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July 24, 2010

日経MJ、7/23(金)を見る、渥美先生、死去!

   7/23(金)の日経MJには興味深い記事が数多く掲載された。その中でも、何といっても、目を引くのは渥美先生死去の記事であろう。見出しは、「スーパーの草創期に助言、渥美俊一氏死去」、「理論継承、専門店・外食へ」であり、7/21に多臓器不全のため死去したとの内容であり、83歳であったという。渥美先生の代名詞は何といってもチェーンストア理論であり、その普及団体としてのペガサスクラブの運営にあったといえよう。著書も数多く、晩年は商業界からチェーンストアエイジへと執筆の場を移し、つい最近まで連載記事を書かれており、まさに、生涯をチェーンストア理論の普及に尽くされたといえよう。

   もう20年以上も前になるが、大学を卒業し、船井総研に入社し、初めて触れた流通理論が、アンチチェーンストア理論ともいうべき、地域一番店を掲げる船井理論であったため、当時は渥美先生の唱えるチェーンストア理論を対極の理論として見ていた。ただ、対極であるがゆえに、逆に、渥美先生の著書、業界誌等の記事をかなり深く勉強し、私なりに渥美先生の唱えるチェーンストア理論を独学で研究した。特に、私の専門は入社した当時から食品スーパーマーケットであったため、食品スーパーマーケットはまさにチェーンストアそのものであり、渥美先生の理論を学ぶ、学ばないにかかわらず、チェーンストアと真正面から向き合わざるをえなかった。

   渥美先生のチェーンストア理論はどちらかというと、IE(Industry Engineering)的な要素が強く、テーラーの科学的管理法がベースにあるといえる。日本で独自にチェーンストアをつくってゆくよりは、まずは、アメリカで長い時間と試行錯誤の中で確立されたチェーンストアの仕組みを謙虚に学び、その成果をしっかり取り入れることを重視していたといえよう。また、マーチャンダイジングも食品よりも、衣料、住関連が主であったといえ、しかも、POS分析等はあまり重視していなかったといえる。当時、私は、POSが普及する初期の頃から、食品スーパーマーケットのPOS分析に独自に取り組んでいたので、渥美先生のPOS関連の論文があれば参考にしたいと思い、見つけてみたが、とうとう見つからなかった。

   POS分析に関しては船井理論でもあまり重視しておらず、船井総研自体もPOS分析には関心が薄く、当時はその指針を見つけることができず、実に苦労した。しかたがないので、POS分析に関しては、独自に開発せざるをえなくなり、その結果、生まれたのがPI値理論であり、その根幹となるMD方程式である。ただ、PI値を研究するようになって、逆に渥美先生の唱えるチェーンストア理論がよくわかるようになった。当時は、数店舗のPI値分析をしていたが、その後、数十店舗の分析となり、最近では百店舗以上の食品スーパーマーケットのPOS分析にも携わるようになり、まさに、チェーンストアをPI値で見ることができるようになった。

   また、商品数も、当初はせいぜい数百件ぐらいの分析であったが、その後、数千件になり、ここ最近では数万件のデータを分析するようになり、こと食品スーパーマーケットが現在取り扱っている商品に関しては、ほぼ全品、まさに単品レベルでPI値分析ができるようになり、チェーンストアをPOS分析という観点から見れるようになった。さらに、直近ではID-POS分析まで研究が進んで来ているので、より、顧客の視点にたったチェーンストアの実態が見えるようになり、渥美先生の提唱されたチェーンストア理論の実態が全く別の角度から、垣間見れるようになり、チェーンストアエイジの渥美先生の記事が、ここ最近は楽しみであった。

   残念ながら、渥美先生の提唱されたチェーンストア理論はこれで終わることになるが、日経MJでも、矢作教授の言葉として解説しているように、「流通革命世代の企業を生み出し、大きな成果を上げた」ことは確かであり、一方で、「チェーンストアづくりは未完」であることも事実であろう。ただ、記事の結論として、「渥美理論は今、ニトリ、西松屋チェーン、サイゼリヤなどで開花。流通革命は次世代に確実に引き継がれている。」と結んでいるが、これもまた事実といえよう。

   今後、渥美先生に変わる、あるいは、超える指導者が流通業界に現れるかどうかはわからないが、こと、食品スーパーマーケットで見る限り、渥美理論をそのまま当てはめるには、無理があるといえる。もっと、日本独特の生鮮食品の流通の仕組みを研究する必要があるし、一方で、商業界が唱えた「店は客のためにある」、すなわち商売の原点をもっと追求する必要もあろう。さらには、IT(Information technology )、特にPOS分析をもっと深く研究し、その成果をマーチャンダイジングに取り入れる必要もあろう。

   日本の食品スーパーマーケットはその意味でまだまだ未完成であるといえ、渥美先生の50年以上に渡る研究成果を活かしつつ、さらに、日本の生鮮流通の仕組みを変革し、日本の商いの原点、客志向を取り入れ、さらに、ITを駆使する、これが日本の食品スーパーマーケットの目指すべき方向であるといえよう。その意味で、渥美先生の死は、日本の食品スーパーマーケットにとっては、次の展開に進むきっかけ、スタートとすべきであろう。

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