GMS、戦略転換へ、セブン&アイH、GMS路線転換へ
セブン&アイHのGMS戦略が岐路に立っているといえよう。昨年10月に公表された今後30店舗のGMS、イトーヨーカ堂の店舗閉鎖計画の内、前期決算において、5店舗が閉鎖され、今期も同様に5店舗から7店舗の閉鎖が予定されている。ただ、この店舗閉鎖と並行して食品特化型店舗を4店舗オープンしており、イトーヨーカ堂の前期決算時の店舗数は174店舗と前年度と比べ1店舗減であり、店舗数そのものは大きく減っていない。今後も同様に店舗数を大きく減らすことなく、閉店を大量に進めてゆくことになろう。
ちょうど、日経新聞、8/14の1面に、その裏付けともなる記事がトップで掲載された。セブン&アイHのホームページではまだ発表がないようであるが、記事の見出しは、「セブン&アイ、新型店展開」、「小型スーパー都市部に100店」であり、今後、大都市に小型食品スーパーマーケット、「イトーヨーカドー」を出店してゆくとのことである。したがって、GMSの30店舗の閉鎖を補い、将来的には逆転することもありうる話であり、GMSから食品スーパーマーケットへの戦略転換ともとれる動きである。
実は、このような業態転換はウォルマートが約10年かけて戦略転換を行った事例がある。小売業界ではけして珍しいことではない。ウォルマートは2005年が戦略転換点であり、それまでは、ディスカウントストアがスーパーセンターの店舗数を大きく上回っていた。ところがこの年、初めて、スーパーセンターがディスカントストアを上回り、その後は、スーパーセンターの勢いが増し、その差約3倍弱、いまや、ウォルマート=スーパーセンターといってもよいくらい主力業態となっている。この間ちょうど10年ぐらいであり、どんなに大きな小売業でも戦略が明確になれば、10年で業態転換が可能であることを実証した事例のひとつといえよう。
同様に、日本でも一時はGMSがスーパーセンターに置き換わるのではないかと思われた時期があり、特に、ウォルマートが西友を傘下に治めた時にはまさにその方向性が現実に動きだし、それが国内GMS、地方食品スーパーマーケットに大きな影響を与えた。ところが、本家の西友がスーパーセンター路線に挫折し、既存店の活性化、M&A戦略に転換したことにより、日本においてはスーパーセンターが席巻することはどうもなくなったといえよう。
したがって、GMSの業態転換は振り出しにもどったといえ、各社、GMSをどのように業態展開してゆくかについては依然として明確な方針が出せない状況にあるといえよう。このような中で、西友はウォルマートの完全子会社化になったことにより、ウォルマート本来のEDLP路線にもどり、ディスカウントを鮮明に打ち出し、既存店のレイアウトを全面改装し、その第1ステップを踏み出したといえるが、業態としての次世代への対応はこれからであるといえ、今後、どのような戦略を打ち出すか気になるところである。
さて、イトーヨカー堂のGMSであるが、現時点では、今後、数年間で30店舗の閉鎖が決まったが、これに代わる業態開発としては、ウォルマートがディスカウントストアからスーパーセンターへと一直線で進んだようにはいかないようで、現時点では、どうも3つの業態転換の戦略が同時並行で進んでゆくようである。ひとつは、先にあげた大都市を主体にした小型食品スーパーマーケットであり、これで、とりあえず、100店舗が置き換わることになる。ただ、金額ベースでは1/5ぐらいと想定されるので、GMSでは20店舗分ぐらいであろう。仮に、全部置き換えるには1,000店舗近い店舗数が必要となるため、日本の大都市すべてに拡大することが必要であり、20年ぐらいかかることになろう。
したがって、これ以外の構想も当然必要であり、それが、現在、11店舗展開しているディスカウト業態、ザ・プライスである。特に、11店舗目の昨年11月にオープンした「ザ・プライスせんげん台店」は、初の単独出店であり、これまでの10店舗のGMSからの業態転換ではない。したがって、ザ・プライスはGMSの業態展開だけでなく自らも新規出店してゆく戦略展開に入ったといえ、GMSを補完する業態といえよう。そして、もうひとつ、ザ・プライスと対極にあるアリオであり、この9/1にオープン予定の「アリオ深谷」は「イトーヨーカドー深谷店」のGMSからSCアリオへの業態転換第1号店舗となる。これにより、アリオがGMSの業態転換先となることも可能となり、ザ・プライスとは逆の動きを補完することになる。アリオも10店舗である。
このように、これでイトーヨーカ堂については、GMS約170店舗の改革の方向性がほぼ明確になったといえ、今後、赤字店舗を大胆に閉鎖してゆく一方、業態転換として、ディスカウント路線のザ・プライス、逆に高級路線のアリオ、そして、新規業態として、大都市中心の大量の食品スーパーマーケットと、3つの軸が出来上がったことにより、GMSの本格的な業態転換が起こってゆき、5年後、遅くとも10年後には全く中身の違うイトーヨーカ堂となっているのではないかと予想される。ちなみに、セブン&アイHの8/16の株価であるが、2,019円(-27円、-1.31%)であり、投資家の反応は鈍く、市場へのインパクトはあまりなかったといえる。
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