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July 17, 2010

食品スーパーマーケット、第1四半期決算、速報!

   食品スーパーマーケットの2011年度、第1四半期決算の公表がピークを迎え、2月期決算がほぼ終了し、今後、3月期決算の公表へと移ってゆく。その結果を見ると、厳しい決算結果が多く、全体としては、ここへ来て、一段とデフレ環境が厳しくなり、売上高、利益ともに伸び悩み、減収減益となる食品スーパーマーケットが多いのが特徴といえよう。7/16の日経MJでも、「食品スーパー、業績悪化止まらず」、「主要9社3~5月、客単価・客数落ち込む」という見出しのもとに、主要9社の売上高、営業利益の状況を掲載している。実際、この数字を見ると、増収増益は9社中2社であり、見出しの通り、業績の悪化が鮮明である。食品スーパーマーケットにとっては、厳しい夏となりそうである。

   そこで、ここでは、この主要9社に加え、独自に集計した食品スーパーマーケットの決算結果をもとに、この第1四半期決算の動向を概観してみたい。まずは、日経MJの記事の中身であるが、公表された食品スーパーマーケットは、ライフコーポレーション(売上高-1.5%、営業利益-24.2%)、ヨークベニマル(-2.0%、-37.3%)、マルエツ(-6.0%、-2.6%)、オークワ(-3.4%、-31.5%)、アークス(17.8%、9.1%)、カスミ(-0.7%、50.2%)、エコス(-5.9%、-38.5%)、ベルク(2.8%、57.5%)、東武ストア(-3.1%、-40.1%)である。

   これを見ると、増収増益は先にあげたアークス、ベルクのみであり、減収減益はライフコーポレーション、ヨークベニマル、マルエツ、オークワ、エコス、東武ストアの6社と大半であり、カスミも減収増益と厳しい決算である。日経MJの記事を読むと、減益の理由は、「既存店売上高の大幅な減少、・・」とのことで、ヨークベニマルの既存店-6.7%、マルエツ-6.1%、オークワ-5.9%と、既存店のダウンが利益に響いているとのことである。一般に、既存店の売上高がダウンすると、人件費、設備関連費用等の固定費が相対的に上昇し、利益を圧迫することになる。食品スーパーマーケットにとって、この2つの固定費は経費の中のかなりの比率を占めるために、既存店のダウンは経営そのものを直撃することになる。

   したがって、食品スーパーマーケットの経営にとって最も重要な経営課題は、絶えず、マーチャンダイジングの改善を行い、既存店の活性化につなげ、既存店のダウンをくい止めることであり、このメインテナンスを怠ると、既存店の数字はズルズルと落ち込み、利益を圧迫することになる。ちなみに、既存店の活性化のポイントは商品力を高め、客単価(金額PI値)を引き上げることに加え、小まめな店舗改装により、客動線を絶えず見直し、お客さまの流れをスムースにすることである。

   日経MJの記事では、業績悪化の内容に加え、明るい兆しについても言及している。先に上げたように、増収増益となったアークスとベルクについては、「両社とも低価格戦略の徹底とローコスト運営の両立が奏功した。・・」とのことで、増収増益を達成したという。また、ライフに関しては、この第1四半期決算3月から5月までは減収減益となったが、「6月はライフの既存店売上高が12ケ月ぶりに前年を上回るなど明るい兆しもある。・・」とのことである。特に、「1品単価が下げ止まり買い上げ点数や客数が戻ってきた」との岩崎社長のコメントもあり、少し、6月に入って変化が見られるとのことである。

   では、この日経MJが取り上げた9社以外の動向はどうかを見てみたい。サンエー(売上高2.3%、営業利益-3.2%)、ダイエー(営業収益-7.7%、営業利益11.04億円(昨年は0.03億円))、アオキスーパー(営業収益-5.5%、営業利益-63.8%)、マックスバリュ中部(営業収益-1.1%、営業利益388.3%)、・・という状況であり、いずれも厳しい状況である。こう見ると、この第1四半期決算においては、増収増益の食品スーパーマーケットは稀な状況といえ、アークスとベルクの好調さが光っているといえよう。

   たまたま、7/15には日本銀行政策委員会室から当面の金融運営についてと題するレポートが公表されたが、これを見ると、実質GDPの2010年度の大勢見通しは+2.5%から+2.7%、国内企業物価指数+1.2%から+1.3%、消費者物価指数(除く生鮮食品)は-0.5%から-0.2%である。これは日銀総裁白川委員を含む、9名の政策委員の見通しである。食品スーパーマーケットにとっては消費者物価指数が気になるところであるが、2010年度はマイナス予想であり、当面厳しい経営環境が続くものといえよう。ちなみに、2011年度の消費者物価指数の予想は0.0%から+0.2%であり、やや回復する兆しの予想である。

   このように、食品スーパーマーケットの経営環境は当面厳しい局面が続き、実際、これまで見たように、大半の食品スーパーマーケットの第1四半期決算が減収減益という結果であり、特に、営業利益が厳しい状況といえる。食品スーパーマーケット業界にとっては、景気の回復は当面見込むことはできず、デフレ局面が続くという前提での経営戦略を立てる必要があるといえよう。今後、中間、そして、後半戦へ向けて、再度、経営戦略の方向性を確認する必要があろう。

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