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July 06, 2010

ポイント見直し機運?

   7/4の日経新聞の一面のトップ記事にポイント関連の記事が掲載された。見出しは、「ポイント割引縮小」、「現金値引き志向に対応」、「収益改善も狙う」、「ヤマダ電機やヨーカ堂」である。記事の中には一覧表も掲げられており、小売業のポイント見直し企業として、ヤマダ電機、コジマ、上新電機、イトーヨーカ堂、ファーストリテイリングが掲載されている。いずれも、ポイントから現金への流れの見直しといえ、見出しにもあるように、現金値引き志向への対応としてのポイントの見直しが、その理由のようである。

   記事の中では、最後の方でIFRS(国際会計基準)への対応策としてのポイントの抑制についても触れているが、メインの扱いではない。ちなみに、IFRSとポイントとの関係であるが、以前、本ブログでも取り上げたことがあるが、「会計上では、売上、負債に影響が出る可能性があり、・・」とし、「国際基準ではどうなるかであるが、まず、P/L上では、ポイントは売上への計上に一本化されることになる。したがって、ポイント対象商品が売れた瞬間に、そのポイント相当分が売上から引かれることになり、実質、値引き処理と同等の会計が適用されることになる。・・」、また、「ポイントが使われようが、使われまいが、ポイント全額が負債に計上されることになる。・・」とのことで、B/S上では負債が増加し、自己資本比率が低下する可能性があるといえよう。

   記事の中では、このIFRSよりも現金化による客数アップ、利益改善の効果を解説していたが、いま見たように、IFRSの影響もけっして無視できないといえよう。実際、IFRS処理をしたヨーロッパの航空会社が、「エールフランスの2009年3月期決算であり、今期、約1,115億円の最終赤字になり、その原因がポイント計上をさかもどって適用した結果、売上高の4%にもあたる負債が増え、資本の部が大きく減少したという。そして、もうひとつは、カンタス航空であり、未使用時のマイレージの負債を売上の12%に当たる金額を計上した結果、純利益が7%減少したという。いずれも、国際会計基準に則って、厳格にポイント金額を適用したことによる経営へのダメージであるという。」

   こう見ると、やはり、この日経の記事では大きく誌面を割けなかったものとも思われるが、実際には小売業がIFRSへの対応を模索しはじめたのではないかとも思う。特に、記事の中でもヤマダ電機の対応がメインで紹介されていたが、航空会社のマイレージに近い小売業であるともいえ、IFRSが適用されるのが15年決算時であることを思うと、いまから、対応策を練る必要があるといえ、今回の記事のような動きが見られてもおかしくないといえよう。

   さて、記事の中身についても少し見てみたい。まず、ヤマダ電機の事例であるが、今春からほぼ全店でポイントをつけずに現金で値引きする販促策がはじまったという。ヤマダ電機の実際の数字であるが、2009年度はポイント発行額が2,000億円ぐらいであったというが、この発行額を2010年度は半減させるという。かわりに、現金値引き厚くするという。実際、現金値引きはポイント値引きよりも、利益率が低くてすむという。また、コジマであるが、コジマもまずは、ポイント発行額を2から3割減らす予定であるという。

   そして、もう1社、セブン&アイのイトーヨーカ堂の対応も紹介されているが、その内容は、まずは、ポイント引当金を縮小するとのことで、今期は、約131億円と、約2割削減したという。また、ポイント販促よりも、ポイントに頼らない販促を実施するとのことで、現金還元セールや不用品の下取りという方法を強化するとのことである。

   また、先にも言及した各社の一覧表であるが、ヤマダ電機、コジマ、イトーヨーカ堂以外では上新電機とファーストリテイリング(ユニクロ)の2者が紹介されているが、それを見ると、上新電機はポイントからちらし、店頭表示価格の下げであり、ファーストリテイリングはユニクロでのポイント利用を2007年夏で終了とのことであり、100%現金になるとのことである。

   こう見ると、ここへ来て、ポイントという間接的な値引き方法がデフレ環境が定着したことにより、消費者に響きづらくなったものと思われ、1ポイントよりも1円のキャッシュの還元の方が価値が高まったといえよう。さらに、2015年にはIFRS適用が見えはじめ、ポイントの収益に当たえる影響が計算できるようになった現在、早めに、体質改善を行い、ポイントから現金へという流れが鮮明になってきたものと思われる。

   このようにポイントは現在のデフレの経営環境の中では、効果が期待しにくい販促策となりつつあるといえ、改めて、現金、キャッシュのパワーの再認識が急速に広まりはじめたといえよう。ただ、ポイントカードのもうひとつの企業側にとっての魅力は、会員化である。これにより、手厚いサービスを還元することができ、今回の動きと矛盾するとはいえず、今後は、ポイントカードそのものをやめてしまう方向と、ポイントカードから会員カードへと変化し、ポイントよりもキャッシュをダイレクトに、会員に手厚く還元する方向に分かれてくるようにも思える。今後、ポイントが特に、食品スーパーマーケットではどのように位置付けられるようになるのか、気になるところである。

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