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August 28, 2010

イオン、GMS改革に本腰、ジャスコ、サティ合併!

   8/27の日経新聞1面に、「イオン、主力スーパー合併」の見出しで大きくイオンの記事が掲載された。サブ見出しは「「ジャスコ」、「サティ」、店名「イオン」に」、「年間500億円規模コスト削減、アジア展開を加速」というものである。いよいよ、GMS改革にイオンが本腰を入れて取り組むことになったといえ、今後の動向に注目である。

   記事の内容は、2011年2月期中に、イオンの中核企業、イオンリテール(254店舗)が「サティ」のマイカル(85店舗)、イオンマルシェ(6店舗:旧仮カルフール)を吸収合併し、店舗数345店舗、売上規模2兆5,000億円のチェーンとなり、店名も来春を目途に「イオン」に統一するとのことである。その狙いはサブ見出しにもあるようにひとつはコスト削減であり、3社の間接費を統合し、圧縮することにより、約500億円のコスト削減につながるという。そして、もうひとつは、成長性の高い海外、特に中国、東アジアへの出店を加速するための国内の体制整備にあるという。

   そこで、イオンリテールとサティについて、現状のマーチャンダイジング力、すなわち、原価、経費の関係を見てみたい。まず、イオンリテールであるが、2010年2月期決算の数字を見ると、売上高1兆7,025.72億円であり、原価は1兆2,571.00億円(73.83%)であり、結果、営業総収入は4,454.72億円(26.17%)となる。一方、経費の方であるが、5,729.72億円(33.65%)である。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1,275.00億円(-7.48%)である。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1,477.29億円(8.67%)のり、営業利益は202.28億円(1.19%)となる。これがイオンリテールの収益構造である。したがって、マーチャンダイジング力は大幅赤字であり、その他営業収益で営業利益をプラスにもっていっている構図である。特に、経費比率が売上対比33.65%と極端に高くなっている現状であり、ここを今回の経営統合により、どれだけ圧縮できるかが重要な鍵を握っているといえよう。

   一方、マイカルの方であるが、同じく、2010年2月期決算を見ると、売上高5,380.34億円であり、原価は3,930.43億円(73.05%)であり、結果、売上総利益は1,449.91億円(26.95%)となる。一方、経費の方であるが、1,892.30億円(35.17%)である、したがって、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-442.39億円(-8.22%)となり、イオンリテール以上に厳しい状況にある。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業利益が534.91億円(9.94%)のり、結果、営業利益は92.51億円(1.72%)となる。マイカルもイオンリテール同様、マーチャンダイジング力は大幅な赤字であり、これをその他営業収入でプラスにもっていっている構図である。しかも、経費比率はイオンリテールの33.65%に比べ、35.17%とさらに大きな経営負担となっており、この圧縮は急務の状況にあるといえよう。

   それにしても、GMSのこの現状を見ると、極めて利益が出にくい経営構造にあるといえ、単純な経費圧縮ではある程度は利益の改善につがるかもしれないが、構造的な経営改革が必要といえ、将来的には、GMSそのものの経営構造を根本から変える大胆な改革が必須といえよう。経営統合、経費の圧縮ではいかんとしがたい経営構造にあるといえる。ちなみに、今回の経営統合により、経費500億円圧縮ということであるが、この2社を単純に統合すると、売上高2兆2,406.06億円、原価1兆6,501.43億円(73.64%)となり、結果、売上総利益は5,904.63億円(26.36%)となる。一方、問題の経費であるが、7,622.02億円(34.01%)となる。したがって、ここから500億円の圧縮となると6.55%(売上対比2.23%)となり、現状の経費比率が34.01%から31.78%となる。粗利は26.36%であるので、依然として、マーチャンダイジング力は-5.42%のマイナスであり、GMSの厳しい経営構造が大きく変わるわけではない。

   話をもとに戻し、差し引き、マーチャンダイジング力を見ると-1,717.39億円(-7.65%)であり、これにその他営業収入が2,012.20億円(8.98%)のり、結果、営業利益は294.81億円(1.33%)となる。こう見ると、経費圧縮だけでは、GMSのかかえる根本的な問題が解決できないといえ、イオンとしては、さらに、経営構造を根本的にかえるか、GMSに代わる新たな新業態を構築する必要があろう。同じ日経新聞の11面の関連記事の中では好調な自転車店を統合後急速に店舗数を増やす土壌ができるとのことであるが、これは不動産収入等のその他営業収入にかかわる収益であり、GMSの構造改革には結びつかないといえる。

   このように、イオンが本格的にGMS改革に乗り出し、グループのGMSの経営統合をはかり、経費を圧縮し、収益性を引き上げ、国内の守りを固め、成長著しい中国、アジアへ経営資源をシフトする体制を整え始めたといえる。ただ、いま見たように、GMSの根本問題、マーチャンダイジング力の大幅なマイナスを改善するには、さらに踏み込んだ経営構造の改革が必須といえ、経営統合、経費圧縮の次の構造改革まで踏み込み、さらに、GMSにとってかわる新業態の開発が必須の状況といえよう。その意味で、イオンがグループのGMS統合後、どのようなGMS改革の戦略を打ち出すかに注目したい。

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