神戸物産、業務スーパー、第3四半期、大幅増収増益!
神戸物産が8/27、2010年10月期、第3四半期決算を公表した。結果は、売上高1,031.05億円(9.8%)、営業利益21.14億円(560.2%)、経常利益21.73億円(917.0%)、当期純利益9.97億円(1,059.3%)となり、昨年が厳しかった面もあるが、大幅な増収増益、好調な決算となった。ちなみに、売上対比では、営業利益2.05%、経常利益2.10%、当期純利益0.96%であるので、食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の2010年度の平均の営業利益が2.4%、経常利益が2.4%、当期純利益が1.1%であるので、若干平均よりも低い状況である。したがって、昨対で見ると、大幅な増収増益ではあるが、食品スーパーマーケットと比べると、ほぼ、率では平均に近い比率であるといえる。
ただし、神戸物産は食品スーパーマーケットと経営形態が全く違うため、一概に食品スーパーマーケットのP/Lと比較することは難しく、この第3四半期の営業利益率2.4%がどのような価値かを判断するのは難しい面がある。実際、神戸物産の原価、経費を見ると、原価は94.20%(昨年95.92%)であり、結果、売上総利益は5.80%(昨年4.08%)となり、食品スーパーマーケットの決算公開企業約50社の2010年度の平均25.0%と比べ、全く事業構造が違うことがわかる。したがって、この第3四半期の営業利益は、その他営業収入がない限り、最高5.8%が上限であり、これを超えることはありえない利益構造となる。
これは神戸物産が全国約500店舗の業務スーパーのFC本部であり、各加盟店へ商品を販売し(売上高)、その商品を神戸物産が製造ないしは仕入れているため、原価は加盟店への商品販売の原価として計上されるためである。したがって、神戸物産は、現状、加盟店への商品売上の約5%の粗利(売上総利益)となっており、ここが通常の食品スーパーマーケットの約25%とは大きく違う原価構造となっている。いわば、神戸物産本体は業務スーパーのみに商品を販売する卸売業に近い業態といえよう。
結果、原価は1.72ポイントと大きく下がっており、営業利益の改善に寄与したといえる。一方、経費の方であるが、3.74%(昨年3.73%)と、0.1ポイントと、わずかに上昇しているが、ほぼ、昨年と同じ経費比率となった。したがって、差し引き、営業利益は2.06%(0.35%)と、原価が大きく改善した分、大幅に上昇しており、好決算となった。こう見ると、神戸物産の利益構造は経費よりも、原価改善の効果が極めて大きいといえ、いかに原価を改善できるか、すなわち、自社で原料を仕入れ、自社の工場で加工し、さらには、自社で原料そのものを製造することが、いかに利益を生み出すかに直結しており、まさに、今期は、この原価改善が利益増に大きく貢献した結果となったといえよう。
ちなみに、「利は元にあり」ではないが、神戸物産のホームページを見ると、「農地カメラ」というバナーがあり、ここをクリックすると、北海道の自社の農業生産法人で栽培している畑のWEBカメラにつながり、毎日、午前と午後の273ha(東京ドーム約58個分)で生産している作物の生育状態を見ることができる。今後、この北海道産の野菜が秋の収穫後、神戸物産の全国の業務スーパーに、自社工場で加工され、続々と店頭に並ぶことになろう。したがって、農産物の栽培から神戸物産の原価改善ははじまっているといえ、これらの積み重ねが、今期の利益改善=原価改善に寄与したといえよう。
この結果について、神戸物産自身は「自社グループ内において商品の製造から販売まで手掛ける「製販一体」の仕組により、「安全・安心」かつ利益率の高い商品を扱った「食卓応援&爆弾価格」や「挑戦します!日本最安値」といった施策を展開、・・」とコメントしており、結果、「多くの国内企業が前年実績を割り込む中、当社グループは当期首より月次利益が前年実績を上回る月が続くなど好調に推移しております。」と、原価改善が利益改善につながったとのことである。
神戸物産は本業の業務スーパーに加え、ここ最近は、次世代の新規事業、惣菜、すなわち、神戸クック事業にも力を入れている。ローソンとの業務提携、オークワとの合弁会社の設立など矢継ぎ早に業務の拡大をはかりつつある。ただ、その事業規模は、この第3四半期決算では、売上高は7.76億円(31.0%)と、伸び率は極めて高いが、金額は全売上高の0.75%であり、業務スーパー事業の1,027.02億円と比べると、極めて小さく、事業としての確立はまだ先といえる。したがって、当面、業務スーパーが大黒柱といえ、売上高、営業利益とにも、業務スーパー、特に、その原価改善が利益の源泉といえる。
このように、2010年10月期の神戸物産の第3四半期決算は大幅な増収増益となり、原価の改善が大きく寄与したといえる。円高の恩恵も受け、中国をはじめ、海外からの輸入品は有利に働き、今後とも原価の改善が続くと予想される。さらに、北海道での農産物の生産をはじめ、日本国内の加工工場での加工等、原料から製造までを押さえることにより、原価がさらに改善され、利益の改善がはかられるものと予想される。今期、本決算まであと2ケッ月足らずとなったが、今期決算は好決算となると予想され、どこまで、利益を押し上げるか注目である。
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