商品戦略をどう決定するか?
食品スーパーマーケットが商品戦略を決定するにはいくつかのポイントがある。通常、食品スーパーマーケットにおいて把握できる商品の動きは目の前の商品が売れたか、売れなかったかである。したがって、自然その情報を重視し、売れた商品を強化し、売れなかった商品は縮小、場合によってはカットし、売場から外すことになる。そして、空いたスペースに新商品を導入するか、重点商品のフェイスを広げるかになる。これを365日、24時間繰り返すことにより、徐々に商品が顧客に近づき、商品と顧客との関係ができあがってゆき、売れる売場が時間とともに完成度が増してゆくことになる。
これがもっともオーソドックスな商品の仮説検証である。ここにPOSデータ分析が入れば、よりその精度を増し、売れる売場への時間が縮まることになり、より、早く、売れる売り場を作り上げることが可能となろう。これはこれで、商品戦略の根底にある考え方であり、いわゆる仮説検証の大事なアクションである。では、新店を立ち上げた時、より完成度を増すために、その速度を速める方法はないだろうか。そもそも新店の商品戦略はどう決めるべきか、これが意外に難しい問題である。
通常の食品スーパーマーケットを見ると既存店の商品戦略をほぼそのまま新店においても顧客にぶつけることが多々ある。当然、これまでの問屋との取引関係、生鮮食品でいえば、市場との関係もあり、既存の取引関係を重視した商品戦略を組まざるをえないといえ、ほぼ80%から90%、場合によっては100%、既存店と同じ商品戦略でスタートする場合が多い。もちろん、全く商圏構造が同じであり、店舗フォーマットが同じであれば、相似形の商品戦略が当てはまるといえる。
ただ、実際には新店と既存店とはあらゆる点で似て非なる場合が多いのが実態であり、新店において既存店の商品戦略がそのまま当てはまることは稀である。したがって、新店をつくる場合は当たり前のことであるが、慎重に商品戦略を練る必要があり、何を同じにし、何を変えるかを、可能な限りの様々な情報を収集し、明確にした上で臨む必要がある。ただ、どんなに準備しても、新店は実際に開けて見ないとわからない点が多く、あくまで、事前の準備は事前の準備であり、オープン後は、素直に顧客の声に耳をすませ、時には大胆に、時には繊細に商品戦略を絶えず見直す必要がある。
特に、新店はオープンして見ないとわからないことも多々あり、どんなに時間をかけて調査分析をし、商品戦略の仮説を練り上げても、一瞬の内に否定されることも多々ある。このような場合は、仮説にこだわらず、すばやく、仮説を修正し、顧客に一旦身を委ね、その後、再度、仮説を再構築することが懸命といえる。初期の仮説にこだわるあまり、新店の顧客離れを起こしては元も子もなくなってしまうからである。
では、新店オープン後、何をチェックすればよいだろうか。ポイントは2つある。まずは、商品と客動線、他の商品との関係を再度チェックすることである。商品が売れるか売れないかは商品力に負うとこころが最も大きいが、こと、食品スーパーマーケットの店舗においては、客動線と商品との関係が意外に大きいのが実態である。これは理論的にも実証でき、売上高=客数×金額PI値=客数×PI値×平均単価=客数×客数PI値×商品(群)のPI値×平均単価となり、この内、レイアウトと密接に絡む指標が客数PI値であり、顧客がどのように動いているか、すなわち、客動線によって大きく数字がかわることを表しているといえる。
したがって、新店オープン後、客動線をよく掴み、その動線に沿った商品展開を見直すか、逆に思い切って、レイアウトそのものを変え、客動線を変えるかがポイントとなる。また、商品の購入順序を見て、関連となる強い商品があれば、その商品の購入後にどのようなコーナーをつくればより、客動線を太くできるかを考えれば良い。要は顧客が無理なく、スムースに、気持ちよく買い物ができる客動線を作りあげることである。
そして、もうひとつは、競合関係をしっかり把握することである。意外に、どの食品スーパーマーケットと競合しているか、当初想定していた場合とずれていることもあり、意外な競合が存在することがある。特に、農産部門、水産部門、畜産部門等は強い八百屋、魚屋、肉屋と競合している場合もあり、農産部門は最近では直場所との競合も発生しており、それぞれに対応する対策が必要である。ただ、初期の対策は価格訴求等の競合対策を打つよりも、まずは、その地域で何が良く売れているのか、その容量はどうか、グレードはどうか等、近隣の地場の食品スーパーマーケット、八百屋、魚屋、肉屋等に教えを請う気持ちで素直に学んだ方が良い。そして、顧客にとってその地域で絶対に必要となる商品の抜け、見落としがないかを検討した方が懸命である。
このように、商品戦略、特に新店を出店した時は、当初想定していたことと違う結果が起こることが良くあることであり、当初の仮説を無理に押し進めるよりも、まずは、内部の客動線のチェック、そして、近隣の競合となる小売業のチェックを定期的に行い、仮説を修正ないしは、新たな仮説を構築することがポイントである。最後は顧客がどの店舗を選ぶかを決めることであり、顧客の声を聞き、顧客から選ばれる店づくりをどこまで徹底できるかが、新店が成功するかどうかの分かれ道といえよう。
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