15%弱となり、有利子負債が経営を圧迫しており、フリーキャッシュフローの約60%を有利子負債の返済に充てざるをえない状況にあるといえる。経営者にとっては、苦渋の決断だと思われるが、キャッシュアウトが大きな比重を占める食品スーパーマーケット特有の経営の現状からすれば、やむを得ない面もあるといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットはキャッシュにはじまり、キャッシュに終わるといってもよく、各取締役は、そのキャッシュの動き、インとアウトの重要な局面で目を光らせ、しっかりキャッシュを管理しないと、最終的に代表取締役が将来の投資へ、そして、株主への配当へ回すべき配分、キャッシュが十分に確保できず、企業の継続、成長発展に十分なキャッシュを充てることができず、企業経営そのものに重大な影響を与えかねない。その意味で、各取締役の役割は、ことキャッシュに関しては、当然のことであるが、極めて重要な役割を担っているといえよう。

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July 26, 2010

食品スーパーマーケットにおけるCashの流れ、その1!

   「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」、苦労したがやっと完成したお陰で、これまで見えなかった食品スーパーマーケットの真実が次々と明らかになりつつある。昨年の2009年度版は基本構想をもとに何しろ作り上げることが最優先であったため、その分析に関してはけっして充分とはいえなかった。今期、この2010年度版は新たな項目も加え、制作にはそれなりの時間もかかり苦労したが、昨年の比ではなく、結果、分析に時間と意識を向けられる余裕ができた。そこで、今後、この「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」をもとに、知られざる食品スーパーマーケットの真実とでも題し、様々な角度から食品スーパーマーケットの実態を取り上げてみたい。

   さて、気になるニュースが飛び込んできた。アオキスーパーの増収賄事件である。毎日新聞によれば、「愛知県日進市の土地区画整理事業に伴う用地の売却を巡って、わいろの受け渡しがあったとして、同県警捜査2課は24日、同市岩崎町竹田、「日進竹の山南部特定土地区画整理組合」理事、加藤克也容疑者(70)を土地区画整理法違反(収賄)容疑で逮捕した。また、名古屋市名東区朝日が丘、「アオキスーパー」(本部・同県津島市)専務取締役、筒井輝雄容疑者(65)を同法違反(贈賄)容疑で逮捕した。2人とも容疑を認めているという。・・」という内容であり、衝撃的な事件である。

   アオキスーパーのホームページ上でも、「平成22 年7月24 日、弊社専務取締役筒井輝雄が、土地区画整理法違反(贈賄)の容疑により愛知県警に逮捕されました。弊社役員が逮捕されたことは、大変に遺憾であり、お客様及び株主の皆様をはじめ関係者の方々に多大なご迷惑ご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。・・」と事実関係を公表し、謝罪しており、事件が事実であり、現在、まさに捜査中とのことである。

   そこで、この問題の本質であるが、食品スーパーマーケットには、この土地をめぐる問題の他にも様々なキャッシュの動きがあり、この種の事件は大なり小なり、いくらでも起こる可能性が潜んでいるのが実態である。当然、そのキャッシュの動きを、企業として、しっかり押さえていないと、今回の事件に限らず、不正が起こる可能性は多々あり、食品スーパーマーケットの経営に携わる経営幹部はしっかりとキャッシュの流れを押さえ、不正なお金が1円も発生しないように目を光らせる必要がある。本来、食品スーパーマーケットが得たキャッシュは、最終的には株主に返還されるものであり、従業員に配分されるものであり、それ以上に、顧客に還元されるものであるからである。

   その意味で、食品スーパーマーケットとしての取締役の仕事の大半は、株主、従業員、顧客に代わって、このキャッシュの流れをしっかり抑え、健全なキャッシュの循環を促し、企業を成長発展に導くことが重要な使命であるといえよう。

   では、食品スーパーマーケットのキャッシュの流れとはどのようになっているかであるが、これを食品スーパーマーケットの経営の実態をまとめた最新版の「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」をもとに見てみたい。そもそも、この「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」は財務連環という言葉を使っているように、財務=キャッシュの連環に焦点を当て、財務3表を連環させて作り上げたところにある。したがって、この「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」を駆使することにより、食品スーパーマーケットのキャッシュの流れ、連環度合いが浮かび上がり、食品スーパーマーケットの経営はどこがポイントで、何を抑えなければならないかが明確になる。

   まず、今回のような土地をめぐるキャッシュはどこかから発生するかであるが、そもそもの発生は、マーチャンダイジングであり、顧客と商品を売価をもとに交換し、キャッシュを得るところにある。これが食品スーパーマーケットのキャッシュの源泉である。通常の食品スーパーマーケットは、これで終了であるが、アオキスーパー等のNSCに強い業態をもつ食品スーパーマーケットの場合は、これに、不動産収入等のその他営業収入として約3%の収入がキャッシュで入る。実はこの3%が重要な役割を果たす。

  「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」を見ると、食品スーパーマーケットの営業利益率は売上対比で約2.5%弱であり、極論すれば、食品スーパーマーケットはマーチャンダイジングでのキャッシュは若干のマイナス、これを、その他営業収益で支えているからである。特にアオキスーパーの場合はこれが極端な数字であり、マーチャンダイジングのキャッシュでは経営は1%以上のマイナスとなり、その他営業収入で補完し、営業利益をプラスにもっていっているのが実態である。今回の問題の土地は新聞報道では家電量販店に貸すとのことであり、まさに、このその他営業収入が絡む問題であり、アオキスーパーにとっては生命線とでもいうべき、重要な経営課題であったといえる。

続く、・・

  なお、ここでは、ブログの特性上、ポイントのみとなるが、「食品スーパー2010、財務3表連環分析!」を用いた詳細な数値分析、解説は、食品スーパーマーケット最新情報、プレミアム版(有料)にて、現在、連載中ですので、そちらもご参照ください。 

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July 25, 2010

成城石井はどこへ、大久保社長退任?

   成城石井の大久保恒夫社長が9/1付けで相談役に退くことが決まった。成城石井のホームページには、大久保社長退任の理由を、「当社は、「食にこだわり、豊かな社会を創造する」という経営理念の下、顧客満足の向上、収益性の向上、財務体質の強化を図り、強固な経営基盤の構築に向け経営改革を推し進めて参りましたところ、経営改革の理念の浸透により、一定の成果を達成したものと考えております。つきましては、かかる経営改革の下で、当社の事業拡大を現場のトップとして率先推進し、事業基盤の構築に大きく貢献した原昭彦が今回新社長に就任することにより、社内の結束を高め、更なる事業成長を図っていくものであります。」と説明している。

   また、日経MJの7/23によれば、「売上高営業利益率を8%に高めるなど、業績改善にメドが立ったため。後任には生え抜きの原昭彦取締役(42)が就任する。」と解説している。また、これに付け加え、「親会社のレックス・ホールディングスが成城石井を売却する場合の”出口戦略”に影響する可能性もある。・・」とも解説しており、いよいよ、成城石井が売却される可能性が高まったともとれる内容である。

   現在、成城石井は、66店舗(直営55店舗・FC11店舗:2010年2月現在)を首都圏に展開しており、大久保社長が2007年1月に社長に就任して以来、業務改革を断行し、まさに、経営はV字回復を果たし、ここ最近は毎年10店舗というハイペースで営業拡大を続けてきた。成長性、収益性ともに抜群の数字であり、この数年という短期間で見事に業績が急回復したといえる。

   成城石井は2004年10月に創業者一族(石井家)から牛角の親会社レックス・ホールディングスに70.1%の株式が譲渡されたことにより、経営権がレックス・ホールディングスに移り、子会社化された。その後、2006年2月にレックス・ホールディングスが株式交換により、完全子会社化を行い、レックス・ホールディングの100%子会社となった。当時(2004年2月期)の成城石井の経営数字は、売上高296.54億円(102.94%)、営業利益13.28億円(112.25%:売上対比4.47%)、経常利益14.04億円(-8.47%:売上対比4.73%)、当期純利益7.25億円(-20.15%:売上対比2.44%)であり、自己資本比率は65.70%、総資産154.80億円という状況であった。現在、売上高は400億円を超え、日経MJによれば営業利益率が8%ということであるので、成長率135%、営業利益面では率で170%であるので、翌年、2007年1月に就任した大久保社長の経営貢献度は極めて高いといえよう。

   さて、今後の成城石井の経営であるが、すでに、昨年、2009年11月30日の読売新聞では、「小売り・外食チェーンを展開するレックス・ホールディングスが、100%子会社の中堅スーパー、成城石井(横浜市)の株式を一部売却する方向で検討していることが27日、わかった。年内にも売却先選びを始める。商社や流通グループなどに資本参加してもらうことで商品調達力を強化し、店舗展開を速める狙いがある。成城石井は、首都圏を中心に約70店舗を展開。高級食材や輸入ワインなどの販売で知られ、好業績が続いている。」との記事を掲載している。昨年後半以降、株式売却の話が出ており、今回の大久保社長退任はほぼ、売却先が固まった可能性が高いともいえよう。ちなみに、この時期に、レックス・ホールディングスは傘下のam/pmをファミリーマートに売却しており、成城石井が次の売却目的となることは容易に想定できることであり、今回の大久保社長の退任はこの延長線上にある動きであるといえよう。

   また、日刊工業新聞、2009年、12/17では、さらに踏み込んで、「レックス・ホールディングスは傘下の成城石井(横浜市西区)の株式売却をめぐり全株式を売却する場合、「300億円程度」の譲渡価格を提示していることが16日までに分かった。」とのことで、売却価格まで明示している。さらに、売却先として、「買収に関心を示している商社などに提案したことを複数の関係筋が明らかにした。現在、再び流通シフトを進め始めた大手商社や、小売事業を強化したい鉄道系企業などが買収に関心を示しているという。・・、伊藤忠商事や丸紅が関心を示しているとされるほか、出店先として関係が深い鉄道会社、また関西地盤の電鉄系の小売事業会社などの名前も取りざたされている。・・」とのことで、具体的な名前もあがっており、xデーは近いといえそうである。ちなみに、レックス・ホールディングスの決算期は12月であるので、ここ数ケ月がひとつの山と推測できよう。

   ちなみに、大久保恒夫社長はレックス・ホールディングスの取締役でもあり、成城石井の代表取締役社長でもあるので、成城石井の相談役に退いても、株式が移動しない限り、親会社の立場から成城石井の経営に強い影響力を残すことになる。ただ、この読売新聞、日刊工業新聞の記事を見る限り、レックス・ホールディングスの経営は厳しい状況にあると推測され、成城石井の売却が極めて近いと思われる。今後、成城石井、親会社のレックス・ホールディングスの動きに注目である。

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July 24, 2010

日経MJ、7/23(金)を見る、渥美先生、死去!

   7/23(金)の日経MJには興味深い記事が数多く掲載された。その中でも、何といっても、目を引くのは渥美先生死去の記事であろう。見出しは、「スーパーの草創期に助言、渥美俊一氏死去」、「理論継承、専門店・外食へ」であり、7/21に多臓器不全のため死去したとの内容であり、83歳であったという。渥美先生の代名詞は何といってもチェーンストア理論であり、その普及団体としてのペガサスクラブの運営にあったといえよう。著書も数多く、晩年は商業界からチェーンストアエイジへと執筆の場を移し、つい最近まで連載記事を書かれており、まさに、生涯をチェーンストア理論の普及に尽くされたといえよう。

   もう20年以上も前になるが、大学を卒業し、船井総研に入社し、初めて触れた流通理論が、アンチチェーンストア理論ともいうべき、地域一番店を掲げる船井理論であったため、当時は渥美先生の唱えるチェーンストア理論を対極の理論として見ていた。ただ、対極であるがゆえに、逆に、渥美先生の著書、業界誌等の記事をかなり深く勉強し、私なりに渥美先生の唱えるチェーンストア理論を独学で研究した。特に、私の専門は入社した当時から食品スーパーマーケットであったため、食品スーパーマーケットはまさにチェーンストアそのものであり、渥美先生の理論を学ぶ、学ばないにかかわらず、チェーンストアと真正面から向き合わざるをえなかった。

   渥美先生のチェーンストア理論はどちらかというと、IE(Industry Engineering)的な要素が強く、テーラーの科学的管理法がベースにあるといえる。日本で独自にチェーンストアをつくってゆくよりは、まずは、アメリカで長い時間と試行錯誤の中で確立されたチェーンストアの仕組みを謙虚に学び、その成果をしっかり取り入れることを重視していたといえよう。また、マーチャンダイジングも食品よりも、衣料、住関連が主であったといえ、しかも、POS分析等はあまり重視していなかったといえる。当時、私は、POSが普及する初期の頃から、食品スーパーマーケットのPOS分析に独自に取り組んでいたので、渥美先生のPOS関連の論文があれば参考にしたいと思い、見つけてみたが、とうとう見つからなかった。

   POS分析に関しては船井理論でもあまり重視しておらず、船井総研自体もPOS分析には関心が薄く、当時はその指針を見つけることができず、実に苦労した。しかたがないので、POS分析に関しては、独自に開発せざるをえなくなり、その結果、生まれたのがPI値理論であり、その根幹となるMD方程式である。ただ、PI値を研究するようになって、逆に渥美先生の唱えるチェーンストア理論がよくわかるようになった。当時は、数店舗のPI値分析をしていたが、その後、数十店舗の分析となり、最近では百店舗以上の食品スーパーマーケットのPOS分析にも携わるようになり、まさに、チェーンストアをPI値で見ることができるようになった。

   また、商品数も、当初はせいぜい数百件ぐらいの分析であったが、その後、数千件になり、ここ最近では数万件のデータを分析するようになり、こと食品スーパーマーケットが現在取り扱っている商品に関しては、ほぼ全品、まさに単品レベルでPI値分析ができるようになり、チェーンストアをPOS分析という観点から見れるようになった。さらに、直近ではID-POS分析まで研究が進んで来ているので、より、顧客の視点にたったチェーンストアの実態が見えるようになり、渥美先生の提唱されたチェーンストア理論の実態が全く別の角度から、垣間見れるようになり、チェーンストアエイジの渥美先生の記事が、ここ最近は楽しみであった。

   残念ながら、渥美先生の提唱されたチェーンストア理論はこれで終わることになるが、日経MJでも、矢作教授の言葉として解説しているように、「流通革命世代の企業を生み出し、大きな成果を上げた」ことは確かであり、一方で、「チェーンストアづくりは未完」であることも事実であろう。ただ、記事の結論として、「渥美理論は今、ニトリ、西松屋チェーン、サイゼリヤなどで開花。流通革命は次世代に確実に引き継がれている。」と結んでいるが、これもまた事実といえよう。

   今後、渥美先生に変わる、あるいは、超える指導者が流通業界に現れるかどうかはわからないが、こと、食品スーパーマーケットで見る限り、渥美理論をそのまま当てはめるには、無理があるといえる。もっと、日本独特の生鮮食品の流通の仕組みを研究する必要があるし、一方で、商業界が唱えた「店は客のためにある」、すなわち商売の原点をもっと追求する必要もあろう。さらには、IT(Information technology )、特にPOS分析をもっと深く研究し、その成果をマーチャンダイジングに取り入れる必要もあろう。

   日本の食品スーパーマーケットはその意味でまだまだ未完成であるといえ、渥美先生の50年以上に渡る研究成果を活かしつつ、さらに、日本の生鮮流通の仕組みを変革し、日本の商いの原点、客志向を取り入れ、さらに、ITを駆使する、これが日本の食品スーパーマーケットの目指すべき方向であるといえよう。その意味で、渥美先生の死は、日本の食品スーパーマーケットにとっては、次の展開に進むきっかけ、スタートとすべきであろう。

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July 23, 2010

オオゼキ、雪が谷店を見る!

   オオゼキ雪が谷店を見る機会があった。熱い日差しの中、後から考えれば、雪が谷大塚駅で降りれば良かったものを、田園調布駅で降り、他の店をみたりしながらのほぼ徒歩での視察であったので、なかなかオオゼキ雪が谷店にたどりつかなかった。踏切を渡り、ようやくのこと、到着し、店内に入って見ると、一転、クーラーも効いており、さらに、生鮮什器の冷気もあり、冷んやりしていて、助かった。それにしても、店頭周辺の自転車の駐輪が多かったのには驚いた。このオオゼキ雪が谷店はオオゼキの中では売上高がちょうど10番目ぐらいの規模、約20億円強であり、客数は1日平均4,000人の店であり、この自転車の駐輪の多さにも納得である。当然、店内もお客様は多かったが、店頭からの青果の品揃えはさすがといえ、特にスイカ、1/6カットが20個は陳列され、清涼感満点の売り場ができあがっており、さすがであった。 

   1/6カットスイカ20個は、PI値に換算すると、20個/4,000人=0.50%であるので、今日は恐らくPI値が1%はいくと思われ、あと20個はその後、追加されることになろう。このスイカが象徴されるように、オオゼキ雪が谷店は店頭をいっぱいに使い、青果の展開を行っており、強力な青果売場ができあがっていた。今期からオオゼキはMBO(経営陣のM&A)により、上場廃止となったので、今期決算書は公表されないので、2009年2月期の決算データをもとに見てみると、青果の売上構成比は21.9%と、通常の食品スーパーマーケットの約2倍であり、まさに、雪が谷店の青果の強さが象徴しているように、極めて青果部門の強い食品スーパーマーケットである。

   その背景には、オオゼキ特有の個店対応、仕入れの強さが光っているといえよう。特に、青果に関しては店舗独自の仕入れが実践されており、同様に店舗独自のマーチャンダイジングが青果主任と店長を中心にできあがっていることが大きいといえよう。一般に食品スーパーマーケットの青果部門は青果のバイヤーが一括仕入れを行い、物流センターに商品を納め、そこから各店に仕訳けされ、バイヤーないしはSV(スーパーバイザー)の指示のもとにマーチャンダイジングが実践され、売場の70%から80%は本部がつくりあげることが多い。オオゼキは、全く逆で、本部よりも店舗が主体の仕入れとマーチャンダイジングが実践され、本部の役割は極めて小さく、店長、主任に大部分の権限が委譲されているのが特徴である。

   ただ、よく考えて見ると、オオゼキのドミナント地区、東京には淀橋、北足立、板橋、豊島、足立、葛西、築地、世田谷、多摩ニュータウン、大田と10ケ所の中央卸売市場があり、ここを青果の物流センターと考えれば、独自のセンターを敢えてもつ必要はない。近くの中央卸売市場を拠点に、あとは市場間を何らかの形で、商品の融通を行う仕組みを作れば、店舗独自の仕入れをした方がコスト的にも、マーチャンダイジングの観点からもこと青果に関しては強力な売場を作り上げることが可能といえよう。オオゼキはまさに、これを実践しているといえ、結果、青果の売上構成比が20%を超えるのも頷ける話である。

   ちなみに、オオゼキ雪が谷店の青果売場を過ぎると、これまたすごい鮮魚売場となり、築地直送の商品で溢れかえっており、壮観であった。そして、精肉、惣菜売場となるが、オオゼキの強さの秘訣は、この強力な青果以外の部門では、この生鮮、惣菜の強さではない。日配である。特に、壁面で強化された豆腐、納豆、こんにゃく、漬物、麺類、そして、練り製品等の和日配、さらに、牛乳、ヨーグルト、デザート、飲料、パン等の洋日配の強さであり、この構成比が青果とほぼ同じ20%近い数字である点である。実際、豆腐、漬物等はオオゼキ独自の商品が随所にあり、さすがである。

   もちろん、よくいわれるオオゼキの強さ、グロサリーの品揃えも圧倒され、これも商品構成比から見ると、青果、日配よりも若干下がるが、やはり20%弱となる。この3つの部門、青果、日配、グロサリーが強力なエンジンとなって、150坪強のオオゼキ雪が谷店の近隣の顧客を毎日約4000人近く、引き付ける魅力ある売場ができ上がっているといえる。そして、もうひとつ隠れたオオゼキ雪が谷の魅力であるが、青木店長自慢のチェッカーのフレンドリーな対応であろう。顧客との対話はもちろん、お客さまからのおすそわけも多いという。さらにもう1点あげると、店長が密かに強化している雑貨である。東京の食品スーパーマーケットでは意外であるが、雑貨が良く売れる。この雑貨を店頭をうまく使いながら強化していることである。

   このように、期せずして、オオゼキ雪が谷店を見る機会があり、入って見ると意外な発見がたくさんあり、改めて、オオゼキの強さの秘訣が実際の商品、売場を見てわかった。ちなみに、この店舗の坪売上であるが、約1,500万円である。びっくりであるが、それでもオオゼキの中では売上高同様10番目ぐらいであり、トップクラスは2,000万円を超え、平均でも優に1,000万円を超える。この立地とマネジメント、マーチャンダイジング、そして、チェッカーの対応を見ると、納得してしまうので、これまたびっくりである。

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July 22, 2010

ドミー、2010年5月期、本決算、増収減益!

   ドミーが、2010年5月期の決算を7/15に公表した。これで、食品スーパーマーケット業界の上場企業の2010年度決算はほぼ終了したといえる。食品スーパーマーケットの上場企業は現在50社強であるが、その決算期は様々である。最も多いのが2月期であり、31社あり、約60%を占める。ついで、3月期が11社であり、約20%となる。そして、4月期が1社、5月期が3社となる。これ以外では9月期が4社、1月期が3社となる。したがって、9月期の4社の2010年度は年末近くの公表であるので、実質、このドミーの決算発表で、2010年度の決算は終了となる。

   さて、そのドミーの結果であるが、営業収益は329.33億円(0.5%)とわずかに増収となったが、営業利益3.79億円(-9.3%)、経常利益 3.13億円(-8.9%)と、営業、経常段階では減益となる厳しい決算となった。ただ、当期純利益は1.28億円(67.5%)と増益とはなったが、営業収益比は0.38%であり、昨対比では大幅な増益であるが、対営業収益比では厳しい数字であり、実質、当期純利益も厳しい数字であるといえよう。これについて、ドミー自身は、「厳しい経営環境の中、価格競争に伴う売上総利益の減少をカバー出来ず、営業利益及び経常利益は減少いたしました、・・」とのことで、利益が特に厳しい状況であったとのことである。

   そこで、ドミーの営業利益がマイナスとなった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、74.73%(昨年74.44%)と0.29ポイント上昇している。ドミーのコメントにもあったように、価格競争が激しかったことが伺える数字である。結果、売上総利益は25.27%(昨年25.56%)と下がっており、粗利面では厳しい状況であったことがわかる。一方、経費面であるが、27.11%(昨年27.40%)と、0.29ポイント下がっており、原価とは対照的な結果となった。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1.84%(昨年-1.84%)と、同じ数字となったが、依然として、マイナスであり、厳しい数字である。特に、ドミーの経費比率が高めであることがマーチャンダイジング力をマイナスにしている要因といえよう。

   このドミーの経費比率、27.11%は、昨年よりは下がったとはいえ、食品スーパーマーケット業界の中ではかなり高めの数字であり、2010年度の決算公開企業約50社の中では、ちょうど、15番目となる。特に、ドミーの場合は人件費率が売上対比12.8%とかなり高い数字であり、これが全体の経費比率を引き上げている要因といえよう。これも、決算公開企業約50社の平均を見ると、約9%であるので、12.8%はかなり高めの人件費比率であることがわかる。ちなみに、人件費比率で最も高い数字は売上対比で14.6%の平和堂、14.3%のヤオコー、そして、14.2%のヤマナカであり、この3社が14%台の食品スーパーマーケットである。ドミーは、ここまでは高くないが、かなり経営を圧迫する比率であるといえ、今後、経費改善のためにも、いかに、人件費比率を引き下げられるかが課題といえよう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.03%(昨年3.14%)のり、結果、マーチャンダイジング力のマイナスをカバーし、営業利益は1.19%(昨年1.32%)と、プラスにはなったが、昨年よりも減少し、減益となった。こう見ると、原価の上昇を粗利の削減でカバーしたが、その他営業収益が伸び悩み、結果、営業減益となり、営業利益の確保が思うようにできなかったといえよう。

   では、この厳しい決算結果を受けて、ドミーの財務面はどのような状況にあったのかを見てみたい。まずは、自己資本比率であるが、17.6%(昨年17.5%)と、依然として厳しい数字が続いており、営業面だけでなく、財務面でも厳しい状況にあるといえよう。結果、負債に80%以上依存する経営状況にあるといえ、負債が重くのしかかっているといえよう。その負債の中身であるが、有利子負債が総資本の51.44%(昨年52.03%)という状況であり、金額にして、95.81億円(昨年98.50億円)と、約100億円に及ぶ。これは2010年度の決算公開企業約50社の中でも、5番目に重い財務構造であるといえ、有利子負債の圧縮が急務の状況にあるといえる。

   したがって、出店構造を見ると、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の総資産対比が61.22%(昨年61.97%)であるので、自己資本では到底カバーできる状況になく、差し引き、出店余力は-43.64%(-44.45%)と大幅なマイナスであり、有利子負債の大半が充てられている出店構造であるといえよう。この状況では、今後、ドミーが安定的、継続的に新規出店をしてゆくことは難しい状況にあるといえ、財務の改善が大きな経営課題であるといえよう。

   このように、ドミーの2010年5月期の決算は、増収とはなったが、営業、経常段階では厳しい数字になった。特に、もともと経費比率が高い中、原価が大きく上昇したことがその要因であるといえよう。また、ドミーの財務状況も、自己資本比率がわずか17.6%と厳しい状況にあり、今後、いかに、負債の圧縮、特に、51.44%に及ぶ有利子負債の圧縮が急務といえる。まずは、一層の経費改善、そして、原価の改善により、キャッシュを生み出す力、すなわち、マーチャンダイジング力を強化することが最優先課題といえよう。今後、ドミーがこの厳しい決算結果を踏まえ、どのような経営改革に踏み出すか、その動向に注目である。

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July 21, 2010

マルミヤストア、2010年5月期本決算、増収減益!

    九州、大分県を中心に51店舗の食品スーパーマーケットを展開するマルミヤストアが7/15、2010年5月期の本決算を公表した。結果は、売上高303.18億円(1.7%)、営業利益 3.28億円(-32.9%)、経常利益 4.19億円(-28.2%)、当期純利益 1.86億円(-41.4%)となり、増収減益、特に利益はいずれの段階でも2桁のマイナスとなる厳しい決算となった。マルミヤストア自身も、「・・極めて厳しい雇用環境、所得環境を背景とした消費者の生活防衛意識の強まりや、業態を越えた企業間競争の激化による販売単価の下落など、厳しい経営環境で推移いたしました。・・」とコメントしており、マルミヤストアを取り巻く経営環境が極めて厳しい経営環境であったことが伺われる。

    そこで、マルミヤストアが減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、80.57%(昨年80.07%)と0.50ポイント上昇しており、原価の上昇が見られる。これに対して、マルミヤストアは、「・・商品・価格面におきましては、低価格ニーズへの対応商品であるPB商品の見直し、NB商品の価格の引き下げ、商品構成の見直しによるお客様目線での商品・価格の提供に努めてまいりました。・・」とコメントしており、価格面を重視し、低価格戦略をとったとのことである。実際、原価が0.50ポイント上がっていることからも、特に、「NB商品の価格の引き下げ」が響いたものといえよう。結果、売上総利益は19.43%(昨年19.93%)と減少した。

   それにしても、売上総利益、すなわち、粗利が19.43%は、食品スーパーマーケットとしては、かなり低い数字であり、マルミヤストアがディスカウント戦略を強く志向していることがこの数字からも伺える。ちなみに、今期、2010年度の決算公開企業約50社の中で、この19.43%はNo.3となる低さであり、食品スーパーマーケットの中でも極めて低い粗利である。No.1はトライアルカンパニーの16.1%、No.2はアオキスーパーの16.1%であり、No.4がオーケーの20.1%であるので、マルミヤストアは、食品スーパーマーケット業界では屈指の粗利率の低さといえよう。

   一方、経費の方であるが、18.80%(昨年18.76%)と、ほぼ昨年並みの数字を確保したが、0.04ポイントと若干上昇している。経費に関して、マルミヤストアは、「経費面におきましては安定した利益確保のため全社的に経費の見直しを行い、ローコスト運営に本社、店舗が一体となって取り組み、販売費及び管理費のなかで主要項目について経費削減に努めてまいりました。」とコメントしており、原価が上昇する中、経費削減を重視した経営を心掛けたとのことである。ただ、原価、経費ともに、上昇したため、今期は利益をダブルで圧迫した構図となり、厳しい利益構造となったといえよう。

   したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.64%(昨年1.17%)と、プラスにはなったが半減しており、厳しい結果となった。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が0.45%(昨年0.47%)のり、結果、営業利益は1.08%(昨年1.64%)となり、減益決算となった。こう見ると、今期のマルミヤストアの利益は原価、経費が上昇したことに加え、その他営業収入も減少し、トリプルでの利益圧迫が起こり、結果、営業利益が2桁減という厳しい結果となったといえよう。特に、原価が恐らく予想以上に上がったことが大きかったといえよう。ディスカウントを強く志向する経営構造の中で、原価が上がることは特に、利益に直結することであり、今後、いかに、このぎりぎりの収益構造の中で、原価を改善できるかが最優先の経営課題となったといえよう。

   では、財務面はどうかを見てみたい。今期のマルミヤストアの自己資本比率であるが、49.0%(昨年49.2%)と安定した数字を確保している。これは今期の決算公開企業約50社の平均が約40%であるので、高い数字であるといえよう。ただ、それ以上にマルミヤストアの最大の特徴は出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計が50.88億円(昨年50.87億円)であり、これは、現在、マルミヤストアの店舗数が51店舗であるので、1店舗当たり1.00億円と極めて低い数字であることである。もちろん、これは、ショップ九九の0.11億円という異常値を抜けば、決算公開企業約50社の中ではトップであり、極めて少ない資産で新規出店が可能であり、これがマルミヤストアの強さの源泉であるといえる。したがって、差し引き、自己資本比率と出店関連の資産の比率の差、出店余力を見ると、-1.71%(昨年-3.04%)と、ほぼトントンであり、決算公開企業約50社の中でも出店余力は高いといえる。今後、有利子負債18.49億円(昨年18.96億円)、総資産の18.41%(昨年19.48%)を改善できれば、さらに自己資本比率は増し、出店余力は高まるといえる。

   このように、2010年5月期のマルミヤストアの本決算は増収減益、特に、利益が2桁のマイナスとなる厳しい決算となったが、その要因は原価の上昇が大きかったといえ、今後、いかに、原価の改善をはかるかが課題といえよう。ただ、財務面では安定した自己資本比率を確保しており、しかも、マルミヤストア最大の強さ、出店に関する1店舗当たりの資産は決算公開企業約50社の中では随一の低さであり、出店余力もトップクラスである。したがって、成長余力は高いといえ、課題は原価改善によるキャッシュの確保に絞られたといえよう。今後、マルミヤストアがどのように原価改善を図ってゆくか注目である。

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July 20, 2010

食品スーパー2010、財務3表連環分析、リリース!

   昨年も好評をいただいた財務3表連環分析の最新版、「食品スーパー2010、財務3表連環分析」をようやくリリースした。ご希望の方は食品スーパーマーケット最新情報のブログからお申し込みできますので、そちらからお願いします。直近の5月期決算の食品スーパーマーケットも網羅し、全部で53社の食品スーパーマーケットとなった。これに、今期上場廃止となったオオゼキ、相鉄ローゼンの昨年度の数字を参考に加え、全部で55社である。総店舗数5,254店舗、売上高は7兆8,588.86億円であるので、食品スーパーマーケットの大半を網羅したといえよう。また、参考に、セブン&アイH、イオンも加えているので、GMSと食品スーパーマーケットの財務構造の違いを比較できるようにしている。

   基本的に前回同様、P/L(損益計算書)、CF(キャッシュフロー)、B/S(貸借対照表)の主要項目はすべて1行にまとめているので、55社の財務3表を一目で比較できるように工夫している。また、今期は、若干追加項目も入れ、より、財務内容がわかるように改善した。特に、経費項目の人件費項目を新たに加え、各食品スーパーマーケットの人件費がどのくらいの金額となっているか、その売上比率はどのくらいなのかを算出しているので、経費比率だけでなく、人件費比率も55社で比較可能となっている。また、今期は純資産の中身を掘り下げ、資本金と利益剰余金を新たに加え、それぞれの純資産比率を算出した。これにより、純資産における資本金と利益剰余金の貢献度がわかり、特に、利益剰余金の純資産への重要性を明確にした。

   これ以外にも様々な改善点を細かく加えているが、原則、昨年の内容を踏襲しており、財務3表の連環度合いをわかりやすくExcelの1枚のシートにまとめ切れたと思う。通常の財務3表は決算短信の中では、B/S、P/L、CFという順序で公表されるが、財務3表連環分析では、スタートがキャッシュの獲得、すなわち、マーチャンダイジング力からはじまるので、まずは、P/Lを先にもってきている。

   そして、そのキャッシュをどう配分するかが経営そのものであるので、次に、キャッシュの配分、CF、キャッシュフローをもってきている。特に、キャッシュフローの中では、キャッシュの根幹である当期純利益、減価償却費の金額を明確にしている。また、投資キャッシュフローでは、食品スーパーマーケットの最大の投資は新規出店であるので、新規出店にかかわる投資を明確にしている。この新規出店への配分が次の成長を決定づけるといえ、これを見るだけでも、その食品スーパーマーケットの将来の経営戦略が垣間見えるといえよう。

   そして、この2つのキャッシュフローを足したフリーキャッシュフローを算出している。これは決算短信にはない指標であるが、フリーキャッシュフローがプラスになるか、マイナスになるかで、企業経営そのものの方向性を左右するので、ここでは、フリーキャッシュフローを明確にしている。最後に、財務キャッシュフローであるが、ここにも経営戦略が如実に表れるので、特に、配当へのキャッシュの配分、負債、特に有利子負債への配分を明確にしている。

   財務3表連環分析では、このようにキャッシュフローを経営戦略を反映した指標ととらえ、P/Lの次に位置づけており、P/Lで獲得したキャッシュの流れがどのように経営配分しているかをわかるように工夫している。そして、最後がB/Sであるが、ここでは、純資産比率(自己資本比率)を最重点指標としてとらえ、先に述べたように純資産の中身を明確にすると同時に、その裏腹の負債、特に、有利子負債については短期、長期に分け、負債の現状を明確にしている。

   また、食品スーパーマーケットの最大の資産、出店関連の資産、土地、建物、敷金・保証金等については、それぞれの金額を明確にし、かつ、1店舗当たりの数字も算出し、各食品スーパーマーケットがどのような出店戦略をとっているかを明らかにしている。この出店にかかわる資産と純資産とを比べてみると、食品スーパーマーケットの出店余力が分かるので、その指標も算出している。

   したがって、食品スーパーマーケットの経営の一連の流れ、キャッシュをマーチャンダイジングによって獲得し、その獲得したキャッシュを新規出店、配当、負債の削減にどう配分し、結果、財務が現在どのような状況にあるかを数字を左から右に追ってゆけばわかるようにまとめた。かつ、縦に見れば、全55社の経営戦略の違いが明確になるようにたった1枚のExcelシートにすべての財務3表の主要指標をまとめた。これが、今回の最新版、「食品スーパー2010、財務3表連環分析」である。

   この中身については、これから本ブログでも取り上げてゆく予定である。また、詳細な内容は、まぐまぐプレミアム版で、今週から連載がスタートしたので、そちらを参考にしていただければと思う。2010年度は2009年度と比べ、厳しい決算結果となっており、食品スーパーマーケット業界は受難の時代に入ったといえる。この厳しい経営環境の中からどの食品スーパーマーケットが抜け出すのか、2010年度版をじっくり分析し、独自の結論を出してゆきたいと思う。

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July 19, 2010

大黒天物産、2010年5月度決算、大幅増収増益!

   7/13、大黒天物産が2010年5月度の本決算を公表した。結果は、売上高801.90億円(9.2%)、営業利益41.70億円(16.3%)、経常利益41.66億円(17.3%)、当期純利益22.21億円(23.3%)と、いずれの数字も2桁の大幅増収増益となり、好調な決算となった。特に、大黒天物産は地元岡山を起点に、ここ最近、大阪、四国、九州と3方面への積極的な店舗拡大を行っており、売上高も順調に推移している。この決算期も、「平成22年2月に新たな商圏の獲得として鳥取県境港市にディオ境港店を、平成22年3月には徳島県小松島市にディオ小松島店を、そして平成22年5月には福岡県遠賀郡水巻町に当社グループ初となる九州地区にラ・ムー水巻店を新規出店いたしました。・・」とのことで、いよいよ、九州へも本格上陸となった。

   また、来期も10店舗の新規出店を計画しており、売上高目標も870.03億円(前期比8.5%増)となる予想であり、今後とも積極的な新規出店をしてゆくとのことである。そこで、大黒天物産がなぜ、これほど、積極的な新規出店が可能なのかを今期の財務構造から、その要因を探ってみたい。

   一般に食品スーパーマーケットが新規出店を行ってゆくには、まずは、出店にかかわる資産を取得することが前提となる。その資産とは、土地、建物、敷金保証金等である。そして、その出店にかかわる資産を調達するためのキャッシュが必要となり、このキャッシュが自己資本でどこまで可能かにより、その後、さらに新規出店が安定、継続的に可能かどうかが決まる。特に、新規出店を急ぐあまり、有利子負債を前提に新規出店を行った場合は、当初は急成長が可能となるが、その後、キャッシュ不足となり、成長が止まることが往々にして起こる。

   そこで、まず、大黒天物産の出店にかかわる資産を見てみると、土地19.40億円、建物56.51億円、敷金保証金13.89億円、合計89.80億円である。大黒天物産の総資産が245.33億円であるので、比率は36.6%と、極めて低い数字である。これは上場食品スーパーマーケットの今期決算の中では最も低い数字であり、いかに、大黒天物産が資産をもたずに新規出店をしているかがわかる。ちなみに、No.2は非上場であるが、トライアルカンパニーであり、39.2%であり、この2社が40%を下回る食品スーパーマーケットである。したがって、1店舗当たりの出店にかかわる資産も大黒天物産はわずか1.73億円であり、通常の食品スーパーマーケットが約5億円であるので、その違いは歴然である。トライアルカンパニーも1.97億円であるので、この2社は食品スーパーマーケット業界の中では異色の企業であり、独特な新規出店を果たしてきたといえる。

   したがって、大黒天物産はわずかな資産で新規出店が可能であるため、キャッシュの大半を新規出店に当てれば、短期間で急成長が可能となり、今期の大幅な増収増益、そして、来期も10店舗という大量出店が可能となる財務構造であるといえる。これが、いわゆる居抜き出店を成長戦略に採用した食品スーパーマーケットの最大の特徴であり、大黒天物産、トライアルカンパニーの出店戦略の本質といえる。

   では、この出店をささえるキャッシュの方はどうかを見てみたい。大黒天物産の今期の原価であるが、77.6%であり、結果、売上総利益は22.4%となる。通常の食品スーパーマーケットが25%前後であるので、かなり、低い粗利であり、原価が低い粗利構造であることがわかる。これは、大黒天物産自身も、「・・商品戦略としましては、食品製造小売業(S.P.F)としてお客様に満足いただける商品の開発に取り組んでまいりました。・・」とコメントしているように、PBに力を入れてきた結果であるといえ、これが、原価を引き下げている要因といえよう。

   一方、経費の方であるが、17.2%と、極めて低い数字であり、極力、経費を低く推さええており、これが、さらに、競争力を増し、新規参入にあたって、新規商圏内でも低価格で参入できる要因といえよう。ちなみに、人件費であるが、売上対比7.3%という低さであり、この人件費比率の低さも経費を低く抑える大きな要素といえよう。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.2%となり、極めて高い比率で商品売買を通じてキャッシュを獲得していることがわかる。

   したがって、この効率の良いキャッシュの獲得をそのまま新規出店に当てる財務構造ができているといえ、出店余力、自己資本から出店にかかわる資産を引いた数字は何と16.0%と極めて高い数字であり、この一連の出店にかかわる財務循環が大黒天物産の高成長を支えている財務構造といえよう。

   このように、大黒天物産の2010年5月期の本決算は大幅な増収増益となり、しかも、出店余力、マーチャンダイジング力、ともに極めて高い、食品スーパーマーケットの経営にとっては理想的な財務構造であるといえる。来期も10店舗の新規出店を予定するなど、当面、大黒天物産の急成長は続くものといえ、次の中間、そして、来期決算、どのような結果となるか、その行方が気になるところである。

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July 18, 2010

牛乳、加工乳に注目、第3の牛乳となれるか?

   7/16の日経新聞に牛乳の特集記事が掲載された。見出しは、「ウチは第三の牛乳」、「加工乳支持広がる、成分調整牛乳より20円安」であり、加工乳が注目されはじめたという内容の記事である。ちょうど、ビールでは第3のビールが割安感から、このデフレ環境の波にのり、売上げを伸ばしているように、加工乳という牛乳の中では第3の牛乳が注目されはじめたという内容であり、興味深い記事である。特に、記事の中で農水省調べの牛乳のグラフが掲載されているが、これを見ると、加工乳の伸び率がここ最近右上がりで伸びており、牛乳の横ばい、成分調整牛乳の右下がりと比べると、確かに注目すべき商品となりつつあるといえよう。

   日経の記事の中でも解説されているが、牛乳には大きく3つの種類がある。社団法人日本酪農乳業協会によれば、1つ目が牛乳であり、「生乳(牛からしぼったままの乳)を加熱殺菌したもので、水やほかの原料ははいっていません。乳脂肪分3%以上、無脂乳固形分8%以上の成分をふくむものです。・・」とのことである。いわゆる一般の牛乳である。2つ目が成分調整牛乳であり、「生乳から乳脂肪分の一部を除去するか、水分の一部を除去し、成分を濃くするなどの調整を行った牛乳、・・」とのことである。この中には、乳脂肪分を0.5%以上1.5%以下にした低脂肪牛乳や、さらに、乳脂肪分を0.5%未満にした無脂肪牛乳などもある。そして、今回の第3の牛乳といわれる加工乳であるが、「生乳または脱脂粉乳やバターなどの乳製品を原料に、乳成分をふやしたものや、乳脂肪分をへらしたものなどがあります。濃厚ミルクまたは乳や低脂肪乳などです。・・」とのことで、まさに、牛乳を加工したものである。

   問題は、この3つが味や成分が違うだけでなく、まさに、第3のビールでも見られるように、価格帯が違い、牛乳より、成分調整牛乳が比較的安く、さらに、加工乳は成分調整牛乳よりも安い傾向がある点である。牛乳は食品スーパーマーケットの商品の中でも最も価格に敏感に顧客が反応する商品のひとつであり、価格の違いはそのまま売上げの違いとなってあらわれるので、日経の記事にあるように、このデフレ環境の中ではまさに、価格帯の安い第3の牛乳、すなわち、加工乳に注目が集まりはじめたものといえよう。

   ちなみに、なぜ、牛乳より、第2の牛乳、成分調整牛乳、そして、第3の牛乳、加工乳が安く販売できるかであるが、その原理は、成分調整牛乳は牛乳から分離した脂肪分などをバター、チーズ等の加工品に転用でき、相乗積が働き、その分、成分調整牛乳を安くできるという。また、加工乳は、牛乳に脱脂粉乳などの安い成分を混ぜることにより、ここでも相乗積が働き、牛乳よりも安くできるという。いずれも、牛乳から発生する牛乳飲料であるが、何らかの加工が入ることで、原価を下げ、結果、価格を下げることができることが最大の特徴である。

   生鮮食品等では加工をすることによって、付加価値を上げ、その分、価格を上げ、利益を確保するのが加工の意義であるが、牛乳の場合は逆で、加工をすることが値段を下げることにつながるという、実に、驚異深い商品といえよう。では、実際の価格はどのようになっているかであるが、日経新聞の記事の中では、いなげや練馬石神井南店の7/15の売場の実態が取り上げられている。それを見ると、牛乳の代表格、明治おいしい牛乳1Lが248円、成分調整牛乳のタカナシ乳業の北海道さわやか家族が188円、そして、加工乳であるが、森永乳業の森永ミルクが168円ということで、まさに、この事例は絵にかいたような価格帯となっているといえよう。

   ただ、実際の牛乳売場の特徴は、どの食品スーパーマーケットでも170円前後の牛乳が1品ないしは2品あり、特に、その1品はPBであることが多い。その2トップが牛乳全体の50%以上の売上を取り、残りの50%を様々な牛乳、成分調整牛乳、加工乳で品揃えを競うというのが実態といえる。日経の記事の中でも、加工乳が占める飲用牛乳の割合は1割弱とのことであり、加工乳が第3のビールのようになるというよりは、牛乳の中での存在感を高めつつあるというのが実態とのことである。したがって、牛乳全体の枠組みがガラッと変わるというよりは、じわじわと、加工乳が存在感を高め、顧客の確実な支持を獲得しはじめたということであり、今後、どう変化してゆくが気になることころでもある。

   牛乳は食品スーパーマーケットの中では、PI値No.1の商品でもあり、顧客から絶大な支持を受けるカテゴリーである。したがって、ここが活性化できば、売場全体の活性化にもつながる、重要な商品のひとつである。今回の日経の記事は、その意味で、牛乳の新たな活性化の方向性を示唆する内容であり、興味深い記事といえよう。今後、加工乳が現在の約1割から2割、そして、3割ぐらいまで、その存在感を高められるかが当面の課題といえよう。

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July 17, 2010

食品スーパーマーケット、第1四半期決算、速報!

   食品スーパーマーケットの2011年度、第1四半期決算の公表がピークを迎え、2月期決算がほぼ終了し、今後、3月期決算の公表へと移ってゆく。その結果を見ると、厳しい決算結果が多く、全体としては、ここへ来て、一段とデフレ環境が厳しくなり、売上高、利益ともに伸び悩み、減収減益となる食品スーパーマーケットが多いのが特徴といえよう。7/16の日経MJでも、「食品スーパー、業績悪化止まらず」、「主要9社3~5月、客単価・客数落ち込む」という見出しのもとに、主要9社の売上高、営業利益の状況を掲載している。実際、この数字を見ると、増収増益は9社中2社であり、見出しの通り、業績の悪化が鮮明である。食品スーパーマーケットにとっては、厳しい夏となりそうである。

   そこで、ここでは、この主要9社に加え、独自に集計した食品スーパーマーケットの決算結果をもとに、この第1四半期決算の動向を概観してみたい。まずは、日経MJの記事の中身であるが、公表された食品スーパーマーケットは、ライフコーポレーション(売上高-1.5%、営業利益-24.2%)、ヨークベニマル(-2.0%、-37.3%)、マルエツ(-6.0%、-2.6%)、オークワ(-3.4%、-31.5%)、アークス(17.8%、9.1%)、カスミ(-0.7%、50.2%)、エコス(-5.9%、-38.5%)、ベルク(2.8%、57.5%)、東武ストア(-3.1%、-40.1%)である。

   これを見ると、増収増益は先にあげたアークス、ベルクのみであり、減収減益はライフコーポレーション、ヨークベニマル、マルエツ、オークワ、エコス、東武ストアの6社と大半であり、カスミも減収増益と厳しい決算である。日経MJの記事を読むと、減益の理由は、「既存店売上高の大幅な減少、・・」とのことで、ヨークベニマルの既存店-6.7%、マルエツ-6.1%、オークワ-5.9%と、既存店のダウンが利益に響いているとのことである。一般に、既存店の売上高がダウンすると、人件費、設備関連費用等の固定費が相対的に上昇し、利益を圧迫することになる。食品スーパーマーケットにとって、この2つの固定費は経費の中のかなりの比率を占めるために、既存店のダウンは経営そのものを直撃することになる。

   したがって、食品スーパーマーケットの経営にとって最も重要な経営課題は、絶えず、マーチャンダイジングの改善を行い、既存店の活性化につなげ、既存店のダウンをくい止めることであり、このメインテナンスを怠ると、既存店の数字はズルズルと落ち込み、利益を圧迫することになる。ちなみに、既存店の活性化のポイントは商品力を高め、客単価(金額PI値)を引き上げることに加え、小まめな店舗改装により、客動線を絶えず見直し、お客さまの流れをスムースにすることである。

   日経MJの記事では、業績悪化の内容に加え、明るい兆しについても言及している。先に上げたように、増収増益となったアークスとベルクについては、「両社とも低価格戦略の徹底とローコスト運営の両立が奏功した。・・」とのことで、増収増益を達成したという。また、ライフに関しては、この第1四半期決算3月から5月までは減収減益となったが、「6月はライフの既存店売上高が12ケ月ぶりに前年を上回るなど明るい兆しもある。・・」とのことである。特に、「1品単価が下げ止まり買い上げ点数や客数が戻ってきた」との岩崎社長のコメントもあり、少し、6月に入って変化が見られるとのことである。

   では、この日経MJが取り上げた9社以外の動向はどうかを見てみたい。サンエー(売上高2.3%、営業利益-3.2%)、ダイエー(営業収益-7.7%、営業利益11.04億円(昨年は0.03億円))、アオキスーパー(営業収益-5.5%、営業利益-63.8%)、マックスバリュ中部(営業収益-1.1%、営業利益388.3%)、・・という状況であり、いずれも厳しい状況である。こう見ると、この第1四半期決算においては、増収増益の食品スーパーマーケットは稀な状況といえ、アークスとベルクの好調さが光っているといえよう。

   たまたま、7/15には日本銀行政策委員会室から当面の金融運営についてと題するレポートが公表されたが、これを見ると、実質GDPの2010年度の大勢見通しは+2.5%から+2.7%、国内企業物価指数+1.2%から+1.3%、消費者物価指数(除く生鮮食品)は-0.5%から-0.2%である。これは日銀総裁白川委員を含む、9名の政策委員の見通しである。食品スーパーマーケットにとっては消費者物価指数が気になるところであるが、2010年度はマイナス予想であり、当面厳しい経営環境が続くものといえよう。ちなみに、2011年度の消費者物価指数の予想は0.0%から+0.2%であり、やや回復する兆しの予想である。

   このように、食品スーパーマーケットの経営環境は当面厳しい局面が続き、実際、これまで見たように、大半の食品スーパーマーケットの第1四半期決算が減収減益という結果であり、特に、営業利益が厳しい状況といえる。食品スーパーマーケット業界にとっては、景気の回復は当面見込むことはできず、デフレ局面が続くという前提での経営戦略を立てる必要があるといえよう。今後、中間、そして、後半戦へ向けて、再度、経営戦略の方向性を確認する必要があろう。

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July 16, 2010

価格とPI値を考えて見る!

   価格はマーチャンダイジングの改善にとって極めて重要な要素である。一般にマーチャンダイジングを評価する指標は売上高を客数と金額PI値(客単価)に分解し、この金額PI値を評価指標とすることが多い。そして、金額PI値はさらに、PI値と平均単価(価格)に分解できるので、結果、マーチャンダイジングを評価する場合は、金額PI値=PI値×平均単価で評価することになる。もちろん、マーチャンダイジングの評価を利益まで踏み込む場合は、さらに、原価、経費等をこれに加えることになる。ここでは、マーチャンダイジングを通常のPOS分析で得られる数値をもとに、マーチャンダイジングを考えてみることにし、利益までは踏み込まず、金額PI値までとする。

   ちなみに、金額PI値=PI値×平均単価であるが、PI値=買上点数/客数、これに平均単価を掛けると、(買上点数×平均単価)/客数となるので、金額PI値(客単価)は、売上高/客数となり、客数1人当たりの売上高となる。したがって、双方はイコールとなり、成り立っていることがわかる。

   さて、価格とPI値であるが、この関係は金額PI値=PI値×平均単価との関係で見ることがポイントである。一般に価格は仕入れた瞬間に決まる数字といえ、企業としてはあらかじめ欲しい値入れがあり、仕入れが原価となる。したがって、この原価にどれだけ値入れを入れるかにより、価格が決定する。通常の食品スーパーマーケットの粗利率を見るとほぼ25%前後であるので、売価の75%前後で仕入れが行われているといえる。したがって、仕入れ価格が決まれば、それに、25%前後の値入れを行い売価が決定することになる。

   ただ、当然のことであるが、この価格では、商品が売れる場合もあれば、売れない場合もあり、そこがマーチャンダイジングの難しさである。そこで、そこから売れる価格を探ってゆくことになるが、これが中々難しい。先に見たように、価格、すなわち、平均単価と売上高の関係は、売上高=客数×金額PI値(客単価)=客数×PI値×平均単価で決まるので、平均単価、すなわち、価格次第でPI値がアップしたり、ダウンしたり、さらには、客数まで変化する場合があるからである。

   その意味で価格決定は仕入れからのみ決まるわけではなく、PI値、そして、客数との関係をしっかりにらみながら決めることがポイントである。特に、商品1品1品に関しては客数との関係よりも、PI値との関係が最も重要であり、PI値を横目でみながら価格を決定しないとPI値が伸びず、商品が在庫の山となってしまいかねない。したがって、価格の決定には、仕入れ以上にPI値が重要な要素となり、このPI値をいかに把握するかが価格決定の最大のテーマといえよう。

   そこで、PI値がアップする、言い換えれば商品が動きはじめる価格とはどのように見つけるか、ここがマーチャンダイジング上の最大のテーマである。金額PI値=PI値×平均単価となるので、価格はPI値と密接な関係があり、グラフにすると、y(価格)=1/x(PI値)の曲線上を動くことになる。たとえば、ある商品のPI値が10%、平均単価が100円の場合は、掛けた金額PI値は10%×100円=10円となる。この場合の曲線はy=10×1/xとなり、変形するとx(10%)y(100円)=金額PI値(10円)となる。したがって、この商品の場合は100円以下となると、PI値が急激にアップし、商品が動きはじめる。もちろん、仕入れ原価があるので、100円の価格をどこまで下げられるかは、おのずから限界があるが、100円が現時点での均衡価格といえよう。

   商品とPI値にはその関係を示す曲線の形が必ずしも一緒ではないが、この100円のような均衡点がどこかに存在し、それより、高ければ、PI値は動かず、低ければPI値が動きだすという場合が往々にしてある。これが値頃である。したがって、この値頃をつかめれば、その価格に可能な限り、近い値入れをすれば、商品は動き始めてゆくものである。問題はどうその値頃を見つけるかである。

   通常、値頃を見つける方法はいくつか方法がある。試行錯誤により、少しづつ価格について時間をかけて動かし、PI値の動向を見極めることである。これが最もオーソドックスな方法であり、確実な方法である。もうひとつは、競合店調査を行い、周辺の競合店の価格をすべて調べることである。これにより、自店の価格がどのような位置にあるかがわかり、その地域の値頃を知ることができる。そして、もうひとつは、何らかの方法でPOSデータを取得し、自社のPOSデータと比較し、価格のズレを知ることである。これは、重点商品はもちろん、品揃え商品の値頃まで明確になり、まさに、全商品の値頃を把握することが可能となる。

   このように、価格とPI値は実に密接な関係があり、値頃を外れた商品のPI値は全くといって良いほど動かなくなり、在庫となる。これを打開する方法は、何らかの方法により、商品1品1品の値頃を把握することであり、それなくして、マーチャンダイジングの活性化はありえない。価格はまさに、金額PI値=PI値×平均単価の数式からもわかるように、PI値を決定づける重要な要素であり、価格を決めることが、まさにマーチャンダイジングのスタートといえる。その意味で、まずは、商品固有の値頃をしっかりつかむところからマーチャンダイジングの活性化に取り組んで欲しいところだ。

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July 15, 2010

ライフコーポレーション2011年、第1四半期、減収減益!

   ライフコーポレーションが7/12、2011年2月期、第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益1,158.00億円(-1.5%)、営業利益20.78億円(-24.2%)、経常利益19.93億円(-23.7%)、当期純利益10.89億円(-28.3%)と、減収減益となる厳しい決算となった。この結果について、ライフコーポレーションは、「・・業績につきましては、売上拡大に向けた各種取り組みを進めてきたものの、生活防衛意識の高まりや、競争激化による販売単価の低下等により、・・」とのことで、営業収益が伸び悩んだとのことである。また、利益については、「・・既存店の売上減による総利益減に加え、新店の一時経費負担等もあり、・・」とのことで、既存店の売上減も大きかったとのことである。

   そこで、まずは、営業収益についてであるが、商品別に見ると、すべての部門で昨対を割っている。生鮮食品98.8%(構成品38.0%)、一般食品99.1%(構成品42.0%)、生活関連用品97.3%(構成比8.9%)、衣料品90.7%(構成比5.8%)、テナント97.1%(構成比2.4%)、小計98.2%(構成比97.1%)であり、これに、営業収入が109.1%(構成比2.9%)のり、結果、営業収益が98.5%という結果となった。こう見ると、構成比38.0%の生鮮食品が伸び悩んだことに加え、衣料品、テナント、住関連品等の落ち込みが響いたといえよう。

   一方、利益の方であるが、営業利益が減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、74.24%(昨年74.30%)と、0.06ポイント下がっており、原価の改善が進んだ。結果、売上総利益は25.76%(昨年25.70%)と改善した。これに対して、経費の方であるが、26.87%(昨年25.96%)と、0.91ポイントと大幅に上昇した。これは、先に、ライフコーポレーションも言及しているように、今期、3月に奥戸店(東京都)、4月に石津店(大阪府)の2店舗を出店したことによる経費増に加え、既存店の売上減が固定費を押し上げたことが大きいといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力は-1.11%(昨年-0.27%)と、マイナス幅が広がり、厳しい結果となった。これに不動産収入、物流収入等の営業収入が2.96%(昨年2.66%)のり、結果、営業利益は1.85%(昨年2.39%)となり、減益となった。こう見ると、原価は改善できたが、経費が既存店ダウン、新店の経費増により、大きく上昇し、営業収入でもカバーできず、営業利益が減益になったといえ、今期は経費に課題があったといえよう。


   では、財務面はどのような状況であったかであるが、ライフコーポレーションは以前から自己資本比率が低く、負債に大きく依存する経営構造にあり、経営改革を強く押しすすめてきた経緯がある。今期も、「平成20年度よりスタートした「第三次中期3カ年計画」の「12の課題」に引き続き取り組むとともに、当期を「耐える年」「立て直しの年」「準備の年」と位置づけ、・・」とのことで、業務改革道半ばという状況といえる。

   その自己資本比率であるが、27.4%(昨年26.5%)と、昨年よりは若干改善したが、依然として70%強を負債に依存する経営構造であるといえ、負債の削減が急務であるといえる。その負債の中身であるが、有利子負債が593.39億円(前期決算時493.14億円)と多額に上り、しかも、前期決算時よりも増加している。したがって、総資産1,635.37億円に占める割合は36.28%と、かなりの比率を占め、財務を圧迫している状況といえ、キャッシュを負債の削減に優先して回さざるを得ない状況にあり、新規出店等への投資への余力が十分にもてない状況にある。

   今期もキャッシュを負債の削減に当てたいところであったと思われるが、営業キャッシュフローが、「前事業年度末日が金融機関の休日のため、支払が保留となった仕入等の債務が当第1四半期累計期間に決済されたことなどにより、仕入債務の減少が135億65百万円となった、・・」ことにより、マイナスとなり、さらに、新規出店の投資も加わり、財務キャッシュフローで、長期借入の返済を-25.45億円返済しつつも、一方で、短期借入金69.50億円、長期借入金56.20億円、合計125.70億円の借入をおこしており、結果、先に見たように約100億円の有利子負債が増加している。

   ライフコーポレーショオンとしては、経営改革を前進させたいところであろうが、この第1四半期決算を見る限りでは、仕入債務の決済の問題もあり、減収減益となり、マーチャンダイジング力、すなわちキャッシュを稼ぐ力が落ちており、さらに、有利子負債の増加もみえるなど、厳しい経営環境にあるといえよう。

   このように、ライフコーポレーションの2011年度、第1四半期決算の結果は、減収減益、特に、経費増が見られ、マーチャンダイジング力が大きく落ち込み、営業活動から得られるキャッシュが減少している。また、今期は金融機関の休日との関係もあり、一時的に大量の現金が必要となり、キャッシュ不足となり、有利子負債を増加させざるをなくなり、財務面での圧迫も見られる。今後、ライフコーポレーションとしては、まずは、キャッシュを稼ぐ力をいかに充実させるかが最優先課題といえ、次回、中間決算時、どこまでマーチャンダイジング力の改善がみられるかに注目したい。

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July 14, 2010

参議院議員通常選挙2010、埼玉県を分析して見る!

   7/11に行われた参議院議員通常選挙2010が終わった。結果は民主党が44議席(改選前54議席)と自民党の51議席(改選前38議席)を下回り、民主党の惨敗に終わった。結果、参議院全体では、与党が110議席、野党が132議席となり、与党が過半数割れする事態となり、衆議院と参議院では与野党逆転のねじれ現象が生じ、与党の政権運営が厳しい局面を迎えることとなった。

   そこで、ここでは、埼玉県選挙区に絞り、有権者がどのような投票行動をしたかを埼玉県選出議員選挙と比例代表選出議員選挙の結果をもとに分析してみたい。まず、埼玉県選挙区の有権者数は5,814,689人であり、今回の投票者は3,246,247人、率にして55.83%である。したがって、この約300万人の有権者がどのような投票行動したかが、ポイントとなる。

   まず、当選者であるが、埼玉県は3人区であるので、関口まさかず氏(自由民主党)、655,028票(20.6%)、西田まこと氏(公明党)、594,678票(18.7%)、大野もとひろ氏(民主党)、557,398票(17.5%)の3氏である。以下、惜しくも落選した方であるが、島田ちやこ氏(民主党)、544,381票(17.1%)、小林つかさ氏(みんなの党)、416,663票(13.1%)、伊藤岳氏(日本共産党)、207,957票(6.5%)であり、以下、5%以下の投票率の方が4名、合計10名が立候補しており、激戦地区であったといえる。

   本来、民主党としては、大野氏、島田氏の2名ともに当選を目指していたが、結果は、接戦のすえ、大野氏が3位に滑り込み、島田氏がわずかに次点となり、1名の当選となってしまったことが誤算といえよう。このようなことが、今回の参議院選挙では3人区はもちろん、1人区、2人区、そして、東京の5人区でも起こり、自由民主党がどちらかというと手堅く候補者を絞ったのに対し、民主党は候補者を絞り切れず、敢えて、2人目、3人目の候補者を立ててこの選挙戦を戦ったことが敗因のひとつといえよう。

   埼玉選挙区を見ても、当選した民主党の大野氏と落選した島田氏の得票数はほんのわずか、13,017票(0.4%)であり、いわゆる2氏の票割は神業のごとく、見事に2分されており、どちらが当選しても、双方が当選してもおかしくない得票数であったといえる。ところが結果は2氏が3位争いとなり、1名のみの当選という結果となった。

   では、その要因は何であろうか。この得票数(率)を見ると、2つの点が浮かび上がる。ひとつは2位となった西田まこと氏(公明党)の得票数であり、もうひとつは4位となった小林つかさ氏(みんなの党)の得票数である。特に、小林つかさ氏(みんなの党)は新党での立候補であり、埼玉県の今回の投票者3,246,247人にとっては、これまでの政党にない新たな政党であり、当然、自由民主党、公明党、民主党等へこれまで投票していた方が投票したことになり、過去の数字からは読めない票数となる。この票がどの党から流れるかにより、過去の延長では全く読めない結果となり、事実、今回は、埼玉県でも大きな波乱が起こったといえよう。

   そこで、比例代表選出議員選挙結果と比較してみたい。主要政党の比例の投票数(率)と、先に上げた選出議員選挙の投票数(率)の比較である。自由民主党(比例653,497票:20.6%、選出議員655,028票:20.6%)、公明党(比例448,292票:14.1%、選出議員594,678票:18.7%)、民主党(比例992,725票:31.3%、選出議員1,101,779票:34.6%)、みんなの党(比例494,219票:15.6%、選出議員416,663票:13.1%)、・・という結果である。

   この結果を見ると、自由民主党は見事に比例と選出議員が一致しており、自由民主党のコアな支持者が選出議員にそのまま投票したと推測できる。公明党は公明党の支持者以上に選出議員が圧倒的に多く、その差146,385票を他の政党、無党派層から獲得したと推測できる。仮に、政党支持者のみの投票数では今回の当選ライン55万票に届かなかったといえよう。民主党であるが、公明党同様、民主党支持者以上に選出議員の投票数が多いが、これがいわゆる無党派層の投票といえよう。そして、今回の波乱要因、みんなの党であるが、比例が選出議員よりも圧倒的に多く、他の政党からかなり票が流れたといえよう。また、選出議員も約40万票と、無党派層のかなりの方が強く支持していると推測できる。当選ラインの55万票にはとどかないものの、当選ラインに近い投票数である。

   こう見ると、埼玉県選挙区はまさに無党派層の動向が大きな鍵を握っていたといえ、その無党派層を民主党とみんなの党が激しく奪い合い、みんなの党がこれまでの民主党に流れていたかなりの票を獲得したため、民主党の獲得票数が激減し、民主党にとっては極めて苦しい選挙戦になったといえよう。ちなみに、前回の参議院選挙の投票率は56.35%と今回の55.83%とほぼ同じであるが、民主党は2名立候補し、2名当選し、結果は(比例1,260,437票:39.94%、選出議員1,410,580票:44.4%)であり、これを見ても、みんなの党へかなりの票が流れたものと推測される。

   このように、今回、民主党が惨敗した要因を埼玉選挙区で見てみると、みんなの党が台風の目となり、これまでの有権者の投票行動を大きく変え、特に、民主党へ投票していたかなりの有権者、おそらく無党派層がみんなの党へ移ったために、民主党が本来獲得できた基礎票が底割れし、2名当選できる絶対数を割り、1名当選がぎりぎりとなったということであろう。恐らく、今回の参議院選挙はこの埼玉県のような現象が全国、特に無党派層の多い都市部ではいたるところで起き、民主党惨敗の結果を招いたのではないかと推測されよう。

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July 13, 2010

サンエー、2011年2月期、第1四半期決算、増収減益!

   沖縄のサンエーが7/12、2011年2月期、第1四半期決算を公表した。結果は売上高329.17億円(2.27%)、営業利益22.34億円(-3.16%)、経常利益23.17億円(-0.99%)、当期純利益13.76億円(-1.15%)となり、増収とはなったが、営業、経常、当期ともに減益となる厳しい決算となった。サンエー自身も、「・・個人消費が低迷する中、他業態を巻き込んだ競争の激化や低価格販売による競争により商品単価が下落するなど、依然として厳しい状況が続いております。・・」と、現状認識をしており、厳しい消費環境であったことが伺われる。

   そこで、営業利益が減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まず、原価であるが、69.72%(昨年69.39%)と0.33ポイント上昇した。まさに、競争激化による価格競争により、価格が下がり、原価に影響が出たものといえよう。結果、売上総利益は30.28%(昨年30.61%)と減少した。それにしても、売上総利益が30%を超えるという、食品スーパーマーケットとしては極限の数字ともいえ、依然として高い売上総利益を維持している。サンエーがこれだけ高い売上総利益を維持できるのは、食品スーパーマーケットに加え、衣料品、外食、ホテルなど売上総利益の高い業種、業態をもっているためであり、これが、サンエーの強さのひとつといえる。

   一方、経費の方であるが、26.55%(昨年26.59%)と、0.04ポイント減少しており、経費の削減がわずかではあるが進んだ。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力は3.72%(昨年4.02%)となり、プラスとはなったが、原価の上昇により、下がっており、これが、減益の要因のひとつである。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が3.07%(昨年3.15%)のり、結果、営業利益は6.79%(昨年7.17%)と減益となった。

   サンエーは通常の食品スーパーマーケットと比べ、先にあげた売上総利益の高い業種、業態をもっていることに加え、食品スーパーマーケットとしても、SM、SSM、NSC、SC等様々なタイプを擁しており、特に、SM、SSMは物流収入、NSC、SCは不動産収入等が加わり、その他営業収入を通常の食品スーパーマーケットよりも多く獲得できる業態ミックスをはかっているのが特徴である。今期も、若干、その他営業収入が下がったとはいえ、3%を超える高い数字であり、これがサンエーの高収益の源泉のひとつである。

   したがって、今期、サンエーが減益となった要因は、経費はわずかに減少したが、原価が上昇、さらに、その他営業収入が減少し、結果、営業利益がマイナスとなる厳しい状況となったことが要因であり、今後、さらに経費を削減するか、原価、その他営業収入を改善するか、収益改善の方向を明確にする必要があろう。ただ、依然として、営業利益率は7%弱という、極めて高い数字であり、食品スーパーマーケットとしては限界に近い数字といえる。

   さて、財務面であるが、今期は、自己資本比率が69.1%(昨年64.3%)と、大きく上昇し、財務の健全化が進んでいる。自己資本比率69.1%は食品スーパーマーケット業界の中でも極めて高い数字であり、これも営業利益率同様、限界に近い数字である。特に、今期は、「・・前連結会計年度末が金融機関の休業日であったことにより、仕入債務等62億83百万円の支払が当第1四半期連結会計期間に繰越され「現金及び預金」が減少したことによるものであります。・・」とのことで、金融機関との決済日の関係があったことが資産の減少につながったとのことである。一方、純資産面でも、「・・利益剰余金が8億8百万円増加した、・・」とのことで、純資産が増加したという。したがって、自己資本比率の分母、総資産が減少し、分子、純資産が増加したので、ダブルで改善し、自己資本比率を大きく引き上げたといえよう。

   また、約30%の負債面であるが、その主要項目である有利子負債の合計は28.26億円であり、これは総資産808.95億円のわずか3.49%であり、財務的な負担はほとんどない状況である。これ以外では、買掛金が76.58億円であり、総資産の9.46%であり、負債の中で財務を圧迫する項目はなく、極めて健全な財務状況であるといえよう。したがって、キャッシュを新規出店、成長戦略に思い切って使える財務状況にあるといえ、今後、サンエーがいかに、成長戦略にキャッシュを振り向けてゆくかが経営課題といえよう。

   ちなみに、今期の投資キャッシュフローの中の新規出店関連であるが、営業キャッシュフローが先に上げた金融機関の休日との関係で-33.47億円の仕入債務の減少が発生し、営業キャッシュフローが-43.68億円となり、ほとんど投資ができない状況であった。ただ、次の中間決算時には正常にもどるといえ、今後、豊富なキャッシュをどう投資に配分するかが経営課題といえよう。

   このように、サンエーの2011年2月期の第1四半期決算は残念ながら原価の上昇、その他営業収入の減少により、営業利益が減収となり、厳しい決算となった。ただ、営業利益率は依然として7%弱という極めて高い水準にある。また、自己資本比率も今期は70%弱という高い水準となり、極めて安定した財務状況となった。今後、この高い営業利益、そして、安定した財務状況をいかに成長戦略に繋げられるかが課題であるといえ、次回、中間決算でサンエーがどのような成長戦略を打ち出すか注目である。

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July 12, 2010

アークスの2011年2月期、第1四半期決算を見る!

   北海道のアークスが7/5、2011年2月期、第1四半期決算を公表した。結果は、売上高744.25億円(17.8%)、営業利益 21.28億円(9.1%)、経常利益 22.95億円(7.9%)、当期純利益12.79億円(12.7%)と、増収増益の好決算となった。特に、売上高に関しては、昨年が632.05億円であるので、約100億円強の増収であり、率でも17.8%増と大幅な増加である。これは特に、昨年9月の札幌東急ストアへのM&Aが大きく、年間では約500億円近い増収効果となろう。

   札幌東急ストアの営業実績であるが、2009年2月期決算では営業収益522.72億円(昨対98.14%)、営業利益11.43億円(昨対95.56%:対営業収入に対する営業利益率2.18%)という状況であり、この数字がほぼそのままオンすることになると思われ、この面でのアークスの増収効果が大きかったといえよう。また、このM&Aにより、アークスの店舗数も、この第1四半期段階では201と、200店舗を超える規模となった。

   ただ、営業利益は売上高の伸び、17.8%ほどは伸びておらず、9.1%、約半分の伸び率に留まっており、気になるところである。そこで、アークスの営業利益がどのような構造であるのかを、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、77.25%(昨年77.70%)と0.65ポイント減少しており、原価の改善が進んでいる。アークス自身も、「小売業界におきましても、消費者の生活防衛意識や節約志向の高まりから競合各社の低価格競争は一層激しさを増しており、依然として厳しい経営環境で推移いたしました。・・」との厳しい認識を示している。そして、このような認識のもと、「当社グループは強まる低価格志向に対応するため、ビッグハウスを中心に低価格業態に更なる磨きをかけ、「革命的な価格」の実現に向けた取り組みを進めてまいりました。」とのことで、価格にこだわった取組みに力を入れて来たという。

   その結果、原価が下がったことは、これらの施策が原価の改善に寄与したといえ、結果、売上総利益は22.75%(昨年22.30%)と改善した。ただ、それでも、22%台の売上総利益はかなり低い数字であり、当然、札幌東急ストアの方がかなり高い数字であると思われ、そちらにややシフトしたことも原価改善には寄与したものと推測されるが、このデフレ環境の中での原価改善であり、それが利益を押し上げる方向になったといえよう。

   一方、経費の方であるが、19.89%(昨年19.22%)と0.67ポイント上昇しており、気になるところである。ただ、それでも、20%を切っており、食品スーパーマーケット業界の中ではかなり低い数字であといえ、アークス得意のディスカウント戦略を充分に採用できる低い経費比率であるといえよう。ただ、経費の上昇は、当然、利益圧迫要因となり、これも札幌東急ストアの影響があると思われるが、今後、いかに、経費を削減するかが課題といえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、2.86%(昨年3.09%)と、微妙に3%を割っており、これもやや気になる結果である。原価は改善できたが、それを上回る経費の上昇であり、今後はいかに、この経費比率を抑えられるかが経営の最優先課題といえよう。アークスの場合は、その他営業収入が0であるため、このマーチャンダイジング力=営業利益となり、結果、営業利益は高では昨対を超えたが、率では、経費が上昇した分、微妙に下がっており、今期は経費の利益への圧迫が大きかったといえよう。

   これに対し、財務面であるが、自己資本比率は52.9%(昨年52.5%)とあまり大きな変化はなく安定しているが、その中身は札幌東急ストアをM&Aしたため、資産、純資産に関してはかなりの変化が見られる。まず総資産であるが、1,202.24億円(昨年1,010.00億円)であり、約200億円の増加が見られる。これは、出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計が当然増加しているためである。一方、負債面であるが、有利子負債が186.59億円(昨年101.28億円)と大きく増加しており、M&A以前と以後では、財務構造が様変わりしたといえよう。

   したがって、ここから出店余力、出店にかかわる資産がどれだけ自己資本比率によってカバーできているかを見ると、-17.72%(昨年-18.16%)であり、まだまだ、負債に依存する新規出店構造であり、今後の経営課題のひとつといえよう。ちなみに、在庫も82.20億円(昨年69.82億円)と増加しており、率では大きな差が見えないようであるが、額では明らかに、ひと回り大きくなったといえよう。

   このように、アークスのこの2011年2月期の第1四半期決算は大幅な増収増益とはなったが、その最大の要因は札幌東急ストアをM&Aした結果であり、中身を良く見ると、原価は改善したが、経費が上昇、資産は増加、負債、特に、有利子負債も増加した。経営面では規模の拡大にはつながり、店舗数も、売上げも資産もひと回り大きくなったといえるが、経営効率から見ると課題を残す決算結果であったといえ、今後、どれだけ、経営のスリム化をはかり、利益及び、経営効率を引き上げられるかが課題といえよう。次の中間決算で、どこまで経営改善がはかれるか注目である。

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July 11, 2010

マルエツ、2011年2月期決算、減収減益!

   マルエツが7/9、2011年度2月期、第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益804.41億円(-6.0%)、営業利益 20.64億円(-2.6%)、経常利益20.10億円(-2.8%)、当期純利益-1.96億円となり、減収減益、しかも、当期純利益は赤字となる厳しい決算となった。当期純利益が赤字となった要因は、特別損失として賃貸不動産の転貸損失引当金繰入額等を計上しためであるが、それを差し引いても、厳しい決算であったといえよう。マルエツ自身も、「お客様の低価格志向が依然として強く、企業間の激しい価格競争が続いており、厳しい経営環境となっています。・・」と、コメントしており、経営環境が極めて厳しい状況であったとの認識である。

   そこで、特に、マルエツが減益となった要因を原価、経費面から見てみたい。まずは原価であるが、70.96%(昨年71.94%)となり、昨年よりも0.98%下がっており、原価の改善が進んだ。この厳しいデフレ、それに伴う価格競争が激しい中、原価が改善している。結果、売上総利益は29.04%(昨年28.06%)となり、粗利が改善した。一方、経費の方であるが、28.69%(昨年27.42%)と、1.27%と大幅に上昇しており、原価とは一転、経費の上昇が見られる。結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は0.34%(昨年0.63%)と半減した。原価は改善したが、経費がそれ以上に大きく上昇したため、差し引き、マーチャンダイジング力が厳しい結果となったといえる。それにしても、経費の上昇幅がかなり大きく、原価の改善を打ち消した形となり、厳しい利益構造となったといえよう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入がのるが、その数字は、2.28%(昨年1.89%)と上昇し、結果、営業利益は2.62%(昨年2.53%)と上昇した。決算概要では、営業利益が減益となったが、営業利益率で見ると、昨年を上回っており、営業利益は改善している。ただ、それ以上に、売上高が-6.0%と減少したことが響き、営業利益高では、減益となる結果となった。したがって、今期のマルエツは営業利益率では増益となったが、営業利益高では、売上高が減少し、減益となるという結果であり、売上ダウンが経営に大きく影響したといえよう。

   そこで、次に、売上高が減少した要因を客数、客単価から見てみたい。まずは、今期に入って、3ケ月間の売上高の昨対の推移であるが、3月(93.3%)、4月(94.7%)、5月(94.2%)と、厳しい状況である。その中身であるが、既存店の売上高、客数と客単価の状況を見ると、3月(売上高93.3%、客数95.7%、客単価97.5%)、4月(94.7%、95.3%、99.4%)、5月(93.7%、96.6%、97.0%)という状況である。したがって、客数、客単価ともに厳しい状況にあり、結果、既存店の数字が上がらず、全体の売上げに大きく響いているといえよう。

   一般に客数減は商圏構造によることが大きく、客単価減はマーチャンダイジングによることが大きいが、マルエツの状況を見ると、双方が落ちており、商圏構造も、マーチャンダイジングも大きく変化し、その変化に対応できていないようである。ただ、本来、既存店が厳しい状況にあっても、新店でカバーし、売上げは既存店ほど落ち込むことはないといえるが、結果を見ると、全体の売上げも94%前後であり、新店も思うように進んでおらず、既存店の厳しい状況がダイレクトに全体へ反映された形となったといえよう。
 
   そこで、マルエツの出店余力を見てみたい。まずは、自己資本比率(純資産比率)であるが、45.39%(前決算時46.68%)と若干減少したが、食品スーパーマーケットの平均が約40%であり、若干高めの自己資本比率である。したがって、約50%強を負債に依存する財務構造となっているが、その中身は有利子負債が274.30億円(前決算時293.09億円)となり、総資産の21.33%(前決算時23.22%)と、金額で約20億円、率で約2%改善している。一方、出店にかかわる資産、土地、建物、差入保証金等の合計であるが、872.33億円(前決算時873.05億円)とほぼ前決算時と同じ数字であり、総資産に占める割合は、67.85%(前決算時69.17%)と、約70%の比率である。
   
   したがって、ここから出店余力、すなわち、自己資本比率でどこまで、出店にかかわる資産をカバーできているか、自己資本比率-出店にかかわる資産を算出して見ると、-22.46%(前決算時-22.49%)と、約-20%強であり、かなりの部分を負債に依存する出店構造であり、ほぼ、有利子負債分に当たる比率である。したがって、キャッシュを新規出店よりも、有利子負債の削減に優先的に配分せざるを得ず、新規出店が思うようにできない財務構造にあるといえよう。
   
   このように、今期、2011年2月期の第1四半期のマルエツの決算は厳しい結果となり、率では営業増益となったが、額では売上高が93.68%となり、カバーできず、営業減益となった。それだけ、売上高のダウンが響いたといえる。しかも、既存店は客数、客単価ともにダウンし、厳しい結果となった。本来、既存店が厳しい状況にあっても、新店を順調に出店できれば、全体では、売上高を維持、成長させることも可能であるが、マルエツの場合は、出店余力も-22.46%と低く、成長戦略を描くには厳しい財務状況にある。今後、このような厳しい状況を打開するには、まずはキャッシュの獲得といえ、今後、マルエツが、特に、今期、厳しかった経費の改善を含め、キャッシュの獲得をどのように改善してゆくのかが課題となろう。次の決算である中間がどのような結果となるか、その動向に注目である。

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July 10, 2010

ダイエー、2010年2月期、第1四半期、減収増益!

   営業収益2,265.09億円(-7.7%)、営業利益11.04億円(昨年は0.03億円)、経常利益4.25億円(昨年は赤字)、当期純利益2.50億円(昨年は赤字)、これがダイエーの2010年2月期決算の結果である。この結果について、ダイエー自身は、「・・前連結会計年度に不採算店舗の閉鎖等を実施したこともあり、前年同期に比べ190億円減収の2,265億円(前年同期比7.7%減)となりました。・・」とのことで、営業収益のマイナスについては、不採算店の閉鎖等が大きかったようである。

   また、営業利益に関しては、様々な取組を行った結果、「・・販売費及び一般管理費の低減が実現し、前年同期に比べ11億円増益の11億円となりました。・・」とのことで、経費の削減により、増益となったとのことである。そこで、ここでは、営業利益が増益となった要因をさらに、原価、経費面から見てみたい。

   まずは、原価であるが、69.79%(昨年69.86%)となり、わずかではあるが、原価が下がっている。結果、売上総利益は30.21%(昨年30.14%)となり、改善した。それにしても、売上総利益が30%を超えるのは、セブン&アイH 26.25%、イオン28.03%と比べても、極めて高い数字である。一方、経費であるが、37.34%(昨年38.11%)と0.77ポイント減少しており、経費の削減が進んだ。ただ、経費比率37.34%もかなり高い数字であり、セブン&アイH 33.61%、イオン36.43%と比べても高い経費比率であるといえよう。

   結果、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力は、-7.13%(-7.97%)という結果となった。原価、経費双方の改善が進み、利益が改善したにも関わらず、依然として、マーチャンダイジング力は-7%台と厳しい状況にあるといえよう。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他収入が7.66%(昨年7.97%)のり、結果、営業利益は0.52%(0.00%)となり、増益となった。したがって、今期、ダイエーの収益が改善した要因は、原価、経費の改善、特に、経費の改善が大きいといえるが、依然として、経費比率は37.34%と高い数字であり、今後、一層、経費比率を引き下げる改革が必要といえよう。

   なお、この経費については、ダイエーでは、経営改革の最優先課題として位置付けており、この5月に策定した中期経営計画では、「・・コスト構造改革による損益分岐点の引き下げ」を掲げており、会社が負担する費用の実態を明確にし、より厳密に経費効率を管理する体制といたしました。・・」とのことであり、経費改善が経営計画において、重要な位置づけであることがわかる。

   これに対して、財務面であるが、まずは、自己資本比率は36.6%(昨年35.6%)と、若干、上昇したが、依然として35%強であり、負債に約75%負う財務状況にある。今後、いかに、この比率を逆転させるかが課題といえよう。そこで、まずは、負債の主要項目である有利子負債について見てみると、17.03%(前期決算時18.03%)と若干下がっており、有利子負債の削減が進みつつあるといえる。また、これ以外の負債では、引当金関連が大きいといえる。たとえば、退職給付引当金269.60億円、事業再構築引当金55.53億円、閉鎖損失等引当金173.77億円と、合計498.90億円と多額に及び、総資産対比では11.88%となる。この2項目、すなわち、有利子負債と引当金がダイエーの負債の約30%を占めており、今後、一層、こられ負債を削減してゆく必要があろう。

   結果、これらの負債が今後のダイエーの新規出店を厳しいものにしているといえる。実際、ダイエーの現在の今期の新規出店関連の資産、土地、建物、敷金保証金等の合計は62.37%(昨年61.43%)となる。ちょうど、自己資本比率と、先に見た有利子負債、引当金を足すと、出店にかかわる資産分となり、継続、安定的に新規出店をしてゆくには厳しい財務状況にあるといえよう。したがって、有利子負だけを見る限りでは、17.03%と、極端に高い方ではないが、これに引当金等を入れると、重い財務負担となり、この2点の改善が課題といえよう。

   したがって、ここから、出店余力、すなわち、自己資本比率でどこまで新規出店関連の資産を賄っているかを見ると、-25.78%(-25.87%)となり、出店余力は低いといえ、今後、ダイエーが継続、安定的に新規出店をはたしてゆくには、より、一層の改善が必須といえる。ちなみに、今期、ダイエーは、「新規出店につきましては、食品ディスカウントストアを展開する当社子会社の株式会社ビッグ・エー(以下「ビッグ・エー」)で1店舗実施いたしました。また、不採算店舗及び老朽化店舗の閉鎖といたしましては、当社で2店舗、ビッグ・エーで1店舗実施しております。」とのことであり、新規出店が厳しい状況にあるといえよう。

   このように、今期のダイエーの決算結果は減収、増益とはなったが、営業利益は0.52%とその数字はわずかである。マーチャンダイジング力も、経費比率が改善したとはいえ、依然として、-7.13%と厳しい状況にあり、キャッシュ生み出す力がまだまだ弱いといえよう。また、自己資本比率も36.6%と低めの数字であり、負債の圧縮を今後、急ぐ必要もあろう。したがって、今期策定した3ケ年の中期経営計画をいかに進めてゆくかが当面の課題とはいえるが、全体的には依然として厳しい経営状況にあるといえ、今後、さらに大胆な経営改革に踏み込む必要もあろう。

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July 09, 2010

CFを見る、セブン&アイH、イオンの第1四半期決算!

   前回のブログ「セブン&アイH、イオンの第1四半期決算を比較する」において、主にP/Lについて比較した。そこで、今回は、さらに、踏み込み、経営の根幹、キャッシュフローについて、その経営戦略について比較してみたい。キャッフローは、その企業の獲得したキャッシュをどう配分するかが明確に表れ、まさに、経営戦略そのものが色濃く反映される。さらに読み込むと、経営者心理も垣間見ることができ、キャッシュフローはその意味で、その企業の経営の神髄にちかづくことができる財務諸表のひとつといえよう。

   さて、まずは、営業キャッシュフローであるが、セブン&アイHは1,307.65億円(昨年1,377.52億円)と、ほぼ、昨年同様のキャッシュを獲得した。その主な中身は、当期純利益が489.48億円(昨年520.91億円)、減価償却費312.50億円(昨年320.32億円)と、この2点がベースとなるが、今期はこれに加え、ATM未決済資金の純減が699.95億円(昨年0)あり、この分が減収分を補い、大きくキャッシュフローに貢献している。

   それにしても、ATMの未決済金の純減とはたとえていえば、お金の単品管理の成果ともいえ、各ATMのお金の在庫管理を徹底した結果、日本中のセブンイレブンのATMにおけるお金の在庫が大きく減少したものといえよう。セブン&アイHのこれまで培ってきた単品管理がお金に応用されたケースともいえ、改めて単品管理の重要性が浮かびあがったといえる。
   
   これに対して、イオンであるが、何と、-1,084.36億円とマイナスのキャッシュフローである。しかも、増益となってのマイナスのキャッシュフローであり、厳しい結果であったといえよう。では、なぜ、増益となったにも関わらず、イオンの営業キャッシュフローがマイナスとなったのかを見てみたい。まずは、当期純利益であるが、425.19億円(昨年84.22億円)と、昨年の厳しい状況から一転、この段階では大幅なキャッシュの増加である。この金額はセブン&アイHの489.48億円と比べても、イオンの数字は425.19億円であり、大きな差とはなっていない。ついで、減価償却費であるが、342.43億円(昨年364.16億円)と、ほぼ昨年と同様のキャッシュである。これもセブン&アイHの312.50億円と比べて見ると、むしろ、342.43億円は高い数字であり、この2点を見る限りでは、イオンの営業キャッシュフローがマイナスとなるとは思えない状況である。

   では、何がマイナスへ左右したのかであるが、最も大きな項目は、仕入債務の減少が-598.04億円(昨年20.54億円)と、最も大きく、ついで、その他も-312.77億円(昨年115.93億円)、営業貸付金の増加が-82.29億円(昨年-18.55億円)となる。それにしても、劇的に仕入れが動いており、営業キャッシュフローに大きなインパクトを与えているといえる。これについて、イオンは、「主に前連結会計年度末が銀行休業日と重なり当第1四半期連結会計期間において仕入債務の決済や専門店売上の預り金の返還が行われた影響で、仕入債務の増減額やその他の資産・負債の増減額が減少したこと等により、1,084 億36 百万円の支出となりました。・・」とコメントしており、昨年と決済日の違いによる金融機関との関係に原因があるとのことである。

   次に、投資キャッシュフローはどうかを見てみたい。今度はイオンから見てみるが、-87.47億円(昨年-1,058.08億円)と大きく減少している。これは新店関連の投資、有形固定資産の取得による支出が-537.70億円(昨年-1,110.24億円)と、大きく減少したためである。すなわち、今期は投資を半減させたことになる。これに対して、セブン&アイHの投資キャッシュフローであるが、-686.90億円(昨年-495.62億円)であり、昨年以上の投資を行っている。その主な投資、特に、新店関連の有形固定資産の取得による支出であるが、-340.33億円(昨年417.36億円)であり、昨年と比べやや減少したが、ほぼ、昨年並みの投資といえよう。結果、双方のフリーキャッシュフローはイオン-1,171.83億円、セブン&アイH620.75億円となった。

   そして、財務キャッシュフローであるが、イオンは23.04億円(昨年1,002.60億円)となった。昨年は長期借入金を1,037.14億円、短期借入金を706.72億円借り入れており、財務キャッシュフローが大きくプラスに転じたが、今期は、新たな借り入れはほとんどなく、その差が大きかったといえよう。一方、セブン&アイHであるが、-942.86億円(昨年-201.17億円)となり、積極的な財務戦略をとったのが特徴である。たとえば、社債の償還-202.85億円(昨年-3.27億円)、自己株式の取得-472.76億円(昨年0)等である。

   結果、イオンは現金及び現金同等物が-1,147.20億円となり、現金を大きく取り崩す結果となった。これに対して、セブン&アイHも-312.89億円となり、イオンほどではないが、マイナスとなったが、期末はイオンの1,658.00億円に対して、6,860.30億円と、圧倒的な差であり、いかに、セブン&アイHが豊富なキャッシュであるかがわかる。

   このように、セブン&アイHとイオンとの今期、2010年2月期、第1四半期決算におけるキャッシュフローは対照的な結果となり、イオンが増益になったにも関わらず、現金が大きくマイナスとなり、セブン&アイHは現金がややマイナスとはなったが、以前として豊富なキャッシュを保有しており、財務面での際だった違いが鮮明である。今後、双方が中間、そして、期末に向け、どのようにキャッシュフローを改善してゆくのか、そのゆくへえに注目である。

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July 08, 2010

セブン&アイH、イオンの第1四半期決算を比較する!

   2010年度の決算発表もほぼ終了し、7月に入り、2011年2月期の第1四半期の決算がピークを迎え始めた。そこで、ここでは、小売業界、売上高No.1、No.2のセブン&アイH、イオンの2011年度の第1四半期決算の結果を見てみたい。まずは、双方の概要であるが、7/1に公表されたセブン&アイHの結果は、営業収益1兆2,458.20億円(0.3%)、営業利益 524.36億円(-10.6%)、経常利益 526.61億円(-10.0%)、当期純利益 242.94億円(2.5%)となり、当期純利益は増益となったが、営業、経常段階では増収減益となる厳しい決算となった。一方、7/7に公表されたイオンであるが、営業収益1兆2,145.29億円(-2.5%)、営業利益 217.81億円(149.8%)、経常利益 247.23億円(146.7%)、当期純利益192.69億円(昨年は赤字)となり、減収増益の好決算となった。

   双方、対照的な決算となったが、これを率で比較して見ると、営業収益は双方ほとんど同じ数字であり、営業収益に対する営業利益率は(セブン&アイH:4.20%、イオン1.79%)、経常利益(4.22%、2.03%)、当期純利益(1.95%、1.58%)となり、減益とはなったが、セブン&アイHの収益率の高さが際立っているといえる。したがって、収益改善がはかられつつあるイオンがどこまでセブン&アイHの収益率に迫れるかが今後の課題といえよう。

   さらに、この営業収益、営業利益を売上高、原価、経費、そして、その他営業収入に落として見てみたい。ここでは、双方を比較してみるが、売上高は(セブン&アイH:1兆1,057.31億円、イオン:1兆767.87億円)と、ほぼ同額である。次に、原価率であるが(74.60%、73.97%)となり、結果、売上総利益は(25.40%、26.03%)となり、イオンの方が原価が低い。ここで気になる数字がある。昨年の原価率、および、売上総利益である。この2つを算出して見ると、昨年の原価率(73.12%、72.51%)、同じく昨年の売上総利益は(26.88%、27.49%)であり、どちらも、昨年よりも原価率が高く、結果、売上総利益が下がっていることである。

   今期は双方、原価対策として、PBに力を入れ、原価改善に大きく踏み込んだはずであるが、結果は、双方、原価が上昇し、結果、売上総利益が下がってしまった。この結果を素直に解釈する限り、PBの原価改善効果は明白ではなく、むしろ、価格競争が激化し、NBの価格が恐らくさらに下がり、原価が相対的に上昇したのではないかと思われる。今後、PB、NBのバランスをいかにとり、利益を改善してゆくかが、双方、課題といえよう。

   これに対して、経費の方であるが、(33.32%、36.79%)と、経費はセブン&アイHの方が約3ポイント弱低く、差がある。また、これも、昨年と比較してみると、昨年は(34.07%、38.28%)と、さらにその差が大きく、約4ポイント強である。ただ、どちらも、今期は経費の削減が進んでおり、セブン&アイHは0.75ポイント、イオンは1.49ポイント改善している。

   したがって、今期の決算は、セブン&アイHもイオンも経費は改善できたが、原価の上昇を招いてしまい、利益改善が原価ではなく、経費に注がれた結果となった。また、双方を比較すると、原価はイオンの方が低いが、経費はセブン&アイHが低いという対照的な結果となった。結果を見る限りでは、イオンは原価改善を通じて利益確保を狙い、セブン&アイHは経費改善により、利益確保を目指したといえよう。

   そして、この差、すなわち、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力であるが、(-7.92%、-10.76%)と、いずれも大きくマイナスとなった。ただ、セブン&アイHの方がマイナス幅が小さく、イオンは、何と-10%を超えるマイナスであり、厳しい数字である。ちなみに、昨年は、(-7.19%、-10.79%)であり、その差は今期同様大きな差であるといえよう。少し、気になるのはセブン&アイHのマーチャンダイジング力が今期はだいぶマイナス幅が広がったことであり、これが、減益となった要因であるといえよう。

    これに不動産収入、物流収入等のその他営業収入が乗り、営業利益となるが、それぞれ見てみると、その他営業収入は(12.66%、12.79%)、結果、営業利益は(4.74%、2.03%)となった。また、昨年の数字は、その他営業収入(12.51%、11.58%)、結果、営業利益は(5.32%、0.79%)である。

   それにしても、食品スーパーマーケットではありあえない収益構造であり、これがGMS特有の収益構造であるといえよう。すなわち、マーチャンダイジング力では、原価よりも経費が大きくなり、大幅なマイナスとなるが、不動産収入等でそのマイナスをカバーし、営業利益を強引にプラスにもってゆく収益構造であるといえる。また、セブン&アイHとイオンとの違いであるが、原価にこだわるイオンに対して、セブン&アイHは経費にこだわっているといえ、利益捻出の方向性が違う。結果、営業利益を見ると、双方の差は売上規模、原価、不動産収入等ではなく、経費に差があり、その差が結果、営業利益の差となっているといえる。こう見ると、利益を出すためには、やはり、マーチャンダイジング力の強さ、しかも、その中でも経費管理の差が大きいといえよう。次の第2四半期、双方がどのような営業戦略を打ち出すか、気になるところである。

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July 07, 2010

ID-POS分析を活用した実務研修のポイント!

   最近、ID-POS分析を活用したコンサルティングをする機会が増えた。これまでは通常のPOS分析をもとにコンサルティングを実施する機会が多く、ID-POS分析を併用することはなかったが、ここ最近は、ID-POS分析の普及も進み、まだまだ、不十分な分析結果である場合も多いが、徐々に、マーチャンダイジングの改善に実践投入されはじめ、双方のデータが現場に飛び交う場面が見られる。そこで、ここでは、過渡期ともいうべき、通常のPOSデータとID-POS分析との併用をどのように実践的に活用すべきかを実務に即して考えて見たい。

   将来的にはマーチャンダイジングの仮説づくりは、ID-POS分析に一本化され、通常のPOS分析はID-POS分析に吸収されてしまうことになると思うが、それまでは、恐らく、通常のPOS分析が主体でID-POS分析が従、その後、この関係が逆転し、ID-POS分析が主体となり、通常のPOS分析が従となり、そして、最終的にはID-POS分析が通常のPOS分析を吸収してしまうという流れで進んでゆくのではないかと思う。現在は、まだまだ通常のPOS分析が主体の時期であり、ID-POS分析は従という関係であるといえる。

   実際、現状のコンサルティング先を振り返っても、通常のPOS分析がまだまだ大半であり、ID-POS分析が可能となった食品スーパーマーケットはわずかである。また、可能となった食品スーパーマーケットでも、ID-POS分析を駆使しているところはなく、従として活用している食品スーパーマーケットがほとんどといえる。

   ちなみに、この2つの分析はどこが決定的に違うかであるが、以前も本ブログでも取り上げたようにID=1と見るか、ID>1の違いである。通常のPOS分析はID、すなわち、個人の把握ができないために、レシートのみの情報でPOS分析を行うことになる。そこには、ID、個人が見えないので、あたかも、巨大なたった1人のIDがいるかのように見立てて、POS分析をしてゆくことになる。したがって、そこから導かれる分析は全体の平均像の分析となり、どんなに顧客が多い食品スーパーマーケットでも、その平均像を追い掛けるマーチャンダイジング分析となる。

   ここから、ゆらぎ、すなわち、顧客の多様性を分析するには、ひとつは時間軸で見て、過去のデータと比較し、変化している商品を見つけ出し、全体をプラスに誘導するように仮説をつくることである。そして、もうひとつは、チェーンストアの場合に限るが、各店を仮想ID、すなわち、店舗=IDとして、店舗の数だけIDが存在すると想定し、店舗間のゆらぎを分析し、そこからマーチャンダイジング改善の仮説をつくることである。この場合、主に活用する分析手法は成功事例、すなわち、ベストプラクティスを見つけ出し、それをいち早く全店に普及することで、各店のレベルを引き上げ、結果、全体の数字を引き上げることになる。

   以上が通常のPOS分析のマーチャンダイジングへの活用方法であるが、これでも十分に実践には活用が可能であり、70%から80%は問題をえぐり出し、改善することができる。ただ、残り20%から30%はけっして踏み込めない領域が存在し、それがID-POS分析の独壇場となる分析、すなわち、IDに着目した分析である。

   IDに着目するとはどういうことか。それは、通常のPOS分析がレシートに着目せざるをえないのに対して、レシート1枚1枚に割り振られたIDを主体に分析が再構築されることである。具体的には、IDごとにレシートが分類され、IDの数だけ、商品分析が生まれ、これまで把握できなかったIDの商品購入状況がつぶさに見えるようになる。ちょうど、これまでのチェーンストアの分析では、店舗の数だけ商品分析が見えたように、ID-POS分析では、それが、IDに置き変わるイメージである。

   したがって、通常のPOS分析をより深く分析できるようになることはもちろん、それ以上に、レシートの組み変え、すなわち、IDごとにレシートが整理されての分析となるため、顧客の真の購買イメージに近づくことになり、これまでの巨大なたったひとりの顧客の分析から、何千、何万人の顧客1人1人の消費者像に迫り、マーチャンダイジングの仮説が真の購入実態にもとづいて立案可能となる。

   では、ここからすぐに活用できるID-POS分析の応用可能なものは何かであるが、通常のPOS分析を補い、かつ、ID-POS分析でなければできない点を優先的に組み込んでゆくことがポイントとなろう。現在、実践していることでは、まずは徹底して、商品ごとの商品購入関係をIDでチェックすることである。たとえば、AとBの商品のID数、両方購入する重なったID数はどのくらいかである。これを見るだけで、これまでは思いもしなかった関係があることが多々見つかっており、実に有益である。

   そして、もうひとつは、徹底して、ロイヤルカスタマーの購入商品を見ることである。これまでのPOS分析ではレシートしか見ることができず、同時購入商品の分析しかできなかった。ここにIDがふられることにより、過去のIDの購入履歴がすべて把握でき、特に、ロイヤルカスタマーの購入商品は即、重点商品として検討すべきであるといえる。

   このように、ID-POS分析はIDに視点を置いた分析であるがゆえに、これまでのPOS分析では見えなかった世界が見えるようになるので、これを通常のPOS分析に加えてゆくことからはじめるのがID-POS分析のスタートといえよう。その時、まずは、先に上げたように、商品間の関係とロイヤルカスタマーの分析から加えてゆくと、比較的無理なく、スームズに通常のPOS分析に融合することが可能となるので、この辺からはじめてみるのもひとつの方法であろう。

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July 06, 2010

ポイント見直し機運?

   7/4の日経新聞の一面のトップ記事にポイント関連の記事が掲載された。見出しは、「ポイント割引縮小」、「現金値引き志向に対応」、「収益改善も狙う」、「ヤマダ電機やヨーカ堂」である。記事の中には一覧表も掲げられており、小売業のポイント見直し企業として、ヤマダ電機、コジマ、上新電機、イトーヨーカ堂、ファーストリテイリングが掲載されている。いずれも、ポイントから現金への流れの見直しといえ、見出しにもあるように、現金値引き志向への対応としてのポイントの見直しが、その理由のようである。

   記事の中では、最後の方でIFRS(国際会計基準)への対応策としてのポイントの抑制についても触れているが、メインの扱いではない。ちなみに、IFRSとポイントとの関係であるが、以前、本ブログでも取り上げたことがあるが、「会計上では、売上、負債に影響が出る可能性があり、・・」とし、「国際基準ではどうなるかであるが、まず、P/L上では、ポイントは売上への計上に一本化されることになる。したがって、ポイント対象商品が売れた瞬間に、そのポイント相当分が売上から引かれることになり、実質、値引き処理と同等の会計が適用されることになる。・・」、また、「ポイントが使われようが、使われまいが、ポイント全額が負債に計上されることになる。・・」とのことで、B/S上では負債が増加し、自己資本比率が低下する可能性があるといえよう。

   記事の中では、このIFRSよりも現金化による客数アップ、利益改善の効果を解説していたが、いま見たように、IFRSの影響もけっして無視できないといえよう。実際、IFRS処理をしたヨーロッパの航空会社が、「エールフランスの2009年3月期決算であり、今期、約1,115億円の最終赤字になり、その原因がポイント計上をさかもどって適用した結果、売上高の4%にもあたる負債が増え、資本の部が大きく減少したという。そして、もうひとつは、カンタス航空であり、未使用時のマイレージの負債を売上の12%に当たる金額を計上した結果、純利益が7%減少したという。いずれも、国際会計基準に則って、厳格にポイント金額を適用したことによる経営へのダメージであるという。」

   こう見ると、やはり、この日経の記事では大きく誌面を割けなかったものとも思われるが、実際には小売業がIFRSへの対応を模索しはじめたのではないかとも思う。特に、記事の中でもヤマダ電機の対応がメインで紹介されていたが、航空会社のマイレージに近い小売業であるともいえ、IFRSが適用されるのが15年決算時であることを思うと、いまから、対応策を練る必要があるといえ、今回の記事のような動きが見られてもおかしくないといえよう。

   さて、記事の中身についても少し見てみたい。まず、ヤマダ電機の事例であるが、今春からほぼ全店でポイントをつけずに現金で値引きする販促策がはじまったという。ヤマダ電機の実際の数字であるが、2009年度はポイント発行額が2,000億円ぐらいであったというが、この発行額を2010年度は半減させるという。かわりに、現金値引き厚くするという。実際、現金値引きはポイント値引きよりも、利益率が低くてすむという。また、コジマであるが、コジマもまずは、ポイント発行額を2から3割減らす予定であるという。

   そして、もう1社、セブン&アイのイトーヨーカ堂の対応も紹介されているが、その内容は、まずは、ポイント引当金を縮小するとのことで、今期は、約131億円と、約2割削減したという。また、ポイント販促よりも、ポイントに頼らない販促を実施するとのことで、現金還元セールや不用品の下取りという方法を強化するとのことである。

   また、先にも言及した各社の一覧表であるが、ヤマダ電機、コジマ、イトーヨーカ堂以外では上新電機とファーストリテイリング(ユニクロ)の2者が紹介されているが、それを見ると、上新電機はポイントからちらし、店頭表示価格の下げであり、ファーストリテイリングはユニクロでのポイント利用を2007年夏で終了とのことであり、100%現金になるとのことである。

   こう見ると、ここへ来て、ポイントという間接的な値引き方法がデフレ環境が定着したことにより、消費者に響きづらくなったものと思われ、1ポイントよりも1円のキャッシュの還元の方が価値が高まったといえよう。さらに、2015年にはIFRS適用が見えはじめ、ポイントの収益に当たえる影響が計算できるようになった現在、早めに、体質改善を行い、ポイントから現金へという流れが鮮明になってきたものと思われる。

   このようにポイントは現在のデフレの経営環境の中では、効果が期待しにくい販促策となりつつあるといえ、改めて、現金、キャッシュのパワーの再認識が急速に広まりはじめたといえよう。ただ、ポイントカードのもうひとつの企業側にとっての魅力は、会員化である。これにより、手厚いサービスを還元することができ、今回の動きと矛盾するとはいえず、今後は、ポイントカードそのものをやめてしまう方向と、ポイントカードから会員カードへと変化し、ポイントよりもキャッシュをダイレクトに、会員に手厚く還元する方向に分かれてくるようにも思える。今後、ポイントが特に、食品スーパーマーケットではどのように位置付けられるようになるのか、気になるところである。

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July 05, 2010

家計調査データ2010年5月期、食品、97.2%!

   家計調査データの最新、2010年5月度が6/29、総務省統計局から公表された。結果は、外食を抜いた食品の消費額は1世帯、1日当たり、2,039.97円(97.2%)となり、厳しい結果となった。本ブログでは家計調査データと食品スーパーマーケットのPOSデータ分析、特に、金額PI値との連動をはかるために、月間の消費額を1日当たりに修正している。また、消費額を消費世帯のみの消費額と、消費世帯の割合に分け消費額の伸びた要因、伸び悩んだ要因を掘り下げている。ちなみに、食品は2,039.97円(97.2%)であったが、全消費額は9,055.29円(98.3%)であり、やや数字は高いが、マイナスであり、厳しい結果であるといえよう。

   全体が昨対マイナスとなった要因を大分類で見てみると、マイナスとなったのは、食品2,039.97円(97.2%)、外食476.97円(98.3%)、住居553.58円(98.4%)、家具・家事用品274.06円(86.3%)、被服及び履物416.94円(96.1%)、保健医療376.39円(97.2%)、教育308.26円(80.4%)という状況であり、大部分の消費が下がっている。特に、家具・家事用品、教育が80%台であり、深刻である。ただ、教育は高校の授業料無料化がはじまったことにより、大きく下がっているといえる。

   一方、消費が上昇した大分類であるが、光熱・水道697.55円(104.2%)、交通・通信1,251.52円(110.0%)、教養娯楽1,086.06円(102.6%)、諸雑費700.94円(100.3%)である。特に、交通・通信が良く伸びているが、これは、自動車の購入が140%と大きく増加したためである。また、それに連動し、自動車維持費が良く伸びており、自動車関連の消費増が大きかったといえよう。

   では、食品の方はどのような状況であったかであるが、食品も大部分の項目が昨対を割っており、伸びたのはわずかな伸びであるが、野菜・海藻290.48円(100.2%)、調理食品255.48円(101.8%)であり、これ以外の項目はすべてダウンした。この内、野菜・海藻に関しては相場高による野菜の平均単価上昇がその要因といえ、実質、マイナスともいえよう。

   一方、マイナスの項目であるが、穀類212.77円(94.5%)、魚介類215.00円(97.7%)、肉類203.90円(94.3%)、乳卵類108.94円(99.1%)、果物82.55円(94.9%)、油脂・調味料106.87円(95.2%)、菓子類217.00円(96.8%)、飲料136.58円(95.9%)、酒類111.03円(93.7%)である。軒並み、95%前後となり、いかに、この5月度の消費が厳しい状況であったかがわかる。

   そこで、これらの項目の中で、気になる主な分類を見てみたい。まずは、バナナ14.94円(80.8%)、消費世帯のみ19.82円(82.8%)、消費世帯の割合75.3%(97.6%)である。昨年のバナナブームの反動もあり、今期は大きく落ち込んでおり、特に、消費世帯のみの消費額が落ちているのが特徴である。ついで、ウイスキー3.65円(97.4%)、消費世帯のみ100.14円(93.7%)、消費世帯の割合3.6%(104.0%)という結果である。これは、興味深い結果であるといえ、消費世帯は増えているが、消費世帯のみの消費額は下がっており、PI値か平均単価のダウンが考えられるが、恐らく、平均単価のダウンが消費に影響を与えているのではないかと思う。

   そして、これ以外の80%台の消費が深刻な主な項目であるが、食塩1.52円(78.3%)、8.81円(86.3%)、17.2%(90.8%)、ジャム3.35円(87.4%)、12.73円(88.4%)、26.4%(98.9%)、キャンデー6.29円(83.7%)、13.84円(84.4%)、45.5%(99.2%)、チョコレート7.52円(86.3%)、17.04円(89.0%)、44.1%(96.9%)、緑茶20.03円(86.3%)、72.66円(82.9%)、27.6%(104.0%)、ミネラルウォーター5.94円(89.8%)、25.43円(95.6%)、23.3%(93.8%)、そして、ビール 34.58円(88.8%、101.95円(93.4%)、33.9%(95.1%)という状況である。この中では、特に、ビールが深刻な状況であるといえ、消費世帯の消費も、消費世帯の割合も減少している。

   これに対して、消費が110%以上伸びた主な項目であるが、かに 2.23円(115.0%)、54.29円(107.1%)、4.1%(107.3%)、あさり4.77円(112.1%)、15.66円(103.8%)、30.5%(108.0%)、しじみ1.58円(132.4%)、14.40円(108.3%)、11.0%(122.3%)であり、なぜか、あさり、しじみの貝類が良く伸びている。特に、消費世帯が増えており、今後の動向に注目である。

   これ以外では、魚介のつくだ煮3.00円(129.2%)、22.62円(115.9%)、13.3%(111.4%)、みかん1.48円(127.8%)、22.38円(113.3%)、6.6%(112.8%)、オレンジ4.06円(118.9%)、18.38円(108.7%)、22.1%(109.3%)、いちご11.90円(111.5%)、26.69円(104.6%)、44.6%(106.6%)、カステラ2.90円(113.9%)、23.28円(114.2%)、12.5%(99.8%)、おにぎり・その他11.23円(115.2%)、23.65円(106.3%)、47.5%(108.4%)、紅茶2.35円(114.1%)、23.06円(113.7%)、10.2%(100.3%)、発泡酒・ビール風アルコール飲料24.26円(122.5%)、101.80円(97.7%)、23.8%(125.4%)という状況である。

   このように2010年5月度の家計調査データは食品2,039.97円(97.2%)、全体9,055.29円(98.3%)とともに下がっており、消費全体が低迷していることがわかる。消費者物価指数を見ても、デフレ傾向は鮮明であり、当面、デフレは継続しそうである。したがって、消費の上昇は期待しづらい状況にあるといえよう。食品スーパーマーケットとしては、この状況を前提に今後の経営戦略を検討してゆく必要があるといえよう。消費を喚起することは重要な政策であるが、デフレ、そして、消費が伸び悩む中でも、利益が取れる強い体質づくりが当面の優先的な経営課題といえよう。

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July 04, 2010

Chain Store Age、2010/07/01、PBとブランドを寄稿!

   Chain Store Age、2010年07/01号で、PBとブランドの関係についてのコラムを寄稿した。このコラムは、第2特集、人口動態マーチャンダイジングの「少人数世帯をねらえ!」の中の「少人数、有力メーカーの世帯対策」におけるポッカコーポレーションの事例のコーナーに掲載されたものである。テーマは、「ブランド併売が少人数世帯増加時代のMD戦略の決め手!」というタイトルであり、裏付けデータもID-POS分析の事例を活用した内容である。ちなみに、このChain Store Age、2010年07/01号の第1特集は「決算2010ランキング」であり、これはこれで読みごたえがあり、後日、改めて取り上げたい。また、現在、PI研でも独自に財務3表連環分析2010を集計しているが、集計でき次第、本ブログでも様々な角度から取り上げてゆく予定であるので、もう少しお待ちください。

   さて、コラムの内容であるが、ポイントはこの図表につきる。ここ最近、様々な食品スーパーマーケットでID-POS分析に携わる機会が増えており、実際、いろいろな商品を分析すると、これまで見えなかった世界が見えてくることが多い。今回の場合もそうであるが、このケースの場合は、重点商品が3つある。商品A、PB、そして、商品Bである。ID-POS分析ではじめに検討してみたい分析としては、いろいろあると思われるが、ある一定期間において、顧客IDの購入実態がどのようになっているかであろう。

   これを見ることによって、今回のケースの場合は3つの重点商品、すなわち、商品A、PB、商品Bの関係が明らかになる。特に、今回のケースは商品群にPBを導入しており、しかも、この期間では、PB=1,400人+2,500人+100人+50人=4,050人、商品A=1,400人+2,000人+50人+100人=3,550人、商品B=100人+50人+50人+500人=700人となり、PBが最大の顧客を獲得していることがわかる。

   そして、商品AとPBとの併売者は1,400人+100人=1,500人となり、かなりの人数が重なっている。この1,500人は同時購買もしていると思われるが、ここでは、それも含め、商品Aを購入した顧客がある期間内にPBを1回でも購入した経験の方が1,500人いたということである。実際のID-POS分析では、さらに、同時購入の人数をとったり、ここではIDであるが、レシートを数えたりし、ID-POS分析をより深く落としてゆくことになるが、ここでは、ごく単純な分析に留めている。

   ちなみに、ID関係のID-POS分析の指標がID客数PI値であり、レシート関係のID-POS分析の指標が単純な客数PI値である。また、この客数PI値はレシートの分析であるので、少し苦労するが、通常のPOS分析でも算出可能であり、海外、国内でもこれを併売分析としている場合もある。したがって、レシートの併売であれば通常のPOS分析で可能であるが、ここでは、純粋にIDのみに絞って、顧客の人数を算出しており、これは通常のPOSでは分析不可能であり、ID-POS分析特有の分析となる。

   また、この2つの関係はID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値となっており、この金額PI値をさらに分解すると、金額PI値=客数PI値×特定商品の金額PI値となり、IDの世界とは別の世界、レシート内の分析の中でぐるぐる回ることになる。したがって、今回の単純な図表であるが、これはIDの世界での話であり、ID-POS分析でなければできない顧客の本当のニーズに迫った分析である。

   話をもとにもどすと、結論としては、ブランド併売がこのケースの場合は実に重要な役割を担っており、PBは明らかに、商品Aとの連動が高く、商品Bとの連動は少ないといえよう。単純計算をすると、商品Aの商品Bへの連動率は、この期間内では、1,500人/3,550人=42.2%であり、PBの商品Aへの連動率は1,500人/4,050人=37.0%となり、商品AとPBは互いに強く引っ張られているといえよう。正確を期すには、リフト値、どちらがどちらを支えているかを算出するなど、様々な検算が必要であるが、単純に見るとこのような結果となる。

   同様に、商品Bと商品Aの関係であるが、150人/700人=21.4%であり、逆に商品Aから商品Bを見ると、150人/3,550人=4.2%となる。こう見ると、商品Aと商品Bとの連動は極めて薄いといえ、PBと商品Bもさほど高いとはいえない。商品Bは極めて独自性が強い商品であるといえ、PBの安さにさほど影響を受けず、独自の世界感をつくっているといえよう。コラムでも触れたが、商品をAとPBに絞り込めば、当然、商品Bの顧客を逃すことになり、品揃えが弱くなることになる。実は、今回は言及しなかったが、少量パックも商品Bのような場合が数多く見つかっており、今回のテーマ、小人数のマーチャンダイジングには、ブンランド併売と同様、少量パックも改めてID-POS分析をかけてみて欲しいところである。

   このように、このコラムでは、ID-POS分析を用いて、真の顧客の声はいかにあるかを検証してみたが、PB、商品A、商品Bの関係は実に複雑であり、品揃えの奥の深さを垣間見せてくれたように思う。ID-POS分析ではさらに、購入者の店舗貢献度、すなわち、ロイヤルカスター度に踏み込むことができるが、ID-POS分析を行うのであれば、これまでのPOS分析の延長ではなく、想像力を縦横無尽に働かせ顧客の真の声にもとづいたマーチャンダイジング分析を工夫して欲しいところだ。

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July 03, 2010

食品スーパーマーケット売上速報、2010年5月、98.0%!

   (社)日本セルフサービス協会から6/25、食品スーパーマーケットの売上速報が公表された。この売上速報はこの4月からはじまった食品スーパーマーケット業界団体3社、(社)日本セルフサービス協会、オール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会の統合集計であり、現時点で食品スーパーマーケットを網羅する統計データとしては最も精度が高く、かつ、規模も大きく、信頼できる統計データであるといえる。その結果であるが、5月度は総売上高7,553.42億円となり、前年同月比は98.0%となり、厳しい結果となった。

   集計対象となった食品スーパーマーケットの概要であるが、(社)日本セルフサービス協会455社、約8,000店舗、オール日本スーパーマーケット協会58社、1,125店舗、日本スーパーマーケット103社、7,604店舗であり、3団体合計では571社、約16,729店舗となり、年間売上高は14兆1,645億円となる。ただし、この5月度に回答した企業数は268社であるので、約半分弱となる。

   ちょうど、公表直前、6/20の(社) 日本セルフサービス協会のツイッターを見ると、「25日に統計調査の発表が控えております。もっと早くという意見もあるようですが、他の団体の統計と比べ企業数もケタ違いに多く、しかも企業規模が小さいという特性があり、なかなか難しいですね。実際に担当してみて、スーパーマーケットに売上高を報告していただく難しさを痛感しています。」とのことで、その苦労がしのばれる。ただ、これは食品スーパーマーケット業界にとっては極めて重要、貴重な統計データであるので、何とか頑張って欲しいところである。

   さて、統計データにもどると、総売上高は7,553.42億円、前年同月比は98.0%であったが、その内訳は青果987.59億円(構成比13.1%)、前年同月比100.4%、水産689.92億円(9.1%)、97.8%、畜産740.00億円(9.8%)、97.4%、惣菜654.41億円(8.7%)、100.1%、一般食品その他3,368.91億円(44.6%)、97.8%、非食品1,112.56億円(14.7%)、95.9%という結果である。この数字は新店も入れた全店ベースでの集計結果であり、まさに、現状の食品スーパーマーケットの実態を表しているといえよう。昨対を超えた部門は青果と惣菜であるが、青果は相場高の影響が大きいといえ、実質は厳しい状況であったといえよう。惣菜も伸びはわずかであり、この5月度、食品スーパーマーケットは厳しい状況であり、売上高が伸び悩んでいることが浮き彫りになったといえる。

   では、これを地域別に見てみると、北海道、東北エリア99.7%、関東エリア96.4%、東海、北陸エリア99.1%、関西エリア98.0%、中国、四国エリア98.5%、九州、沖縄エリア99.4%であり、全エリア昨対を下回っており、厳しい状況である。ちなみに、集計総店舗数であるが7,056店舗、総売場面積11,772 ,236平米(505.57坪)、店舗平均月商10,705万円であり、単純年商換算では、約13億円弱となる。

   以上がこの5月度の食品スーパーマーケット業界の売上速報であるが、この調査の正式名称は、「スーパーマーケット販売統計調査」であり、今後とも毎月同様の数字が月末に公表される予定である。また、この調査に加え、実は、もうひとつ大きな調査を実施している。「スーパーマーケット景況感調査」であり、これは三協会会員企業の中核店を対象に売上動向、収益率動向、客単価動向、地域経済情勢の4項目について、3ヶ月前と比較した現状、及び今後2~3ヶ月の見通しについて、「良い」から「悪い」までの判断を5段階で調査している。これを景況感指数(DI:Diffusion Index)として公表し、50以上なら景気の現状や見通しが改善したとみる企業が多く、50以下なら厳しい見方が多いという。

   そこで、この景況感調査についても、その概要を見てみたい。まず、売上DIであるが、「前月より1.6ポイント低下し、45.6となった。見通しDIは、0.4ポイント低下し、46.6であった。」とのことで、現状も今後も厳しい売上げといえよう。収益率DIであるが、「収益率に対する現状判断DIは、43.5となり、前月より1.0ポイント低下した。見通しDIは、1.1ポイント低下し、45.9であった。」とのことで、売上げよりもやや厳しい現状と見通しといえよう。次に、客単価DIであるが、「客単価に対する現状判断DIは、40.6となり、前月より1.8ポイント低下した。引き続き客単価の落ち込みが収益の圧迫要因となっている。見通しDIは、0.7ポイント低下し、43.1であった。」とのことで、客単価も厳しい現状と見通しである。そして、地域の景気DIであるが、「地域の景気に対する現状判断DIは、41.5となり、前月より0.6ポイントの増加(改善)となった。見通しDIは、0.8ポイント増加(改善)し、43.1であった。」とのことで、厳しいながらも、若干改善傾向が見られるようである。

   このように、2010年5月度の食品スーパーマーケット業界の売上速報は昨対98.0%となり、青果、惣菜は若干のプラス、その他はすべてマイナスという厳しい売上げであった。また、各地域の売上げもすべてマイナスという厳しい状況である。さらに、景況感も売上DI、収益率DI、客単価DI、地域の景気DI、すべての現状、見通しともに厳しい状況である。したがって、当面、食品スーパーマーケット業界は厳しい経営環境が続くものといえよう。次回、6月度は7月の後半に公表予定であるが、その動向が気になるところである。

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July 02, 2010

小売業売上高ランキング、日経MJ、ベスト100を見る!

   恒例の日経MJ、小売業売上高ランキング2010が6/30、公表された。結果は約500社の平均売上高が昨対-1.6%と、1967年のこの調査が開始されてからはじめて前年を下回り、改めてデフレ環境の中、小売業の売上高が厳しい状況が浮かび上がった。業態別で見ると、都市百貨店、地方百貨店ともに-8.7%、持ち株会社-4.8%、全国スーパー(GMS)-4.7%、生協-2.5%、地方スーパー-0.4%、地域スーパー-0.1%と、軒並みマイナスとなり、プラスとなったのは、コンビニエンスストア4.0%、専門店2.8%のみであった。

   この調査は日経MJが小売業を営む店舗を持つ企業および協同組合の1,528社が対象であり、調査票を郵送し、回収している。今回はこの内、762社(有効回収率49.86%)であったという。また、上場企業に関しては、日経新聞のNEEDS(データバンク)も活用しているという。したがって、ほぼ日本の主要小売業は網羅しており、現時点における小売業界の実情が明確に浮かぶ上がっているといえよう。

   その結果であるが、No.1は昨年同様セブン&アイ・ホールディングスであり、5兆1,112.97億円(-9.5%)であった。No.2も昨年同様イオンであり、5兆543.94億円(-3.4%)であり、この2社がともに5兆円を超え、断トツの売上高である。そして、No.3がこれも昨年同様ヤマダ電機であり、2兆161.40億円(7.7%)と、ほとんどの小売業が昨対を切る中、プラスとなった。参考にビックカメラであるが、No.13となり、昨年の11位から順位を落とし、売上高は5,891.77億円(-6.6%)と昨対を割った。池袋本店でのヤマダ電機との激しい競争が全体へ影響を与えたのではないかと思われる。

   家電業界はビックカメラは厳しい数字であったが、総じて好調であり、No.9のエディオン8,200.30億円(2.1%)、No.13のケーズホールディングス6,486.28億円(13.0%)と、エコポイントの追い風もあったと思うが、プラスとなった企業が半分近い。逆にマイナスとなったのは、先にあげたビックカメラに加え、No.11のヨドバシカメラ6,836.20億円(-2.5%)、No.19のコジマ4,382.55億円(-4.7%)であった。

   順位にもどると、No.4も昨年同様、三越伊勢丹ホールディングス1兆2,916.17億円(-9.5%)、No.5も昨年同様、ユニー1兆1,344.27億円(-4.7%)であり、ここまでが小売業界で1兆円の売上高を超えた企業である。また、単独では、イオンリテールが1兆8,503.01億円(-9.1%)、イトーヨーカ堂1兆3,878.31億円(-5.1億円)と、この2社が1兆円を超えている。

   また、気になる小売業としては、ファーストリテイリングが昨年の12位からNo.10に入り、6,850.43億円(16.8%)と急激な売上高の伸びである。また、No.15には昨年の22位から躍進、ドン・キホーテが入り、4,808.56億円(18.8%)と、急成長を遂げている。全体としてはベスト9までは変化がないが、10位以降変化があり、小売業界もこのデフレ環境で様々な影響が出始めているといえよう。

   さて、このような中で、食品スーパーマーケット業界であるが、No.14に昨年の15位からイズミが入り、4,921.40億円(-1.6%)となり、食品スーパーマーケット業界ではトップの売上高となった。これについで、No.17、食品スーパーマーケット業界では2位にライフコーポレーションが4,688.58億円(1.3%)で入り、この2社が小売業界ベスト20位以内に入った企業である。

   以下、食品スーパーマーケット業界3位以下、10位までを見てみたい。3位(No.24)は平和堂3,857.31億円(-6.4%)、4位(No.26)はイズミヤ3,685.91億円(-3.3%)、5位(単独のため順位なし)はヨークベニマル3,487.35億円(-0.0%)、6位(No.28)はバロー3,449.00億円(2.5%)、7位(No.31)はマルエツ3,369.38億円(-1.6%)、8位(No.32)はベイシア3,176.01億円(3.4%)、9位(No.34)はフジ3,026.86億円(-5.8%)、そして、10位(No.37)はオークワ2,895.23億円(4.7%)である。以上が、2010年度、食品スーパーマーケットの売上高ベスト10である。

   さらに、もう少し、食品スーパーマーケット業界の順位を追ってみたい。11位(No.42)アークス2,707.22億円(6.6%)、12位(No.45)コープこうべ2,505.00億円(-5.8%)、13位(No.46)コープさっぽろ2,441.92億円(2.3%)、14位(No.47)万代2,437.45億円(4.4%)、15位(No.48)サミット2,383.37億円(0.8%)、16位(No.52)いなげや2,236.62億円(-2.0%)、17位(No.53)カスミ2,169.01億円(4.1%)、18位(No.54)オーケー2,158.41億円(12.1%)、19位(No.57)ヤオコー2,064.96億円(-0.9%)、そして、20位(No.59)マルナカ2,049.62億円(4.2%)である。以上がベスト20位の食品スーパーマーケットであるが、奇しくも、ここまでが売上高2,000億円以上の食品スーパーマーケットである。

   このように、2010年度の小売業の売上高は厳しい数字となり、この調査がはじまって以来前年を割るという結果となった。食品スーパーマーケット業界も例外ではなく、ここに上げたベスト20位の内、昨対をクリアーしたのはライフコーポレーション、バロー、ベイシア、オークワ、アークス、コープさっぽろ、万代、サミット、カスミ、オーケー、マルナカの11社、約半分であり、9社が昨対割れという状況である。日経MJの1面では、「投資厳選、海外出店へカジ」、「市場開拓へ国境超え」との見出しで、今後、小売業も海外、特に中国等、アジア市場の開拓が成長戦略の鍵を握るとのことであるが、少子高齢化が急激に進む国内市場のみでは確かに成長は厳しいものとなろう。今後、食品スーパーマーケットはもちろん、小売業がどのように海外市場へ動いてゆくか、その動向に注目である。

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July 01, 2010

資産を持たない食品スーパーマーケットの決算を見る!

   食品スーパーマーケットの経営は、突き詰めれば、営業活動によりキャッシュを生み出し、そのキャッシュをもとに新規出店をいかに安定、継続的に行い、成長を果たしてゆくかにあるといえる。キャッシュが思うように生み出せなくなった時、成長は止まり、企業は衰退の方向に向かう。そのキャッシュがどのように生み出されているのかを見るのがP/Lであり、そのキャッシュをどのように新規出店に活用しているのかを見るのがCF、B/Sであるといえる。そこで、ここでは、新規出店に焦点を当て、成長著しい典型的な食品スーパーマーケット3社、トライアルカンパニー、大黒天物産、九九プラスがどのように新規出店を果たしているのかをB/S面から見てみたい。

   実はこの3社は、食品スーパーマーケット業界の中でも共通の出店戦略を採用している企業である。居抜き出店である。通常、食品スーパーマーケットの出店戦略は土地、建物、敷金保証金等を資産として持ち、1店舗約5億円の投資を行い、新規出店を行ってゆく。100店舗出店するには単純計算で500億円の投資が必要であり、同時に、同額の資産をもつことになる。マーチャンダイジング力、すなわち、キャッシュを生み出す力が強い企業は自己資金で新規出店ができるが、弱い企業、あるいは、出店を急ぐ企業はキャッシュを何らかの方法で調達し、負債に頼る新規出店となる場合が多く、結果、多額の負債をかかえ、新規出店がストップ、すなわち、成長がとまることになる。

   ところが、ここで取り上げる3社、トライアルカンパニー、大黒天物産、九九プラスは通常の食品スーパーマーケットとは全く違う経営戦略を採用している。居抜き出店、資産を極力もたない新規出店である。通常の食品スーパーマーケットが資産として持つ、土地、建物、敷金保証金等が極端に少なくなるため、マーチャンダイジングにより生み出されたキャッシュを新規出店に当てた場合、通常の食品スーパーマーケットよりも遥かに早いペースで新規出店を果たすことができる。

   どのくらい早いペースで出店ができるかであるが、先に見たように、一般的な食品スーパーマーケットの出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計は平均約5億円である。これに対して、トライアルカンパニーは約2億円、大黒天物産は1.5億円強、九九プラスにいたってはわずか0.2億円弱である。総資産に占める割合も約40%、通常の食品スーパーマーケットが約60%強であるので、いかに資産を持たずに新規出店ができるかがわかる。単純計算でいけば、トライアルカンパニーは、5億円÷2億円、2.5倍、大黒天物産は5億円÷1.5億円、3.3倍、九九プラスは5億円÷0.2億円、25.0倍の速さで、新規出店が可能ということになる。

   これが、この3社の急成長の秘訣であるといえる。したがって、キャッシュがマーチャンダイジング力によりしっかり生み出されることが大前提であるが、このエンジンが急速度で回転している限り、この3社は通常の食品スーパーマーケットを遥かにしのぐ速さで新規出店が可能となり、成長を果たしてゆくことができる。実際、トライアルカンパニーの3年前との売上高との比較を見ると139.39%であり、大黒天物産はまだ、最新決算が公表されていないので、2009年5月期で見ると、139.11%であり、九九プラスは108.77%である。九九プラスはローソンとの資本・業務提携に踏み込まざるをえなくなる経営の危機があり、一時的に成長が止まったが、いずれ、成長戦略に戻ることが予想される。ただ、九九プラスの最新の店舗数は989店舗であり、これまで、まさに、急成長を遂げてきたといえる。

   したがって、いずれも、資産を極力もたなかったが故に、キャッシュの大半を新規出店に当て、通常の食品スーパーマーケットの2.5倍、3.3倍、25.0倍の速度で新規出店を果たし、急成長してきたといえる。その意味で、特に、この3社は食品スーパーマーケット業界の中でも異色の経営戦略、資産を持たない出店戦略を採用し、急成長を遂げた典型的な食品スーパーマーケットであるといえる。

   ただ、急成長を遂げるには当然、既存の市場の中に割って入ることになり、軋轢、摩擦が生じる。その衝撃を打破する戦略が一方で必要となる。それが、ディスカウト戦略である。各社共通しているのは、強力なディスカウント戦略であり、トライアルカンパニー、大黒天物産はもちろん、九九プラスも通常食品スーパーマーケットの平均単価が200円弱であるので、100円という半値で商品を販売し、見方を変えればディスカウントストアであるともいえよう。

   このように食品スーパーマーケットの成長戦略は、通常は土地、建物、敷金保証金等へ約5.0億円の投資を行い、成長を遂げてゆくのに対し、ここに上げた3社、トライアルカンパニー、大黒天物産、九九プラスは資産を極力もたず、その分、2.5倍、3.3倍、25.0倍の店舗数をディスカウントを武器に出店し、急成長を遂げてきたといえる。今期の決算を見ると、この3社の好調さが光るが、このようなデフレ環境の時はまさに、時流にあった経営戦略であるといえよう。今後、この3社がさらに出店ペースを速めるか、その動向に注目である。

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