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August 10, 2010

食品スーパーマーケットのレイアウトを考えて見る!

   食品スーパーマーケットのレイアウトは実に複雑怪奇であり、奥が深い。しかも、立地の制約、競合状況、家賃の制約、面積の制約、居抜き出店等があるため、コンビニのような基本パターンをつくり、それを適用することが難しいのが実態といえる。したがって、基本パターンを作成し、それをもとに新店を作ったり、あるいは、改装したりするにはかなり無理があり、与えられた条件、環境を考慮し、基本パターンではなく、基本的な原理原則を当てはめ、柔軟にハード面に関しては取り組んでゆく必要がある。その意味で、食品スーパーマーケットのレイアウトは新店にせよ、改装にせよ、ハードよりもソフトが極めて重要な要素となり、基本哲学とでも呼ぶべき考え方をしっかり確立する必要がある。

   では、基本哲学とは何か、どう構築するかであるが、それには、2つのアプローチがある。ひとつは、会社の理念に合致させることであり、もうひとつは、これまでの既存店舗をつぶさに分析し、自社が無意識に取り組んできた暗黙のルール、哲学をまとめ上げることである。この2つの角度から、新店、改装に関しての自社の考え方をまとめ上げると、自然、次の新店、そして、既存店の改装に関して、比較的迷いなく取り組めるようになり、なおかつ、予想に近い結果が得られるようになる。また、新たな新店をつくる度に、あるいは、既存店舗を改装する度に、新たな発見が生まれたり、これまでの取組みの正しさを認識したりできるようになる。

   そこで、まずは、基本理念であるが、食品スーパーマーケットの基本理念は顧客満足度にあることは自明であるが、そのためには、顧客からの視点とその顧客をフォローする従業員からの視点と双方が重要である。ごく単純化すれば、顧客動線と作業動線といえ、この2つのバランスを最適に保つことが、食品スーパーマーケットのレイアウトでは最優先課題といえる。店舗は顧客も従業員も365日、24時間活用する空間であるので、原則、シンプルイズベストが望ましい。食品スーパーマーケットは奇をてらう必要はないし、よく言われる滞在時間を伸ばし、客単価を向上させるような時間がかかる売場をつくる必要もない。原則、5分で食生活に絶対的に必要なPI値1%以上の150から200品が最短距離、最短時間で買える売場がベストである。滞在時間を伸ばすよりも、来店頻度を引き上げるレイアウトがベストといえよう。

   特に、客数が2,000人/日を超え、3,000人/日、4,000人/日の場合は、1分、1秒でも早く買い物をしたいのが顧客の心理であり、それに最優先で応えるレイアウトが顧客満足度を高めることにつながるといえよう。したがって、複雑な客動線は禁物であり、シンプルな目をつむっていても重点商品10品がカゴに最短距離、最短時間で入れられるように最大限の注意をはらうべきである。同時に、そのような中で生鮮食品、日配食品の発注、品出しをせざるをえないのが従業員の日々の仕事であるので、作業動線も客動線同様に重視する必要がある。 

   2つ目の既存店を分析し、自社の暗黙のルール、哲学をまとめることであるが、これができている食品スーパーマーケットは皆無といってもよく、過去の図面は整備されていても、その図面に応じた基本データが整備され、そこから一定の成功、失敗事例をまとめ上げている食品スーパーマーケットはまずないといえよう。実は、新店のレイアウトを作り、既存店の改装を実施する場合に、最も重要なのは、この自らの実績に対する真摯な評価、すなわち、成功、失敗事例を認識し、社内で共有するところにあるといえる。ちょうど将棋のプロ棋士が自分の系譜をすべて覚えており、いつでも、そこから必要な場面を自由に再現できるように、少なくとも自社の既存店のレイアウト分析は実施しておき、いつでも、新店、既存店に活かせるようしておきたいところだ。

   実は、これはさほど難しいことではない。POSデータの分析と既存店の基本調査だけで、一覧表を作成することができる。POSデータで必要な指標は、当然、金額PI値、PI値、平均単価、そして、可能であれば、客数PI値を加えることである。特に、この客数PI値は部分客数/全体客数であり、まさに、レイアウトの評価を表す最重要指標であるので、是非加えたいところだ。あとは、ここから、既存店の客数と既存店の売場尺数を加え、尺数量、尺売上を算出すれば良い。可能であれば、大分類だけでなく、中、小分類まで落とし込めれば、より、きめ細かなルールづくりにつながるといえよう。この一覧表がまさに、改装のための羅針盤となり、今後の新店づくり、そして、既存店の改装に寄与するものといえよう。

   このように、食品スーパーマーケットのレイアウトは顧客も従業員も365日、24時間使い続ける空間であり、可能な限り、シンプルイズベストが良いといえよう。そして、そのためには、自社の基本理念に合致させることはもちろん、自社のこれまでの店舗の情報を可能な限り、レイアウトという観点から分析し、これを改装、新店の羅針盤として活用してゆくことがポイントである。さらに、これに、最新の研究成果、大胆な発想等も取り入れ、過去にこだわらない新たな試みに挑戦して欲しいところだ。

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