物流を考えて見る、「日本の食料品はなぜ高いか」!
8/17の日経ビジネスオンラインで「日本の食料品はなぜ高いか(大矢昌浩氏著)」というタイトルの記事が掲載された。サブタイトルは、「旧態依然の卸売市場がコールドチェーンを分断する」であり、たまたま直売所の調査で青果物の物流を調査しているところでもあり、興味深い内容である。合わせて、関連記事も読んでみたが、これもまた興味深い内容であり、特に、日雑業界の物流が世界に類を見ない仕組みを作り上げ、ウォルマートよりも効率的な仕組みを作り上げているといわれているとは知らなかった。
特に、この関連記事も含めて、気になったポイントであるが、「たくさんの工場と、たくさんの店舗を結ぶ物流は、フルラインの品揃えとフルラインの流通加工機能を備えた中間拠点を、1カ所だけ経由した時に最もコストが小さくなる、・・」という点である。まるで、数学のトポロジーの問題のようであるが、恐らくこれが真理なのであろう。実際、日雑業界は限りなく、この方向に近づいているという。
記事の中でも紹介されていた論文、プラネットが1998年、いまから10年以上前に研究報告した「ボイス、“Vision for Optimal and Effective Supply Chain Management”」を見ると、そのまえがきで「具体的には、業界メーカーが製造する商品4億ケース(段ボール)を30万軒の小売店に、過不足なく供給するにはどのような体制が最適であるかを策定しました。そして、変貌を遂げている小売店の満足を得るために、業界フルラインの一括物流でバラ配送もでき、ノー検品も可能な高精度なシステムであるという条件を設定しました。こうした目標と条件のもとにシミュレーションを行ったところ、200~250億円規模の物流拠点を日本列島に114カ所開設すれば、業界としての供給責任を果たせるという結果が算出されました。現状の中間物流拠点は、業界に関わる卸店と販社数を2千社とすれば、2千数百カ所はあると考えられます。・・」と解説している。
実際、約10年後の現在、この方向に限りなく近づきつつあるといい、日雑業界では業界に先駆けて、本格的なM&Aが起こり、物流拠点が大きく集約されつつあるという。また、記事の中では、「1990年代末に外資系コンサルティング会社がその影響を調査したことがある。同調査によると、中間拠点を1カ所だけ経由した時の1ケース当たりの物流コストは494円だった。これが2カ所経由だと767円、3カ所経由が960円、4カ所経由では2460円に跳ね上がった。」という実証データもあるとのことで、物流拠点の集約化がいかに重要なトータルコストを下げるかがわかる。
ちなみに、プラネットの設立企業9社であるが 、ライオン、ユニ・チャーム、 資生堂、サンスター、 ジョンソン、十條キンバリー、(現 日本製紙クレシア)、エステー化学、(現 エステー)、牛乳石鹸共進社、インテックであり、花王、P&Gに対抗すべく立ちあがったともいうべき日雑の代表的な企業からスタートした。最近では花王も加わり、日雑業界は競争から協調の時代に入りつつあるともいえよう。
こう見ると、食品スーパーマーケットがその他営業収入でセンターフィーとして計上している物流収入は食品スーパーマーケットにとっては大きな収入源であるが、物流のトータルコストからすると、場合によっては、ワンクッション物流拠点が増えたことにもなり、一見利益が出ているようで、よりマクロに見ると、逆に効率化を阻害している可能性もあるといえよう。特に、物流システムは限りなく進化しており、全温度帯対応、24時間物流、商品仕訳、検品機能など高度化が進んでおり、その投資も絶えず必要となり、店舗数も100店舗を超え、今後は数100店舗の規模が必要となってこよう。
記事の中でも、「小売りの専用センターの多くは入荷した台車をそのまま納品車両別に並べ替えるだけの単純な積み替え拠点だ。在庫機能やバラピッキングは従来通りベンダーに頼っている。そのため小売りの専用センターを新たに経由することで、物流段階は1つ増えてしまう。サプライチェーンのトータルコストが増加する、・・」との指摘もあり、物流問題はまさに、トータルサプライチェーンの問題であるといえ、一小売業だけで解決する問題ではないといえよう。
話をもとに戻し、8/17の日経ビジネスオンライン、「日本の食料品はなぜ高いか」では、「農林水産省の調査(平成20年度「食品流通段階別価格形成調査」)によると、青果物主要16品目の小売価格に占める流通コストは平均で57.1%となっている、・・」とのことであるが、実際、農林水産省のホームページでこの資料を確認して見ると、全69ページのかなりの量の資料であり、しかも、エクセルでの詳細な分析データも掲載されている。いずれ、改めて、本ブログで取り上げてみたいと思うが、物流問題が農産物の価格と強い連動性があることは確実であり、それゆえ、日本全国に現在10,000件を優に超える農産物直売所が出現したといえ、すにで、10億円の直売所がいくつも表れ、一部ではチェーン化がはじまっているのも頷ける話である。
このように、物流は今後の流通業界トータルで取り組まなければいけないマクロな課題であるといえ、小売業だけ、卸だけ、メーカーだけでは当然解決できない課題であるといえる。まさに、SCM(サプライチェーンマネジメント)であり、食品スーパーマーケットにとっても、避けて通れない課題であり、青果物から雑貨まで、どう物流体制をつくり上げてゆくべきか、ますます重要な経営課題となってきたといえよう。
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