消費者物価指数(CPI)、2010年6月度、デフレ継続!
総務省統計局から7/30、2010年6月度の消費者物価指数(CPI)が公表された。結果は、いずれの段階でも、前年同月比がマイナスとなり、依然としてデフレ傾向が鮮明である。消費者物価指数は生鮮食品、資源エネルギーなどの急激な変動要因を考慮し、3つの段階で数値が取られている。その3つの結果であるが、(1)総合指数は平成17年を100として99.7となり、前月と同水準。前年同月比は0.7%の下落となった。(2)生鮮食品を除く総合指数は99.3となり、前月と同水準。前年同月比は1.0%の下落となった。(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.2となり、前月比は0.1%の下落。前年同月比は1.5%の下落となった。
これを同時に公表されたグラフで見ると、その傾向はさらに鮮明である。消費者物価指数は、ここ数年、約2年周期ぐらいで上昇、下落を繰り返していた。昨年、2009年9月前後がちょうど下に凸のマイナスのピークであり、その後、マイナス幅が縮まり、プラスに徐々に近づく傾向を示していた。特に、2010年1月までは、きれいなsinカーブで動いていたが、それが、2月以降、ピタリと止まり、マイナスのまま動かなくなり、4月以降は逆に動きはじめ、消費者物価が反転、マイナスの幅を広げ始めるという異例の流れとなった。
実は、この4月からは高校授業料の無償化が実施されており、消費者物価指数の中では、「公立高校授業料」及び「私立高校授業料」の2品目がその影響を受けることになる。どのくらいの影響を受けるかであるが、生鮮食品を除く総合指数においては、-0.54であり、したがって、-0.50前後は、4月以降、消費者物価をマイナスに押し下げており、この影響も大きいといえる。ただ、これを加味しても、依然として、マイナスであることには変わりなく、この6月度も消費者物価指数はマイナスであり、消費環境は厳しい状況にあるといえよう。
では、この高校授業料無償化以外で、この6月に消費者物価指数を押し下げた要因を寄与度で見てみたい。10大費目で見た場合、寄与度がプラスになったのは交通・通信0.19のみであり、残り、9大費目がすべて、0かマイナスとなった。10大費目の内、食品は、生鮮食品が0.30のプラス、生鮮食品を除く食料が-0.30のマイナスであり、明暗が分かれた。特に、先に言及した高校授業料を含む教育は-0.49と最もマイナス幅が大きい結果となった。それ以外では、家具・家事用品-0.16、教養娯楽-0.14、住居-0.08等である。
さらに、中分類で見てみると、前年同月比で上昇がみられたものは、他の光熱24.1、生鮮果物12.9、生鮮野菜9.8、自動車等関係費3.2、保健医療サービス0.7等である。一方、下げたのは、教養娯楽用耐久財-17.8、授業料等-17.4、家庭用耐久財-10.5、家事用消耗品-4.7、室内装備品-4.5等である。こう見ると、生鮮果物、生鮮野菜が消費者物価指数の上昇に大きく寄与しており、6月度は食品スーパーマーケットの農産部門が異常値であったといえよう。
そこで、食品スーパーマーケットの主要品目のこの6月度の動向を特に、生鮮果物、生鮮野菜を中心に見てみたい。まず、生鮮果物であるが、さくらんぼ25.6、メロン25.4、すいか12.4、ぶどうA9.2である。逆に、輸入フルーツは、グレープフルーツ-8.0、バナナ-4.2となり、明暗が分かれている。ついで、生鮮野菜であるが、ばれいしょ24.0、れんこん20.4、えだまめ19.9、きゅうり18.8、さといも 16.5、ピーマン15.1、レタス13.0、かんしょ10.9という状況であり、軒並み高騰となっている。逆に、消費者物価を下げた野菜は、もやし-4.5、生しいたけ-4.2、しめじ-2.9、ごぼう-2.3のみであり、いかに、この6月度は野菜が高騰したかがわかる。
これだけ食品の主力部門、農産部門の消費者物価指数が高騰したにもかかわらず、食品の物価が上昇しなかった要因は、これ以外が下がったということであるので、その下げた要因となった食品を見てみたい。まずは、大分類であるが、穀類-2.7、魚介類-1.5、肉類-1.9、乳卵類-1.4、菓子類-1.5、調理食品-2.0、飲料-1.8、酒類-1.5であり、軒並み消費者物価を下げており、生鮮果物、生鮮野菜とは対照的な動きである。
そこで、さらに、小分類で消費者物価を下げているものを見ると、食用油-11.6、スパゲッティ-9.1、小麦粉-6.3、かれい-6.0、いか-6.1、たこ-6.3、たらこ-8.8、丸干しいわし-7.0、ししゃも-5.6、ケチャップ -7.5、ビスケット-9.0、ポテトチップス-5.4、冷凍調理ピラフ-5.9、うなぎかば焼き-5.8、混ぜごはんのもと-6.6、ミネラルウォーター -7.6であり、以上が5ポイント以上消費者物価を下げている項目である。
このように、この2010年6月度の消費者物価は依然として全体としてはデフレ傾向が鮮明であるといえ、当面、厳しい消費環境が続くものと思われる。特に、高校授業料の無償化が-0.5程度、全体の消費者物価指数を押し下げており、このマイナス分は今後1年間続くと思われ、消費者物価がプラスに転じるのは当面難しいものといえよう。それにしても、このような中、生鮮果物、生鮮野菜は一転、高騰しており、食品スーパーマーケットとしては、デフレとインフレが混在する複雑なマーチャンダイジングを余儀なくされ、今後、どのような戦略で臨むか難しい局面に入ったといえよう。来月以降、消費者物価がどのように動くか注目である。
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