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September 16, 2010

久しぶりに修正ハフモデルを作ってみる!

   食品スーパーマーケットにおいて最も重要な商圏調査の数字は客数の確定である。通常、商圏調査は出店地区からの時間距離で5分圏、10分圏等を徒歩、自転車、車などで想定し、そこから商圏人口(世帯)を算出し、シェアを想定し、客数を算出するという方法を取る。数式にすれば、商圏人口(世帯)×シェアとなる。そして、その際、ポイントとなるのが、シェアの算出であり、ここが最大の課題となる。このシェアを確定する方法は中々難しく、何らかの確率論を応用することになるが、そこで、ごく一般に用いられる確率論がニュートンの万有引力の法則である。万有引力は宇宙の法則のひとつであり、物体のもつ引力は質量に比例し、距離の2乗に反比例するという法則であり、これが、商圏にも応用できるであろうという類推のもとに用いられている。

   その歴史は古く、1930年前後までさかもどり、アメリカのライリーがはじめて、万有引力を商圏に応用し、都市と都市との間でどのような吸引関係があるのかを、都市の人口に比例し、都市間の距離の2乗に反比例するという仮説を唱えたところからはじまる。その後、1950年代にコンバースが商圏の分岐点公式を開発し、さらに、これらの仮説を確率論に拡大したのがハフであり、1960年代に有名なハフモデルが開発される。日本では、山中教授が1970年代に修正ハフモデルを提唱し、これが当時の通産省が大規模小売店舗法の審査基準に採用したことにより、一般化した。その後、現在までシェアを算出する有力な仮説として、様々な商圏調査で活用されているのが実態である。

   私も船井総研時代、約20年ぐらい前にはじめてハフモデルに出会った時には、びっくりしたものである。入社した当時はハフモデルは一般化しておらず、コンバースの分岐点公式が主に使われており、自店を中心に競合店との間の分断場所を設定し、そこから商圏地図を作製し、商圏設定をしていた。そして、確定した商圏から、シェアのシミュレーションを行い、ランチェスターの法則を応用し、地域一番の店舗を目指すためにマーチャンダイジングの徹底強化に入るという内容であった。したがって、シェアを推定するというよりも、シェアを獲得することに力点が置かれており、そこから自然、競合店調査、競合対策、特に、品揃えと価格政策を重視した提案をするというのが重要な商圏調査のポイントであった。

   その後、当時、私自身、上司のアドバイスもあり、学術論文を読み、大規模小売店舗法を勉強し、独自に食品スーパーマーケット用の修正ハフモデルを、当時はExcelがまだ一般化していなかったので、ロータス123で作成し、これまでの商圏調査に加え、より精度を上げようと取り組んだ。その時、はじめて見た修正ハフモデルの公式にはさすがにびっくりした。シグマが使われおり、これをどうやってパソコンに計算させたら良いのかがわからなかったからである。そもそも、2乗をパソコンで計算することも日常的にはなく、ここから苦労した。また、実際、どのように商圏を分け、商圏人口を算出し、どのように距離をはかり、さらに、自店、競合店をどう数値化すれば良いかもわからかったからである。

   いろいろ苦労した結果、食品スーパーマーケット用の修正ハフモデルとそのノウハウを数年かけて作り上げることができ、その後、実務に応用することができるようになったが、そこまでゆくに、かなり、試行錯誤した。ここ最近ではチェーンストアの場合は、商圏構造が良く似た商圏に対しては類似法を採用することにより、客数の読みはかなり精度よく類推できるので、修正ハフモデルは参考にかける程度となる場合が多く、重要度はさほどではなくなったが、ことシェアを類推する上では、いまでも参考となる手法のひとつといえよう。

   最近、改めて修正ハフモデルを使う機会があり、再度、Excelで修正ハフモデルのあのシグマの公式にもとづいて、1からつくって見た。意外に簡単に作れてしまい、商圏、競合店ともに、縦横、いくつ増やしても、問題なく、正確な計算ができ、最終的なシェアが、距離と競合情報を入れるだけで瞬時に算出され、使い勝手がよい。問題は距離と競合情報であり、ここが修正ハフモデル適用の最大の問題点ともいえる。距離を文字通り距離にするか、時間距離にするか、競合状況を単純な面積にするか、それとも何らかのマーチャンダイジングの違いを考慮するかである。要は顧客の出店に強く影響をあたるものは何かである。特に、修正ハフモデルは万有引力の法則の応用版であるので、距離と質量にあたるものは商圏では何かが問題となるということである。

   このように、久しぶりに修正ハフモデルを1からExcelでつくり、改めて、その原理である万有引力にさかもどり、距離と質量に当たる商圏の要素を考えてみたが、ここは意外に難しい問題があり、食品スーパーマーケットでは距離として、徒歩、自転車、車、場合によっては、鉄道、バス等の影響もあり、単純な距離ではなく、時間距離の方が精度が高いといえよう。また、質量としては、単純な売場面積だけでなく、品揃え、価格政策、その他マーチャンダイジングに関する何らかのパワーを読む必要もある。したがって、食品スーパーマーケットの実務に修正ハフモデルを活用するには、このような問題が多々あるが、それでも、シェアを読むにためのひとつの参考数値を算出してくれるので、実務としては、その他の方法も含め、ひとつの参考数値として活用してゆくのが望ましいといえよう。

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