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August 2010

August 31, 2010

地図ソフトと電動自転車、商圏をじっくり走り回る!

   最近、地図ソフトをほぼマスターした。これまで、商圏分析をする時は、市販の地図を購入し、それに様々な情報を書き込み、分析していた。さらに深く分析する時は、ゼンリン住宅地図を購入し、それをコピーし、つなぎ合わせ、商圏の全体図を作成し、分析をしていた。地図を作製するだけで一苦労であり、それだけで優に数日はかかってしまう大仕事であった。過去、最高の切り貼りは、もう20年ぐらい昔になるが、船井総研時代に、ゼンリンの住宅地図を500枚以上貼り合わせたことがあるが、なつかしい思い出である。

   今回、たまたま地図ソフトを入手することができ、ここ数日、マニュアルと格闘し、じっくり読み込み、様々な地図をパソコン上で作成し、ほぼ使い方を覚えた。使えるようになると、実に便利であり、拡大、縮小はもちろん、白黒、カラーも可能であり、特に、カラーで出力すると、町丁目の境界線も分かり安く、便利である。また、人口、世帯数、男女別の情報をCSV形式で取り入れ、それを地図上に棒グラフで落とし込むこともできびっくりである。ただ、切り貼りが全くなくなったわけではなく、原則、A4で地図が出力されるため、縮尺を拡大すると、当然、A4、1枚では入らないため、それらをつなぎ合わせる必要がある。

   食品スーパーマーケットの商圏はほぼ半径1kmが1次商圏となるので、ちょうど、1kmの円を地図に書くと、縮尺200mの場合は、A4で9枚必要となる。したがって、この9枚を切り貼りしなければならないが、以前の作業に比べると全然楽であり、しかも、ほぼ、つなぎ目もくずれず、ぴったりくっつくために、便利である。ちなみに、円を書くのも当然、地図ソフトは簡単であり、Shiftキーを押して円を書けばきれいな円となる。これも、実際に大きな地図で円を書くにはコンパスでは足りず、以前は画鋲と糸で書いたものであり、今回、これひとつでも感動ものである。

   ちょうどA4、9枚を切り貼りすると新聞紙大の大きさとなり、これが縮尺200mだとちょうど中心から1kmがぴったり入る大きさであり、自店を真ん中にもってくれば、まさに、自店を中心にした商圏の鳥瞰図ができあがる。地図ソフトは、レイアヤー機能もあるので、様々な地図を作ることが可能である。たとえば、道路を強調した地図、境界線を強調した地図、鉄道を強調した地図、さらには、白紙の地図など、自由自在であり、すぐに印刷することももちろんできる。

   実際、今回、様々な地図を作製し、実際の自店の商圏に行く前に、この地図ソフトを駆使し、あらゆる角度から検討してみた。特に、商圏を見る時には、重要な分断条件、大きな道路、鉄道、一方通行など、事前に様々な地図を見ておくと、かなりのところまで、判断できるので、便利である。ちなみに、最近のソフトは3D機能もあるので、立体面からの検討も可能であり、これをみながら、パソコン上で地図を動かすと、住宅、ビルディングが浮かび上がり、しかも、境界線も明確になる。先に描いた半径1kmの円もビルとビルの間にあり、ここが、そこかと平面の地図ではわからないことがイメージでき、それなり便利である。


   ここまで、事前に地図ソフトで商圏状況を把握してしまえば、あとは現地での実際の商圏の確認となる。今回、ここでも発見したことがある。以前は商圏を把握するに、車か徒歩を中心に行っていた。今回、事前に様々な商圏地図を作製し、あらゆる角度から分析していたため、もっと密度の濃い分析がしたくなった。また、以前の調査は競合店を意識しすぎたきらいもあり、競合店調査に時間と労力を費やすことも多かった。今回は、競合店も重要であるが、もっと、商圏の全体像、自店を取り巻く商圏構造を肌で感じたいと思い、自転車で自由自在に商圏内を回りたいと思い、検討してみた。その結果、レンタル電動自転車があることがわかり、これを借り、商圏内をほぼくまなく回ってみた。

   その結果、地図ではわからないことが多々みつかり、事前に商圏地図でイメージしていたことがかなり修正され、まるで地図に命がふき込まれたように、商圏地図がより、リアルに見え、まさに、自店をとりまく、商圏構造の全体像が鮮明になった。ほぼ3、4時間ぐらい商圏内を電動自転車で回り、すべての競合店に立ち寄り、分断条件となる鉄道、道路、川なども確認でき、さらに、集落、一戸建て、アパート、工場、公共施設、外食等の場所も確認でき、これまでの商圏調査がいかに机上の空論であったかを実感した。

   地図ソフトとレンタル電動自転車、この組み合わせが今後の商圏調査の流れを変えるのではないかと思う。実は、今回、地図ソフトもそうであるが、電動自転車もはじめて乗ってみたが、中々の乗り心地であった。商圏内には起伏の激しいところもあり、通常の自転車では疲れ果ててしまうところも、電動自転車であれば、びっくりするくらいスイスイいける。まさに、商圏調査にはぴったりの道具である。それにしても、20年前にこの2つの武器があれば、いまごろは日本中の食品スーパーマーケットの商圏調査を終え、日本一の商圏調査マンになっていたのではないかと、なぜか、残念な気持ちにもなった1日でもあった。

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August 30, 2010

家計調査データ、2010年7月度、猛暑、どう影響!

   8/27、総務省統計局から2010年7月度の家計調査データが公表された。今年の7月度は異常な猛暑、その影響が注目される中での、家計の消費であるが、結果は、全体は9,202.39円(100.1%)、外食を除く食品は1,980.42円(99.5%)となり、特に、食品は若干のマイナスと、猛暑が消費を押し上げるという結果とはならなかった。本ブログでは、家計調査データを食品スーパーマーケットの金額PI値(客単価)と連動させるために、月間データを1日当たりに換算して算出している。これにより、ほぼ、食品スーパーマーケットのPOS分析で得られる金額PI値との比較が可能となり、食品スーパーマーケットのマーチャンダイジング改善に活かせるように工夫している。

   さて、まずは全体には影響が感じられなかった猛暑であるが、個々の、項目ではそれなりに影響が出ている。総務省統計局でも新たに、「猛暑により消費支出の増加に寄与したとみられる主な品目等」と題し、分析レポートを加えている。特に、食品では梅干し 119.4% (寄与度0.01)、ゼリー 119.8%(0.02)、アイスクリーム・シャーベット114.0%(0.05)、他の主食的調理食品(冷やし中華,うどんセットを含む)102.3%(0.01)、飲料 110.0 (0.15)、発泡酒・ビール風アルコール飲料及び他の酒 113.2%(0.05)、外食の飲酒代 107.5 %(0.03)などであるという。確かに、アイスクリーム、発泡酒等は容易に想像がつくが、梅干しはやや意外といえ、特需といえよう。

   以上が食品及び外食であるが、その他の主な項目としては、電気代104.0%(寄与度0.11)、エアコンディショナー 152.2%(0.32)、他の冷暖房用器具(扇風機,除湿機を含む) 166.8%(0.05)、布団 139.0%(0.02)、敷布133.0%(0.01)が家電関係である。やはり、エアコン、扇風機は異常な伸びであり、布団、敷布はやや意外といえよう。さらに、帽子120.3%(0.01)、傘(日傘を含む)132.9%(0.01)、他の化粧品(制汗剤を含む)109.6%(0.05)、スポーツ用品(水着を含む)112.9 %(0.04)などが、猛暑で良く伸びた項目であるという。

   そこで、さらに、食品に関して、詳細を見てみたい。食品全体は先に見たように、1,980.42円(99.5%)と伸び悩んだが、まずは、大分類で見て、伸びた部門は、飲料158.55円(107.6%)、酒類132.58円(104.5%)、調理食品284.97円(102.2)、菓子類206.77円(100.0%)の4部門であり、生鮮食品は全滅である。ただ、中分類でいけば、生鮮野菜のみ166.84円(102.6%)と、猛暑の影響というよりも、相場高の影響で伸びたといえよう。したがって、大分類では、以上、4部門が猛暑の影響といえそうである。

   では、何が伸びたのが、その中身を見てみたい。紅茶2.00円(144.2%、消費世帯のみ125.7%、消費世帯の割合114.7%)、炭酸飲料13.61円(117.9%、106.5%、110.7%)、果実・野菜ジュース33.13円(112.9%、109.9%、102.7%)、乳酸菌飲料11.10円(111.3%、106.8%、104.2%)、乳飲料3.68円(110.7%、101.0%、109.6%)が110%伸びた項目である。なぜか、紅茶が大人気であり、特に、消費世帯のみの消費が大きく伸びている。逆に、飲料で伸び悩んだものは、ココア・ココア飲料0.48円(78.9%、92.3%、85.6%)、コーヒー11.03円(95.5%、102.5%、93.2%)であり、ココア、コーヒーが厳しい状況であり、飲料の中でも明暗が分かれたといえよう。

   酒類では、何といっても、発泡酒・ビール風アルコール飲料28.19円(154.1%、104.5%、147.6%)であり、消費世帯の割合が大きく増加しており、新規の消費者を獲得したといえよう。ついで、ウイスキー3.65円(113.0%、87.9%、128.6%)、清酒13.77円(111.2%、105.1%、105.8%)、ワイン4.87円(109.4%、104.4%、104.8%)も良く伸びている。調理食品では、うなぎのかば焼きが良く伸びており、33.97円(116.9%、105.6%、110.6%)という状況であり、その他は微増である。そして、菓子類であるが、なぜか、カステラの伸びが高く、2.06円(120.8%、112.4%、107.4%)であり、ついで、ゼリー11.87円(117.6%、103.0%、114.2%)、そして、本命のアイスクリーム・シャーベット39.06円(113.0%、107.5%、105.1%)となる。ちなみに、さすがに、チョコレートは4.81円(80.5%、85.2%、94.6%)と厳しい状況であった。

   では、逆に、この7月度の消費が特に厳しかった部門であるが、魚介類197.77円(94.0%)と穀類216.39円(95.6%)であり、この2部門が95%前後と厳しい状況であった。その主な項目であるが、魚介類では、何といっても相場高のさんまであり、1.29円(53.3%、80.5%、66.2%)と極めて深刻な状況である。ついで、さば2.32円(78.3%、99.9%、78.3%)、えび7.35円(80.9%、89.7%、90.1%)等が厳しい消費であった。穀類では、スパゲッティ3.13円(88.2%、92.0%、95.8%)、米70.42円(93.9%、96.2%、97.6%)、カップめん7.16円(94.5%、95.4%、99.1%)等が厳しい状況であった。

   このように、この7月度は猛暑の影響が懸念された家計消費であったが、個々への影響は様々な項目であったといえるが、それが全体の消費へ与えたインパクトは意外に弱かったといえ、食品全体が1,980.42円(99.5%)、全消費も9,202.39円(100.1%)という結果であり、猛暑のプラス分が、恐らく、デフレのマイナス分と相殺されたものといえよう。したがって、デフレの影響もかなり強いといえ、この7月度はプラスの猛暑とマイナスのデフレが拮抗した状況にあったのではないかと思われる。次回、8月度も猛暑は継続しており、今後、猛暑がデフレを上回り、消費にプラスの影響を与えるのか注目といえよう。
  
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August 29, 2010

消費者物価指数(CPI)、2010年7月度、-0.9%!

   8/27、総務省統計局から2010年7月度の消費者物価指数(CPI)が公表された。消費者物価指数には総合指数が3つあり、ひとつは文字通り総合指数、2つ目は生鮮食品を除く総合指数、そして、3つ目は食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数である。生鮮食品の相場、資源、エネルギーなどの変動要因を考慮してのことである。その結果であるが、「(1) 総合指数は平成17 年を100 として99.2 となり,前月比は0.5%の下落。前年同月比は0.9%の下落となった。(2) 生鮮食品を除く総合指数は99.0となり,前月比は0.3%の下落。前年同月比は1.1%の下落となった。(3) 食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は96.9となり,前月比は0.3%の下落。前年同月比は1.5%の下落となった。」となった。いずれの段階でも下落となり、依然としてデフレ局面が続いているといえる。

   この結果をグラフで見ると明らかであり、総務省統計局の公表グラフは過去約3年間を2つのグラフで公表している。ひとつは平成17年度を100とした時の推移であり、もうひとつは、前年同月比の推移である。いずれも、3つの総合指数をグラフ化しており、前者は折れ線グラフ、後者は棒グラフで表している。これを見ると、総合指数のグラフは昨年1月度から約1年半連続ですべての指標が右下がりに下がっており、特に3つ目の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は深刻であり、3年連続、平成17年度を下回っておいる。

   一方、前年同月比の棒グラフであるが、昨年の1月以降、3つの指標すべてが昨対を割っており、本来、過去の傾向からすると、そろそろ回復基調に入っても良い段階であると思えるが、依然として、マイナスが続いている。特に、昨年の10月頃からマイナス幅は縮まり、プラスに向かっていたが、4月からまたマイナスの幅が広がった感があり、この7月になってもマイナスの横ばいが続き、プラスになる気配が遠のいたような推移となっている。

   特に、この4月からは、消費者物価指数に影響を与える高校授業料無償化の影響が反映されはじめているのもデフレに拍車をかけているといえる。ただ、高校授業料無償化の影響は、この7月度の寄与度で見ると公立高校授業料が-0.39、私立高校授業料-0.10であり、合計-0.49である。したがって、-0.9の約半分は説明できるが、それ以上に下がっている項目が多々あるということであり、デフレ基調は依然として強いといえよう。ちなみに、寄与度で見ると、プラス要因は生鮮食品0.18、ガソリン0.17、灯油0.10であり、マイナス要因は高校授業料の-0.49、生鮮食品を除く食料-0.33、その他-0.53であり、マイナス項目が強いといえ、明らかに、デフレ圧力が全体的にかかっているといえよう。

   さて、そこで、食品スーパーマーケットに関係の深い食品に関してであるが、同年前月比で見ると、食品全体は-0.5%となり、全体よりやや低い数字であるが、デフレ基調であるといえる。大分類に関しては、穀類-2.8%、魚介類-2.1%、肉類-1.3%、乳卵類-0.7%、野菜・海藻5.8%、果物2.7%、油脂・調味料-0.5%、菓子類-1.9%、調理食品-2.0%、飲料-2.0%、酒類-1.4%という状況である。野菜・海藻、果物だけが相場高の影響があったといえ、大きくプラスとなっているが、その他はすべて物価が下がっている状況である。この野菜・海藻、果物に関しては、先に公表された食品スーパーマーケット業界の数字とも合致し、7月度は青果の売上げが堅調であったが、それを裏付ける結果となったといえよう。

   そこで、その青果についての状況をみて見たい。キャベツ28.3%、かんしょ24.0%、ほうれんそう23.7%、にんじん23.5%、ピーマン22.4%、かぼちゃ20.8%、なす20.0%と、以上が20%以上高い項目である。ついで、5%以上の項目が、れんこん 19.9%、きゅうり17.8%、さやいんげん17.0%、ながいも14.1%、ばれいしょ13.8%、はくさい10.7%、ねぎ9.8%、だいこん9.8%、たまねぎ9.1%、レタス7.0%、えだまめ6.1%、トマト5.3%である。一方、果物であるが、ぶどうA20.3%、りんごB12.7%、すいか11.3%、もも8.2%、ぶどうB5.9%という状況であり、野菜、果物ともに、かなり高い相場であったことがわかる。

   逆に、デフレに拍車をかけている食品の項目であるが、大分類では穀類-2.8%、飲料-2.0%、調理食品-2.0%などであり、その中身を見ると、スパゲッティ-9.2%、小麦粉-6.3%、食パン-3.8%、あんパン-3.4%、 国産米A-3.1%、カレーパン-3.1%、ブレンド米-3.0%、ミネラルウォーター -7.5%、果実ジュース-4.1%、茶飲料-3.4%、コーヒー飲料-2.9%、緑茶-2.2%、炭酸飲料-2.2%、スポーツドリンク-2.1%、うなぎかば焼き-6.7%、混ぜごはんのもと-6.7%、冷凍調理ピラフ-4.4%、冷凍調理コロッケ-4.1%、おにぎり-3.1%、調理パスタ-2.7%、からあげ-2.7%、コロッケ-2.2%、カツレツ-2.1%となる。

   このように、2010年7月度の消費者物価指数(CPI)は、依然としてデフレ基調が鮮明であり、猛暑の影響で相場高となった野菜、果物の上昇を吸収し、食品では-0.5%となるなど、厳しい状況であるといえる。ここ数ケ月の傾向を見る限り、デフレ基調であり、当面、消費者物価はデフレが続くものと予想される。食品スーパーマーケット業界としては、猛暑関連の商品をしっかり売り込みつつ、デフレ関連商品の品揃えの見直しを行い、重点商品の販売を再度確認することがポイントとなろう。

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August 28, 2010

イオン、GMS改革に本腰、ジャスコ、サティ合併!

   8/27の日経新聞1面に、「イオン、主力スーパー合併」の見出しで大きくイオンの記事が掲載された。サブ見出しは「「ジャスコ」、「サティ」、店名「イオン」に」、「年間500億円規模コスト削減、アジア展開を加速」というものである。いよいよ、GMS改革にイオンが本腰を入れて取り組むことになったといえ、今後の動向に注目である。

   記事の内容は、2011年2月期中に、イオンの中核企業、イオンリテール(254店舗)が「サティ」のマイカル(85店舗)、イオンマルシェ(6店舗:旧仮カルフール)を吸収合併し、店舗数345店舗、売上規模2兆5,000億円のチェーンとなり、店名も来春を目途に「イオン」に統一するとのことである。その狙いはサブ見出しにもあるようにひとつはコスト削減であり、3社の間接費を統合し、圧縮することにより、約500億円のコスト削減につながるという。そして、もうひとつは、成長性の高い海外、特に中国、東アジアへの出店を加速するための国内の体制整備にあるという。

   そこで、イオンリテールとサティについて、現状のマーチャンダイジング力、すなわち、原価、経費の関係を見てみたい。まず、イオンリテールであるが、2010年2月期決算の数字を見ると、売上高1兆7,025.72億円であり、原価は1兆2,571.00億円(73.83%)であり、結果、営業総収入は4,454.72億円(26.17%)となる。一方、経費の方であるが、5,729.72億円(33.65%)である。したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は-1,275.00億円(-7.48%)である。そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が1,477.29億円(8.67%)のり、営業利益は202.28億円(1.19%)となる。これがイオンリテールの収益構造である。したがって、マーチャンダイジング力は大幅赤字であり、その他営業収益で営業利益をプラスにもっていっている構図である。特に、経費比率が売上対比33.65%と極端に高くなっている現状であり、ここを今回の経営統合により、どれだけ圧縮できるかが重要な鍵を握っているといえよう。

   一方、マイカルの方であるが、同じく、2010年2月期決算を見ると、売上高5,380.34億円であり、原価は3,930.43億円(73.05%)であり、結果、売上総利益は1,449.91億円(26.95%)となる。一方、経費の方であるが、1,892.30億円(35.17%)である、したがって、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は、-442.39億円(-8.22%)となり、イオンリテール以上に厳しい状況にある。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業利益が534.91億円(9.94%)のり、結果、営業利益は92.51億円(1.72%)となる。マイカルもイオンリテール同様、マーチャンダイジング力は大幅な赤字であり、これをその他営業収入でプラスにもっていっている構図である。しかも、経費比率はイオンリテールの33.65%に比べ、35.17%とさらに大きな経営負担となっており、この圧縮は急務の状況にあるといえよう。

   それにしても、GMSのこの現状を見ると、極めて利益が出にくい経営構造にあるといえ、単純な経費圧縮ではある程度は利益の改善につがるかもしれないが、構造的な経営改革が必要といえ、将来的には、GMSそのものの経営構造を根本から変える大胆な改革が必須といえよう。経営統合、経費の圧縮ではいかんとしがたい経営構造にあるといえる。ちなみに、今回の経営統合により、経費500億円圧縮ということであるが、この2社を単純に統合すると、売上高2兆2,406.06億円、原価1兆6,501.43億円(73.64%)となり、結果、売上総利益は5,904.63億円(26.36%)となる。一方、問題の経費であるが、7,622.02億円(34.01%)となる。したがって、ここから500億円の圧縮となると6.55%(売上対比2.23%)となり、現状の経費比率が34.01%から31.78%となる。粗利は26.36%であるので、依然として、マーチャンダイジング力は-5.42%のマイナスであり、GMSの厳しい経営構造が大きく変わるわけではない。

   話をもとに戻し、差し引き、マーチャンダイジング力を見ると-1,717.39億円(-7.65%)であり、これにその他営業収入が2,012.20億円(8.98%)のり、結果、営業利益は294.81億円(1.33%)となる。こう見ると、経費圧縮だけでは、GMSのかかえる根本的な問題が解決できないといえ、イオンとしては、さらに、経営構造を根本的にかえるか、GMSに代わる新たな新業態を構築する必要があろう。同じ日経新聞の11面の関連記事の中では好調な自転車店を統合後急速に店舗数を増やす土壌ができるとのことであるが、これは不動産収入等のその他営業収入にかかわる収益であり、GMSの構造改革には結びつかないといえる。

   このように、イオンが本格的にGMS改革に乗り出し、グループのGMSの経営統合をはかり、経費を圧縮し、収益性を引き上げ、国内の守りを固め、成長著しい中国、アジアへ経営資源をシフトする体制を整え始めたといえる。ただ、いま見たように、GMSの根本問題、マーチャンダイジング力の大幅なマイナスを改善するには、さらに踏み込んだ経営構造の改革が必須といえ、経営統合、経費圧縮の次の構造改革まで踏み込み、さらに、GMSにとってかわる新業態の開発が必須の状況といえよう。その意味で、イオンがグループのGMS統合後、どのようなGMS改革の戦略を打ち出すかに注目したい。

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August 27, 2010

食品スーパーマーケット売上速報、7月度、101.0%!

   社団法人 日本セルフ・サービス協会から8/25、3団体合同 スーパーマーケット統計調査が公表された。この調査はオール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、社団法人 日本セルフ・サービス協会の食品スーパーマーケット業界3団体が合同で加盟企業への調査を実施、集計したものであり、現在、最も、信頼できる食品スーパーマーケット業界の売上速報である。この7月度は、実績速報回答企業数が264社となり、その内訳は、北海道・東北エリア 45社、関東エリア 67社、東海・北陸エリア 63社、関西エリア 36社、中国・四国エリア 37社、九州・沖縄エリア 16社であり、ほぼ全国に渡る。

   さて、その結果であるが、総売上高7,737.65億円(101.0%)となり、猛暑の影響もあったかと思うが、堅調な結果となった。今回の結果に関しては、8/25、オール日本スーパーマーケット協会で記者会見が行われ、社団法人 日本セルフ・サービス協会がTwitter中継し、記者会見の写真も速報されるなど、公表体制にも工夫が凝らされた。その記事のいくつかを紹介すると、「総売上高は、今月も前年クリア。猛暑の影響で、売上伸ばす。統計にはないが、個別報告では客数は微増。一品単価は下落傾向続く。景況感は一気に上向きに。」、「青果…相場高。スイカなど売れる。ナシ、桃などは苦戦。水産…鰻、鰹は好調、大衆魚が苦戦。惣菜…涼味が好調。」、「サミット…7月は100.2%。首都圏は売場面積が増えており、オーバーストア。」、「サミット…飲料は8月112%、増税前でタバコが伸びている。秋冬が売れてくれないと…。魚の相場が安定してくれないと売りにくい。」とのことで、臨場感あふれる公表となった。

   全体は101.0%であるが、さらに、部門別にこの猛暑の影響を強く受けたこの7月度の結果を見てみたい。まずは、生鮮3品から見てみると、青果942.89億円(売上構成比12.2%)、103.5%と好調であった。Twitterのコメントにもあったように相場高の影響もあったかと思うが、スイカなどが良く売れたようである。また、青果の売上高942.89億円は年間換算では1兆円を優に超える。したがって、食品スーパーマーケット業界全体では年間2兆円は超えていると予測でき、これは八百屋の約1兆円、直売所の約1兆円を優に超え、食品スーパーマーケットが青果ビジネスでは完全に主導権を確保しているといえる数字である。

   ついで、水産698.74億円(売上構成比9.0%)、98.9%とやや苦戦した。畜産726.06億円(売上構成比9.4%)、99.6%となり、生鮮3品では青果の1人勝ちとなった。そして、惣菜696.34億円(売上構成比9.0%)、103.5%となり、この7月度は青果と並び、伸び率No.1となった。また、売上構成比も水産、畜産とほぼ並び、惣菜が食品スーパーマーケットにとっては大きな柱となったといえよう。そして、一般食品・その他3,520.91億円(売上構成比45.5%)、101.8%、非食品合計1,152.69億円(売上構成比14.9%)、99.0%であった。非食品が意外に大きいといえ、この中には雑貨だけでなく、テナント等も入っていると思われる。また、一般食品・その他のその他に日配、菓子が入っていると思われ、ここも45.5%と大きな構成比となっている。

   こう見ると生鮮2品、水産、畜産が猛暑の中、苦戦したといえ、青果、惣菜が良く伸びた部門であったといえよう。一般食品・その他がもう少し伸びても良かったかと思うが、やや伸び悩んだといえる。ちなみに、エリア別で見ると、北海道・東北エリア101.9%、関東エリア 100.2%、東海・北陸エリア 101.3%、関西エリア 100.8、中国・四国エリア 101.9%、九州・沖縄エリア101.5%という状況であり、都心部がやや苦戦した結果となっているのが、この7月度の特徴といえる。また、今回の集計店舗数6,978店舗の平均的な店舗面積は510.87坪、平均売上高は1.10億円であるので、単純年間換算では13.2億円となる。

   なお、本調査では、景況感指数(DI:Diffusion Index)を同時に集計している。DIは50以上なら景気の現状や見通しが改善したとみる企業が多く、50以下なら厳しい見方が多いという指標である。その7月度の結果であるが、「売上に対する現状判断DIは、「増加」が「減少」を上回り55.0となり、前月と比べて7.6ポイント上昇した。見通しDIは、5.8ポイント上昇し、52.9となった。」、「収益率に対する現状判断DIは、「改善」が「悪化」を上回り51.3となり、前月と比べて5.8ポイント上昇した。見通しDIは、4.3ポイント上昇し、51.6となった。」とのことである。売上DI、利益率DIともに回復している。特に、グラフでこれまでの4ケ月間の推移を見ると、一目瞭然であり、7月に入り、大きな変化が見られる。

   このように、これで4ケ月目となった食品スーパーマーケット業界の3団体の売上速報であるが、現状の食品スーパーマーケットの実態を表す信頼できる統計になったといえ、食品スーパーマーケットにとっては実情を正確に把握するための貴重なデータといえよう。この7月度は猛暑の影響が色濃く出ており、青果、惣菜がその恩恵を受けたと思われる数字がでているが、この猛暑は8月度も続いており、次の結果もほぼ同様な堅調な数字が予想されよう。食品スーパーマーケット業界にとっては猛暑はやや追い風となったようである。

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August 26, 2010

N001、トマト、きゅうり、米のID-POS分析の論文を見る!

   ここ最近、農産物直売所の調査事業を実施する中で、青果物に関する論文を読む機会が多くなった。収集した資料、文献、論文はすでに数百となり、まだ目を通していないものもあるが、順次、読み込んでゆく予定である。また、これまで触れる機会があまりなかった日本農業新聞も読むようになった。さらに、農林水産省のホームページも頻繁にチェックするようになり、こと青果物の流通、そして、マーチャンダイジングについては、これまでの食品スーパーマーケット側から見ていた観点とは全く違う角度から見る機会が増え、驚かされることも多く、考えさせられることも多い。今回の調査結果は今後、順次、様々な媒体を通じて公表してゆく予定であるが、本ブログでは特に、食品スーパーマーケットにとって重要と思われる内容を中心に取り上げてゆきたい。

   さて、今回取り上げるのは、青果物のID-POS分析についてである。食品スーパーマーケットのID-POS分析はどちらかというと、メーカー側からのニーズが高いため、加工食品、日配食品のID-POS分析事例が多く、生鮮食品、惣菜等については各食品スーパーマーケットのJANコード、商品分類がまちまちであり、SKUの設定も商品によりまちまちであったりし、中々ID-POS分析に踏み込めないのが実態といえる。これに対して、直売所は青果物が中心であり、しかも、商品と生産者がSKUレベルでリンクしているため、顧客IDが把握できると商品分析だけではなく、生産者分析まで可能となり、食品スーパーマーケットの青果物では把握することのできない領域にまで踏み込んだID-POS分析が可能となる。

   原則、食品スーパーマーケットの青果物は最近では産直、顔の見える野菜等が増えてはいるが、それでも、その割合は20%前後といえ、約80%は中央か地方卸売市場からの青果物であり、産地までは把握できても、生産者まで把握することは、仕組み上、不可能に近いといえる。ところが、直売所は全く逆の比率であり、約80%は生産者が把握でき、市場からの商品は20%前後となるのが実態である。さすがに、生産者が少ない東京都の直売所、道の駅などを見ると、50%前後まで下がる場合もあるが、それでも、50%は生産者まで把握が可能な商品である。したがって、ID-POS分析が可能であれば、単に商品分析だけでなく、生産者の分析にまで踏み込むことができ、消費者、商品、生産者の三位一体のID-POS分析が可能となる。

   そこで、実際の事例であるが、中央農業総合研究センターからの報告論文「生産者に対するロイヤルティの品目間比較分析」、サブタイルは「農産物直売所の顧客ID付きPOSデータ分析」、田口光弘氏・柴田静香氏著(2010年)という論文があり、ここで、まさに、青果物、特に、トマト、きゅうり、米のID-POS分析が真正面から取り上げられている。ここでは特に、ロイヤルティに焦点を当てた分析をしており、指標としては、売上金額と顧客ID数を使っているのが特徴である。残念ながら、本ブログで取り上げているID-POS分析の基本方程式、ID金額PI値=ID客数PI値×金額PI値=ID客数PI値×PI値×平均単価、さらには、IDの属性、購入状況に分けた分析等については踏み込まれていないが、シンプルにロイヤリティを見るのであれば、これはこれで、興味深い分析である。

   先に結論であるが、トマトは78.9%、米は73.0%、きゅうりは48.6%のロイヤリティ比率となったという。ここでロイヤルティ比率とは「特定の生産者の商品を50%超買っている消費者」の割合のことである。したがって、トマトと米は生産者へ対してのロイヤルティが極めて高く、きゅうりは比較的低いとの結論である。また、この論文では、さらに踏み込み、特定の生産者の商品を80%以上購入しているロイヤルカスタマーはトマトでは51.1%、米では52.2%と高い数字であるのに対し、きゅうりは20.0%という結果であり、大きな差となっている。直観的にはこんな感じかかなとも思えるが、改めて、調査結果の数字を見ると、納得もでき、びっくりでもある。

   論文はここで終わっており、取り上げた商品もトマト、きゅうり、米のみであるが、さらに踏み込んだ分析を加え、そこからマーチャンダイジング戦略の仮説(商品戦略)、マーケティング戦略の仮説(顧客戦略)を作っていければ、これまでの単純なPOS分析を補う仮説づくりが可能となり、顧客、商品、生産者間のまさに三位一体の分析が可能となるのでははと思う。

   このように、この論文はトマト、きゅうり、米のみの、しかも、ID-POS分析の指標、手法も限られたものではあるが、シンプルにロイヤルティを数値化し、顧客、商品、生産者間の関係を導き出しており、非常に興味深い内容である。ID-POS分析は顧客IDの購入履歴がつぶさに把握できるがゆえに、まさに、ロイヤルティという視点から分析が可能となる分析であり、本来、青果物をはじめ、生鮮食品、惣菜等に活用すべきものであるといえるが、食品スーパーマーケットでも中々、現実には活用しえていないが実態であるといえる。今回はその意味で、食品スーパーマーケットでは把握が難しい、生産者という視点も入ったID-POS分析であり、価値がある分析、そして、結果であったといえよう。是非、続編を期待したいところだ。

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August 25, 2010

オーエムツーネットワーク、最新の決算を見る!

   前回の鮮魚専門店に引き続き、今回は精肉専門店、オーエムツーネットワークについて、その最新決算について取り上げて見たい。この業界では何といってもNo.1は非上場ではあるが、ニュークイックであり、全国に140店舗(食品スーパーマーケット18店舗)を展開し、年商は539億円(2010年3月期)である。ちょうど鮮魚専門店No.1の北辰が約500億円であるので、奇しくも、鮮魚専門店、精肉専門店のトップが約500億円の年商である。残念ながら青果専門店は上場企業がまだなく、非上場であるが、この業界トップクラスの澤光青果、九州屋ともに200億円台であり、鮮魚、精肉専門店が売上げにおいても、上場企業を誕生させ、経営を公開したことにおいても、一歩先んじたといえよう。

   さて、そのオーエムツーネットワークであるが、創業は昭和33年と古く、島根県が創業の地であり、大久保養鶏所からスタートした。その後、地元益田市に精肉専門店を開き、精肉専門店のチェーン展開をはじめた。平成元年には有限会社大久保養鶏所から株式会社オオクボへと社名、会社形態を変えた。そして、平成11年、日本証券業業界に店頭登録し、翌年、社名を現在のオーエムツーネットワークに変更し、その後、平成16年にジャスダックに上場し、現在に至る。ただ、この間、M&Aを頻繁に行い、業績を拡大する一方、平成17年には逆に、こてっちゃんで有名なエスフーズがM&Aをかけ、エスフーズの連結子会社となる。現在、エスフーズはオーエムツーネットワークの48.86%の株式を所有しており、オーエムツーネットワークの経営権を掌握している。

   したがって、オーエムツーネットワークは現在、エフフーズの子会社であり、エフフーズと一体となった経営戦略の中で動いている。そのオーエムツーネットワークの2010年1月期の決算結果であるが、売上高312.73億円(-4.2%)、営業利益12.29億円(11.0%)、経常利益13.54億円(12.3%)、当期純利益 4.62億円(3.7%)であり、減収増益の決算となった。売上高が減少したのは、現在、赤字店舗の見直しを優先して取り組んでいるためであり、今期も、「開店は6店、閉店は19店であり、その結果、当連結会計年度末の店舗数は152店になりました。内訳は食肉小売店舗127店、惣菜小売店舗25店であります。」とのことで、閉店が開店を大きく上回ったためである。

   オーエムツーネットワークは現在、小売業、製造加工部門、外食業の3つの事業展開をしており、その売上高はそれぞれ、209.25億円(-4.8%)、58.72億72(1.1%)、44.75億円(-7.9%)という状況である。したがって、精肉専門店は全体の約70%弱であり、1店舗当たり1.37億円であり、かなりの小規模店舗が存在するといえ、今後ともさらにスクラップ&ビルドが続くものといえよう。鮮魚専門店が1店舗平均10億円の角上魚類が誕生している現状を見ると、精肉専門店としても、もう一段規模の拡大を目指したいところであろう。

   そこで、原価、経費面、営業利益であるが、原価は64.04%(売上総利益35.96%)である。これは、鮮魚専門店の魚喜の原価57.66%(売上総利益42.34%)、魚力の原価58.43%(売上総利益41.57%)と比べ、約5%強低い数字である。これに対して、経費の方であるが、32.02%と、魚喜の経費42.26%、魚力の経費38.17%と比べかなり低い数字である。したがって、鮮魚専門店と比べ、原価よりも経費に重点が置かれたマーチャンダイジング戦略といえよう。ちなみに、テナント経費、家賃であるが、それぞれ、5.41%、3.37%であり、合計8.78%であり、百貨店、GMS、食品スーパーマーケット等のインショップ戦略をメインとしているため、経費の中の大きな構成比を占めているといえる。結果、営業利益は3.93%と高い数字を達成しており、今期は11.0%と好調な結果となった。

   一方、財務面であるが、純資産比率は53.14%と安定した数字であるが、負債の主な項目は有利子負債が20.89億円であり、総資産126.94億円の16.45%、買掛金が19.65億円(15.47%)であり、この2つの項目で合計31.92%と大半を占めている。そこで、資産の方であるが、現金42.78億円(33.70%)と圧倒的であり、これが最大の資産である。ついで、建物及び構築物が16.95億円(13.35%)、敷金及び保証金13.19億円(10.39%)、テナント未収入金12.15億円(9.57%)となり、これで合計が総資産の67.01%となり、これらが主な資産である。それにしても、現金が極めて大きいのが特徴といえ、機動的なキャッシュの保有が経営の大きなポイントとなっているといえよう。

   このように精肉専門店、オーエムツーネットワークの決算を見ると、鮮魚専門店よりも原価が低く、経費も低いのが特徴といえる。また、1店舗当たりの売上げもかなり小さいといえ、小規模な多店舗展開を中心に事業の拡大を図ってきたといえよう。食品スーパーマーケットの鮮魚と精肉の売上構成比はほぼ同じ数字、約10%であることを見ると、精肉専門店も鮮魚専門店同様、もう一段と大規模化しても良いと思われる。オーエムツーネットワークが現在スクラップ&ビルドのスクラップ優先の営業戦略をはかっているのは、その意味では、正解といえよう。今後、どこまで、オーエムツーネットワークが現在の経営構造を変革してゆくかに注目である。

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August 24, 2010

鮮魚専門店、2010年度、決算結果を見る!

   食品スーパーマーケットの上場企業は約50社であるが、生鮮食品、青果、鮮魚、精肉の上場企業はまだ少なく数社である。そこで、その数少ない数社であるが、ここでは、鮮魚専門店について、決算公開企業4社、魚喜(東証2部)、魚力(東証2部)、そして、角上魚類(非上場)、中島水産(非上場)の最新の決算結果を見てみたい。特に鮮魚専門店各社の経営状況の違いについて、比較してみたい。

   まず、4社の売上高であるが、いずれも、2010年度の本決算である。魚喜は153.34億円(-6.2%)であり、やや厳しい数字である。内訳は鮮魚事業が138.79億円(-6.4%)、飲食関連事業の売上高が14.54億円(-4.3%)という結果であり、鮮魚事業が90.5%の構成比である。次に、魚力であるが、248.85億円(-2.0%)と魚喜よりも約100億円高いが、昨対はやや伸び悩んでいる。内訳は小売事業が、202.14億円(0.0%)と約81.2%を占め、大半をしめており、ついで、飲食事業が11.15億円(-3.2%)、そして、注目のアメリカのホールフーズマーケット等への販売を含む卸売事業が35.55億円(-12.0%)となった。

   また、非上場であるが、決算を公開している角上魚類であるが、売上高は201.41億円(2.5%)と堅調な伸びとなった。また、はじめて、200億円を突破した。角上魚類は現在19店舗であるので、1店舗当たり10億円を超え、驚異的な販売力である。次に、中島水産であるが、売上高は385.22億円(-6.2%)と厳しい結果となった。ただ、店舗数は現在、関東地区 42店、中部地区 6店、近畿地区11店、中国・四国地区 4店と計63店舗をほぼ全国に展開しており、1店舗当たり約6億円である。ちなみに、現在、上場はしていないが、鮮魚専門店としては、この4社を超える売上高、約500億円の鮮魚専門店がある。北辰である。約70店舗をほぼ全国に展開しており、1店舗当たり約7億円となる。

   以上が主要、鮮魚専門店の売上高であり、いずれも、1店舗当たり極めて高い数字を上げており、驚異的な数字である。特に、角上魚類は1店舗当たり10億円を超える数字であり、通常の食品スーパーマーケットが1店舗10億円前後のところも多いのが実態であり、極めて高い売上高、販売力といえよう。ちなみに、10億円の食品スーパーマーケットで鮮魚の売上高は約10%前後であるので、1億円前後となる。したがって、このクラスの食品スーパーマーケット10店舗分の鮮魚を売り上げることになり、いかに、鮮魚1店舗当たり10億円が大きな数字であるかがわかる。

   次に、この4社の原価と経費、そして、営業利益を見てみたい。ただし、角上魚類は利益関連は経常利益、当期純利益のみの公開である。まずは、魚喜であるが、原価57.66%(売上総利益42.34%)、経費42.26%、結果、営業利益0.08%である。魚力は原価58.43%(売上総利益41.57%)、経費38.17%、結果、営業利益3.40%である。ついで、中島水産であるが、原価68.89%(売上総利益31.11%)、経費29.77%、結果、営業利益1.34%である。そして、角上魚類であるが、経常利益4.08%、当期純利益2.21%である。

   こう見ると魚喜と魚力については、粗利構造は良く似ているが、中島水産は原価が高めであり、意外に粗利が低いといえよう。ただ、その分、経費も低いといえ、魚喜、魚力と比べ、原価、経費構造、すなわち、P/L構造がかなり違うといえる。ちなみに、魚喜、魚力の経費の中の家賃関連であるが、魚喜9.14%、魚力7.78%という数字であり、百貨店、GMS、食品スーパーマーケット等へのインショップ展開が多いこともあり、いかに家賃負担が重いかがわかる。逆にいえば、それだけ、原価を下げることが必要といえ、それにより、重い家賃負担を相殺する必要があるといえよう。それにしても、角上魚類の経常利益は高い数字であり、4社の中では1店舗当たりの売上高も含め、抜群の安定間があるといえよう。

    一方、財務面であるが、純資産比率(自己資本比率)を見てみたい。まずは、魚喜であるが、16.99%であり、厳しい状況といえる。特に、有利子負債が12.29億円と総資産34.65億円の35.46%と重くのしかかっており、買掛金も9.50億円と総資産の27.41%と大きな比重を占めている。魚力であるが、魚喜とは対照的に、81.84%と極めて高い数字である。総資産も155.07億円と魚喜の約4倍強であり、しかも、無借金経営である。ただ気になるのは資産に投資有価証券58.83億円、現金21.26億円、売掛金13.79億円と巨額な金額に上っていることである。ついで、中島水産75.04%と極めて高く、魚力同様無借金経営である。そして、角上魚類であるが、66.8%と、高い数字である。

    このように鮮魚専門店4社の決算を比較可能な数値をもとに見てみたが、角上魚類の数字が4社の中では最もバランスのとれた数字であるといえよう。売上高201.41億円(1店舗当たり10.60億円)、経常利益8.22億円(4.08%)、自己資本比率66.8%という結果である。ついで、魚力であり、売上高248.85億円(1店舗当たり約6億円)、営業利益3.40%、純資産比率81.84%と抜群の数字である。そして、中島水産、魚喜と続き、両企業ともやや厳しい数字である。2010年度は生鮮食品の中でも特に鮮魚は厳しい経営環境にあったといえ、その傾向は、今期も続いており、今後、ますます、経営の格差が開くものと思われる。このような中、各社がどのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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August 23, 2010

食品スーパーマーケットの人件費11.4%を見る!

   今年の「食品スーパー2010、財務3表連環分析、vol.1」では昨年にない項目をいくつか追加している。そのひとつが人件費である。食品スーパーマーケットにとって人件費は経費の中で最大の項目であり、利益を生み出すには、この人件費を適切にコントロールする必要がある。そこで、食品スーパーマーケットの実態はどうなっているのかについて、その実情を見てみたい。

   まず、全体の状況であるが、2010年度の決算短信で確認できる食品スーパーマーケットにおいて、人件費を公表している食品スーパーマーケットは約50社の内、数社公表していないだけであり、ほとんどの食品スーパーマーケットの人件費は把握することができる。そこで、その全体の数字を見ると、売上対比11.4%(粗利対比45.6%)が全体の平均的な数字である。これが現在の食品スーパーマーケットの実態といえ、これより高ければ高め、低ければ低いと判断して良いといえよう。

   ちなみに、食品スーパーマーケット、決算公開企業約50社の売上総利益、いわゆる粗利率は売上対比で25.0%であり、経費比率は25.6%が平均である。いずれも売上対比であるので、人件費比率は売上対比11.4%であるので、粗利対比では45.6%となる。同様に経費対比では44.5%となり、ほぼ粗利対比と同じ比率である。したがって、ごく単純化すれば、食品スーパーマーケットの人件費は売上高の約10%強、粗利、経費の約45%であるといえ、これがごく平均的な食品スーパーマーケットの人件費の実態といえよう。

   では、決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの中で、売上対比で低い食品スーパーマーケットはどのくらいなのかを見てみたい。売上対比の人件費比率で10%を切る食品スーパーマーケットを見てみると、大黒天物産7.3%(粗利対比32.8%)、ベルク8.4%(32.6%)、アオキスーパー8.5%(52.9%)、アークス 8.5%(37.4%)、スーパーバリュー8.6%(42.1%)、フジ8.8%(38.4%)、イズミ8.9%(41.1%)、オーケー9.2%(45.9%)、天満屋ストア9.2%(37.3%)、東武ストア9.7%(36.7%)、マルミヤストア9.7%(49.9%)、スーパー大栄9.9%(46.3%)、アークランドサカモト9.9%(30.4%)、丸久9.9%(39.6%)という状況である。

   この中ですぐに気になるのはアオキスーパーの52.9%という粗利対比であるが、これは、アオキスーパーの粗利率が16.08%と極めて低い数字のため、相対的に人件費比率が上昇傾向になるためである。同様に、オーケー20.1%、マルミヤストア19.4%、スーパー大栄21.3%など、粗利の低い食品スーパーマーケットは比較的高めの傾向となる。逆に天満屋ストア24.8%、東武ストア26.4%のように粗利が高めの食品スーパーマーケットは粗利対比が低めにでる傾向がある。したがって、食品スーパーマーケットにおいて人件費は売上対比10%を切れるかどうか、粗利対比では40%を切れるかどうかがひとつのポイントといえよう。

   参考に、オオゼキの2009年度の数字、GMSのイオン、セブン&アイHの数字を見てみたい。まず、オオゼキであるが、10.7%(粗利対比42.8%)であり、食品スーパーマーケットの平均よりもやや低めの数字といえよう。一方、イオンは14.9%(粗利対比53.0%)、セブン&アイH10.5%(粗利対比39.9%)であり、GMS業態が強く全体に影響を与えるイオンの人件費がかなり高めであり、逆に、セブン&アイHは対照的に低めであるといえよう。それにしても、先に見た食品スーパーマーケットNo.1の大黒天物産の数字は極端に低い数字であり、これがディスカウント戦略の源泉のひとつといえよう。

   では、逆に、食品スーパーマーケット業界の中で人件費比率の高い食品スーパーマーケットを見てみたい。平和堂14.6%(粗利対比49.9%)、ヤオコー14.3%(49.5%)、ヤマナカ14.3%(57.1%)、イオン九州 13.7%(50.6%)、マルエツ13.7%(48.4%)、エコス13.5%(53.6%)、ジョイス13.4%(52.0%)、マックスバリュ東海13.2%(51.5%)、いなげや13.1%(48.1%)、イズミヤ13.0%(44.3%)である。以上が売上対比13.0%以上の食品スーパーマーケットであるが、粗利対比も含め、かなり高い人件費水準といえよう。

   ちなみに、これらの食品スーパーマーケットの売上総利益、すなわち、粗利であるが、平和堂29.3%、ヤオコー28.8%、ヤマナカ25.0%、イオン九州27.1%、マルエツ28.3%、エコス25.3%、ジョイス25.7%、マックスバリュ東海25.6%、いなげや27.2%、イズミヤ29.3%である。一方、先の人件費比率の低い食品スーパーマーケットの粗利は、大黒天物産22.4%、ベルク25.8%、アオキスーパー16.1%、アークス22.8%、スーパーバリュー20.3%、フジ22.8%、イズミ21.5%、オーケー20.1%、天満屋ストア24.8%、東武ストア 26.4%、マルミヤストア19.4%、スーパー大栄21.3%、アークランドサカモト32.6%、丸久25.1%である。粗利構造が明らかに違うといえ、人件費と粗利戦略はほぼ連動しているといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットの人件費は決算公開企業約50社の平均が売上対比11.4%(粗利対比45.6%)であるが、大きく2極化しており、粗利を下げ、人件費も極限まで下げるディスカウント志向の食品スーパーマーケットと、付加価値を追求し、粗利を引き上げ、そこに人件費を投入する付加価値型志向の食品スーパーマーケットとに分かれるといえよう。

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August 22, 2010

フリーミアムが注目されている!

   IT MedeaというIT関連のホームページを見ていたら、興味深い記事が掲載されていた。ループス・コミュニケーションズ社の斎藤徹氏の記事である。タイトルは「「ソーシャルゲーム」はどうして儲かるんだろう?- その重要指標と収益方程式を考察する」であり、その中の一節に、「フリーミアムモデル ~ 顧客数と利用者単価をともに向上させる奇跡のモデル」というテーマの記事がある。まさに、客数と客単価のことであり、ソーシャルゲーム、すなわち、mixi、GREE、DeNA(モバゲー)などが、客数と客単価を同時に向上させるビジネスモデルを作りあげたという内容である。そして、その鍵となるキーワードが「フリーミアム」であるという。

   実際、その注目度は半端ではなく、この記事の冒頭で、ひとつのグラフが掲載されている。Virtual Goods Investment Reportからの引用であるが、世界中のファンドマネーがソーシャルゲーム分野に熱い視線を注いでいるというグラフであり、昨年度(2009年)後半から異常にソーシャルゲーム分野への投資が増加しており、それまで四半期ベースで100億円前後であった投資が、第4四半期には約850億円となり、明らかに加熱している。記事では、その理由が、ソーシャルゲーム業界が金脈、すなわち、フリーミアムモデルを作り上げたことにあるということである。

   ちなみに、フリーミアムとはfreemium = free + premiumのことであり、freeと premiumを合わせた造語である。ごく単純化すれば、free で客数をアップし、premiumで客単価アップにつなげ、結果、客数と客単価が2重螺旋状に相乗効果を発揮しながら伸びてゆくということである。したがって、このフリーミアムに目覚めたモバゲー、ここ最近稀に見る大ヒットゲームといわれる怪盗ロワイヤルがまさに、そのフリーミアムの象徴ともいうべき金脈のゲームとして注目されているとのことである。

   ちなみに、斎藤氏の関連記事、「決算発表から読む3大SNSの現状と今後」も興味深い内容であり、この中でmixi、GREE、DeNA(モバゲー)の直近の決算比較をしており、まさに怪盗ロワイヤルのDeNA(モバゲー)が圧倒している決算結果となっている。そして、その記事の最後に米国Business Insider誌の記事を取り上げており、Google、Yahoo、Twitter等のユニークビジターあたりの2009年度売上高が比較されている。記事では日本円に換算しており、これを見ると、トップはGoogleで138円、ついでAOL90円、Yahoo45円、・・、Twitter5円となっており、Googleの優位性が明らかである。ただ、同じ指標で日本の企業を比較すると、DeNA(モバゲー)で 約506円,GREEで約260円となるという。したがって、いかに、怪盗ロワイヤルがすごいかが鮮明であり、Googleの4倍弱という圧倒的な数字であり、この指標では日本が世界をリードしているといえる。

   興味深いのは、フリーミアムも、今、示したユニークビジターあたり売上高も客数、客単価の問題であり、IT業界も食品スーパーマーケット同様、客数と客単価をいかに伸ばし、売上げを上げるかという点においては全く同じ土俵にいるという点である。そして、このフリーミアムという客数、客単価を同時に引き上げる方程式を開発したがゆえに、劇的に企業業績を向上させ、しかも、投資家から熱い視線が注がれているという点である。

   ちなみに、客単価をIT業界ではどう表現しているかであるが、ARPU: Average Revenue per Userという指標で表している。そして、このUserがいわゆるページビューとなるか、先程のGoogleのようにユニーク会員になるかで分けているが、これは、食品スーパーマーケットでは金額PI値(客単価)かID金額PI値かの違いであり、全く、同じ指標を活用していることがわかる。先ほどの国内主要3社のARPU、すなわち、金額PI値であるが、mixi61円(広告52円、会員9円)、GREE177円(広告32円、会員145円)、DeNA(モバゲー)344円(広告30円、会員314円)という状況であり、この会員がまさにフリーミアムの金額PI値であり、ここで3社の差が決定的となっていることがわかる。しかも、DeNA(モバゲー)は怪盗ロワイヤルが大きく牽引しているという。

   では、ソーシャルゲーム業界で熱い視線が注がれているフリーミアムの食品スーパーマーケット版はないのか、すなわち、客数と客単価を同時にアップさせる方法はないのかというと、実は、古くから取り組まれている定番中の定番の販促手法、「試食」がそれに当たるといえよう。「試食」は、まさにフリーで客数を増やし、本体購入で客単価を引き上げる究極のフリーミアムといえ、何のことはない、これがソーシャルゲーム業界でいうフリーミアムの正体であるといえよう。したがって、「試食」の中に、客数、客単価を同時に引き上げるノウハウがまだまだ埋もれているといえ、ここを再度、食品スーパーマーケットとしても、見直し、再構築し、その応用問題を解くことが、今後の活性化の鍵を握っているといえよう。

   記事の中では客数が増える仕組みとして、口コミを指標化しており、バイラル係数 = 既存利用者から紹介された新利用者/既存利用者という指標で紹介されており、これが100%を超えた時、客数が増加するとのことであり、IT業界では重要な指標のひとつであるという。食品スーパーマーケットでいえば、既存顧客の満足度が次の新規顧客獲得につながるということであり、突き詰めれば、来店頻度をいかに引き上げるかに通じよう。

   このように、意外であるが、怪盗ロワヤルと食品スーパーマーケットは客数、客単価、そして、その同時追求を狙ったノウハウ、フリーミアムで繋がっているといえ、約300ある食品スーパーマーケットのカテゴリーひとつひとつを怪盗ロワイヤル化してゆくことが活性化の決め手になることを示唆しているといえよう。そして、これも、食品スーパーマーケットのIT化のひとつであろう。

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August 21, 2010

コンビニ売上速報、2010年7月、売上Up、客単価Down!

   8/20、(社)日本フランチャイズチェーン協会から、2010年7月度のコンビニの売上速報が公表された。異常な猛暑が続いた7月度の数字であり、どのような結果となるかが注目される中、全体は2.6%、既存店は0.5%増となり、全店は2ケ月連続のプラス、既存店は14ケ月ぶりのプラスとなる快挙となった。ただ、既存店の客単価は-1.8%と20ケ月連続のマイナスであり、客数が2.3%となったことが売上げを押し上げる要因となっており、客数アップ、客単価ダウンが気になるところである。ちなみに、対象コンビニはココストア、サークルK サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、
デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソンの10社、42,995店舗の結果であるので、ほぼ、日本のコンビニ全体を網羅しているといえる。

   そこで、客単価の動向を過去20ケ月間見てみると、6月度-1.6%、5月度-2.3%、4月度-1.9%、3月度-3.4%、2月度-2.6%、1月度-3.8%、2009年12月度-2.9%、11月度-3.0%、10月度-2.8%、9月度-2.9%、8月度-3.8%、7月度-3.1%、6月度-4.8%、5月度-1.5%、4月度-2.0%、3月度-0.7%、2月度-1.3%、1月度-0.4%、2008年12月度-0.8%という状況である。見事に、客単価が20ケ月連続でマイナスであり、依然として、客単価に関しては厳しい状況が続いているといえよう。

   一方、客数について、ここ数ケ月の動きを見てみると、6月度0.04%、5月度-1.0%、4月度-1.8%、3月度-1.6%、2月度-2.6%、そして、1月度-1.6%という推移であり、けっして、客数が安定しているわけではなく、7月度がこれまでの推移と比べ、堅調な伸びを示したといえ、6月までは、客数、客単価ともに厳しい状況が続いていたといえる。したがって、猛暑の影響は客単価には反映されず、客数に反映されたといえ、やや意外な結果といえよう。

   そこで、商品面からこの7月度の動向を見てみると、(社)日本フランチャイズチェーン協会自身は、「当月は梅雨明け以降、晴れの日が多く月平均気温もかなり高くなり、東日本を中心に日最高気温が35℃以上の猛暑日となるなど厳しい暑さとなった。その影響を受け、個別商品動向としてはアイスクリームや冷し麺、飲料など、夏物商材が好調であった。・・」とコメントしており、アイスクリーム、冷やし麺、飲料などが好調であったとのことである。実際、これらを含む加工食品(構成比31%)の売上高は5.8%と高い伸びを示している。全体が2.6%であるので、2倍以上の伸びである。ちなみに、加工食品の内容は、「ソフトドリンク(乳飲料を除く)、アルコール飲料(日本酒、ウイスキー、ワイン等)、アイスクリーム、」等であり、これらが全体を押し上げたといえよう。そして、冷やし麺などが含まれる日配食品(構成比34.3%)であるが、3.5%と、加工食品ほどではないが、全体の2.6%以上の伸びとなっており、やはり、日配食品も全体を牽引したといえよう。

    逆に、非食品(30.4%)は-2.2%と全体の2.6%を下回っており、やや厳しい結果となった。特に、この7月度は昨年のtaspoの余韻が若干残っており、その反動もあったものと思われる。ただ、8月からは昨年も数字が下がっており、taspo効果は8月で完全に切れたといえ、今後、この雑貨は来月、すなわち、8月以降数字が伸びてくるものと予想できる。したがって、8月以降も前半の猛暑に加え、後半、残暑が続けば、コンビニ全体の数字は期待できそうな状況といえる。ちなみに、コンビニのもうひとつの分類、サービス(4.3%)であるが、構成比は低いが、伸び率は7.8%と最も高く、注目である。その中身は、「コピー、ファクシミリ、宅配便、商品券、ギフト券、乗車券、各種チケット、テレフォンカード、宝くじ、D.P.E、レンタル、航空券、宿泊券、クリーニング等」であり、何が伸びたかは公開されていないが、興味のあるところである。

   こう見ると、この7月度のコンビニは売上げは確かに伸びたが、その要因は客数に支えられた伸びであり、その客数を牽引したのが、アイスクリーム、冷やし麺、飲料などの猛暑関連商品といえよう。ただ、肝心の客単価はむしろ下がっており、しかも、20ケ月連続でマイナスであり、この7月度は一時的な売上増であるといえ、コンビニの売上げが復活したとはいえず、依然として厳しい状況にあるといえよう。ちなみに、コンビニの既存店の客単価であるが、2008年度平均が587.4円、2009年度平均が572.8円、そして、7月度568.5円、6月度549.8円、5月度558.2円、4月度562.9円、3月度566.6円、2月度566.2円、1月度573.6円であるので、かなり、深刻な客単価の推移であるといえる。

   現在、すでに8月半ばとなっているが、猛暑はまだ続いており、8月度もほぼ7月度と同様な傾向となる可能性が高いといえ、堅調な売上増となるものと予想される。ただ、既存店の客単価は先に見たように依然として厳しい状況が続くものと予想され、この客単価の回復がコンビニの本格的な回復のバローメーターともいえよう。今後、いつ、既存店の客単価が反転し、プラスに転じるか、注目したい。

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August 20, 2010

ウォルマート、2010年度、中間決算公表、増収増益!

   ウォルマートが2010年度の中間決算を8/17に公表した。結果は増収増益となり、全体は好調である。ただ、本体のウォルマートの既存店は伸び悩んでおり、気になるところだ。ウォルマートの決算を見ると、日本の決算発表のように、増収増益等のP/Lの結果よりも、まずは、株主優先であり、今回の見出しも、「Walmart Reports Second Quarter EPS of $0.97, Ahead of First Call Consensus、・・」であり、EPS、すなわち、earnings per share、一株当たりの利益が最重要指標となっている。EPSは株式のPI値のようなものであり、1株当たりどのくらい利益が出たかを表し、株の価値を表す指標のひとつである。ウォルマートとしては、株の価値を下げなかったという決算であり、当初の約束通りであったということが重要であるとの経営判断であるといえよう。

   さて、実際の決算結果であるが、ウォルマートのP/Lはほぼ日本と同じ配列となっており、売上高Net sales、その他営業収入Membership and other income、原価Cost of sales、経費Operating, selling, general and administrative expenses、そして、営業利益Operating incomeとなっている。そして、この順番で2009年度と2010年度を比較し、特に今回は中間であるので、6ケ月類計と3ケ月のみの数字を公表している。ここでは、6ケ月合計で見るが、結果は、売上高202,113十億ドル(4.4%)と増収であり、営業利益は11,927十億ドル(7.4%)と増益であり、結果、増収増益と好決算となった。

   その中身であるが、原価は75.31%(昨年75.11%)と若干上昇しており、消費環境の厳しさが反映されているといえよう。結果、売上総利益、いわゆる粗利は24.69%(昨年24.89%)と若干下がった。24.69%は日本の2010年度の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの平均が25.0%であるので、ほぼ、日本の食品スーパーマーケットに近い数字である。ちなみに、セブン&アイHの26.2%、イオンの28.0%と比べるとかなり低い数字といえ、ウォルマートの粗利水準は日本では食品スーパーマーケットに極めて近いといえよう。

   一方、経費の方であるが、19.48%(昨年19.90%)と、0.42ポイントと大きく改善しており、経費の削減が進んでいる。ちなみに、この経費比率であるが、これも先程と同様に日本の食品スーパーマーケットの平均が25.6%であるので、約5%ほど低く、ここで決定的な差が開くといえよう。セブン&アイHは33.6%、イオンは36.4%であるので、さらに差は広がる。したがって、ウォルマートの強さの秘訣はこの経費比率にあるといえ、今期も半期で約20兆円近い売上高がありながら、経費は19.48%で抑えており、ここが日本の小売業との決定的な違いといえる。余談だが、日本でもウォルマートの19.48%を下回る食品スーパーマーケットはあり、トライアルカンパニー16.07%、アオキスーパー16.08%、マルミヤストア19.43%の3社が下回っているが、残り約50社弱はそれ以上であり、この19.48%の経費比率がいかに低い数字であるかがわかる。

   結果、差し引き、商品売買から得られるマーチャンダイジング力は5.21%(昨年4.99%)と増益となった。これにその他営業収入、ウォルマートの場合はサムズクラブの会員収入等が0.70%(昨年0.74%)のり、営業利益は5.91%(昨年5.73%)となり、増益となった。原価は厳しい消費環境により上昇したが、それ以上に経費を引き下げたことにより、マーチャンダイジング力が上昇し、その他営業収入の減少をもカバーし増益となっており、まさにウォルマートらしい、マネジメントによる増益といえ、結果、好決算につながったといえよう。

   これを受けて、ウォルマートのキャッシュフローであるが、営業活動によるキャッシュフローは、10,019 百万ドル(9,895百万ドル)であり、約1兆円となる。それにしても、キャッシュフローが1兆円という小売業として途方もない金額であり、びっくりである。ちなみに、その内訳であるが、利益関連が7,191 百万ドル、減価償却費が3,748 百万ドルであり、この2項目が大半、減価償却費だけでも約3千億円強という金額である。投資活動によるキャッシュフローであるが、-5,581百万ドルであり、その大半が新店関連への投資である。約5千億円近い投資であり、これがウォルマートの成長の源泉となる。したがって、合計フリーキャッシュフローは4,438百万ドルであり、営業活動によるキャッシュフローの約60%を投資に充て、約40%を財務活動によるキャッシュフローに残しているといえる。

   その財務活動によるキャッシュフローであるが、-2,045百万ドルであり、その内訳は、借入、返済、自己株式の購入等であるが、今期は-7,112百万ドルという大量の自己株式を購入しており、びっくりである。それだけ、株価の買い支えに動いた結果であるといえよう。そして、トータルキャッシュフローは2,288百万ドル増加し、結果、今期の現金は10,195百万ドル、約1兆円となった。やや気になるのは、有利子負債が45,814百万ドル(総資産の25.89%:昨年41,660百万ドル)と増加したことに加え、約4兆円強とかなりの金額に上っていることである。

   このようにウォルマートの2010年度の中間決算が公表され、結果は増収増益となり、特に、売上げよりも、今期は利益が堅調であったことが大きいといえよう。原価はやや増加したが、それ以上に経費の削減が進んでおり、それが増益になった要因といえ、利益を生み出す経営のポイントは経費コントロールがいかに重要であるかを実証しているといえよう。ただ、一方で、売上げはやや伸び悩んでおり、今後、いかに既存店の活性化をはかるかが課題といえ、次のウォルマートの一手に注目である。

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August 19, 2010

PLANT、2010年9月期、期第3四半期決算、減収増益!

   PLANTが7/30、2010年9月期の第3四半期決算を公表した。結果は売上高614.92億円(-4.5%)、営業利益15.14億円(168.5%)、経常利益14.24億円(223.1%)、当期純利益7.71億円(136.7%)と、減収大幅増益となり、売上高の方は依然として厳しい状況が続いているが、利益の方は大幅な増益となった。なお、残り3ケ月を加えた通期予想であるが、売上高870.00億円(0.1%)、営業利益22.00億円(52.7%)、経常利益20.00億円(78.0%)、当期純利益10.00億円(61.4%)と増収増益、売上高の方もわずかに昨対を超える予想であり、やや売上面では気になるが、PLANTの業績回復、特に利益の改善が鮮明である。

   PLANT自身は、「・・消費者の生活防衛意識から低価格・節約志向がなお一層強まり、低価格販売による競争激化で商品単価が下落し、買上点数も減少したことから厳しい経営環境となりました。・・」とのことで、売上高は、平均単価、買上点数の減少、すなわち、客単価の減少が大きく、厳しかったとのことである。一方、利益に関しては、「・・利益におきましては、従来から取り組んでまいりました「在庫管理」「値入向上とロスの削減」のほか、昨年8月より導入した「生鮮管理システム」の本格稼動により、粗利益率の改善が図れました。また店舗運営において人時生産性を意識した人事管理が定着したことにより作業効率の向上が実現し、主に人件費や販売費を売上高に応じてコントロールすることができた結果、・・」とのことで、業務改善が大幅な増益につながったとのことである。

   そこで、実際、PLANTの収益構造がどのように変化したのかを原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、80.13%(昨年80.69%)と0.56ポイント減少しており、PLNATのコメントをまさに反映しているといえよう。結果、売上総利益は19.87%(昨年19.31%)と改善した。PLANTのコメントにもあったように、「・・低価格販売による競争激化で商品単価が下落し、・・」という中で原価を改善しており、結果これが利益の改善に寄与したといえよう。一方、経費の方であるが、17.41%(昨年17.92%)となり、0.51ポイント改善した。まさに、経費コントロールが利益改善に結びついた結果といえよう。したがって、利益を原価、経費ダブルで1.07ポイントと大きく改善しており、大幅な増収を達成したといえる。ちなみに、PLANTの粗利19.87%、経費17.41%は2010年度、決算公開企業約50社の中では、いずれもベスト5位入る低さであり、原価小、経費小の典型的なマーチャンダイジング構造である。

   PLANTはその他営業収入がないため、結果、差し引き、マーチャンダイジング力=営業利益となり、2.46%(昨年1.39%)と、大幅な営業利益の改善となった。売上高は苦戦したが、原価、経費をバランス良く改善し、利益を確保しており、PLANTの業務改革が確実に進み、浸透しているといえよう。今後は、さらに収益性を高めると同時に、いかに、売上高を引き上げるかに焦点が当たりはじめたといえよう。

   その売上高の直近、この7月度の結果であるが、全体の売上高-6.2%、客数-1.2%、客単価-5.0%という結果である。下期4ケ月(4月から7月まで)の類計でも売上高-5.3%、客数-1.0%、客単価-4.3%という状況であり、売上高は厳しい状況が続いており、通期予想の売上高0.1%の達成は難しい状況のように思われる。ただ、利益は順調といえ、売上高のマイナスをカバーし、プラスに転じ、ほぼ予想どおりゆく勢いであるといえよう。

   さて、PLANTの財務面も見てみたい。まずは、キャッシュフローであるが、売上高が低迷している大きな理由は新店が財務上出店できない状況にあり、既存店のみの売上高でカバーせざるをえないことによる。実際、投資活動によるキャッシュフローの出店にかかわる投資、有形固定資産の取得による支出を見ると、昨年は-1.81億円であったが、今期は-0.09億円であり、実質、新店への投資は0であり、当面、新店の予定はないといえよう。したがって、既存店の活性化が売上高を引き上げることになり、売上高は依然として厳しい局面が続くといえよう。

   また、財務を大きく圧迫している有利子負債の状況であるが、財務活動によるキャッシュフローを見ると、前期は6.73億円のプラスと有利子負債の増加がみられるが、今期は-22.22億円と大きくマイナス、すなわち、返済をしており、結果、トータルの有利子負債は168.70億円(総資産対比47.40%)となり、昨年の190.94億円(50.41%)から改善している。ただ、まだ、総資産の50%近い数字であり、依然として、財務を大きく圧迫している。純資産比率も20.53%(昨年17.43%)という状況であり、厳しい財務状況といえ、新規出店は当面、厳しい状況にあるといえよう。

   このようにPLANTの2010年9月期の第3四半期の決算は減収増益と、売上高は財務状況が厳しく、新店を出せない状況にあり、既存店のみの集計であり、やや厳しい結果となったが、利益は業務改善が浸透しはじめ、確実に改善しており、大幅な増益となった。当面、PLANTとしては、既存店の活性化に注力せざるをえない状況にあるといえるが、利益が上向いたことは大きく、今後、財務の改善、そして、新店の出店へとつながる流れができつつあるといえよう。本決算まであとわずかであるが、今期、どこまで、利益の改善につながるかその結果に注目である。

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August 18, 2010

物流を考えて見る、「日本の食料品はなぜ高いか」!

   8/17の日経ビジネスオンラインで「日本の食料品はなぜ高いか(大矢昌浩氏著)」というタイトルの記事が掲載された。サブタイトルは、「旧態依然の卸売市場がコールドチェーンを分断する」であり、たまたま直売所の調査で青果物の物流を調査しているところでもあり、興味深い内容である。合わせて、関連記事も読んでみたが、これもまた興味深い内容であり、特に、日雑業界の物流が世界に類を見ない仕組みを作り上げ、ウォルマートよりも効率的な仕組みを作り上げているといわれているとは知らなかった。

   特に、この関連記事も含めて、気になったポイントであるが、「たくさんの工場と、たくさんの店舗を結ぶ物流は、フルラインの品揃えとフルラインの流通加工機能を備えた中間拠点を、1カ所だけ経由した時に最もコストが小さくなる、・・」という点である。まるで、数学のトポロジーの問題のようであるが、恐らくこれが真理なのであろう。実際、日雑業界は限りなく、この方向に近づいているという。

   記事の中でも紹介されていた論文、プラネットが1998年、いまから10年以上前に研究報告した「ボイス、“Vision for Optimal and Effective Supply Chain Management”」を見ると、そのまえがきで「具体的には、業界メーカーが製造する商品4億ケース(段ボール)を30万軒の小売店に、過不足なく供給するにはどのような体制が最適であるかを策定しました。そして、変貌を遂げている小売店の満足を得るために、業界フルラインの一括物流でバラ配送もでき、ノー検品も可能な高精度なシステムであるという条件を設定しました。こうした目標と条件のもとにシミュレーションを行ったところ、200~250億円規模の物流拠点を日本列島に114カ所開設すれば、業界としての供給責任を果たせるという結果が算出されました。現状の中間物流拠点は、業界に関わる卸店と販社数を2千社とすれば、2千数百カ所はあると考えられます。・・」と解説している。

   実際、約10年後の現在、この方向に限りなく近づきつつあるといい、日雑業界では業界に先駆けて、本格的なM&Aが起こり、物流拠点が大きく集約されつつあるという。また、記事の中では、「1990年代末に外資系コンサルティング会社がその影響を調査したことがある。同調査によると、中間拠点を1カ所だけ経由した時の1ケース当たりの物流コストは494円だった。これが2カ所経由だと767円、3カ所経由が960円、4カ所経由では2460円に跳ね上がった。」という実証データもあるとのことで、物流拠点の集約化がいかに重要なトータルコストを下げるかがわかる。

   ちなみに、プラネットの設立企業9社であるが 、ライオン、ユニ・チャーム、 資生堂、サンスター、 ジョンソン、十條キンバリー、(現 日本製紙クレシア)、エステー化学、(現 エステー)、牛乳石鹸共進社、インテックであり、花王、P&Gに対抗すべく立ちあがったともいうべき日雑の代表的な企業からスタートした。最近では花王も加わり、日雑業界は競争から協調の時代に入りつつあるともいえよう。

   こう見ると、食品スーパーマーケットがその他営業収入でセンターフィーとして計上している物流収入は食品スーパーマーケットにとっては大きな収入源であるが、物流のトータルコストからすると、場合によっては、ワンクッション物流拠点が増えたことにもなり、一見利益が出ているようで、よりマクロに見ると、逆に効率化を阻害している可能性もあるといえよう。特に、物流システムは限りなく進化しており、全温度帯対応、24時間物流、商品仕訳、検品機能など高度化が進んでおり、その投資も絶えず必要となり、店舗数も100店舗を超え、今後は数100店舗の規模が必要となってこよう。

   記事の中でも、「小売りの専用センターの多くは入荷した台車をそのまま納品車両別に並べ替えるだけの単純な積み替え拠点だ。在庫機能やバラピッキングは従来通りベンダーに頼っている。そのため小売りの専用センターを新たに経由することで、物流段階は1つ増えてしまう。サプライチェーンのトータルコストが増加する、・・」との指摘もあり、物流問題はまさに、トータルサプライチェーンの問題であるといえ、一小売業だけで解決する問題ではないといえよう。

   話をもとに戻し、8/17の日経ビジネスオンライン、「日本の食料品はなぜ高いか」では、「農林水産省の調査(平成20年度「食品流通段階別価格形成調査」)によると、青果物主要16品目の小売価格に占める流通コストは平均で57.1%となっている、・・」とのことであるが、実際、農林水産省のホームページでこの資料を確認して見ると、全69ページのかなりの量の資料であり、しかも、エクセルでの詳細な分析データも掲載されている。いずれ、改めて、本ブログで取り上げてみたいと思うが、物流問題が農産物の価格と強い連動性があることは確実であり、それゆえ、日本全国に現在10,000件を優に超える農産物直売所が出現したといえ、すにで、10億円の直売所がいくつも表れ、一部ではチェーン化がはじまっているのも頷ける話である。

   このように、物流は今後の流通業界トータルで取り組まなければいけないマクロな課題であるといえ、小売業だけ、卸だけ、メーカーだけでは当然解決できない課題であるといえる。まさに、SCM(サプライチェーンマネジメント)であり、食品スーパーマーケットにとっても、避けて通れない課題であり、青果物から雑貨まで、どう物流体制をつくり上げてゆくべきか、ますます重要な経営課題となってきたといえよう。

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August 17, 2010

GMS、戦略転換へ、セブン&アイH、GMS路線転換へ

   セブン&アイHのGMS戦略が岐路に立っているといえよう。昨年10月に公表された今後30店舗のGMS、イトーヨーカ堂の店舗閉鎖計画の内、前期決算において、5店舗が閉鎖され、今期も同様に5店舗から7店舗の閉鎖が予定されている。ただ、この店舗閉鎖と並行して食品特化型店舗を4店舗オープンしており、イトーヨーカ堂の前期決算時の店舗数は174店舗と前年度と比べ1店舗減であり、店舗数そのものは大きく減っていない。今後も同様に店舗数を大きく減らすことなく、閉店を大量に進めてゆくことになろう。

   ちょうど、日経新聞、8/14の1面に、その裏付けともなる記事がトップで掲載された。セブン&アイHのホームページではまだ発表がないようであるが、記事の見出しは、「セブン&アイ、新型店展開」、「小型スーパー都市部に100店」であり、今後、大都市に小型食品スーパーマーケット、「イトーヨーカドー」を出店してゆくとのことである。したがって、GMSの30店舗の閉鎖を補い、将来的には逆転することもありうる話であり、GMSから食品スーパーマーケットへの戦略転換ともとれる動きである。

   実は、このような業態転換はウォルマートが約10年かけて戦略転換を行った事例がある。小売業界ではけして珍しいことではない。ウォルマートは2005年が戦略転換点であり、それまでは、ディスカウントストアがスーパーセンターの店舗数を大きく上回っていた。ところがこの年、初めて、スーパーセンターがディスカントストアを上回り、その後は、スーパーセンターの勢いが増し、その差約3倍弱、いまや、ウォルマート=スーパーセンターといってもよいくらい主力業態となっている。この間ちょうど10年ぐらいであり、どんなに大きな小売業でも戦略が明確になれば、10年で業態転換が可能であることを実証した事例のひとつといえよう。

   同様に、日本でも一時はGMSがスーパーセンターに置き換わるのではないかと思われた時期があり、特に、ウォルマートが西友を傘下に治めた時にはまさにその方向性が現実に動きだし、それが国内GMS、地方食品スーパーマーケットに大きな影響を与えた。ところが、本家の西友がスーパーセンター路線に挫折し、既存店の活性化、M&A戦略に転換したことにより、日本においてはスーパーセンターが席巻することはどうもなくなったといえよう。

   したがって、GMSの業態転換は振り出しにもどったといえ、各社、GMSをどのように業態展開してゆくかについては依然として明確な方針が出せない状況にあるといえよう。このような中で、西友はウォルマートの完全子会社化になったことにより、ウォルマート本来のEDLP路線にもどり、ディスカウントを鮮明に打ち出し、既存店のレイアウトを全面改装し、その第1ステップを踏み出したといえるが、業態としての次世代への対応はこれからであるといえ、今後、どのような戦略を打ち出すか気になるところである。

   さて、イトーヨカー堂のGMSであるが、現時点では、今後、数年間で30店舗の閉鎖が決まったが、これに代わる業態開発としては、ウォルマートがディスカウントストアからスーパーセンターへと一直線で進んだようにはいかないようで、現時点では、どうも3つの業態転換の戦略が同時並行で進んでゆくようである。ひとつは、先にあげた大都市を主体にした小型食品スーパーマーケットであり、これで、とりあえず、100店舗が置き換わることになる。ただ、金額ベースでは1/5ぐらいと想定されるので、GMSでは20店舗分ぐらいであろう。仮に、全部置き換えるには1,000店舗近い店舗数が必要となるため、日本の大都市すべてに拡大することが必要であり、20年ぐらいかかることになろう。

   したがって、これ以外の構想も当然必要であり、それが、現在、11店舗展開しているディスカウト業態、ザ・プライスである。特に、11店舗目の昨年11月にオープンした「ザ・プライスせんげん台店」は、初の単独出店であり、これまでの10店舗のGMSからの業態転換ではない。したがって、ザ・プライスはGMSの業態展開だけでなく自らも新規出店してゆく戦略展開に入ったといえ、GMSを補完する業態といえよう。そして、もうひとつ、ザ・プライスと対極にあるアリオであり、この9/1にオープン予定の「アリオ深谷」は「イトーヨーカドー深谷店」のGMSからSCアリオへの業態転換第1号店舗となる。これにより、アリオがGMSの業態転換先となることも可能となり、ザ・プライスとは逆の動きを補完することになる。アリオも10店舗である。

   このように、これでイトーヨーカ堂については、GMS約170店舗の改革の方向性がほぼ明確になったといえ、今後、赤字店舗を大胆に閉鎖してゆく一方、業態転換として、ディスカウント路線のザ・プライス、逆に高級路線のアリオ、そして、新規業態として、大都市中心の大量の食品スーパーマーケットと、3つの軸が出来上がったことにより、GMSの本格的な業態転換が起こってゆき、5年後、遅くとも10年後には全く中身の違うイトーヨーカ堂となっているのではないかと予想される。ちなみに、セブン&アイHの8/16の株価であるが、2,019円(-27円、-1.31%)であり、投資家の反応は鈍く、市場へのインパクトはあまりなかったといえる。

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August 16, 2010

西日本、食品スーパーマーケット新店状況、2010年8月!

   前回に引き続き、食品スーパーマーケットの新店状況を取り上げたい。前回が東日本、関東、東北、北海道、そして、中部を取り上げたので、今回は西日本について取り上げたい。ちなみに、後日改めて本ブログで取りあげたいと思うが、8/14の日経新聞の1面でセブン&アイHが都市部に小型店100店舗を展開してゆく構想を打ち出したが、その店舗面積は500平米から700平米であり、この大規模小売店舗立地法の大型店1,000平米に該当せず、自由に新規出店が可能である。これまでGMS、アリオ、ショッピングセンター、NSC、大型食品スーパーマーケットなど大規模店舗を主力業態として取り組んできたセブン&アイHの戦略転換といえ、各社に与える影響は必至である。

   さて、まずは、近畿からであるが、(仮称)平和堂開発店(福井県)、2010年11月25日、店舗面積580坪、駐車台数300台、(仮称)マックスバリュ高砂中島店(兵庫県)、2010年12月31日、430台、55台、(仮称)ライフ中加賀屋店(大阪市)、2010年12月31日、347坪、40台、(仮称)平和堂竜王店(滋賀県)、2011年1月20日、1,087坪、241台、(仮称)リブックスーパーバザール福知山店(京都府)、2011年1月29日、501坪、66台、(仮称)ラ・ムー篠山ショッピングセンター(兵庫県)、2011年2月16日、908坪、140台、マルヤス都島店(大阪市)、2011年2月25日、420坪、64台、(仮称)ライフ土佐堀店(大阪市)、2011年2月26日、728坪、44台、イオン伊丹西ショッピングセンター(仮称)(兵庫県)、2011年3月1日、11,515坪、2,346台である。

   関東が24店舗であったので、近畿は9店舗とやや少ない新規出店といえる。ラ・ムーは大黒天物産であり、現在、九州で周辺食品スーパーマーケットとの激しい価格競争を繰り広げているが、兵庫への出店であり、地元岡山県を中心に東西へのドミナントエリアの拡大であり、出店意欲が旺盛である。また、ライフコーポレーション2店舗、平和堂2店舗と双方とも堅調な出店、成長戦略を描いているといえよう。

   ついで、中国、四国であるが、中国では、生鮮食品おだ駅家店(広島県)、2010年12月7日、502坪、96台、(仮称)津山インター河辺モール(岡山県)、2011年1月15日、933坪、122台、(仮称)ディオ防府南店(山口県)、2011年1月21日、644坪、77台、アルク中土居店(山口県)、2011年1月28日、467坪、84台、藤増ストアー古志店・コメリハードアンドグリーン古志店(島根県)、2011年2月1日、563坪、67台、ラ・ムー庄原店(広島県)、2011年2月1日、896坪、134台である。近畿についで、中国でも大黒天物産ラ・ムー、そして、ディオと2店舗の出店であり、積極的な新規出店である。

   そして、四国であるが、現時点では、マルナカ伊予店(愛媛県)、2010年12月27日、751坪、109台、パルティ・フジ新居浜駅前(愛媛県)、2011年3月1日、1,057坪、143台の2店舗である。先日、話題となったマルナカの出店は四国1店舗のみであり、また、中国、近畿の食品スーパーマーケット、マックスバリュ西日本、大黒天物産、ハローズの新規出店は1,000平米以上では当面、四国ではないようであり、静かな嵐の前の静けさのような状況といえよう。

   そして、九州、沖縄であるが、(仮称)イオンモール大牟田(福岡県)、2011年1月1日、12,727坪、3,755台、ダイレックス東諫早店(長崎県)、2010年12月21日、452坪、50台、熊本駅新幹線高架下商業施設(熊本県)、2011年3月1日、338坪、43台、マルイチ丸山店(宮崎県)、2010年12月9日、368坪、86台、(仮称)ミスターマックス吉塚店(福岡市)、2011年1月15日、1,221坪、160台であり、残念ながら、沖縄の届け出は食品スーパーマーケット関連では、現時点ではなかった。

   以上が2回に渡ってとりあげてきた2010年8月度時点の最新の日本における食品スーパーマーケットの出店動向であるが、東日本では関東24店舗、東北4店舗、北海道2店舗、中部6店舗と36店舗、そして、西日本では近畿9店舗、中国6店舗、四国2店舗、九州5店舗と22店舗、合計58店舗の新規出店である。西日本よりは、東日本、特に関東が活発な出店攻勢であるといえ、東高西低の食品スーパーマーケットの出店状況といえよう。

   このように、大規模店舗立地法は1,000平米を超える大型店すべての出店に適用されるものであるので、今回は食品スーパーマーケットに絞って取り上げたが、食品スーパーマーケット以外にも、SC、ホームセンター、ドラックストア、専門店、生協も対象となる。さらに、前回のブログでも見たように農産物直売所も例外ではなく、1,000平米以上の大規模店舗は、すべて都道府県、政令指定都市への届け出が必要である。今回の経済産業省がまとめたデータは、現時点の最新の日本全国の1,000平米以上の大規模小売業の出店状況であるといえる。ちなみに、食品スーパーマーケット以外のすべての大規模店舗の届け出件数は130件であるので、食品スーパーマーケットは58件、44.6%となる。約40%強が食品スーパーマーケットであるといえ、大規模店舗の中核を占めているといえよう。

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August 15, 2010

食品スーパーマーケット新店状況(東日本)、2010年8月!

    8/6、経済産業省、商務情報政策局、流通政策課から、大規模小売店舗立地法にもとづく、最新の届け出状況が公表された。大規模小売店舗法は、1,000平米(約300坪)以上の新規出店を行う小売業が都道府県、政令都市へ、様々な出店状況を届けることが義務付けられた法律である。その目的は、経済産業省によれば、「本法は、大型店が地域社会との調和を図っていくためには、大型店への来客、物流による交通・環境問題等の周辺の生活環境への影響について適切な対応を図ることが必要との観点から、地域住民の意見を反映しつつ、地方自治体が大型店と周辺の生活環境との調和を図っていくための手続等を定めた法律である。」とのことであり、平成12年(2000年)、6月に施行されており、ちょうど、今年で10年目となる法律である。

    実際の届け出の詳細な数字は都道府県、政令指定都市にあるので、経済産業省では、「データベースは、都道府県・政令指定都市の協力を得て、月に一度報告いただいた届出事項・手続状況について、経済産業省が各経済産業局ごとにとりまとめたものである。」とのことで、毎月とりまとめ公表しているものである。

   さて、その結果であるが、まずは、関東では、マックスバリュ富士宮万野原店(静岡県)、2010年11月11日オープン予定、店舗面積591坪、駐車場121台、カスミ日立神峰店(茨城県)、2010年12月10日、1,035坪、120台、マックスバリュ清水八坂店(静岡市)、2010年12月11日、765坪、124台、とりせん菅谷ショッピングモール(群馬県)、2010年12月13日、1,488坪、306台、マミーマート桜区西堀7丁目店(さいたま市)、2010年12月16日、599坪、64台、(仮称)フレッセイ児玉店(埼玉県)、2010年12月17日、1,599坪、287台、(仮称)マルエツ西大宮店(さいたま市)、2010年12月17日、945坪、117台、(仮称)ベルク東松山店(埼玉県)、 2010年12月20日、653坪、78台、ヤオコー大宮大成店(さいたま市)、2010年12月29日、596坪、109台と、以上が年内出店予定の食品スーパーマーケットである。

   ついで、来年度出店予定の食品スーパーマーケットであるが、かましん平松本町店(栃木県)、2011年1月14日、609坪、204台、サンキ鹿沼店(栃木県)、2011年1月15日、592坪、167台、(仮称)イオンモール甲府昭和(山梨県)、2011年2月1日、8,485坪、2,500台、(仮称)ヨークマート六高台店(千葉県)、2011年2月2日、614坪、136台、(仮称)マミーマート昭島店(東京都)、2011年2月2日、502坪、90台、(仮称)ヤオコー船橋三山店(千葉県)、2011年2月5日、602坪、98台、(仮称)ヨークマート新幸手店(埼玉県)、2011年2月8日、913坪、180台、(仮称)ベイシア流山駒木店(千葉県)、2011年2月10日、704坪、117台、(仮称)いなげや志木柏町店(埼玉県)、2011年2月16日、535坪、 73台、たいらや小山本郷店(栃木県)、2011年2月18日、862坪、893台、(仮称)イオン越谷レイクサイドショッピングセンター(1街区)(埼玉県)、2011年2月21日、2,402坪、1,073台、(仮称)イオン越谷レイクサイドショッピングセンター(2街区)(埼玉県)、2011年2月21日、2,129坪、1,073台、(仮称)イオン越谷レイクサイドショッピングセンター(3街区)(埼玉県)、2011年2月21日、1,997坪、1,073台、オーケー大和上和田店(神奈川県)、2011年2月25日、676坪、210台、ヤオコー大宮盆栽店(さいたま市)、2011年2月26日、597坪、71台となる。

   現在、関東では、2/26での出店予定が最新であり、全部で24店舗(街区を分ける)である。そして、関東以外の東北、北海道であるが、東北は、イオンタウン寒河江中央(山形県)、2011年2月25日、1,048坪、178坪、(仮称)ヨークベニマル内郷店(福島県)、2011年2月5日、612坪、167台、ヨークベニマル保原店(福島県)、2011年2月12日、524坪、107台、(仮称)ヨークタウン白河横町(福島県)、2011年4月22日、849坪、163台であり、イオンとセブン&アイHの一騎打ちといえよう。北海道であるが、すずらん台ショッピングセンター(北海道)、2010年12月22日、948坪、152台、スーパーアークス月寒東店(札幌市)、2010年10月21日、644坪、150台である。

   さらに、もう一地区、中部であるが、ドミー丁田店(愛知県)、2011年2月1日、442坪、56台、(仮称)バロー高山南店(岐阜県)、2010年12月17日、496坪、94台、(仮称)とれったひろば関店(岐阜県)、2011年1月15日、345坪、254台、(仮称)スーパーセンターオークワ岐阜坂祝店(岐阜県)、2011年3月1日、1,795坪、338台、(仮称)生鮮市場ベリー藤里店(三重県)、2010年12月16日、874 坪、114台、マルエー春日店(石川県)、2010年12月3日、427坪、56台である。

   特に注目はとれったひろば関店(岐阜県)であり、これはJAめぐみのの農産物直売所の多店舗展開であり、いよいよ、直売所もチェーン展開、しかも、大規模小売店舗、1,000平米としての出店が本格化する動きといえよう。今後、本ブログでも、食品スーパーマーケットだけでなく、農産物直売所の動き、その出店戦略にも注目してゆきたい。

   以上が、関東、東北、北海道、そして、中部の8/6段階での大規模小売店舗の出店状況であるが、出店余力のある食品スーパーマーケットが順当に新店を出店予定であり、今年後半、そして、今回は来年2月までの状況であるが、各地での激戦が予想される。デフレ環境の中、食品スーパーマーケット業界は農産物直売所という新たな農産物の強力な競争もはじまるといえ、ますます厳しい経営環境が予想され、出店のできる食品スーパーマーケットとできない食品スーパーマーケットでその差がますます開くものといえよう。

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August 14, 2010

日経MJ、新製品週間ランキング、飲料、好調!

   恒例の日経MJ週間ランキングが8/13公表された。今週は何といっても飲料に注目である。日経MJのコメントでも、「記録的な猛暑が続き、ランキングの上位は爽快(そうかい)さが売り物の炭酸飲料が目立った。・・」とのことで、上位を炭酸飲料が独占した。しかも、ベスト4すべてサントリーであり、内、3位、4位、5位は今週初登場の新製品、まさに猛暑の勢いであるといえよう。また、金額PI値は低いが菓子もベスト4すべてが今週初登場の新製品であり、これ以外にも各部門で今週初登場の新製品が上位に来ており、今週は新製品の動きが激しい週となったといえよう。

   そこで、まずは飲料であるが、No.1からNo.4までサントリーであるが、No.1はC.Cレモン500mlペットボトル、金額PI値593円となり、今週の全新製品の中でもNo.1の金額PI値となった。金額PI値500円は定番商品の中でも上位に入る高い金額PI値であり、新製品としては、もちろん、Aクラスである。ちなみに、Bクラスが300円、Cクラスが200円と見れば判断がつきやすいといえ、参考にしていただければと思う。このC.Cレモン、金額PI値593円であるが、1,000人の来店につき、593円売れるという数字であり、通常の食品スーパーマーケットは約2,000人が1日に来店するので、1,186円の売り上げとなる。1人当たりに直すと、0.593円であり、要は0.5円以上の金額PI値の商品が食品スーパーマーケットでは売れ筋といえる。

   さらに、PI値を算出してみると、平均単価が88円であるので、金額PI値=PI値×平均単価であるので、PI値=金額PI値÷平均単価=0.593円÷88円=0.67%となる。したがって、1日約2,000人の食品スーパーマーケットで、2,000人×0.67%=13.4本となるので、まあ10本以上売れる商品が売れ筋といえよう。ちなみに、食品スーパーマーケットの中でPI値1%以上の商品は150から200品ぐらいであり、0.5%に水準を落としても500品ぐらいであるので、全部で1万品ぐらいあることを考えると、いかに、この0.5%、金額PI値では0.5円、1,000人当たりでは500円が高い数字であるかがわかる。

   その500円の金額PI値をこのC.Cレモンは今週唯一超えた新製品であり、しかも先週比157円アップ、平均単価は87円から88円と1円アップであるので、注目の新製品といえよう。さらに、カバー率は95.6%と、ここでも今週の全新製品の中でNo.1であり、すごい新製品といえよう。これについで、No.2、C.Cレモンゼロ500mlペットボトル、金額PI値413円であり、C.Cレモンがワンツーフィニッシュである。

   そして、ここから今週初登場の新製品が3品続く。サントリー、オールフリー350ml、金額PI値377円、同じくサントリー、セブンアップクリアドライ490ml、金額PI値301円、アサヒビール、ダブルゼロ350ml、金額PI値284円である。奇しくも、ノンアルコールビールが2品ベスト5に入り、フリービールも絶好調といえる。No.8にはサントリー、オールフリー350ml×6本も金額PI値189円で入り、アサヒビールのダブルゼロ350ml×6本がNo.13に金額PI値132円で入り、この新製品以外の定番のフリービールも恐らく好調と推測され、飲料は、まさに、猛暑で、稀に見る活気のある売場となったといえよう。

   飲料以外の今週の新製品の動きは、菓子が飲料同様、金額PI値はさほど高くないが、今週初登場の新製品がベスト4を独占した。No.1は亀田製菓、チーズリッチ85g、金額PI値127円、No.2は森永製菓、3択クイズ!ハイチュウアソート94g、金額PI値123円、No.3はカルビー、四季ポテトねぎ塩レモン味58g、金額PI値109円、そして、No.4はロッテ商事、トッポ<いちご>2袋入、金額PI値102円であり、いずれも、今週初登場の新製品であり、しかも、メーカーがすべて違い、来週の菓子の動向に注目といえよう。

   さて、猛暑といえば、飲料同様、アイスクリームが気になるが、意外に金額PI値が伸び悩んでいる。ベスト3だけ見てみると、No.1はハーゲンダッツジャパン、ミニカップ・マルチパック6個入りサマーパーティー75ml×6、金額PI値167円、No.2はロッテアイス、クーリッシュゼリーinコーヒー140ml、金額PI値160円、そして、No.3もロッテアイスであり、爽 白桃190ml、金額PI値157円である。氷系がトップに来るのかと思ったが、意外なことに、クリーム系がベスト3であり、しかも、金額PI値はさほど高いとはいえず、意外である。今後の新製品に期待したいところだ。

   このように、今週の日経MJ、新製品週間ランキングは何といっても飲料、これにつきるといえよう。猛暑はまだまだ続くと思われ、金額PI値とカバー率を両にらみで、まだ未導入の店舗は最優先で導入を検討する必要があろう。特に、炭酸系とノンアルコールビール、フリー関連が注目といえよう。また、やや通常と違う点は500mlが圧倒的に多く、2L系がほとんどみられない点である。飲料ベスト20の中で、先程のノンアルコールビールを除けば、2L系はNo.16のアサヒ飲料、六甲のおいしい水2L、ただひとつであり、金額PI値は102円である。いかに顧客がすぐ飲める500mlに殺到したかがわかり、棚割、POP、在庫、発注、フェイシング等、再度確認する必要があろう。当面、飲料が猛暑の最重点商品といえ、各食品スーパーマーケットともしっかり販売して欲しいところだ。

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August 13, 2010

マルナカ、イオン&三菱商事と包括提携!

   すでに、新聞等で報道されているように、イオン、三菱商事とマルナカが包括的な業務提携を8/11、公表した。業界再編につながる大きな動きであり、昨日のブログ、「日経ビジネスでスーパー特集、外資攻勢!」ではないが、地域の食品スーパーマーケットと2強の一角、イオンとの業務提携であり、戦いから融和、そして、対外資、対他の地域食品スーパーマーケットという構図が垣間見える動きである。イオンにとっては、北海道での大苦戦があり、いわゆる、各地で地域食品スーパーマーケットとの「カットスローコンペティーション」を繰り広げるよりは、融和の道を選ぶという戦略転換を示す動きともいえる。ただ、今回は、イオンと地域の食品スーパーマーケットではなく、間に三菱商事が絡んでおり、商社も巻き込んだ業界再編といえ、食品スーパーマーケット業界にとっては、新たな戦略的な動きといえよう。

   8/11の日経新聞では、「イオン、地方囲い込み、マルナカと包括提携発表」という見出しであり、その内容は、イオンが「商品調達を軸に、ネットスーパーの運営や電子マネーの活用などでも協力する」とのことであり、三菱商事も、「主に海外での商品調達を支援する」とのことである。また、マルナカとしては、「システム、商品面で弱い点を提携で補い、新たな成長の原動力にする」とのことである。さらに、マルナカとしては、資本提携について、「現時点では考えていない」とのことである。

   この業務提携については、イオン、三菱商事のホームページではすでに、概要が公表されているので、それを見てみたい。まず、業務提携の背景であるが、「マルナカグループとしては、創業50周年を機に、相互の歴史や築き上げてきた基盤を尊重しつつ協業を進めていくことが、各社の長期的な安定成長のみならず、何よりも「お客さま」の満足、地域社会の活性化にも貢献することに繋がる最も有効な方策であるとの結論に至り、・・」とのことで、マルナカ側の強い意志が感じられる内容である。さらに、「包括業務提携の効果を更に発揮するため、マルナカグループの要請で、イオンから三菱商事に対し参画の打診を行い、・・」とのことで、三菱商事の今回の業務提携への参加はイオン側からでも、三菱商事側からでもなく、マルナカ側からの要請であったとのことである。

   新聞報道を見る限りでは、イオンの主体的な動き、すなわち、「地方囲い込みの」のような印象を受けるが、この公表内容をみると、むしろ、マルナカ側からの戦略的な中長期構想の中での今回の提携といえよう。特に、この地区は、イオングループの食品スーパーマーケット、マックスバリュ西日本が約150店舗近い店舗展開をしており、マルナカとはいたるところで競合し、ここ最近はマルナカの地元、香川県にもザ・ビッグ寒川店を出店するなど、激しいディスカウント構成をかけ、四国ではすでに6店舗を出店し、今後も店舗数を増やす計画である。今回、これらの状況には全く、触れていないが、恐らく、この競合関係が緩和され、マルナカにとっては、有利な業務提携となろう。特に、電子カード、トップバリュのPB等が共有され、商品開発、物流の共有化が始まれば、マックスバリュ西日本とも事実上、業務提携をすることになり、競合から協調に関係が変化することになろう。

   さらに、マルナカは、投資目的ではあるが、この地域の競合食品スーパーマーケット、ハローズの大株主であり、現在、第3位、1,243,200株(6.9%)を所有している。したがって、このマルナカがドミナトとしている瀬戸内海商圏の2大食品スーパーマーケット、マックスバリュ西日本、ハローズとの激しい競合関係を緩和することに繋がり、残るさらに厳しい競合食品スーパーマーケット、大黒天物産との一騎打ちの構図ができあがることになり、この地域での戦いをマルナカにとっては、有利に進めることができよう。その意味で、今回のイオン、三菱商事との業務提携はマルナカにとっては大きなメリットがある内容といえよう。さらに、今後、外資の激しい出店攻勢、M&Aも予想され、これに対する防衛策ともなり、様々な角度から見ても、今回の件はマルナカにとって戦略的な業務提携といえよう。

   ちなみに、マルナカは大阪のイズミヤについても、大量の株式を保有しており、現在、第2位、4,629,000株(5.42%)である。したがって、今後、三菱商事が今回の業務提携に加わることにより、さらに、次の戦略提携も十分にありうる話であり、マルナカの次の動向に注目である。さしあたっては、「今後、直ちに提携推進委員会を設置し、具体的なプランを策定、・・」とのことであるので、その内容がどのようなものになるかが注目されるが、それ以上に、その後、マルナカがどのような戦略的な動きに出るのかも注目である。

   今回のイオン、マルナカの業務提携が契機となり、同様な戦略的な動きをせざるをえない日本各地での動向に大きな影響を与えることは必至といえ、まずは、2強、イオン、セブン&アイHの動き、商社の動き、そして、外資各社、特に、ウォルマートの動き、さらには、マルナカ同様、地域の有力な食品スーパーマーケットの動向に注目といえよう。

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August 12, 2010

日経ビジネスでスーパー特集、外資攻勢!

   日経ビジネス2010年8/9、8/16合併号で、スーパー特集が組まれた。タイトルは、「スーパー最終戦争、ウォルマート急襲、迎え撃つ日本勢」である。特集の冒頭の記事が衝撃的な内容でスタートしており、スーパー最終戦争を象徴する書き出しで始まっている。その冒頭の見出しであるが、「北海道、10年の興亡、イオン脱落、そして最後の決戦へ」である。小見出しは、「2000年、帝国の宣戦布告」、「2009年、勝者なき消耗戦」、そして、「2010年、青い目の刺客」であり、北海道商圏でのイオンの10年の軌跡をコンパクトに解説した記事からはじまる内容である。さらに、特集記事の最後は、「さらば“2強”」という見出しであり、イオンに加え、イトーヨーカ堂も外資にのみ込まれるのではないかという内容で終わる特集であり、イオンではじまり、イトーヨーカ堂で終わるという特集記事である。

   記事全体は全部で19ページ、見出しは、先のプロローグとエピローグに加え、巨艦・外資の破壊力(コストコ、メトロ、テスコ、ウォルマート)、奮闘・地方スーパーの局地戦(ヤオコー、ハローデイ、サンシャインチェーン本部)、国内勢「反撃の旗手」登場(神戸物産、バロー)であり、大きくこの3つの特集で構成されている内容である。特に、食品スーパーマーケットに関しては、「奮闘・地方スーパーの局地戦」のところで取り上げられているが、はじめの「巨艦・外資の破壊力」のところでも、日本地図の上に、主要食品スーパーマーケットがプロットされ、その売上高と昨対が示されている。そして、これと主要外資小売業を対比させ、「攻め込む外資、迎え撃つ地域店」というタイトルで図表化されており、圧巻である。

   この特集のタイトル、スーパー最終戦争とは、イオン、イトーヨーカ堂の2強と地域食品スーパーマーケットとの激しい局地戦争により、2強が体力を使い果たし、外資へのみ込まれ、その後、勝ち残った地域の食品スーパーマーケットが反撃にでて、外資との最終戦争がはじまるのではないかという内容である。最終とは日本の地域食品スーパーマーケットも最終的に外資にのみ込まれるのか、それとも勝ち残るのか、現在、その死闘前夜にあるということである。やや無理のある構図であるが、北海道、九州等では、まさにこの縮図とでもいうべき事態が、先駆けて起こりつつあるともいえる。ただ、これが日本全国でも同様な状況になるかは現時点では読めないといえ、この構図とは全く違う状況になる可能性もあるといえよう。

   最終戦争の結果、勝者がひとつに決まる、決戦のような戦いに食品スーパーマーケットと外資がなるのか、その前の段階でも、2強、イオンとイトーヨーカ堂が主要市場、関東、関西でも北海道、九州のようになるのか、予想は難しいといえよう。また、外資も現在デフレの追い風に乗っているが、今後とも好調に推移するかは分からず、カルフールがイオンに店舗を売却したように、逆の構図も当然考えられることである。むしろ、それぞれが、ある程度は戦いながら、住み分けてしまうこともありうることでもあり、収斂せず、均衡安定になるとも限らず、現時点で「スーパー最終戦争」とするにはかなり無理がある構図といえよう。

   今回の特集記事の中で、奮闘・地方スーパーの局地戦で取り上げられているヤオコー、ハローデイ、サンシャインチェーン本部、そして、国内勢「反撃の旗手」登場で取り上げられた神戸物産、バローの記事は興味深い内容であり、一読の価値十分である。特にヤオコー、ハローデイ、サンシャインチェーン本部が奮闘しているのは生鮮食品であり、ここがイオン、イトーヨーカ堂の2強、そして、外資と現時点では決定的に差別化されているところであり、最大の強みであるといえよう。しかも、この3社ともこの生鮮食品に経営資源の大半を投入し、従業員の英知を結集し、創意工夫を凝らし、独自固有の領域にまで高めているところがすごいといえる。また、神戸物産のライブキッチン、バローの低価格PBについての記事も興味深い内容であり、国内勢「反撃の旗手」登場といえるかどうかは別として、先の3社とは次元の違う取組みは注目といえよう。特に、神戸物産は業務スーパーが事業の中核であるが、今後は独自の技術、ノウハウで外食、惣菜へ本格参入とのことで、今後の展開が気になるところである。

   このように、「スーパー最終戦争」をテーマに掲げた日経ビジネスの特集記事であるが、確かに、北海道、九州等では最終戦争に近い動きもあるが、日本全国で見た場合、まだまだ最終戦争と呼ぶにはやや無理があるといえる。ただ、ここで取り上げられたイオン、イトーヨーカ堂と戦い、外資を迎え撃つ象徴として取り上げたれたヤオコー、ハローデイ、サンシャインチェーン本部、そして、反撃の旗手としての象徴的な企業、神戸物産、バローの記事は興味深い内容であり、日本の食品スーパーマーケットの強さが改めて浮かび上がっており、参考になるといえよう。次回、同じテーマで第2弾、50ページぐらい使い、日本全国の局地戦、外資との競合状況等の特集を期待したいところである。

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August 11, 2010

西友、赤羽店、7/15リフレッシュオープンを見る!

   ここ最近、全国的規模で怒涛の改装に取り組んでいる西友が本社所在地にある基幹店舗、赤羽店(東京都)の店舗改装を実施し、この7/15にリフレッシュオープンした。赤羽駅から徒歩7、8分ぐらいの立地にあり、駅から歩いてゆくと、「Walmart」という白い大きい看板が1階に掲げられている。その横に赤に白地の「SEIYU、24時間営業」という看板が掲げられており、まるでWalmartの店舗かと見間違えてしまう入口である。それもそのはず、この入口は正面ではなく裏側であり、正面入口は反対側、しかも、Walmartの白い大きい看板の下の入口は、「ウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社」の入口であるからである。ここがウォルマートの日本の中枢、拠点であり、そこに、100%子会社の合同会社西友があり、西友本店があるからである。

   ちなみに、合同会社西友の業務執行社員も、代表社員もウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社である。現在、合同会社西友の最高経営責任者(CEO)の 野田亨氏は職務執行者であり、株式会社とは全く違い、すべての意思決定は法人のウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社が行う。これが合同会社の特徴であり、このような意思決定の仕組みを西友は選択し、合同会社という形態をとったといえる。これまでの西友は、当初は株式会社として事業を行っていたが、2009年4月に上場を廃止し、その後、ウォルマート・ストアーズ・インクの完全子会社となり、2010年2月に資本金1億円で合同会社となり、その後、2010年3月に、2010年2月に設立したウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社の100%子会社となり、現在に至っている。

   したがって、まだ、合同会社となって日は浅く、この5月にも、組織再編をしており、現在、ウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社と合同会社西友とはほぼ一体となった経営体制となっているといえる。たとえば、野田亨氏は、ウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社の最高経営責任者(CEO)であり、合同会社西友の最高経営責任者(CEO)でもある。同様に、スティーブ・デイカス氏はウォルマート・ジャパン・ホールディングス合同会社の執行役員EVP、最高執行責任者(COO)であり、合同会社西友の執行役員EVP、最高執行責任者(COO)であり、サム・ダン氏、青木岳彦氏、田村真由美氏も同様に、双方の役職を兼務しており、双方はほぼ一体となった経営体制であるといえる。

   さて、そのお膝元の本店、赤羽店が7/15にリフレッシュオープンしたが、オープン後約1ケ月後の先日、この店舗をじっくり見る機会があった。赤羽駅側から入ったので、「Walmart」という白い大きい看板をくぐるような雰囲気であり、西友に入るとより、ウォルマートに入るような錯覚を起こした。そして、入ってびっくり、いきなり、セルフレジ約10台とぶつかり、そこからパン売場、洋日配売場が展開されていた。少し進むと惣菜売場になり、まさに、ここがファストショッピングゾーンとなっていた。赤羽駅側からの入口ということもあり、すぐ食べられる商品とすぐ清算できるセルフレジを組み合わせたショッピングゾーンを意識的に作ったものといえよう。それにしても、これだけセルフレジを展開しているのは食品スーパーマーケットでは珍しく、しかも、かなりの方が使っており、びっくりである。

   実は、西友、赤羽店は2層となっており、ここが1階であり、もう1層が地下となっている。この1階では、惣菜、乳製品、パン、冷凍食品、酒、飲料、菓子、ギフト、雑誌を主に扱っており、生鮮食品はすべて地下1階での扱いである。その地下1階であるが、花、農産、水産、畜産などの生鮮食料品、豆腐、麺類などの和日配食品、調味料、インスタント麺などのグロサリー、くすり、化粧品、日用品、ベビー用品、ペットフード、キッチン用品、洗濯・清掃用品、自転車、文具、園芸用品、インナーウェアなどである。

   東京では売場面積が十分にとれず、2層となる食品スーパーマーケットが多く、何をどのように配置するかが極めて難しいが、西友、赤羽店はうまく2層を使い分けており、加工度の高いものは1階、セルフレジの近くに配置し、素材等加工度の低いものを集中的に地下に配置するというレイアウトをとり、これをエスカレータで結ぶという苦労の跡が見える店舗である。また、あらゆる商品が本当に安い。さらに、地下に降りて、びっくりしたのは、青果の平台がすべて多段式平台であり、日本の多くの食品スーパーマーケットが単純な平台が多いのに比べ、品揃え面、訴求面、そして作業面を考慮した合理的な作りとなっていたことである。今後、坪効率を引きあげるためにも、経費を下げるためにも、日本の食品スーパーマーケットとしても検討すべき合理的な平台であるといえよう。

   このように、西友、赤羽店がリフレッシュオープンで西友の最新店舗に生まれ変わった。ここはウォルマートの日本の拠点、そして、西友の本社でもあり、力のこもった、西友、そして、ウォルマートの強い意志、思いが感じられる店舗となったといえよう。ここ最近、西友の数字が上いていると聞くが、この店舗を見る限り、納得のできる売場であるといえ、今後の西友、そして、ウォルマートの日本での次の一手に注目である。

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August 10, 2010

食品スーパーマーケットのレイアウトを考えて見る!

   食品スーパーマーケットのレイアウトは実に複雑怪奇であり、奥が深い。しかも、立地の制約、競合状況、家賃の制約、面積の制約、居抜き出店等があるため、コンビニのような基本パターンをつくり、それを適用することが難しいのが実態といえる。したがって、基本パターンを作成し、それをもとに新店を作ったり、あるいは、改装したりするにはかなり無理があり、与えられた条件、環境を考慮し、基本パターンではなく、基本的な原理原則を当てはめ、柔軟にハード面に関しては取り組んでゆく必要がある。その意味で、食品スーパーマーケットのレイアウトは新店にせよ、改装にせよ、ハードよりもソフトが極めて重要な要素となり、基本哲学とでも呼ぶべき考え方をしっかり確立する必要がある。

   では、基本哲学とは何か、どう構築するかであるが、それには、2つのアプローチがある。ひとつは、会社の理念に合致させることであり、もうひとつは、これまでの既存店舗をつぶさに分析し、自社が無意識に取り組んできた暗黙のルール、哲学をまとめ上げることである。この2つの角度から、新店、改装に関しての自社の考え方をまとめ上げると、自然、次の新店、そして、既存店の改装に関して、比較的迷いなく取り組めるようになり、なおかつ、予想に近い結果が得られるようになる。また、新たな新店をつくる度に、あるいは、既存店舗を改装する度に、新たな発見が生まれたり、これまでの取組みの正しさを認識したりできるようになる。

   そこで、まずは、基本理念であるが、食品スーパーマーケットの基本理念は顧客満足度にあることは自明であるが、そのためには、顧客からの視点とその顧客をフォローする従業員からの視点と双方が重要である。ごく単純化すれば、顧客動線と作業動線といえ、この2つのバランスを最適に保つことが、食品スーパーマーケットのレイアウトでは最優先課題といえる。店舗は顧客も従業員も365日、24時間活用する空間であるので、原則、シンプルイズベストが望ましい。食品スーパーマーケットは奇をてらう必要はないし、よく言われる滞在時間を伸ばし、客単価を向上させるような時間がかかる売場をつくる必要もない。原則、5分で食生活に絶対的に必要なPI値1%以上の150から200品が最短距離、最短時間で買える売場がベストである。滞在時間を伸ばすよりも、来店頻度を引き上げるレイアウトがベストといえよう。

   特に、客数が2,000人/日を超え、3,000人/日、4,000人/日の場合は、1分、1秒でも早く買い物をしたいのが顧客の心理であり、それに最優先で応えるレイアウトが顧客満足度を高めることにつながるといえよう。したがって、複雑な客動線は禁物であり、シンプルな目をつむっていても重点商品10品がカゴに最短距離、最短時間で入れられるように最大限の注意をはらうべきである。同時に、そのような中で生鮮食品、日配食品の発注、品出しをせざるをえないのが従業員の日々の仕事であるので、作業動線も客動線同様に重視する必要がある。 

   2つ目の既存店を分析し、自社の暗黙のルール、哲学をまとめることであるが、これができている食品スーパーマーケットは皆無といってもよく、過去の図面は整備されていても、その図面に応じた基本データが整備され、そこから一定の成功、失敗事例をまとめ上げている食品スーパーマーケットはまずないといえよう。実は、新店のレイアウトを作り、既存店の改装を実施する場合に、最も重要なのは、この自らの実績に対する真摯な評価、すなわち、成功、失敗事例を認識し、社内で共有するところにあるといえる。ちょうど将棋のプロ棋士が自分の系譜をすべて覚えており、いつでも、そこから必要な場面を自由に再現できるように、少なくとも自社の既存店のレイアウト分析は実施しておき、いつでも、新店、既存店に活かせるようしておきたいところだ。

   実は、これはさほど難しいことではない。POSデータの分析と既存店の基本調査だけで、一覧表を作成することができる。POSデータで必要な指標は、当然、金額PI値、PI値、平均単価、そして、可能であれば、客数PI値を加えることである。特に、この客数PI値は部分客数/全体客数であり、まさに、レイアウトの評価を表す最重要指標であるので、是非加えたいところだ。あとは、ここから、既存店の客数と既存店の売場尺数を加え、尺数量、尺売上を算出すれば良い。可能であれば、大分類だけでなく、中、小分類まで落とし込めれば、より、きめ細かなルールづくりにつながるといえよう。この一覧表がまさに、改装のための羅針盤となり、今後の新店づくり、そして、既存店の改装に寄与するものといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットのレイアウトは顧客も従業員も365日、24時間使い続ける空間であり、可能な限り、シンプルイズベストが良いといえよう。そして、そのためには、自社の基本理念に合致させることはもちろん、自社のこれまでの店舗の情報を可能な限り、レイアウトという観点から分析し、これを改装、新店の羅針盤として活用してゆくことがポイントである。さらに、これに、最新の研究成果、大胆な発想等も取り入れ、過去にこだわらない新たな試みに挑戦して欲しいところだ。

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August 09, 2010

ヤオコー、2010年3月、第1四半期決算、増収減益!

   ヤオコーが7/30、2010年3月期の第1四半期決算を公表した。結果は、営業収益522.17億円(2.7%)、営業利益 19.94億円(-13.0%)、経常利益19.54億円(-13.2%)、当期純利益8.16億円(-38.5%)となり、増収減益となる、厳しい決算となった。特に、利益がどの段階でも2桁以上のマイナスとなり、この第1四半期は利益の確保が厳しかったようである。ヤオコー自身は、特に利益に関しては、「新店の先行投資等販管費の増加などにより、・・」とのことで、新店への先行投資が影響としたとのことである。ただ、一方で、「スーパーマーケット業界におきましては、子ども手当の支給など経済対策の効果もあって個人消費は一部に改善の兆しはありますが、先行きの雇用・所得不安などを背景にしてお客さまの低価格志向は強く、そのため激しい安売り競争は依然として続いており、経営環境は厳しい状況にあります。」とのことで、経営環境が依然として厳しい状況にあるとの認識である。

   そこで、まず、営業収益が2.7%と増益となった要因であるが、「4月に桐生境野店(群馬県桐生市)を開設いたしました。」とのことで、1店舗新店が増えたことが大きいといえよう。ただ、既存店は97.4%と伸び悩んでおり、しかも、客数98.2%、客単価99.1%と客数の減少が見られる。また、客単価の中身、PI値は99.6%、平均単価は99.5%と、どちらもほぼ100%に近く、低価格志向の強い消費環境の中では健闘しているといえよう。それにしても、新店が仮に無かった場合は、減収減益となっており、依然として厳しい経営環境にあるといえよう。

   一方、営業利益が減益になった要因であるが、原価は71.65%(昨年71.48%)と、0.17ポイント上昇しており、結果、売上総利益は28.35%(昨年28.52%)と減少した。ただ、営業総利益28.35%は、食品スーパーマーケット業界の中では極めて高い数字であり、2010年度の決算公開企業約50社の平均が25.0%であるので、ヤオコーは原価小の典型的な食品スーパーマーケットであり、高い粗利益率を確保しているといえよう。ちなみに、粗利益率ベスト10はアークランドサカモト32.6%、サンエー30.2%、Olympic29.8%、平和堂29.3%、イズミヤ29.3%、ヤオコー28.8%、ヤマザワ28.3%、マルエツ28.3%、いなげや27.2%、イオン九州27.1%であり、ヤオコーは6番目と、食品スーパーマーケット業界ではトップクラスである。

   これに対して、経費の方であるが、28.90%(昨年28.33%)と、先のコメントにもあったように0.57ポイントと大きく上昇しており、今期の新店を含め、先行投資がかさみ、その関係での経費増が大きかったものと推測される。ただ、この28%台の経費は食品スーパーマーケット業界ではかなり高めの数字であり、先程の原価小に対して、経費大という状況となり、利益が中々確保しにくい営業構造にあるといえよう。ちなみに、経費比率を先ほどと同じく、2010年度の決算公開企業約50社で見てみると、平和堂29.3%、イオン九州27.1%、Olympic29.8%、イズミヤ29.3%、ヤマナカ25.0%、いなげや27.2%、マルヤ20.8%、ヤオコー28.8%、マルエツ28.3%、天満屋ストア24.8%という状況であり、ヤオコーは8番目となり、ここでもトップクラスである。したがって、ヤオコーは食品スーパーマーケットのマーチャンダイジング構造としては、原価小経費大の典型的な食品スーパーマーケットであるといえ、経費もかけるが、付加価値も追求するというマーチャンダイジング戦略を採用し、収益確保を目指しているといえる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力であるが、-0.55%(昨年0.19%)となり、昨年のプラスからマイナスへと転じ、厳しい収益構造となった。原価、経費双方が上昇するというダブルでの収益への圧迫が大きかったといえよう。これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収入が4.54%(昨年4.52%)のり、マーチャンダイジング力のマイナスをカバーし、結果、営業利益は3.99%(昨年4.71%)となり、減益決算となった。ちなみに、その他営業収入であるが、これも、2010年度の決算公開企業約50社で見ると、ベスト10は、平和堂 6.8%、イオン九州6.4%、マルヤ5.6%、フジ5.4%、イズミ5.0%、ヤマナカ4.8%、ヤオコー4.5%、天満屋ストア4.4%、ベルク4.1%、バロー3.9%という結果であり、ここでも、ヤオコーは7番目に入り、トップクラスである。

   したがって、ヤオコーは原価小(売上総利益大)、経費大、その他営業収入大であり、いずれも食品スーパーマーケット業界ではトップクラスである。経費をかけ、付加価値を強く志向し、高い粗利益率を達成するが、現段階では残念ながら経費分を充分に補うことができず、マーチャンダイジング力は厳しい状況にあり、それをカバーするその他営業収入により、高い営業利益を確保しているという営業構造であるといえよう。

   ヤオコーは、この第1四半期決算短信の中でも、「当社の基本経営戦略でありますミールソリューションの充実と価格コンシャスの徹底を図り、売上とともに荒利益の確保に注力をいたしました。」とコメントしているが、まだ、価格コンシャスに関しては決算数字には十分に表れているとはいえず、今後、この価格コンシャスをどう具現化し、原価改善に踏み込むのか、次の第2四半期、そして、後半に向けて、その動向に注目したい。

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August 08, 2010

マクドナルド、7月異常値、既存店売上高、急上昇!

   マクドナルドの7月の数字が異常値である。ここ数ケ月、売上高が伸び悩み苦戦していたが、7月度は一転、売上高が好調である。この数ケ月間の売上高の数字を追って見ると、5月度-0.6%、6月度-3.1%に対して、7月度 5.8%(昨年2.6%)であるので、昨年も伸びているが、今年はさらに伸び、しかも、5月、6月のマイナスが大きくプラスに転じている。さらに、その中身を見ると、既存店売上高9.8%、客数4.6%、客単価5.0%であり、客数、客単価ともにバランスよく伸びている。通常、売上高が急変する時は、客数か客単価か、どちらかが極端に伸びるケースが多いが、この7月度のマクドナルドの数字は双方バランスよく伸びており、まさに、理想的な伸びといえよう。

   マクドナルドは過去3年間の売上高を公表しているが、それを見ても、今回の7月度のように客数、客単価がバランスよく伸びて、既存店の売上高を押し上げたのは、2010年2月9.1%(客数3.2%、客単価5.2%)、2009年3月6.8%(客数3.3%、客単価3.4%)、2008年10月6.3%(客数2.3%、客単価3.9%)のみであり、1年に1回ぐらいのことであり、それほど、客数と客単価のバランスをとることは難しいことである。特に、マクドナルドは、これまで客数か客単価のどちらかに極端に走るケースが多く、ジェットコースターのような売上高アップの政策が打たれており、その意味でもこの7月度は抑制の効いたバランスのよい政策が打たれたものといえよう。

   そこで、この7月度の政策を見てみると、「7月度は、「チキンバーガー ソルト&レモン」「チキンバーガー オーロラ」「ジューシーチキンセレクト」を販売開始し好評を得ております。また、6月より実施しておりますチキンのサンプリングは、当初目標の1000万人を達成しました。マクドナルドのチキンの美味しさとバリューを実感していただくことにより、多くのお客様がファンになっていただけていると確信しております。さらに、7月26日に開始しました「フードストラップ」キャンペーンが好調に推移しております。朝食時間帯におきましては、朝の\100マック「ソーセージマフィン」が大好評をいただいており、販売時間帯の売上と客数を大きく牽引しております。」とのことである。

   特に、この7月からチキン分野への本格的な参入がはじまり、6月からはじめた1000万本のサンプリング、7月からのチキン関連の新製品のあいつぐ発売等が客数、客単価の相乗効果を生んだものといえよう。マクドナルド自身も、「マクドナルドはチキンでもNo.1を目指します。」とのことで、今後、さらに、チキンの第2弾、第3弾が続くと思われ、8月、9月もチキンの熱い戦いがファストフード業界全体で繰り広げられるものといえよう。

   このような好調な売上高を達成する一方、マクドナルドは現在、激しいリストラ戦略を実施している。マクドナルドによれば、「当第1四半期連結会計期間に決定した433店舗の戦略的閉店について、当第2四半期連結累計期間に閉店した211店舗に関しては、店舗閉鎖損失として36億20百万円を特別損失に計上しており、第3四半期連結会計期間以降に閉店を予定している222店舗に関しては、合理的に見積もられる損失額を店舗閉鎖損失引当金繰入額として67億59百万円を特別損失に計上しております。」とのことであり、今期中に433店舗を閉鎖する予定である。

   第2四半期(1/1から6/30)現在、マクドナルドの店舗数は3,484店舗であり、すでに250店舗を閉鎖している。その内訳は、リストラ計画外の閉店も含め、直営184店舗、フランチャイズ66店舗であり、急激な閉店の実施である。後半も同様、大量閉店の予定であり、ほぼ全店の10%に当たる店舗数となる。であるにも拘わらず、この7月度は先に見たように好調な売上高であるといえ、極めてバランスのよいスクラップ&ビルドではなく、スクラップ&商品力強化が功を奏しているといえよう。

   ちなみに、今後のマクドナルルドの店舗戦略であるが、「24時間営業店舗の推進(当第2四半期連結会計期間末現在1,777店舗)、ドライブスルー店舗の推進(当第2四半期連結会計期間末現在1,291店舗)、店舗改装(当第2四半期連結累計期間45店舗、うち「新世代デザイン店舗」13店舗)により顧客基盤の拡大に努める、・・」とのことで、特に、ドライブスルーが重要な出店戦略となるという。8/5の日経でも5年後には2,000店舗にまで増やす計画であるとのことで、ドライブスルーがマクドナルドの戦略店舗、大きな柱となるものといえよう。

   このように、マクドナルドのこの7月度はここ数ケ月の動きとは一転、好調な売上高となり、しかも、既存店が大きく伸び、客数、客単価ともにバランスよく伸びるという理想的な売上高となった。しかも、現在、店舗の大量閉鎖が進んでいる中での売上高の伸びであり、ここでも、しっかりバランスがとれているといえる。後半も大量閉鎖は続き、今期400店舗を優に超えるが、この7月度の数字を見る限り、今後も絶妙なバランスの取れた数字となる可能性が高く、スクラップと商品力強化がうまくかみ合っていくものといえよう。いよいよマクドナルドも7/1から後半戦に入ったが、この7月度を見る限り、好調なスタートを切ったといえる。今後、No.1を目指すチキンにおいて、どのような新製品が投入され、商品力強化が打ち出されるか注目したい。

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August 07, 2010

関西スーパーマーケット、2011年第1四半期、増収減益!

   関西スーパーマーケットが7/29、2011年度3月期の第1四半期の決算を公表した。結果は、営業収益284.87億円(2.5%)、営業利益1.83億円(-18.1%)、経常利益2.48億円(-16.0%)、当期純利益1.00億円(-31.3%)となり、増収とはなったが、利益はすべての段階で大きく減益となり、厳しい決算結果となった。関西スーパーマーケット自身も、「当小売業界においては、業態間競争の激化による商品単価の下落や、お客様の生活防衛意識の高まりによる節約志向が一段と強まるなど、経営環境は依然厳しい状態が続いております。」とコメントしており、厳しい経営環境であったとのことである。

   ただ、営業収益は増加しており、しかも、その中身を売上高とその他営業収入に分けてみると、売上高は102.6%、その他営業収入は95.9%であり、売上高が伸びたことが営業収益を押し上げた要因である。その背景には、ここへ来て、関西スーパーマーケットが積極的な新規出店を展開するという、強気の経営に踏み込んだことが大きいといえよう。関西スーパーマーケットは現在、「「チャレンジ100!」をキャッチフレーズに、「2020年、店舗数100店舗・年商2,000億円」を掲げ、・・」とのことで、現在59店舗、約1,100億円であるので、今後10年で営業規模を2倍にする計画であり、この流れの中での今期の積極的な新店開発といえよう。

   実際、「新設については、4月に瓢箪山店(大阪府東大阪市)、江坂店(大阪府吹田市)、萬崎菱木店(堺市西区)、5月に善源寺店(大阪市都島区)の4店舗を新設いたしました。瓢箪山店、江坂店および善源寺店の3店舗は、既存店舗とのドミナントを形成する地域へ出店し、小商圏高頻度来店の店づくりに取り組みました。また、萬崎菱木店は、新たな地域でドミナントを形成すべく鮮度の良い商品をディスカウント価格で提供し、地域の認知度アップに取り組みました。」とのことで4店舗の新規出店を行っている。キャッシュフローを見ても、この第1四半期決算の投資活動によるキャッシュフローは有形固定資産の取得による支出-7.00億円(昨年-3.11億円)と、すでに、昨年の2倍以上の投資を実施しており、新規出店への強い意欲が感じられる。

   その結果、営業収益が2.5%と増収とはなったが、気になるのは利益である。すべての段階で大きく利益を落としていることである。そこで、その要因を、原価、経費面から見てみたい。まずは、原価であるが、76.90%(昨年76.62%)と、0.28ポイント上昇している。これは、先に関西スーパーマーケットが言及しているように、商品単価の下落に加え、関西スーパーマーケット自身も、新店の萬崎菱木店のように、ディスカウント路線を強く打ち出した点にもあるといえよう。結果、売上総利益であるが、23.10%(昨年23.38%)となった。この数字は2010年度の決算公開企業約50社の食品スーパーマーケットの平均が25.0%であるので、かなり低い数字であといえる。

   一方、経費の方であるが、24.35%(昨年24.60%)と0.25ポイント削減しており、
経費に関しては改善が進んだ。原価の上昇を経費の削減で補おうとしており、特に、これだけ積極的な新店を出店したにも関わらず、経費の上昇を抑えており、かなり強く経費削減を徹底したものといえよう。これについて、関西スーパーマーケットは、「ローコスト体制づくりとして、グロサリー商品の営業時間外集中補充作業の推進や日配商品の自動発注システムの実験と検証を繰り返すなど、店内作業削減と作業効率の向上に取り組みました。」とのことで、店内作業の削減に重点をおいた経費削減に取り組んだといえよう。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、すなわち、マーチャンダイジング力は-1.25%(昨年-1.22%)となり、経費の削減が原価の上昇に追い付かず、残念ながらマイナス幅を拡大することになった。ただ、仮に、関西スーパーマーケットが決算公開企業約50社平均の25.0%に売上総利益が確保できていれば、マーチャンダイジング力はプラスになるので、今後、いかに、原価の改善を図れるかが課題といえよう。

   そして、これに、不動産収入、物流収入等のその他営業収益が1.91%(昨年2.04%)のることになるが、今期は昨年よりも0.13ポイント減少しており、結果、営業利益は0.65%(昨年0.82%)とプラスにはなったが、減益となる厳しい決算となった。

   このように2011年3月期、関西スーパーマーケットの最初の決算、第1四半期決算が公表されたが、売上高は積極的な新店の出店により増収となったが、原価の上昇、その他営業利益の減少が経費の削減でもカバーできず、営業利益が減益となる厳しい決算となった。今後、関西スーパーマーケットとしては、積極的な新規出店をさらに推し進めてゆくのか、それとも利益を重視した政策、特に、原価の改善を重視する政策に切り替えるのか、難しい経営判断が必要と思われる。次の中間、そして、後半にかけて、関西スーパーマーケットがどのような経営戦略を打ち出すか注目である。

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August 06, 2010

客数PI値、PI値を支える隠れた重要指標!

   客数PI値はPI値の指標の中では古くて新しい指標の1つだ。古くてとは、以前から一部の食品スーパーマーケットでは支持率という指標で、大分類に活用しており、野菜の支持率は70%とか、果物の支持率は30%とかという風に日常的に使われていた。いまでも、同様に使われているケースは多々あり、支持率という指標で客数PI値が使われているケースは意外に多いのが実態といえる。ただ、PI値とどう違うのかというと、理論的に突き詰められていない場合が多く、支持率もPI値も同じと思っている方もいる。したがって、単品ではPI値を使いながら、部門では支持率、すなわち、客数PI値を同じ指標として使っている場合もあり、ある意味、ユニークな実践的な使い方であるといえよう。その意味で、客数PI値は古くて、新しい指標であるといえよう。

   ちなみに、多くの事例で、支持率、すなわち、客数PI値とPI値との相関をとると、きれいに右上がりの直線上に商品が並び、相関性が極めて強いといえる。したがって、支持率とPI値は極論すれば、どちらを使っても戦略上は問題ない指標であるともいえる。支持率=客数PI値と見ても、実務上は問題なく、PI値が上がれば支持率も上がり、支持率が上がればPI値も上がるという関係が強いといえ、どちらをメインにしても、結果は同じ方向に動くともいえる。もちろん、例外もあるので、それはそれで気をつける必要があるが、大部分はこの関係が強いといえる。

   さて、ここでは改めて支持率、すなわち、客数PI値について考えてみたい。客数PI値とは理論的にはPI値を構成する一指標である。数式にすると、PI値=客数PI値×部分PI値のことである。ここで部分というのは、大分類、中分類、小分類、単品などの商品分類やレイアウト、ちらし、ID取得が可能であれば、男性、女性、年齢、そして、リピート、トライアルなど様々な部分、全体に対しての部分となる。一般にPI値は買上点数÷全体客数(レシート)である。これに対して、部分PI値は買上点数÷部分客数(レシート)であり、この部分が様々な部分となる。そして、問題の客数PI値は部分客数(レシート)÷全体客数(レシート)であり、したがって、掛けると部分客数(レシート)が約分され、PI値そのものとなる。これが、支持率、すなわち、客数PI値の正体である。

   したがって、支持率とPI値の関係は部分PI値で結ばれた関係にあるといえ、必ず、PI値=客数PI値(支持率)×部分PI値という関係が背後に存在しているといえる。先の野菜でいえば、野菜のPI値=野菜の買上点数÷全体客数(レシート)であり、通常、100%を優に超え、150%から200%となるが、支持率、すなわち、客数PI値は野菜の客数(レシート)÷全体客数(レシート)であるので、100%を超えることは理論的にありあえない数字であり、常に、100%の中で動くことになる。これに対し、部分PI値は野菜の買上点数÷野菜の客数(レシート)であるので、常に100%を超え、200%もざらに存在し、500%、1,000%という数字も理論的にはありうる数字である。

   これまで、このような客数PI値がPI値のように食品スーパーマーケットでは一般化しなかった理由は、部分客数、すなわち、レシート枚数が全体のみで把握され、部門、中分類、小分類、さらには単品まで正確に把握することが技術的に中々難しかった点がある。そして、もうひとつは、PI値=客数PI値×部分PI値という理論的な関係が理解されなかった点にもあるといえよう。

   ただ、仮に、この客数PI値が大分類だけでなく、中分類、小分類、単品にまで落とし込むことができ、しかも、それをPI値=客数PI値×部分PI値に分解できたら、何が便利になるだろうか。メリットはいくらでもあるが、代表的なものをいくつかあげて見たい。まずは、レイアウトの診断に活用できる。この場合は、中分類か小分類の客数PI値が望ましいといえよう。この時の客数PI値の違いを見ることにより、入店客数の何%の方がその商品を購入したかがわかり、それはそのままレイアウトの良し悪し、すなわち、動線との関係をかなり強く反映しているといえ、そのままレイアウトの診断、そして、改善、その後の検証に活用可能である。

   もうひとつ例をあげると、単品のカット基準に応用が可能である。ここでは、客数PI値のついとなっている単品PI値の応用である。PI値=客数PI値×単品PI値となるが、この単品PI値は単品の売上数量÷単品の客数(レシート)となる。したがって、最低でも1個は買っているので、必ず100%は超える。したがって、120%、150%の単品があれば、これは顧客が2個、3個とまとめ買いをする単品であり、可能な限りカットしない方が良いといえよう。単純な全体客数のPI値では絶対に見えない指標であり、単品管理の新たな指標のひとつといえよう。

   このように、客数PI値は応用範囲が広く、単純な全体客数で割った全体PI値では見えない世界を見せてくれる。そして、工夫次第で様々なマーチャンダイジングの改善、すなわち、仮説づくりにつながり、しかも、検証も可能である。客数PI値を算出することができるのであれば、是非、客数PI値を使い、より、実践的な、そして、顧客の真の消費実態により近いマーチャンダイジングの仮説づくり、そして、検証に活かして欲しいところである。

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August 05, 2010

日経MJ、8/4、2009年度、卸業調査結果を公表!

   8/4の日経MJで、恒例の2009年度、卸売業調査結果を公表した。1面の見出しは、「卸大手、業際超え連携」、「「生活」軸に売り場提案」、「危機感バネに潜在需要開拓」、「リストラで利益を捻出」であり、連携、リストラが2009年度のキーワードといえよう。ちょうど、この7月に食品卸の三菱商事系4社が経営統合の協議を開始したとの報道がなされた。4社とは、菱食(1兆3,847.50億円:日経MJから)、明治屋商事(3,134.02億円)、フードサービスネットワーク(3,129.02億円)、サンエス(2,034.73億円)であり、単純合計で売上高は2兆2,145.32億円となり、実現すれば、食品卸No.1の国分1兆4,273.13億円を抜き、断トツのトップとなる。当然、これが業界大再編成へと大きく動く契機となることは必至であり、連携がまさに卸のキーワードといえよう。

   ちなみに、日経MJの調査結果によれば、食品卸のベスト10は、No.1国分(1兆4,273.13億円)、No.2菱食(1兆3,847.50億円)、No.3日本アクセス(1兆3,605.84億円)と、この3社が1兆円を超える。ついで、No.4加藤産業(6,539.24億円)、No.5伊藤忠食品(6,221.81億円)、No.6三井食品(5,112.25億円)、No.7日本酒類販売(4,841.07億円)、No.8旭食品(3,639.76億円)、No.9明治屋商事(3,134.02億円)、そして、No.10フードサービスネットワーク(3,129.02億円)である。したがって、今回の経営統合の動きはNo.2、No.9、No.10、そして、ベスト10には入っていないが、No.15が経営統合を模索しているとのことあり、業界へのインパクトは大きいといえよう。

   そして、もうひとつのキーワード、リストラであるが、日経MJの記事によれば、「食品卸全体の粗利益額は08年度比0.2%減ったが、経費を削ることで粗利益の目減りを吸収した結果、販売管理費は08年度比1.6%減と粗利益額の減少率を上回った。」とのことである。さらに、記事では、「ここ数年、収益を圧迫していたのは、小売業が自社専用の物流センターに商品を搬入する際に、商品を搬入する卸に請求する使用料「センターフィー」だった。この負担増が一服したことも増益の一因となったもようだ。」とのことであり、卸売業が販売管理費を圧縮した結果の増益であり、まさに、リストラがキーワードといえよう。

   実際、食品卸No.1の売上高の国分の数字を見てみると、国分がホームページで公表している数字では、2009年12月期決算数字は売上高1兆4,273.13億円(昨対97.0%)、売上総利益1,203.49億円(売上対比8.43%:昨対99.2%)であり、売上高、粗利ともに苦戦しているといえる。ただ、売上高の減少以下に、粗利の減少を抑えているので、原価は改善しているといえ、この厳しいデフレ環境、小売業のPB戦略の中、健闘しているといえよう。そして、問題の経費であるが、1,082.31億円(売上対比7.58%:昨対96.3%)と、粗利以上に経費の削減が進んでおり、まさに、リストラ効果といえ、国分が粗利の改善以上に経費の削減にメスを入れ、売上高の減少を食い止めた構図である。結果、営業利益は121.17億円((売上対比0.85%:昨対135.2%)と、大幅な増益となった。

   国分以外でも、日経MJによれば、食品卸各社の営業利益の伸び率は菱食(営業利益率39.3%)、日本アクセス(営業利益率23.4%)、加藤産業(営業利益率45.9%)、伊藤忠食品(営業利益率16.7%)、三井食品(営業利益率19.3%)、日本酒類販売(営業利益率6.1%)と、トップ卸売業の利益率はすべて大幅な増益であり、ベスト100を見ても、約30社ぐらいが減益であり、結果、約70%が増益と売上高の減少とは対照的に営業利益は好調である。したがって、食品卸売業界全体が営業利益に関しては売上高が伸び悩む中、好調な結果となり、まさに、業界全体が経費比率を改善、すなわち、リストラに取り組んだ結果といえよう。

   食品卸売業界は今後、伸び悩む売上高をいかに確保するかが課題となり、まさに、その解決策がはじめのキーワード、連携となろう。日経MJの1面の記事には、7/21の日本アクセスのさいたまスーパーアリーナでの恒例の商品展示会の取材内容が掲載されており、その中で、「・・ある一角にスーパーのバイヤーらが興味深く見入っていた。「総合生活提案」のブースだ。・・」という内容がある。これは、「・・日本アクセスが業務提携する日雑品卸のあらた、医薬品卸のアルフレッサホールディングスと共同で設けた。いくつかのテーマに沿って、医薬品、食品、日用品を混合させた売り場作りを提案する内容だ。例えば、「かぜ対策」、・・」というコーナーである。これは、単に売場提案に留まらず、異分野の卸売業の連携を示唆しているといえ、今後、売場はもちろん、食品卸業界を超え、他の卸売業界との再編も同時に起こってゆくものと思われる。

   このように、日経MJの恒例の特集記事、2009年度、卸売業調査は現状の卸売業の実態が特集されているだけでなく、今後の卸売業の方向も垣間見え、リストラという現状と連携という今後のキーワードを象徴している数字がまとめられているといえ、興味深い調査結果といえよう。まずは、三菱商事系卸4社、菱食、明治屋商事、フードサービスネットワーク、サンエスの行方が気にところであるが、これ以外にもいつ、再編の記事が報道されてもおかしくない状況にあるといえ、卸売業の今後の動向から目が離せない状況が続くといえよう。


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August 04, 2010

コメリー、1,000店舗達成、7月度売上げも好調!

   コメリーがホームセンター業界ではじめて、7/23、ハード&グリーン古志店(島根県出雲市)をもって、1,000店舗を達成した。コメリーによれば、「当社は、1977年にホームセンターの1号店を新潟県三条市に開店し、地域の皆さまのご支持をいただきながら成長させていただきました。そしてホームセンター参入から33年、・・」とのことであり、33年目にしての快挙である。その内訳は、ホームセンター140店舗、ハード&グリーン860店舗であり、ハード&グリーンの貢献が極めて大きかったといえよう。また、この7月度の売上速報は、全体が112.84%(HC111.01%、H&G112.43%)であり、既存店も109.98%(HC110.40%、H&G109.61%)と好調な推移である。

   ただ、7/29に公表された2011年3月期の第1四半期決算が営業収益は798.84億円(1.9%)と堅調な推移であったが、営業利益60.29億円(-0.6%)、経常利益58.69億円(0.6%)、当期純利益28.13億円(-15.4%)と、利益は伸び悩んでおり、気になるところである。そこで、コメリーの利益が伸び悩んだ要因を原価、経費面から見てみたい。

   まずは、原価であるが、69.10%(昨年69.61%)と0.51ポイント減少している。したがって、原価は下がっており、結果、売上総利益は30.90%(昨年30.39%)と上昇した。それにしても、食品スーパーマーケットの数字と比較すると30.90%は極めて高い数字である。2010年度、決算公開企業約50社の平均がちょうど25.0%であるので、いかに、コメリーの粗利が高いかがわかる。一方、経費の方であるが、26.37%(昨年25.80%)と、0.57ポイント上昇している。特に、今期は1,000店舗達成もあり、「長崎県時津町に売場面積が約2,800坪のパワー(以下、「PW」)を1店舗、ハードアンドグリーン(以下、「HG」)を7県に11店舗出店、・・」とのことで積極的な新店開発を実施しており、その経費も大きかったものと思われる。

   結果、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は4.53%(昨年4.59%)と若干減少した。これに営業収入が3.26%(昨年3.41%)のり、営業利益は7.79%(昨年8.00%)となり、減益となった。原価は改善されたが、経費が上昇、営業収入が伸び悩むという結果となり、営業利益が減少したといえる。ただ、営業利益率7.79%は高い数字であり、特に、食品スーパーマーケットの2010年度決算公開企業約50社の平均2.4%と比べても極めて高い数字であり、依然として高収益を維持しているといえよう。

   ここで、コメリーの営業構造を見てみると、コメリーはH&G(ハード&グリーン)が経営の中核であり、その商品構成比も金物・資材・建材などのハード25.6%、園芸・農業用品などのグリーン31.1%と、H&Gで56.7%と約60%弱となり、文字通りH&Gが強いホームセンターといえる。その他は家庭用品21.6%、オフィス・レジャー用品13.6%、そして、雪国が地元とあってか、灯油他が3.2%、その他となる。したがって、コメリーの高収益の要因はこの商品構成がH&G、しかも、小型店多店舗展開に経営資源を絞り込んだところにあるといえ、まさに、ホームセンター業界のセブンイレブンともいえるビジネスモデルを作り上げたことにあるといえよう。現在、コメリーは46都道府県に1,000店舗を展開しており、年商も2,854億79百万円(2010年3月期)、今期の1,000店舗達成で日本全国で成り立つホームセンターの新たなビジネスモデルを作り上げたといえよう。

   では、この大量出店を支える財務基盤であるが、自己資本比率は44.4%(昨年43.8%)であり、負債が50%強とやや高い状況である。その負債の中身であるが、リース等を含めた有利子負債が546.35億円となり、総資産2,410.45億円の22.67%(昨年25.61%)である。したがって、これ以外にも大きな負債があるが、これがホームセンター特有といって良い支払手形及び買掛金447.29億円である。総資産対比18.55%となり、有利子負債を足すと、合計41.22%となり、負債の大半を占める。当然、この支払手形及び買掛金に対応する資産項目は在庫であり、これもホームセンター特有といえ、今期は821.44億円となり、総資産の34.1% にもなる。食品スーパーマーケットでは考えられない在庫であり、びっくりである。しかも、土地の239.28億円、敷金及び保証金の77.67億円よりも遥かに大きく、建物の831.07億円とほぼ同じ数字であり、いかに、在庫がホームセンターの資産において重い負担になっているかがわかる。

   したがって、出店関連の資産はこの在庫も重要な資産となり、在庫を加えた出店関連の資産は81.73%にもなり、食品スーパーマーケットとは全く財務構造が違い、対極の小売業といえよう。食品スーパーマーケットの在庫は2010年決算公開企業約50社の数字が8.1%であるので、コメリーの34.1%はこれを見ても極端に高い数字であり、在庫管理がホームセンターの生命線であるといえる。

   このように、コメリーがホームセンター業界初の1,000店舗という快挙を達成したが、残念ながら、財務状況は経費が上昇、営業収入が減少し、営業利益は減益となるやや厳しい結果となった。ただ、営業利益率は7.79%と極めて高い数字であり、高収益を維持しているといえ、しかも、この7月度は全体、既存店ともに好調な売上げである。それにしても、ハード&グリーンの小型ホームセンターを集中展開し、ホームセンター業界の中では軽装備なように見えるが、在庫を見ると、食品スーパーマーケットでは考えられないような重い負担であり、改めて、ホームセンターとは在庫との戦いであることがわかる。次回、中間決算でどこまで収益改善をはかるか、コメリーの動向に注目である。

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August 03, 2010

家計調査データ2010年6月度、食品98.1%!

   総務省統計局から、7/30、2010年6月度の家計調査データが公表された。結果は、外食を除く食品が1世帯、1日当たり1,947.93円となり、率にして、98.1%となり、消費環境は依然として厳しさが続いているといえよう。本ブログでは、家計調査データを食品スーパーマーケットの客単価(金額PI値)と連動を図るために、独自に工夫し、家計調査データでは1世帯1ケ月当たりの消費額を1世帯、1日当たりの消費額に換算している。また、その数字をさらに、消費世帯のみの消費額と消費世帯の割合に分解し、より、消費実態を深く掘り下げている。ここでは、これらの数字を駆使し、特に、食品スーパーマーケットとかかわりの深い商品について、その最新動向を解説したい。

   外食を除く食品については、1,947.93円(98.1%)となったが、全体は9,216.47円(99.7%)となり、0.3ポイント下がった。また、外食は391.27円(95.2%)と、食品以上に下がっており、結果、この6月度は、食品、全体、そして、外食ともに昨対を下回る厳しい消費状況であったといえる。それにしても、日本国民の平均的な消費生活はほぼ1日1万円であり、その内、約2,000円が食品に使われ、約400円が外食に使われているといえ、生活の実態が分かりやすい数字であるといえる。ただ、この数字がいずれも、昨対を割っており、食品スーパーマーケットを取り巻く消費環境は厳しさを増しているといえよう。

   そこで、食品について、まずは、大分類の動向を見てみたい。この6月度、消費を伸ばした部門であるが、乳卵類111.20円(100.2%)、調理食品253.23円(101.9%)、飲料141.33円(101.0%)、野菜・海藻293.60円(100.0%)の4部門である。こう見ると、伸びた部門もわずかな伸びに留まっており、残りの部門はすべて、昨対を割り、この6月度が厳しい消費であったことがわかる。その昨対を割った部門であるが、穀類218.77円(99.1%)、魚介類206.10円(94.5%)、肉類196.07円(93.9%)、果物92.10円(91.8%)、油脂・調味料112.83円(97.5%)、菓子類197.30円(97.1%)、酒類125.37円(99.6%)という状況であり、野菜・海藻類を除く生鮮3品が特に厳しい状況であったといえよう。ちょうど、すでに、本ブログでも取り上げたように、この状況は消費者物価指数とも連動しており、デフレがまさに、消費環境に影響を与えているといえよう。

   では、さらに、踏み込んで小分類を見てみたい。伸びた部門の中で特に、伸びた項目であるが、乳卵類ではバター2.23円(108.1%)、ヨーグルト25.53円(104.6%)が堅調な動きを示した。野菜・海藻ではじゃがいも8.97円(118.5%)、たまねぎ7.60円(113.4%)、干ししいたけ1.20円(112.5%)、梅干し5.60円(120.0%)、はくさい漬1.50円(109.8%)、こんぶつくだ煮3.23円(106.6%)等の伸びが高い。特に、いわゆる土物類の数字が顕著であり、これも、消費者物価指数では大きく高騰した項目であり、連動性が高いといえよう。調理食品では、弁当34.60円(105.2%)、うなぎのかば焼き9.53円(107.1%)、コロッケ5.63円(105.6%)等である。そして、飲料では、緑茶13.90円(109.2%)、炭酸飲料11.53円(109.8%)、乳飲料3.77円(105.6%)等である。これらの項目が、比較的堅調な結果となっており、この6月度の消費を牽引したといえよう。

   一方、これに対して、消費が大きく落ち込んだ項目を見てみたい。穀類では生うどん・そば8.43円(89.4%)、スパゲッティ3.27円(89.1%)であり、魚介類ではさんま1.23円(80.4%)、えび7.73円(82.9%)、かき(貝)0.10円(75.0%)、ほたて貝3.50円85.4%)、煮干し0.93円(82.4%)等である。肉類では牛肉が44.97円(88.1%)と大きく落ち込んでいる。果物ではぶどう3.30円(71.2%)、もも1.87円(58.9%)、メロン8.77 円(71.5%)、バナナ15.30円(83.9%)であり、特にバナナは昨年のバナナブームの反動も大きく、落ち込み幅が大きい。

   油脂・調味料では、食用油9.27円(88.5%)、マーガリン2.37円(85.5%)、しょう油5.53円(86.0%)等が落ち込みが大きい。菓子ではようかん2.13円(85.3%)、キャンデー5.50円(82.9%)、チョコレート菓子2.33円(88.6%)が大きく落ち込んでいる。そして、酒類であるが、清酒12.80円(87.9%)、ワイン5.73円(74.5%)等の落ち込みが大きい。ただし、発泡酒・ビール風アルコール飲料26.63円(141.2%)、ウイスキー3.60円(110.2%)と良く伸びている項目もあり、酒類は明暗が分かれている。ちなみに、猛暑関連であるが、先に上げた発泡酒・ビール風アルコール飲料26.63円(141.2%)、炭酸飲料11.53円(109.8%)以外では、アイスクリーム・シャーベット28.03円(102.7%)、グレープフルーツ3.97円(119.0%)、オレンジ3.23円(142.6%)等が良く伸びている。

   このように、この6月度の家計調査データの結果を見ると、全体的に厳しい消費環境であったといえる。すでに本ブログでも取り上げたように消費者物価指数のデフレ傾向を色濃く反映しており、消費環境が厳しい状況にあるといえよう。特に、消費者物価指数でもそうであったが、農産部門以外の生鮮食品が消費者物価指数を下げていたが、家計調査データでも同様な傾向が出ており、デフレと消費の伸び悩みはほぼ連動しているといえる。デフレは今後当面継続することが見込まれるので、恐らく、結果、消費も厳しい状況が続くものといえよう。ただ、猛暑による消費押上げ効果も出始めているともいえ、来月、この猛暑がどのように消費に影響を与えるか注目である。

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August 02, 2010

消費者物価指数(CPI)、2010年6月度、デフレ継続!

   総務省統計局から7/30、2010年6月度の消費者物価指数(CPI)が公表された。結果は、いずれの段階でも、前年同月比がマイナスとなり、依然としてデフレ傾向が鮮明である。消費者物価指数は生鮮食品、資源エネルギーなどの急激な変動要因を考慮し、3つの段階で数値が取られている。その3つの結果であるが、(1)総合指数は平成17年を100として99.7となり、前月と同水準。前年同月比は0.7%の下落となった。(2)生鮮食品を除く総合指数は99.3となり、前月と同水準。前年同月比は1.0%の下落となった。(3)食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は97.2となり、前月比は0.1%の下落。前年同月比は1.5%の下落となった。

   これを同時に公表されたグラフで見ると、その傾向はさらに鮮明である。消費者物価指数は、ここ数年、約2年周期ぐらいで上昇、下落を繰り返していた。昨年、2009年9月前後がちょうど下に凸のマイナスのピークであり、その後、マイナス幅が縮まり、プラスに徐々に近づく傾向を示していた。特に、2010年1月までは、きれいなsinカーブで動いていたが、それが、2月以降、ピタリと止まり、マイナスのまま動かなくなり、4月以降は逆に動きはじめ、消費者物価が反転、マイナスの幅を広げ始めるという異例の流れとなった。

   実は、この4月からは高校授業料の無償化が実施されており、消費者物価指数の中では、「公立高校授業料」及び「私立高校授業料」の2品目がその影響を受けることになる。どのくらいの影響を受けるかであるが、生鮮食品を除く総合指数においては、-0.54であり、したがって、-0.50前後は、4月以降、消費者物価をマイナスに押し下げており、この影響も大きいといえる。ただ、これを加味しても、依然として、マイナスであることには変わりなく、この6月度も消費者物価指数はマイナスであり、消費環境は厳しい状況にあるといえよう。

   では、この高校授業料無償化以外で、この6月に消費者物価指数を押し下げた要因を寄与度で見てみたい。10大費目で見た場合、寄与度がプラスになったのは交通・通信0.19のみであり、残り、9大費目がすべて、0かマイナスとなった。10大費目の内、食品は、生鮮食品が0.30のプラス、生鮮食品を除く食料が-0.30のマイナスであり、明暗が分かれた。特に、先に言及した高校授業料を含む教育は-0.49と最もマイナス幅が大きい結果となった。それ以外では、家具・家事用品-0.16、教養娯楽-0.14、住居-0.08等である。

   さらに、中分類で見てみると、前年同月比で上昇がみられたものは、他の光熱24.1、生鮮果物12.9、生鮮野菜9.8、自動車等関係費3.2、保健医療サービス0.7等である。一方、下げたのは、教養娯楽用耐久財-17.8、授業料等-17.4、家庭用耐久財-10.5、家事用消耗品-4.7、室内装備品-4.5等である。こう見ると、生鮮果物、生鮮野菜が消費者物価指数の上昇に大きく寄与しており、6月度は食品スーパーマーケットの農産部門が異常値であったといえよう。

   そこで、食品スーパーマーケットの主要品目のこの6月度の動向を特に、生鮮果物、生鮮野菜を中心に見てみたい。まず、生鮮果物であるが、さくらんぼ25.6、メロン25.4、すいか12.4、ぶどうA9.2である。逆に、輸入フルーツは、グレープフルーツ-8.0、バナナ-4.2となり、明暗が分かれている。ついで、生鮮野菜であるが、ばれいしょ24.0、れんこん20.4、えだまめ19.9、きゅうり18.8、さといも 16.5、ピーマン15.1、レタス13.0、かんしょ10.9という状況であり、軒並み高騰となっている。逆に、消費者物価を下げた野菜は、もやし-4.5、生しいたけ-4.2、しめじ-2.9、ごぼう-2.3のみであり、いかに、この6月度は野菜が高騰したかがわかる。

   これだけ食品の主力部門、農産部門の消費者物価指数が高騰したにもかかわらず、食品の物価が上昇しなかった要因は、これ以外が下がったということであるので、その下げた要因となった食品を見てみたい。まずは、大分類であるが、穀類-2.7、魚介類-1.5、肉類-1.9、乳卵類-1.4、菓子類-1.5、調理食品-2.0、飲料-1.8、酒類-1.5であり、軒並み消費者物価を下げており、生鮮果物、生鮮野菜とは対照的な動きである。

   そこで、さらに、小分類で消費者物価を下げているものを見ると、食用油-11.6、スパゲッティ-9.1、小麦粉-6.3、かれい-6.0、いか-6.1、たこ-6.3、たらこ-8.8、丸干しいわし-7.0、ししゃも-5.6、ケチャップ -7.5、ビスケット-9.0、ポテトチップス-5.4、冷凍調理ピラフ-5.9、うなぎかば焼き-5.8、混ぜごはんのもと-6.6、ミネラルウォーター -7.6であり、以上が5ポイント以上消費者物価を下げている項目である。

   このように、この2010年6月度の消費者物価は依然として全体としてはデフレ傾向が鮮明であるといえ、当面、厳しい消費環境が続くものと思われる。特に、高校授業料の無償化が-0.5程度、全体の消費者物価指数を押し下げており、このマイナス分は今後1年間続くと思われ、消費者物価がプラスに転じるのは当面難しいものといえよう。それにしても、このような中、生鮮果物、生鮮野菜は一転、高騰しており、食品スーパーマーケットとしては、デフレとインフレが混在する複雑なマーチャンダイジングを余儀なくされ、今後、どのような戦略で臨むか難しい局面に入ったといえよう。来月以降、消費者物価がどのように動くか注目である。

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August 01, 2010

商品戦略をどう決定するか?

   食品スーパーマーケットが商品戦略を決定するにはいくつかのポイントがある。通常、食品スーパーマーケットにおいて把握できる商品の動きは目の前の商品が売れたか、売れなかったかである。したがって、自然その情報を重視し、売れた商品を強化し、売れなかった商品は縮小、場合によってはカットし、売場から外すことになる。そして、空いたスペースに新商品を導入するか、重点商品のフェイスを広げるかになる。これを365日、24時間繰り返すことにより、徐々に商品が顧客に近づき、商品と顧客との関係ができあがってゆき、売れる売場が時間とともに完成度が増してゆくことになる。

   これがもっともオーソドックスな商品の仮説検証である。ここにPOSデータ分析が入れば、よりその精度を増し、売れる売場への時間が縮まることになり、より、早く、売れる売り場を作り上げることが可能となろう。これはこれで、商品戦略の根底にある考え方であり、いわゆる仮説検証の大事なアクションである。では、新店を立ち上げた時、より完成度を増すために、その速度を速める方法はないだろうか。そもそも新店の商品戦略はどう決めるべきか、これが意外に難しい問題である。

   通常の食品スーパーマーケットを見ると既存店の商品戦略をほぼそのまま新店においても顧客にぶつけることが多々ある。当然、これまでの問屋との取引関係、生鮮食品でいえば、市場との関係もあり、既存の取引関係を重視した商品戦略を組まざるをえないといえ、ほぼ80%から90%、場合によっては100%、既存店と同じ商品戦略でスタートする場合が多い。もちろん、全く商圏構造が同じであり、店舗フォーマットが同じであれば、相似形の商品戦略が当てはまるといえる。

   ただ、実際には新店と既存店とはあらゆる点で似て非なる場合が多いのが実態であり、新店において既存店の商品戦略がそのまま当てはまることは稀である。したがって、新店をつくる場合は当たり前のことであるが、慎重に商品戦略を練る必要があり、何を同じにし、何を変えるかを、可能な限りの様々な情報を収集し、明確にした上で臨む必要がある。ただ、どんなに準備しても、新店は実際に開けて見ないとわからない点が多く、あくまで、事前の準備は事前の準備であり、オープン後は、素直に顧客の声に耳をすませ、時には大胆に、時には繊細に商品戦略を絶えず見直す必要がある。

   特に、新店はオープンして見ないとわからないことも多々あり、どんなに時間をかけて調査分析をし、商品戦略の仮説を練り上げても、一瞬の内に否定されることも多々ある。このような場合は、仮説にこだわらず、すばやく、仮説を修正し、顧客に一旦身を委ね、その後、再度、仮説を再構築することが懸命といえる。初期の仮説にこだわるあまり、新店の顧客離れを起こしては元も子もなくなってしまうからである。

   では、新店オープン後、何をチェックすればよいだろうか。ポイントは2つある。まずは、商品と客動線、他の商品との関係を再度チェックすることである。商品が売れるか売れないかは商品力に負うとこころが最も大きいが、こと、食品スーパーマーケットの店舗においては、客動線と商品との関係が意外に大きいのが実態である。これは理論的にも実証でき、売上高=客数×金額PI値=客数×PI値×平均単価=客数×客数PI値×商品(群)のPI値×平均単価となり、この内、レイアウトと密接に絡む指標が客数PI値であり、顧客がどのように動いているか、すなわち、客動線によって大きく数字がかわることを表しているといえる。


   したがって、新店オープン後、客動線をよく掴み、その動線に沿った商品展開を見直すか、逆に思い切って、レイアウトそのものを変え、客動線を変えるかがポイントとなる。また、商品の購入順序を見て、関連となる強い商品があれば、その商品の購入後にどのようなコーナーをつくればより、客動線を太くできるかを考えれば良い。要は顧客が無理なく、スムースに、気持ちよく買い物ができる客動線を作りあげることである。

   そして、もうひとつは、競合関係をしっかり把握することである。意外に、どの食品スーパーマーケットと競合しているか、当初想定していた場合とずれていることもあり、意外な競合が存在することがある。特に、農産部門、水産部門、畜産部門等は強い八百屋、魚屋、肉屋と競合している場合もあり、農産部門は最近では直場所との競合も発生しており、それぞれに対応する対策が必要である。ただ、初期の対策は価格訴求等の競合対策を打つよりも、まずは、その地域で何が良く売れているのか、その容量はどうか、グレードはどうか等、近隣の地場の食品スーパーマーケット、八百屋、魚屋、肉屋等に教えを請う気持ちで素直に学んだ方が良い。そして、顧客にとってその地域で絶対に必要となる商品の抜け、見落としがないかを検討した方が懸命である。

   このように、商品戦略、特に新店を出店した時は、当初想定していたことと違う結果が起こることが良くあることであり、当初の仮説を無理に押し進めるよりも、まずは、内部の客動線のチェック、そして、近隣の競合となる小売業のチェックを定期的に行い、仮説を修正ないしは、新たな仮説を構築することがポイントである。最後は顧客がどの店舗を選ぶかを決めることであり、顧客の声を聞き、顧客から選ばれる店づくりをどこまで徹底できるかが、新店が成功するかどうかの分かれ道といえよう。

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