大黒天物産、2011年5月期、第1四半期、好調!
大黒天物産が2011年5月期の第1四半期決算を10/5、公表した。結果は売上高216.31億円(12.2%)、営業利益12.47億円(22.8%)、経常利益12.46億円(23.2%)、当期純利益5.31億円(-2.7%)となり、営業、経常段階では大幅な増収増益となる好決算となった。なお、当期純利益については、「資産除去債務会計基準の適用に伴う影響額として特別損失に2.59億円を計上したことにより、・・」とのことで、特別損失が発生したため減益となったが、全体としては、このデフレ環境において、各食品スーパーマーケットが厳しい中間決算を公表する中、好調な第1四半期決算であったといえよう。
この第1四半期決算の経営環境について、大黒天物産自身は、「小売業界におきましては、雇用情勢の悪化による消費者防衛意識の一段とした高まりや値下げによる価格競争の強まりなど、経営環境は非常に厳しい状態が続いております。」とのことで、厳しい現状認識をしており、食品スーパーマーケットを取り巻く経営環境は厳しさを増しつつあるといえよう。そこで、大黒天物産の第1四半期決算における営業利益がこのような厳しい経営環境の中にも関わらず、2桁の伸びと、好調であった要因を原価、経費面から見てみたい。
まずは原価であるが、77.36%(昨年77.09%)となり、0.27ポイント上昇が見られる。大黒天物産のコメントにもあったように「値下げによる価格競争の強まり」が大きかったものと思われる。結果、売上総利益は22.64%(昨年22.91%)となり、粗利が若干減少した。大黒天物産は原価改善については、「商品戦略としましては、食品製造小売業(S.P.F)としてお客様に満足いただける商品の開発に取り組んでまいりました。」とのことで、S.P.F を標榜しており、自ら商品を製造し、販売するPB戦略を重視している。ただ、それでも原価の上昇が見られることは、それだけ、価格競争が厳しかったということであろう。
一方、経費については、16.87%(昨年17.63%)と、0.76ポイント削減しており、経費を16%台へと大幅に削減した。これについて、「管理面におきましては、管理コストの一層の見直しと作業効率の改善による経費の圧縮及び「ウィークリーマネジメント」により数値管理の徹底を図ってまいりました。」とのことで、経費の圧縮を徹底したとのことである。それにしても、経費比率16%台への突入はすごい数字であり、食品スーパーマーケットにおける2010年度の決算公開企業約50社の中では2社しかない。オーケーの15.0%とトライアルカンパニーの15.5%であり、その他はすべて低くとも17%台であり、平均は25.6%であるので、いかに、16%台が低い経費比率であるかがわかる。ちなみに、この中間決算時のイオンであるが、36.0%であり、セブン&アイHは33.3%であり、圧倒的な経費差であるといえる。
したがって、差し引き、商品売買から得られる利益、マーチャンダイジング力は5.77%(昨年5.28%)となり、原価のマイナスを経費の削減でカバーし、大きくプラスにもっていっており、好調な決算となった。大黒天物産の場合は、その他営業収益がないため、マーチャンダイジング力=営業利益となるので、原価、経費差がダイレクトに営業利益となる。さらに、これに売上増の12.2%も加味され、この第1四半期の大黒天物産の営業利益は22.8%と大幅な増加となったといえる。
大黒天物産はこのようにマーチャンダイジング力が際だった強さであり、それが高収益を生み出し、急成長を支えているが、その成長戦略も独特である。この第1四半期の出店にかかわる資産、土地、建物、敷金保証金等の合計は98.09億円であり、全54店舗で割ると1.76億円となる。これは2010年度の決算公開企業約50社の平均が4.73億円であるので、極めて少ない資産での出店であり、これが急成長を支える最大の要因といえる。したがって、マーチャンダイジング力から得られるキャッシュを大量出店に当てることができ、通常の食品スーパーマーケットの4.73/1.76=2.68倍の速さで出店を加速することができる。また、大黒天物産のもうひとつの特徴は現金保有高であり、今期も87.22億円と総資産の35.5%となり、これは、2010年度の決算公開企業約50社中でも断トツのトップであり、恐らく日本一ではないかと思われる。この現金はディスカウント志向の食品スーパーマーケット特有の経営戦略であるといえ、大黒天物産以外ではアオキスーパー、オーケーが30%台であり、以下は20%前半となるので、独特な経営戦略であるといえよう。
このように、2011年度第1四半期の大黒天物産の決算が公表されたが、結果は売上、営業利益ともに2桁の大幅増収増益となる好決算となった。特に、経費の削減が大きく増益に寄与しており、これが原価の上昇をカバーしての増益となった。今期、各社の中間決算を見てもこの傾向は強く、原価の減少を経費の削減により補っているケースが多く見られる。当面、小売業を取り巻く環境はデフレが継続するものと予想されるので、今回の大黒天物産のように、いかに経費削減ができるかが利益を確保する上での最大のポイントといえよう。大黒天物産の次の決算、中間ではどこまで原価改善に迫れるか注目である。
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