鮮魚専門店、2010年度、決算結果を見る!
食品スーパーマーケットの上場企業は約50社であるが、生鮮食品、青果、鮮魚、精肉の上場企業はまだ少なく数社である。そこで、その数少ない数社であるが、ここでは、鮮魚専門店について、決算公開企業4社、魚喜(東証2部)、魚力(東証2部)、そして、角上魚類(非上場)、中島水産(非上場)の最新の決算結果を見てみたい。特に鮮魚専門店各社の経営状況の違いについて、比較してみたい。
まず、4社の売上高であるが、いずれも、2010年度の本決算である。魚喜は153.34億円(-6.2%)であり、やや厳しい数字である。内訳は鮮魚事業が138.79億円(-6.4%)、飲食関連事業の売上高が14.54億円(-4.3%)という結果であり、鮮魚事業が90.5%の構成比である。次に、魚力であるが、248.85億円(-2.0%)と魚喜よりも約100億円高いが、昨対はやや伸び悩んでいる。内訳は小売事業が、202.14億円(0.0%)と約81.2%を占め、大半をしめており、ついで、飲食事業が11.15億円(-3.2%)、そして、注目のアメリカのホールフーズマーケット等への販売を含む卸売事業が35.55億円(-12.0%)となった。
また、非上場であるが、決算を公開している角上魚類であるが、売上高は201.41億円(2.5%)と堅調な伸びとなった。また、はじめて、200億円を突破した。角上魚類は現在19店舗であるので、1店舗当たり10億円を超え、驚異的な販売力である。次に、中島水産であるが、売上高は385.22億円(-6.2%)と厳しい結果となった。ただ、店舗数は現在、関東地区 42店、中部地区 6店、近畿地区11店、中国・四国地区 4店と計63店舗をほぼ全国に展開しており、1店舗当たり約6億円である。ちなみに、現在、上場はしていないが、鮮魚専門店としては、この4社を超える売上高、約500億円の鮮魚専門店がある。北辰である。約70店舗をほぼ全国に展開しており、1店舗当たり約7億円となる。
以上が主要、鮮魚専門店の売上高であり、いずれも、1店舗当たり極めて高い数字を上げており、驚異的な数字である。特に、角上魚類は1店舗当たり10億円を超える数字であり、通常の食品スーパーマーケットが1店舗10億円前後のところも多いのが実態であり、極めて高い売上高、販売力といえよう。ちなみに、10億円の食品スーパーマーケットで鮮魚の売上高は約10%前後であるので、1億円前後となる。したがって、このクラスの食品スーパーマーケット10店舗分の鮮魚を売り上げることになり、いかに、鮮魚1店舗当たり10億円が大きな数字であるかがわかる。
次に、この4社の原価と経費、そして、営業利益を見てみたい。ただし、角上魚類は利益関連は経常利益、当期純利益のみの公開である。まずは、魚喜であるが、原価57.66%(売上総利益42.34%)、経費42.26%、結果、営業利益0.08%である。魚力は原価58.43%(売上総利益41.57%)、経費38.17%、結果、営業利益3.40%である。ついで、中島水産であるが、原価68.89%(売上総利益31.11%)、経費29.77%、結果、営業利益1.34%である。そして、角上魚類であるが、経常利益4.08%、当期純利益2.21%である。
こう見ると魚喜と魚力については、粗利構造は良く似ているが、中島水産は原価が高めであり、意外に粗利が低いといえよう。ただ、その分、経費も低いといえ、魚喜、魚力と比べ、原価、経費構造、すなわち、P/L構造がかなり違うといえる。ちなみに、魚喜、魚力の経費の中の家賃関連であるが、魚喜9.14%、魚力7.78%という数字であり、百貨店、GMS、食品スーパーマーケット等へのインショップ展開が多いこともあり、いかに家賃負担が重いかがわかる。逆にいえば、それだけ、原価を下げることが必要といえ、それにより、重い家賃負担を相殺する必要があるといえよう。それにしても、角上魚類の経常利益は高い数字であり、4社の中では1店舗当たりの売上高も含め、抜群の安定間があるといえよう。
一方、財務面であるが、純資産比率(自己資本比率)を見てみたい。まずは、魚喜であるが、16.99%であり、厳しい状況といえる。特に、有利子負債が12.29億円と総資産34.65億円の35.46%と重くのしかかっており、買掛金も9.50億円と総資産の27.41%と大きな比重を占めている。魚力であるが、魚喜とは対照的に、81.84%と極めて高い数字である。総資産も155.07億円と魚喜の約4倍強であり、しかも、無借金経営である。ただ気になるのは資産に投資有価証券58.83億円、現金21.26億円、売掛金13.79億円と巨額な金額に上っていることである。ついで、中島水産75.04%と極めて高く、魚力同様無借金経営である。そして、角上魚類であるが、66.8%と、高い数字である。
このように鮮魚専門店4社の決算を比較可能な数値をもとに見てみたが、角上魚類の数字が4社の中では最もバランスのとれた数字であるといえよう。売上高201.41億円(1店舗当たり10.60億円)、経常利益8.22億円(4.08%)、自己資本比率66.8%という結果である。ついで、魚力であり、売上高248.85億円(1店舗当たり約6億円)、営業利益3.40%、純資産比率81.84%と抜群の数字である。そして、中島水産、魚喜と続き、両企業ともやや厳しい数字である。2010年度は生鮮食品の中でも特に鮮魚は厳しい経営環境にあったといえ、その傾向は、今期も続いており、今後、ますます、経営の格差が開くものと思われる。このような中、各社がどのような経営戦略を打ち出すか注目である。
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